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借金が未返済のケース
借金が未返済の場合、犯罪に該当するかどうかを説明します。
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未返済金の対処法
警察は個人間の借金問題には介入できないため、メールや電話、訪問による対応法を説明します。
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時効前の行動
お金を貸したまま帰ってこない状態が続いたときの、時効前の重要性を説明します。
お金を貸したのに返ってこないときには、思い切って警察に被害届を出したほうがよいか考えてしまうものでしょう。
「必ず返すから」
と約束のもとで貸したのにもかかわらず、何の連絡もなく音信不通で、当然お金も返ってこなければ、騙されたと感じ警察を頼りたくなるものです。
しかし警察へ被害届を出したとしても、貸したお金が返ってくるとも限りません。現実的には、戻ってくる可能性は低いと言わざるを得ないでしょう。
そこで、貸したお金が返ってこないときにはどうすればよいのか、困ったときの対処法について次の3つの章ごとに詳しく説明していきます。
- 借りたお金を返さなくても犯罪にはなりにくい
- お金を返してもらえないときの対処法
- 時効成立前の行動が重要
泣き寝入りしなければならなくなる前に、どのように対処するべきか考える参考にしてください。
目次 ▼
1章 借りたお金を返さなくても犯罪にはなりにくい
借りたお金を返さなかったとしても、実は「犯罪」にはなりにくいと考えられます。
銀行や消費者金融から借りたお金を返さないときや、友人や知人など個人間でのお金の貸し借りなど、借りたお金は本来返すべきです。
そのため犯罪として扱われにくいとはいうものの、絶対というわけでもありません。次の2つの責任において追及され、刑事上では犯罪が成立し逮捕起訴される場合もあります。
- 民事上の責任
- 刑事上の責任
2つの責任からどのような場合に犯罪が成立するのか説明していきます。
1-1 民事上の責任
お金の貸し借りは、法的には「金銭消費貸借契約」を結ぶことに該当するため、お金を借りた債務者は返済義務を負うことになります。
金銭消費貸借契約により決めていた期日までに返済しなかった場合、民事上の「債務不履行」という扱いになります。
ただし、返済しなかったことによる債務不履行は、借りたお金に対し「遅延損害金」を加えて返す責任を負うのに過ぎず、訴訟手続など法的手段で請求されるリスクはあってもこれが犯罪になるわけではありません。
1-2 刑事上の責任
お金を借りたのに返さない行為そのものや、返さないだけで直接刑法上の「処罰」の対象になることはありません。
警察に相談し、被害届を出したくても「民事」の扱いになると言われてしまい、受理されず犯罪が成立する可能性も低いと考えられます。
犯罪が成立しなければ債務者が逮捕・起訴されることもなく、お金を貸した側は泣き寝入りするしかありません。
しかし次のケースにおいては、刑法により犯罪が「成立」する可能性もあります。
- 返す意思がないのに嘘を言って借りたケース
- 借りていないと嘘をついているケース
- 強制的に踏み倒したケース
それぞれどのようなケースか説明していきます。
返す意思がないのに嘘を言って借りたケース
刑法により犯罪が成立する可能性があるのは、最初から返す意思がないのに「必ず返す」と嘘を言って借りたケースです。
相手からお金を受け取ることを目的に、返すつもりもないのに返すと騙せば「詐欺罪」が成立すると考えられます。
詐欺罪とは、人を欺むいて財産などを交付させたときに成立する犯罪であり、刑法に以下の規定がされています。
刑法第264条
第1項 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
その一方で当初は本当に返すつもりでお金を借りたのに、後々返済が厳しくなったため返さないという場合は詐欺とは認められず、詐欺罪の成立は難しいでしょう。
借りていないと嘘をついているケース
刑法により犯罪が成立する可能性があるのは、お金を借りたのに「借りていない」と嘘をついているケースは、「2項詐欺罪(詐欺利得罪)」に該当する可能性があると考えられます。
刑法246条
第2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
たとえば相手からお金を借りたのにもかかわらず、借金が存在しないと誤信させ、債権・債務が存在しないことを記載した合意書などに署名・押印させたという場合などが該当することになるでしょう。
強制的に踏み倒したケース
刑法により犯罪が成立する可能性があるのは、暴力などを用いて強制的に借金を踏み倒したケースです。
借金返済を請求され、本来であれば返さなければならないのに、相手を暴力などでねじ伏せて強制的に借金をなかったことにする行為などは「2項強盗罪」の対象になる可能性があります。
刑法236条
第1項 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
2章 お金を返してもらえないときの対処法
警察は本来的に刑事事件の捜査をする機関です。そのため、貸したお金を返してもらえないと警察に相談しても、犯罪と関係ない個人間の紛争には介入してもらえません。
警察は「刑事事件」を扱うため、犯罪と認められない日常的な個人同士の争いにまで立ち入ることはできないからです。
そのため警察を頼らず、債務者にお金を返してもらうように働きかけることが必要ですが、対処法としては次の4つが考えられます。
- メールや電話で連絡する
- 直接訪問して請求する
- 内容証明郵便で催促する
- 専門家に依頼して法的手段をとる
それぞれの対処法について説明していきます。
2-1 メールや電話で連絡する
貸したお金を返してもらえないとき、まずは「メール」や「電話」で連絡を取りましょう。
返済が遅れていることや返してほしいことを伝え、請求したことを記録として残しておくことも大切です。
