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- 教育ローンを自己破産した場合にどうなるのか
- 教育ローンを自己破産した場合のデメリット
- 自己破産した後に子供の教育費を用意する方法
- 自己破産のほかに借金の返済負担を軽減する方法
教育ローンは、ほかの借金と同様に自己破産の対象となりえます。自己破産をすれば、教育ローンを含むすべての借金から解放される可能性がありますが、その反面、さまざまなデメリットやリスクも伴います。
自己破産は債務整理の最終手段とされており、借金を全額免除する代わりに、自宅や財産の大部分を失うでしょう。しかし、自己破産以外の選択肢もあります。たとえば、任意整理や個人再生などの債務整理方法もあります
今回の記事では、教育ローンを自己破産する際の取扱い方法と、自己破産後に子供の教育費をどのように用意するかについて詳しく解説します。自己破産を検討している方や、自己破産後の教育資金の確保の参考となるでしょう。
目次 ▼
1章 教育ローンも自己破産できる
自己破産は、個人が返済不能な状況に陥った際に、裁判所を通じて債務を免除してもらう手続です。この手続は、住宅ローンやクレジットカードの借金だけでなく、教育ローンにも適用されます。
自己破産を申請する際には、裁判所に対して詳細な財務状況を報告し、免責の審査を受ける必要があります。ただし、免責が許可されるためには、債務者が真摯に返済の努力をしていた事実や、不正行為がないことが重要です。
免責が許可されれば、教育ローンもほかの債務と同様に、返済義務がなくなります。債務者は教育ローンを含むすべての借金から解放され、新たなスタートを切れるでしょう。
なお、自己破産とはそもそもどういうものかや、メリットおよびデメリット、手続およびその流れや事例などについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、参考にご覧ください。
2章 教育ローンを自己破産したときの取扱い
自己破産を申請すると、教育ローンを含むすべての債務が免責対象となり、返済義務が免除される可能性があります。
しかし、自己破産には厳しい審査が伴い、すべての債務者が免責を受けられるわけではないのです。特に、教育ローンに連帯保証人がいる場合、その保証人に返済義務が移るため、家族や友人に影響が及ぶケースがあります。
さらに、まったく返済をしていない場合や不正行為がある場合は、免責不許可事由に該当するおそれがあります。このように教育ローンの自己破産の取り扱いに関しては、特に注意が必要です。
また、自己破産後の生活再建は、専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めなければなりません。教育ローンを自己破産で処理する際の手続と、その影響について詳しく見ていきましょう。
なお、自己破産は生活保護を受けていても可能かどうかや、自己破産の生活保護への影響について、以下の記事で解説しています。そちらもぜひ、参考にご覧ください。
2-1 教育ローン含むすべての借金の返済義務がなくなる
教育ローンを自己破産で処理する場合、ほかの債務と同様に免責の対象となります。これは、自己破産手続を通じて、教育ローンを含むすべての借金の返済義務がなくなるのを意味します。
つまり、裁判所が免責を許可すると債務者は返済義務から解放され、家計全体の再建計画を立てやすくなります。それにより、経済的な負担が軽減され、新たなスタートを切れるでしょう。
ただし、免責が許可されるためには、一定の条件を満たす必要があります。たとえば、債務者が完全に返済不能に陥っているなどです。
なお、自己破産する際に、保有している財産はどこまで調べられるのかに関して、以下の記事で詳しく取り上げていますので、ぜひ参考にご覧ください。
2-2 保証人・連帯保証人がいれば返済義務が移る
教育ローンの自己破産手続では、債務に連帯保証人がいる場合、その返済義務が連帯保証人に移ります。つまり、自己破産により債務者自身は返済義務から解放されますが、連帯保証人に迷惑をかけるのは避けられません。
連帯保証人が返済を引き継ぐのは、人間関係に大きな影響をもたらす可能性があります。また、連帯保証人が自身の経済状況に不安を抱えている場合、その経済的な負担は過酷なものです。
そのため、教育ローンを自己破産する際には、連帯保証人と十分に相談し、理解と協力を得る必要があります。それにより、自己破産の影響を最小限に抑え、人間関係に支障をきたさないようにするのが賢明です。
