この記事は約 12 分で読めます。
複数社から借入れしている多重債務の場合、正しい返済の優先順位を知ることで、多重債務状態から抜け出しやすくなります。
たとえば勤務先からボーナスが支給されたとき、債務のいずれかを優先して返済したいものの、どの借金を先に返すべきかわからなくなってしまうものです。
そこで、債務返済の正しい優先順位と、借金を返す順番の決め方について次の3つの章に分けてわかりやすく解説していきます。
- 正しい優先順位をつけるための4つの手順
- 返済を優先させたい債務の種類
- 優先順位以外の債務返済の5つのポイント
借金の元金や利息を早く減らし、多重債務から抜け出すための参考にしてください。
目次 ▼
1章 正しい優先順位をつけるための4つの手順
複数社からお金を借りている「多重債務」の状態において、どの借金返済を「優先」するべきか正しい「順位」をつけた上で、今後の「返済計画」を立てていくことが必要です。
そのためには、まず次の4つの手順をそれぞれ進めていきましょう。
- 借金の詳細を把握する
- 家計の収支表を作成する
- 債務ごとの利息を計算する
- 毎月の返済額を決める
どのような手順かそれぞれの内容を説明していきます。
1-1 借金の詳細を把握する
債務の正しい優先順位を決めるために、まずは借金の「詳細」について、次のことを把握しましょう。
- 借入先
- 借入先ごとの借入残高(現時点の残債)
- 借入先ごとの金利
- 借入先ごとの毎月の返済額
複数借金を抱えていると、一旦は返済したのにまだ借入れし、そのお金を別の返済に充てるといった「自転車操業」になりがちです。
どこからどのくらいの金額を借りているかわからない状態のまま、自転車操業を続けていても借金はなくなりません。
もしも現在どのくらいの借金があるかわからない場合は債権者に直接確かめる方法の他、以下の「信用情報機関」から借入れ情報を取り寄せることも可能です。
CIC(株式会社シー・アイ・シー) | クレジットカードなど信販会社での取引履歴の照会先 |
JICC(株式会社日本信用情報機関) | 消費者金融など貸金業者との取引履歴の照会先 |
KSC(一般社団法人全国銀行個人信用情報センター) | 銀行や信用金庫などの金融機関の取引履歴などの照会先 |
それぞれ請求方法など異なるため、確認後取り寄せてみるとよいでしょう。
1-2 家計の収支表を作成する
債務の正しい優先順位を決めるために、家計の「収支表」を作成しましょう。
複数借金を抱え、すでに毎月の収入から生活費など差し引いても返済に充てることのできる資金が少ない場合、家計の収支表を作成することで毎月どのくらいの金額なら返済可能か確認できます。
1-3 債務ごとの利息を計算する
借金を早急に返済するポイントは、いかに利息の発生を抑えるかにあります。
そこで、債務の正しい優先順位を決めるために、債務ごとの「利息」を計算しましょう。
借入先ごとに
- この先支払いを続けるといつ完済できるのか
- どのくらいの利息を負担することになるのか
について確認します。
返済期間が長期に渡る場合や、支払う利息総額が多すぎるときには、現在の返済を続けることで「資金ショート」するリスクも高くなるため、返済方法の見直しが必要です。
1-4 毎月の返済額を決める
債務の正しい優先順位を決めるために、毎月の「返済額」を決めましょう。
毎月の収支から手元に残る金額が確認できると、娯楽費や交際費などに使いたい気持ちになってしまうかもしれません。
しかし早く借金を「完済」するためには、できるだけ余裕資金を借金返済に多く充てることが必要です。
返済に充てることのできる金額から無理ない「返済計画」を考え、副業やアルバイトで「収入」を増やすことや固定費を見直し「支出」を減らすことも検討してみましょう。
2章 返済を優先させたい債務の種類
複数社からお金を借りていれば、毎月家計は債務返済で圧迫されてしまいがちです。
利息の負担を軽減させることが「完済」への近道であり、1社でも完済できれば毎月の「返済額」を抑えることもできます。
