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「自己破産をすると、持っている財産を失ってしまうみたいだけれど、一体どこまで調べられるのだろう?」
このような疑問や不安を抱える方は多いでしょう。
自己破産をすると、全ての借金の返済が免除される代わりに必要最低限以外の財産は失ってしまいます。そのため、財産を失いたくない方にとってはネックとなり自己破産に踏み切れないという場合も。
「自己破産の際に財産がバレなければ…」とつい考えてしまう方もいるかと思います。
この記事では、自己破産の手続きでどこまで調べられるかを解説いたします。自己破産をしたいけれど、手放したくない財産がある方は必見です。
▼自己破産の全体的な流れについては以下の記事を参考にしてみてください。
目次 ▼
1章 自己破産の手続きでは何をどこまで調べられる?
自己破産の手続き時には、破産者本人の財産や借金額、借金の理由などを調べられます。
自己破産の手続きをし、免責を認めてもらうには借金の返済が不可能であることを証明しなければならないからです。
そのため、本人の財産や借金の金額などは徹底的に調べられると思って間違いないでしょう。
また、借金の理由によっては自己破産が認められないため、借金の理由に関してもあわせて徹底的に調査されます。
一方で、家族の財産や破産者本人の財産、借金以外に関する個人情報は調査対象とならないことが一般的です。
自己破産で調べられる項目は以下の3点になります。
- 破産者が所有している財産の調査
- 破産者の借金の内容の調査
- 免責に関する内容の調査
では、具体的にどういった調査が入るのかを順番に解説していきます。
①破産者が所有している財産の調査
破産者が持っている財産は、99万円以下の現金や差押禁止財産(衣類や家電など)以外のものは全て没収となります。
例えば、破産者が高級車を所有していたとしたら、最低限ではない財産と見なされ換価処分されてしまいます。
換価処分された財産がお金になった後は債権者に分配されます。
借金相当の金額は戻ってこない代わりに、破産者が持っている最大限のお金を債権者に分配するため、持っている全ての財産を調べる必要があるのです。
特に、車や時計、ジュエリーなど価値が付きそうな持ち物に関しては、状態や価値なども含めて徹底的に調べられるので注意が必要です。
また、マイホームを持っている場合は実際に現地調査が行われ、不動産鑑定人と裁判所の職員で物件を調査します。そのため、近所の人にバレてしまう可能性が高いので覚えておきましょう。
②破産者の借金の内容の調査
破産者が、どういったところからいくら借金をしていたのかを調べていきます。
調べられる内容は大きく分けて2つです。
- 債権者についての調査
- 各債権者の借金額の調査
借金先が個人・法人どちらなのか、債権者は何人(何社)なのか、誰にいくらずつ借りているのかなどを徹底的に調べられます。
ここから借金の総額が相違ないかを裏付けて、自己破産を認めるかどうかの判断材料になります。
また、自己破産が開始した後は、裁判所から「破産手続に関する意見聴取の通知」が債権者に送付されます。これは、債務者が破産することに対して何か意見はないか、全ての債権者に聞く手続です。
債権者に対する手続保障として非常に重要なものであるため、必ずどういう債権者がいるか、抜け漏れがないかを徹底的に調査する必要があります。
ここで注意したいのが、例え家族や恋人など親しい人物からの借金も必ず申告する必要があることです。特定の借金を隠す行為や優先して返済する行為が発覚すると、自己破産が認められない可能性があります。
手続きの段階で、少しでも借りている場合は必ず申告しましょう。
例外は闇金です。
闇金から借りている場合でも法律上は免除になります。しかし、利息の設定額や取り立て方法など、闇金は法律を守って経営していないため取り立てが止まない可能性が高いです。
自己破産したと伝えてもお構いなしに取り立てや嫌がらせが続くため、弁護士など専門家が個別に対応しなければいけません。長期化する傾向があるため、もし闇金からの借金がある場合は一刻も早く相談しましょう。
③免責に関する内容の調査
自己破産は、全ての借金を免除することができるため、債務整理の中で最も強力な手続きです。
財産を換価処分して分配するとはいえ、到底借金を完済できるほどの額ではないため、債権者は当然大赤字になります。
そのため、誰も彼も簡単に自己破産の手続きを認めることはできません。内容によっては、免責不許可となり自己破産が認められない場合もあります。
簡単に言うと、自己都合で借金を作り続けたり、反省の色が見えない人は免責不許可になりやすいです。
具体的な例を挙げるのであれば、
- ギャンブルや浪費などで借金をした
- 財産を隠したり裁判官を騙すような行為をした
- 破産申立てより1年以内に信用情報を偽って借金した
- クレジットカードで商品を購入して現金化した
- 自己破産をしてから7年以内の申し立て
- 裁判所や破産管財人に非協力的
などが挙げられます。
免責不許可になる要件に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
また、借金の理由だけでなく、本当に借金が返済できない状況なのかどうかも調べられます。
仕事の状況や退職金、社内積み立てなど財産逃ししていないかの調査や、家族のサポートがあるかどうかなども調べられます。
自己破産ができないケースに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
2章 所有財産はどうやって調べられる?