なお、連帯保証人が簡単にやめられない件や、やめられるケース、請求されたときの対処法などについては、以下の記事で詳しく取り上げています。そちらも、ぜひ参考にご覧ください。
2-3 全く返済をしていないと免責不許可事由に該当するおそれがある
自己破産を申請する際、全く返済をしていない場合は、免責不許可事由に該当するおそれがあります。裁判所が債務者を、不誠実である、そもそも返す気がないなどと見なすからです。
免責不許可事由に該当すると、債務が免除されない可能性が高まります。返済計画の一部をすでに実行し、誠実に返済の努力を示してきた事実が重要です。
それにより、客観的に債務に対する誠意を示し、免責を受ける可能性を高められます。免責を確実に受けるためには、自己破産の手続前に専門家に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。
専門家である司法書士や弁護士のサポートを受けながら手続を進めれば、免責不許可事由に該当するリスクを下げられます。
なお、自己破産が認められない「免責不許可事由」に該当する要件の詳細と対処法については、以下の記事で詳しく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
3章 教育ローンを自己破産するデメリット
教育ローンを自己破産するのはメリットがあるものの、主に次に挙げるようなデメリットがあるのも事実です。
- 自己破産後7年間はローンの審査に通りにくくなる
- 自宅や不動産などの資産は没収されてしまう
- 自己破産手続中は一部の職業・資格の制限を受けてしまう
これらを理解したうえで自己破産を進めなければ、手続の最中に想定外の事態に陥り、困惑してしまいます。それぞれのデメリットについて、詳しく内容を見ていきましょう。
なお、自己破産は投資などによる借金でも可能かどうかや、自己破産が認められるケースについて、以下の記事で詳しく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
3-1 自己破産後7年間はローンの審査に通りにくくなる
自己破産後、7年間は信用情報機関に事故情報が登録されるため、新たなローンの審査に極めて通りにくくなります。この期間中、大きな出費が必要な場合に支障をきたすでしょう。
たとえば、これから大学進学を控えた子供がいる家庭では、教育資金の調達が困難になり、学費の支払いに大きな影響を及ぼします。
そのため、自己破産を選択する前に、将来の資金計画を十分に検討しなければなりません。自己破産後も再度経済的に立ち直るための支援策を利用し、できるだけ早く信用を回復する努力が求められます。
自己破産の影響を最小限に抑えるためには、早期に専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めるのが賢明です。
信用情報機関の事故情報については、以下の記事で取り上げています。信用情報の調べ方(開示請求手続の方法)もわかりやすく解説しているので、併せて参考にご覧ください。
3-2 自宅や不動産などの資産は没収されてしまう
自己破産を申請すると、自宅や不動産などの資産が没収されてしまいます。これらの資産は、債権者への返済に充てるために処分されるのが一般的です。
自宅を失うと新しい住居を探す必要があり、家庭の経済状況に非常に大きな影響を及ぼします。さらに、自己破産によって生活の基盤が大きく揺らぐため、心理的な負担も大きくなるでしょう。
そのため、自己破産を選択する際には、後述する個人再生や任意整理などの、ほかの債務整理方法と比較し、慎重に判断しましょう。資産を保護しながら債務を整理するためには専門家に相談し、最適な方法を選択する必要があります。
なお、自己破産の件数の推移や年代別の破産者の割合、破産理由などについては、以下の記事で詳しく取り上げていますので、ぜひ参考にご覧ください。
3-3 自己破産手続中は一部の職業・資格の制限を受けてしまう
自己破産手続中は、一部の職業や資格に制限がかかります。たとえば、士業(弁護士、税理士、司法書士など)や保険代理店、宅地建物取引士などの職業は、自己破産中は資格を一旦停止されるでしょう。
また、会社役員なども、自己破産により一旦その地位を失います。このように自己破産により、職業生活に、一時的に影響を及ぼす場合があるのです。
自己破産後の生活設計を考慮し、制限が解除されるまでの間の生活費や、再就職の準備を進める必要があります。自己破産を検討する際には、自身の職業や資格にどのような影響があるかを事前に確認し、必要に応じて専門家に相談しましょう。
