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「任意整理」と「過払い金請求」はそれぞれ別の手続ですが、任意整理中に「過払い金」が発生することがあります。
任意整理は、返済できなくなった借金を整理し、残っている債務をどのように返していくのか決める手続です。 それに対して、過払い金請求は払いすぎた利息を返還してもらえるように請求する手続きです。
発生した過払い金の使い道は自由であり、借金の返済に必ずしも充てなければならないわけではありませんが、任意整理によるその後の支払いが変わる可能性があるときは、できるだけ返済に充てたほうがよいでしょう。
借金の早期完済を目指すためにも、次の3つについてそれぞれ解説していきます。
- 任意整理とは
- 典型的な過払い金請求
- 任意整理中の過払い金請求
過払い金が発生しているかもしれない借金がある方は、ぜひ今後の参考にしてください。
過払い金請求の手続き方法に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
目次 ▼
1章 任意整理とは
「任意整理」とは、返済できなくなった借金を整理し、残っている債務をどのように返していくのか決める手続です。
返済が苦しくなった借金を「整理」することで、債務者を「救済」することを最終的な目的としています。
将来利息のカットなどで借金を3~5年で完済できるように、借金減額・整理にむけて債権者と交渉していきます。
この任意整理の過程で「過払い金」が発生しているものがあれば、過去に払いすぎた利息を取り戻すための「過払い金請求」も行います。
2章 典型的な過払い金請求
「過払い金請求」には2種類ありますが、「典型的な過払い金請求」とは、すでに完済している借金に払い過ぎている利息がある場合、その返還を求める手続です。
単に「過払い金請求」という場合の多くはこのケースを指しています
典型的な過払い金請求ができる可能性があるのは、次の2つを満たしているケースといえます。
- 2010年(平成22年)6月17日以前から借りていた借金がある場合
- 最後の返済日から10年を経過していない借金がある場合
それぞれ詳しく説明していきます。
2-1 2010年(平成22年)6月17日以前から借りていた借金がある場合
2010年(平成22年)6月17日以前から借りていた借金がある場合、「グレーゾーン金利」により過払い金が発生している可能性があります。
出資法と利息制限法の上限金利が異なることで存在することになった金利のことです。
利息制限法の金利上限15~20%に対し、出資法で刑事罰の対象となる金利上限が29.2%だったため、利息制限法を超えた利率でも出資法の上限金利を超えず刑事罰が科せられることのない「グレーゾーン金利」を存在させることになりました。
以前までは「グレーゾーン金利」よる金銭の貸し付けを行う貸金業者がほとんどでしたが、2010年6月に改正された貸金業法が完全施行されたことで、出資法の上限金利が20%に引き下げられグレーゾーン金利も撤廃されています。
そのため2010年(平成22年)6月17日以前から借金をしている場合、現在の利息制限法による上限金利で「引き直し計算」をすれば、過払い金が発生している可能性があるといえます。
2-2 最後の返済日から10年を経過していない借金がある場合
過払い金を戻してもらうように債権者に請求する権利(返還請求権)には、10年間という消滅時効があります。
たとえ過払い金が発生していても、最終返済日から 10年経てば請求できる権利を失ってしまうため、10年以上経過している場合には、たとえ過払い金が発生していても返還されません。
ただし2010年以前に契約した借金で、最近まで長期に渡り借入れと返済を繰り返し行っていたケースなどは、時効経過前として過払い金請求できる可能性があります。
最後の返済日から10年を経過していないのなら、まだ請求できる可能性もあるため早めに手続することをおススメします。
2章 任意整理手続き中に過払い金が発生するケース
前章で解説したように、過払い金は「グレーゾーン金利」で貸金業者と契約を結びお金を借りていた場合に発生しますが、任意整理手続の中で過払い金が発生するのは次の3つのケースです。
ケース | 例 |
ケース① 債務が残っている会社と完済している会社とが混在しているケース | A社・B社は残債務ありのため任意整理、C社は完済しているため典型的な過払い金請求を行うなど |