自己破産の手続きでは、裁判所へ現時点でどれくらい財産があるのかを書類提出し、書類の情報を元に調べていきます。ですので、この時点で確実に嘘偽りなく記載しなければなりません。
裁判所へ提出する書類は以下になります。
- 申立書
- 陳述書
- 債権者一覧表(債権調査票)
- 住民票(戸籍謄本)
- 家計の収支が確認できる書面
- 保有するすべての預金口座の通帳の写し
- 財産目録
- 該当する場合に必要となる書類
この必要書類を揃えることができなければ、自己破産の申し立てができません。ですので、まずは書類を作成することから始める必要があります。
必要書類を漏れなく作成するためにも、自分で進めずに司法書士などの専門家と一緒に進めましょう。
必要書類の集め方や内容については、以下の記事で詳しく解説しています。
2-1 財産の調査方法
専門家が書類を揃えて申立書類を作成し、申し立てた後は裁判所による財産の調査に移ります。
ここで、財産が発覚した場合は没収され換価処分となります。
所有財産の調査方法は、
- 破産申立時に破産者が提出した書類の調査
- 破産管財人による事情聴取
- 財産の調査
- 破産者宛てに届いた郵送物の確認
を同時並行で行われます。
提出した必要書類に不備がないかや嘘の情報を書いたりしていないかを調べ、問題なさそうであれば破産管財人が債権者に裏付けを取るなどで本当に嘘偽りないかを更に調べていきます。
財産の調査では、現地調査や持っている財産がどれほど価値があるのかを調べていき、破産者宛てに届いた郵送物を確認して財産や借金を隠していないかをチェックします。
途中の調査で隠しきれたとしても、破産者宛てに届いた郵送物の確認をすることで郵便物から高額な商品の買い物の明細や口座の開通がバレてしまうケースも多いです。
2-2 財産調査は破産管財人が行う
同時廃止手続の場合は書面審査だけで終わるので、書面上で財産が漏れている可能性があれば追加説明をするように連絡が入ります。
一方、管財事件の場合は破産管財人が中心となって財産調査をすることになります。
破産管財人とは裁判所から任命された弁護士のことで、破産者の代わりに債権者に対し弁済や配当を行ってくれます。
破産管財人は、破産財団の事業譲渡や商品の一括売却をしたり、破産者に宛てた郵便物や書類、通帳の閲覧が可能です。また、債権や有価証券の譲渡や動産の売却も行なっていきます。
破産管財人は相当に強力な権限がありますが、裁判所や債権者、そしてある面では破産者が監督になり職務を行うためご安心ください。
また、管財人自身も破産手続に精通している弁護士であり、法律の専門家です。しっかりとしたサポートを受けるためにも誠実な対応を心がけましょう。
もし、厳しい破産管財人がついてしまった場合の対処法は、以下の記事で詳しく解説しています。
3章 どうしても財産隠しをしたい!バレない方法はない?