また、万一返済ができなくなったときに「担保」や「保証人」がついた借金を抱えていると、資産を取り上げられたり保証人に迷惑をかけたり不都合が生じます。
以上を踏まえると、返済を優先させたい債務の種類は次の3つと考えられます。
- 金利の高い借金
- 担保や保証人のついた借金
- 少額の借金
それぞれどのような債務か説明します。
2-1 金利の高い借金
返済を優先させたい債務の種類として、「金利」の高い借金が挙げられます。
金利が高い借金は完済まで長期化しがちですが、返済期間が長くなればなるほど負担する利息も多くなります。
できるだけ金利が高く設定されている借金を優先して支払い、返済期間を短く抑えることで、早期完済を目指しやすくなるといえます。
2-2 担保や保証人のついた借金
返済を優先させたい債務の種類として、「担保」や「保証人」のついた借金が挙げられます。
たとえば自宅などの不動産を担保に差し入れている借金の返済が滞り、差し押さえられれば「競売」にかけられ、住む場所を失う可能性があります。
誰かに保証人になってもらった借金がある場合も、万一返済できなくなれば迷惑をかけてしまいます。
そのため担保や保証人のついた借金は、たとえ金利が低く設定されている場合でも、遅れず返済することが必要であり、返済順位を優先させたほうがよい債務といえます。
2-3 少額の借金
返済を優先させたい債務の種類として、少額の借金が挙げられます。
借入残額の少ない借金なら返済期間も短く、優先して返済すれば早く完済させることができます。
返済する借入先が一社でも少なくなれば返済の「手間」や「管理」も軽減され、返済資金を別の返済先に集中させることができます。
なお、どの程度の金額が「少額」と言えるかは一律に言えませんが、ひとつの目安として10万円以下のものと考えると良いでしょう。
3章 優先順位以外で多重債務解消につなげる方法
多重債務状態において、どの借金を優先して返していくのか、「順位」をつけることは大切です。
しかし借金返済に優先順位をつけること以外にも、多重債務解消につなげる方法として次の5つが挙げられます。
- 借り換えローンの利用
- おまとめローンの利用
- 繰上げ返済の利用
- 支出の削減
- 債務整理の検討
それぞれどのような方法か説明していきます。
3-1 借り換えローンの利用
「借り換えローン」とは、現在の借入先よりも金利が低く設定される金融会社で借りなおすことです。
高い金利から低い金利へと変わるため利息負担は軽減されますが、借金の「元金」は減るわけではありません。
そのため根本的な借金問題解決になるわけではないものの、利息の負担をできる限り抑えつつ完済を目指すことができます。
ただし新たに借入れをすることになるため、信用情報が悪化していれば審査に通らず利用できないことは留意しておきましょう。
3-2 おまとめローンの利用
「おまとめローン」とは、複数の借入先の借金を一本化できる金融商品です。
毎月の返済管理の負担を軽減でき、トータルの利息額を抑えることにつながる可能性もあります。
返済先を一本化できれば、どの借入先から返すべきか優先順位を考える必要もなくなることがメリットです。
ただし借り換えと同じく、信用情報次第で審査に通らないこともあり、状況によっては返済期間が長期化して利息負担が大きくなる場合もありますので注意してください。
3-3 繰上げ返済の利用
「繰上げ返済」とは、毎月の返済額とは別にまとまった金額を返済する方法です。
たとえば、
- 賞与が出たとき
- 生命保険を解約し解約返戻金を受け取ったとき
- 退職金が支払われたとき
など、まとまったお金を受け取ることもあるでしょう。
そのお金を繰上げ返済に利用することで返済期間を「短縮」することができ、利息負担も軽減されます。
賞与などの臨時収入があったときには、繰上げ返済を積極的に行うことで「完済」までの期間を早めることができます。
なお、繰上げ返済には次の2つの種類があります。
- 返済期間は変えず毎月の返済額を少なくできる繰上げ返済