ケース② すべて債務が残っている会社で再計算後に過払いが発生するケース | A・B・C社すべて残債務ありのため、3社とも任意整理したときにC社に過払い金が発生していると判明するなど |
ケース③ 特定の会社で過払い金が発生しており相殺後に債務が残るケース | A社のキャッシング枠で過払い金が50万円発生しているが、ショッピング枠の支払いが100万円残っており、相殺することでキャッシング枠の残債務50万円を任意整理するケース(手元に現金は戻らないものの、実質、過払い金が発生しているケース) |
続いて、任意整理中に過払い金請求をするメリットや受け取った過払い金の使い道を解説していきます。
3章 任意整理中に過払い金請求をすべき理由
任意整理の過程で過払い金が発生しているとき行う「任意整理中の過払い金請求」も、過去に払いすぎた利息を取り戻すことが目的です。
ただし「典型的な過払い金請求」と異なり、発生した過払い金は任意整理で残った債務に充てることで、「元本」を減らし無理のない返済計画を立てることを目指します。
任意整理中に過払い金が出た場合も、希望すれば本人へ返金するのが原則で、その使い道も自由です。
しかし、任意整理中であることから、過払い金を返済に充てることを強くオススメします。
3-1 過払い金は返金もしくは債務返済に充ててもらえる
任意整理中に発生した過払い金を払い戻してもらった場合、その「使途」は次の2つに分けることができます。
- 本人に返金する
- ほかの債務の支払いに充てる
債務者本人が希望すれば、戻ってきた過払い金は本人に「返金」されます。
しかし任意整理後に債務が残っているのなら、贅沢したい気持ちをぐっと我慢して返済に充てたほうが、早期完済を目指すことができます。
3-2 任意整理中に発生した過払い金を他の債務返済に充てる3つのメリット
任意整理中には発生した過払い金を他の債務の返済に充てることには、次の3つのメリットがあると考えられます。
- 債務額が大きく減る
- 一括返済できる可能性がある
- 和解条件が良くなる可能性が高まる
それぞれのメリットについて説明していきます。
本来、自己破産を選択するしかないほど大きな債務を抱えている場合でも、発生した過払い金で債務額を大きく減少させることにより、結果的に任意整理を選べるケースもあります。
また、過払い金請求後に自己破産に至るケースなどの場合、高額の財産を勝手に処分してしまうと破産手続上問題になる可能性もあるため注意が必要です。
任意整理中に発生した過払い金で残債を「一括返済」できる場合もあります。早期に完済したほうが、「ブラックリスト」として登録されている期間を早めることができるため、メリットにつながるでしょう。
任意整理中に発生した過払い金を、債権者との話し合いで「頭金」として使うことで、良好な和解条件で交渉できる可能性が高くなります。
より良い条件で債権者との交渉をまとめるためにも、過払い金を有効活用できる返済計画を立てることをおススメします。
まとめ
任意整理と過払い金請求はそれぞれ別の手続であるものの、任意整理の手続の中で過払い金が発生することもあります。
過払い金の使い道は債務者本人の自由ですが、任意整理で残った債務の返済に充てれば、より早期の完済を目指しやすくなります。
過払い金が出たとして一時の贅沢に使ってしまうのも絶対にダメとまでは言いませんが、結局はその後に多額の返済が数年間あることを考えると、過払い金を返済に回した方が、総合的には利益が大きいと言えるでしょう。
そのためにも、どのようなケースで過払い金が発生するのか、発生した過払い金はどのように返済に充てるべきか、専門家に相談しながら検討することをおススメします。
もし任意整理や過払い金請求で詳しく知りたいことがある場合や、過払い金が発生している借金がある場合などは、グリーン司法書士法人グループに気軽に相談していただければと思います。
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よくあるご質問
- 任意整理中に過払い金が発生するケースとは?
- 任意整理中に過払い金が発生するケースは、主に下記の通りです。
・債務が残っている会社と完済している会社とが混在しているケース
・すべて債務が残っている会社で再計算後に過払いが発生するケース
・特定の会社で過払い金が発生しており相殺後に債務が残るケース
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