2-2 直接訪問して請求する
メールや電話で連絡したものの、返信もなく電話にも出ないという場合には、相手の自宅を「訪問」し請求しましょう。
直接会って話すことで、お金を返して欲しいと切実に伝えやすくなります。
ただし、常識を外れた過度な回数の訪問や夜間・早朝など迷惑な時間帯の訪問は避けるようにしてください。
2-3 内容証明郵便で催促する
メールや電話、自宅への訪問などで請求しても返してくれない場合には、「内容証明郵便」で催促しましょう。
内容証明郵便とは、郵便局がいつ・どのような内容の文書を・誰から誰に対しだしたか謄本で証明する郵便です。
内容証明郵便に法的な拘束力はないものの、相手に心理的な「プレッシャー」を与えることができます。
内容証明郵便には次の「項目」を記載します。
- 表題
- 金額
- 期日
- 期日までに返済がなかった場合の措置
- 日付
- 債務者の住所・氏名
- 債権者の住所・氏名
請求したことを証明できるだけでなく、時効が成立しそうな場合には時効期間を6か月間延ばすこともできます。
2-4 専門家に依頼して法的手段をとる
内容証明郵便を使って請求しても、何の反応もなく返済する意思が感じられないときには、専門家に「法的手段」を依頼することも必要です。
貸したお金を返してもらいたいときの法的手段として、次の5つが挙げられます。
- 民事調停
- 支払督促
- 少額訴訟
- 通常訴訟
- 強制執行
自力で手続しようとせず、実効性を高めるためにも司法書士や弁護士などの専門家に依頼したほうが安心です。
それぞれどのような手続か説明していきます。
民事調停
「民事調停」とは、裁判所で勝ち負けを決めるのではなく、双方の話し合いで「合意」することに向けて解決を図る手続です。
「調停委員」が中立的な立場から双方の主張や言い分を聞き取り、問題の解決案を提示します。
話し合う余地があれば解決まで所要日数が短くなり、どちらも納得した形で解決することが期待できます。
支払督促
「支払督促」とは、裁判所から債務者に金銭を支払うように通知する手続です。
債務者の住所地を管轄している「簡易裁判所」に申立てを行い、請求の正当性が認められれば債務者に支払督促が送付されます。
2週間以内に「異議」の申立てがなければ、「確定判決」と同じ効力を持つこととなり、「強制執行」の申立てが可能になります。
なお、強制執行については後述します。
確定判決とは、上訴など通常の不服申立てで争うことができず取り消し不能状態となった判決です。
少額訴訟
「少額訴訟」とは、60万円以下の請求に限って利用できる手続で、1回の期日で審理を終えて判決することを原則とした訴訟です。
原則1回の期日で審理を終え判決に至るため、通常訴訟より迅速に判決を得ることができ、通常の訴訟と同じ効力を持ちます。
話し合いの途中で「和解」することも可能で、判決書または和解調書に基づき強制執行の申立てもできます。
ただし債務者が異議申立てした場合には、「通常訴訟」へ移行することになります。
通常訴訟
「通常訴訟」とは、個人間の法的な紛争の解決を求める訴訟です。
話し合いをしても解決できないときや、双方の言い分に食い違いがあるときなどは、通常訴訟で解決することになるでしょう。
当事者それぞれの主張は提出された「証拠」に基づいた判断が下されることになるため、「借用書」や「督促履歴」など厳格な証拠が求められます。
時間と費用がかかる手続であるものの、「勝訴」すれば債務者に返済が命じられることになり、返済がない場合には強制執行の申立てが可能です。
強制執行
「強制執行」とは、勝訴判決を得たときや裁判上の和解成立後に相手からお金の支払がないときなど、債権者の申立てに基づき債務者に対する「請求権」を裁判所が強制的に実現する手続です。
裁判所に申立て、強制的に債務者の預貯金など「差し押さえ」してもらうために行いますが、事前に預貯金口座や勤務先などの情報を把握しておくことが必要になります。
3章 時効成立前の行動が重要
お金を貸したまま返ってこない状態が続き、長期間放置しているといずれ「時効」を迎える可能性があります。
「時効」とは、一定の期間が経過したことにより権利が消滅することであり、借金返済を求める権利も時効により消滅します。
借金返済を請求する権利を「貸金債権」といいますが、民法による貸金債権の消滅時効は以下のいずれか早いタイミングとなります。
- 債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年間行使しないとき
- 権利を行使することができるときから10年間行使しないとき
返済期限ありでお金を貸した場合、時効は返済期限から「5年」で時効となります。
時効は一定期間が過ぎれば自動的に成立するわけではないものの、何も行動を起こさず5年放置すれば成立するリスクが高くなるため、成立する前に行動することが大切です。
まとめ
お金を貸したのに返ってこないときには、メールや電話、自宅訪問による催促をしましょう。
それでも返ってこない場合には、内容証明郵便で通知したり法的手続を取ったりなど、様々な方法があります。
警察に相談しても犯罪と認められなければ動いてもらえないことが多く、解決させることは困難と考えられます。
もしも貸したお金が返ってこないときや、音信不通になったため自身が借金で苦しい状態になっているという場合など、気軽にグリーン司法書士法人グループへのご相談ください。
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よくあるご質問
- 借りたお金を返さないのは犯罪になる?
- 借りたお金を返さなかったとしても、実は「犯罪」にはなりにくいと考えられます。
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- 貸したお金が返ってこない時の対処法とは?
- 貸したお金が返ってこない時の対処法は、下記の通りです。
・メールや電話で連絡する
・直接訪問して請求する
・内容証明郵便で催促する
・専門家に依頼して法的手段をとる
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