なお、自己破産を行うと資格制限に引っかかるものの、手続に踏み切った女性のケースついて、以下の記事で詳しく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にしてください。
4章 自己破産後に子供の教育費を用意する方法
自己破産後も子供の教育費を確保するためには、資金調達の方法を検討する必要があります。自己破産をすると、一定期間は新たなローンを組むのが難しくなるでしょう。
それでも教育費を準備する手段は存在します。自己破産後に子供の教育費を用意する主な方法としては、次の3つが挙げられます。
- 公益財団法人教育資金融資保証基金を利用する
- 破産者以外が教育ローンの契約者・保証人となる
- 子供に奨学金を借りてもらう
これらの方法を活用すれば、自己破産後も子供の教育を継続するための資金を確保できます。それぞれの方法を、詳しく見ていきましょう。
4-1 公益財団法人教育資金融資保証基金を利用する
公益財団法人教育資金融資保証基金は、教育費を確保するための重要な支援機関です。この基金を利用すれば、自己破産後でも教育資金を調達できます。
公益財団法人教育資金融資保証基金は、教育ローンの保証を行い、金融機関からの借入を支援する基金です。それにより、自己破産後の家庭でも子供の教育を継続するための資金を確保できます。
この基金を利用するためには、一定の条件を満たす必要がありますが、多くの家庭で利用できるよう設計されています。たとえば、家庭の収入や財産状況に応じて支援を受けられるため、教育費の負担を大幅に軽減できるでしょう。
自己破産後の生活再建の一環として、このような基金を活用するのは、非常に有効な手段となります。
4-2 破産者以外が教育ローンの契約者・保証人となる
自己破産後、親が教育ローンを組むのが難しい場合、ほかの家族が契約者や保証人となる方法があります。たとえば、祖父母や叔父叔母が教育ローンの契約者となり、保証人として教育資金を確保する考え方です。
この方法を利用すれば、自己破産した親が借入できなくとも、子供の教育費をスムーズに調達できます。ただし、ほかの家族が保証人となる場合、信用情報が良好でなければなりません。
また、親族間での信頼関係が重要で、事前にしっかりと話し合い、協力を得るのが大切です。こうした方法を用いれば、自己破産後でも子供の教育を支えるための資金を確保し、安心して学びの環境を提供できます。
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4-3 子供に奨学金を借りてもらう
自己破産後、親が保証人になれない場合でも、子供自身が奨学金を借りられます。日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は、多くの学生に利用されており、親の経済状況にかかわらず、子供が学ぶための資金を確保する手段として非常に有効です。
奨学金には、親が保証人になる必要がない機関保証制度もあります。この制度を利用すれば、親の信用情報に影響されずに奨学金を利用可能です。
機関保証制度を利用すれば、将来の返済が滞った場合でも、保証機関が代位弁済を行います。それにより、親が自己破産で保証人になれないときでも、子供の教育を続けるための資金を確保し、将来の学びを支えられます。
なお、奨学金の返済計画や予算管理の方については、以下の記事で詳しく取り上げています。そちらも、併せて参考にお読みください。
5章 自己破産以外でも借金の返済負担を軽減できる
自己破産は債務整理の最終手段ですが、それ以外にも借金の返済負担を軽減する方法があります。任意整理や個人再生などの手続は、自己破産ほどの制約を受けずに債務を整理する手段として利用できます。
これらの方法を選択すれば、債務者は生活を立て直しながら返済を続けられます。任意整理は債権者と直接交渉し、返済計画の見直しを図ります。一方、個人再生は裁判所を介して、借金の減額や返済期間の延長を求める手続です。
任意整理や個人再生は、自己破産と比較して生活への影響が少なく、職業や資格の制限も受けません。また、自宅や不動産などの資産を維持しながら、債務を整理できる点も大きなメリットです。
この章では任意整理と個人再生について、掘り下げて見ていきましょう。なお、債務整理の主な種類ごとの特徴やメリット、デメリットを比較する際は、以下の表を活用してください。
債務整理の種類 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
特徴 | 裁判所を通さずに、債権者と直接交渉して借金の減額や返済計画の見直しを行う方法 | 裁判所に申立てを行い、借金の減額と返済計画の認可を得る方法 | 裁判所に申立てを行い、全ての借金を免除してもらう方法 |