- 毎月の返済額は変えず返済期間を短縮できる繰上げ返済
返済期間を変えずに毎月の返済額を抑える繰上げ返済は「利息負担」が大きくなると考えられるため、できるだけ毎月の返済額は変えずに返済期間を短縮できる方法を選びましょう。
3-4 支出の削減
毎月の支出を「削減」することで、借金返済に充てるお金を増やすことができます。
携帯料金などの通信費、電気代などは契約プランを変更することで節約できる可能性もあります。
また、加入している生命保険なども、必要のない保障がついていると保険料が高くなるため、見直しや解約など検討してみるとよいでしょう。
もしそこで解約返戻金が出るようなことがあれば、それを返済に充てれば早期完済にぐっと近づくことができるでしょう。
3-5 債務整理の検討
「債務整理」とは、借金減額や免除、支払い期間の調整などで借金問題を解決するための手続であり、次の3つから適切な手続を選ぶことで問題解決につながります。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
自力での返済管理が難しいと感じたときには、無理に一人で頑張らそうとせず、専門家に相談し債務整理を検討しましょう。
それぞれの債務整理について、どのような手続か簡単に説明します。
任意整理
任意整理とは、「債権者に将来利息や遅延損害金をカットしてもらうように直接交渉を行い、交渉成立後は3~5年の分割で返済する手続」です。
裁判所を介さず手続ができるため、担保のついた借金や連帯保証人つきの債務などを除外して手続できます。
また、手続において過去に払いすぎた「利息」がある発覚した場合には、「過払い金返還請求」により、さらに借金が減額されます。
個人再生
個人再生とは、「借金を5分の1程度など大幅に減額させ、残りを原則3年で分割返済する手続」です。
裁判所を介した手続が必要になるため、任意整理のように一部の債務のみ除外はできません。
しかし住宅ローン返済中の持ち家がある場合には、「住宅ローン」の返済はこれまで通り続け、他の借金は整理できることがメリットといえます。
持ち家を手放さずに借金問題を解決したい場合、選ぶとよい手続といえるでしょう。
自己破産
自己破産とは、「債務総額が多額である場合でも、借金返済をほぼ全て免除してもらえる手続」です。
裁判所を介した手続となることや、すべての債務が対象になること、最低限の財産以外はすべて処分しなければならないなどデメリットはあります。
そのため最終手段として検討したい手続ですが、抱えている借金が返済能力を大きく超えているときなどは検討が必要です。
まとめ
複数の債務の返済について優先順位をつけるのなら、返済計画を立てた上で高金利の借金や担保・保証人がついた借金などを優先させた返し方が望ましいといえます。
借金を早く完済させるためには返済期間を短くし、利息負担を抑えることも必要です。
しかしすでに自転車操業で毎月の収支から返済に充てるお金がない状況である場合には、債務整理など検討することも必要となるでしょう。
複数の借金を抱え、終わりの見えない返済でつらい状態にあるのなら、任意整理を始めとした債務整理を専門としている司グリーン司法書士法人グループにご相談ください。
借金返済に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。
アクセス数が多いキーワード:債務整理 クレジットカード
借金返済の無料相談ならグリーンへ
お気軽にお問い合わせください!
よくあるご質問
- 効率よく借金を返済するための順番とは?
- 返済を優先すべき借金の種類は、下記の通りです。
・金利の高い借金
・担保や保証人のついた借金
・少額の借金
借金の返済順番について詳しくはコチラ
- 借金はいくらからやばい?
- 借金がやばいかどうかの一つの目安は、借入総額が年収の3分の1を超えているかどうかです。
年収の3分の1を超える借金は、返済能力を上回ってしまい返済が難しくなると言われています。
借金がいくらからやばいかについて詳しくはコチラ