メリット | ・手続が比較的簡単で費用が安い ・裁判所への申立て記録が残らない ・家族や勤務先に知られない | ・借金を大幅に減額できる ・住宅ローンや車ローンなどの財産を守れる ・将来、再び借金問題に陥る可能性が低い | ・借金が全て免除される ・新しい生活をスタートできる |
デメリット | ・減額できる金額は債権者との交渉次第 ・将来、再び借金問題に陥る可能性がある | ・裁判所への申立て記録が残る | ・裁判所への申立て記録が残る ・官報に永久に掲載される ・一定期間、クレジットカードやローンを利用できない ・一定期間、就業制限を受ける |
適したケース | ・債務額が大きくなく、将来的に返済できる見込みがある場合 | ・一定収入はあるが債務額が大きく、任意整理では難しい場合 | ・債務額が非常に大きく、他の方法では返済が難しい場合 |
5-1 任意整理
任意整理は、債務者が債権者と直接交渉して返済条件を見直す手続です。この方法では、裁判所を介さずに交渉を行うため、手続が比較的簡単で迅速に進む点が特徴です。
任意整理では、将来利息のカットや返済期間の延長など、債務者にとって有利な条件を取り決められます。それにより、月々の返済負担を軽減し、生活再建のための余裕を確保できるでしょう。
任意整理の最大のメリットは、自己破産のような財産の没収がなく、職業や資格への影響も少ない点です。さらに、任意整理を行えば信用情報に傷がつくのは避けられませんが、自己破産と比較するとその影響は軽度です。
しかし、任意整理の成功は債権者との交渉に依存し、交渉が難航する場合もあります。任意整理を検討する際には、経験豊富な司法書士や弁護士などの専門家のサポートを受けるのが賢明です。
なお、任意整理とはどういうものかや、任意整理が持つメリットとデメリット、向いている人や事例などについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、そちらも参考にしてください。
5-2 個人再生
個人再生は、裁判所を通じて介して、借金の減額や返済期間の延長を求める手続です。この方法は、自己破産と同様に債務を大幅に減額できる一方で、財産を保護しつつ返済を継続できる点が大きな特徴です。
個人再生では、再生計画を提出し、裁判所の許可を得られれば、借金の一部を免除され、残額の3年から5年の期間での返済が求められます。
個人再生においても、任意整理と同様に、自宅などの重要な財産を保持しながらの債務整理が可能です。加えて、個人再生手続を通じて、返済計画が法的に確定されるため、債権者からの取り立てに悩まされずに、安定した生活を取り戻せます。
しかし、個人再生の手続は複雑で、再生計画の提出など、多くの手続が必要となります。そのため、個人再生を検討する際には、司法書士や弁護士などの、専門家の支援を受けましょう。
専門家であれば、その人の状況に最も見合った債務整理を提案できます。
なお、個人再生とはどういうものかや、個人再生が持つメリットとデメリット、事例などについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、そちらも参考にしてください。
また、債務整理全般の種類と生活への影響に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
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まとめ
自己破産は、教育ローンを含むすべての借金から解放される一方で、信用情報に大きな影響を及ぼし、7年間は新たなローンの審査に通りにくくなります。また、自己破産手続中は一部の職業や資格に制限がかかり、自宅や不動産などの資産が没収される可能性もあります。
これらのデメリットを理解した上で、慎重な判断が大切です。さらに、自己破産以外にも借金の返済負担を軽減する方法として、任意整理や個人再生といった手段があります。
任意整理では債権者と直接交渉し、返済条件を見直して、返済負担を軽減します。一方、個人再生では、裁判所を通じて借金の減額や返済期間の延長を図ります。
また、自己破産後に教育費を確保する方法として、公益財団法人教育資金融資保証基金を利用する、破産者以外が教育ローンの契約者・保証人になる、子供に奨学金を借りてもらうなどがあります。
本稿でご紹介した情報を参考にして、最適な債務整理方法と教育資金確保の手段を選択し、将来の経済的安定につなげてください。
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