「徹底的に調べられると言っても全て調べるのは無理だと思うし、何だかんだバレないのでは?」と思うかもしれません。
確かに、所有財産を調べると言っても、マイホームがない限りは自宅へ乗り込んで家宅捜索を行うわけではありません。
ですが、破産管財人は調査のプロです。バレない方法は100%ないと言っても過言ではないでしょう。
ここからは、財産隠しをしたい場合のよくある隠し場所と、なぜ財産隠しをしてもバレるのかを合わせて解説していきます。
①タンス預金で現金を隠す
残念ですが、タンス預金をしたところで100%バレます。
タンス預金のお金は、現状口座に入っていなくても元々は通帳にあったお金です。口座から引き落としをした形跡が残ってしまうため、タンス預金をしていたとしても通帳内でお金が動いた時点でバレてしまいます。
ですので、もし口座にお金がなかったとしても「この引き落としたお金は何に使いましたか?」と問い詰められるのです。
②動いている現金口座を隠す
こちらも100%バレてしまいます。
必要書類の中には、給与明細、賞与明細なども含まれているため、入ってきたお金と出ていったお金が合っていない場合はすぐに分かります。提出した銀行口座からお金を引き落とした場合、何に使うために引き落としたのかを説明する必要があります。
仮に別の口座にお金を移動したのであれば、調べればすぐに分かってしまいます。過去1〜2年の通帳の履歴を調べるため、その間にお金のやり取りが発生した場合はまず隠せないでしょう。
③親や友人に財産を預かってもらう
一見、価値のあるものでもお金ではないのでバレないかと思いますが、こちらも100%バレます。
なぜなら、クレジットカードやカードローンの履歴、口座引き落としなどで多額のお金が動いた形跡が分かるからです。
ここで借金の理由と辻褄が合わない場合や、引き落としの理由が言えない場合はあっという間に調べられます。換価処分ができるほどの財産を購入した場合、覚えていないはずがありませんよね。
中には、クレジットカードやカードローンの督促状が郵便物として届いてしまい、バレてしまったケースもあります。現金ではないからと高を括っていてもバレてしまうのです。
④不動産や自動車を一時的に名義変更する
自己破産前に故意で名義変更した場合は、100%バレてしまいます。
なぜなら、自己破産を申し立てる際に、過去2年以内に名義変更や贈与等を行ったのであれば記載する必要があるからです。
ここの時点で名義変更後にすぐに自己破産の申し立てをしたことが発覚するため、真っ先に財産隠しを疑われるでしょう。
もし、やむを得ず名義変更をせざるを得なかった場合は、名義変更の理由を正直に説明しましょう。認められない可能性があるからと言って、黙っておくと自己破産が認められない可能性があります。
例え、正直に話すと自己破産するのに不利になりそうな理由だとしても、後々バレるリスクの方が大きいです。どんな理由でも必ず正直に話しましょう。
⑤保険や投資の払い戻しをする
当然ですが、100%バレてしまいます。
保険も投資も払い戻しは口座内で行われます。そのため、現金を引き落としてタンスに隠そうが、口座にまとまったお金が動く限りは必ず調査対象になります。
また、投資したお金や毎月引き落とされた保険料は口座で確認することができるので、どのみち加入していたことはバレてしまいます。
そうなると「解約した後に払い戻ししたお金はどうしました?」と問い詰められバレてしまいます。
⑥生前贈与や財産分与などで財産を渡す
口座のお金が動いたり、名義変更を行うため、このケースも当然100%バレます。
「どうせ遺産を失うのであれば、先に生前贈与しておきたい」という気持ちは分かります。しかし、自己破産をすると判断した後に財産を渡すのは、財産隠しと見なされてしまいます。
破産法でも、無償で財産を処分する生前贈与に関して否認が認められています。
破産法 第百六十条第三項
破産者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる
引用:破産法
しかし、破産法の記載のように、破産者の支払の停止の後またはその前6ヶ月以内に生前贈与をする場合は認められるケースもあります。
6ヶ月より前に生前贈与を行った場合は、専門家へ忘れずに報告しておきましょう。
4章 財産隠しがバレたら免責不許可事由になり自己破産ができない
財産隠しがもし発覚した場合「反省していない」「嘘の情報を話して有利に進めようとしている」と見なされ自己破産ができなくなってしまいます。
破産法でも、財産隠しは免責不許可事由の対象になると定められています。
破産法 第二百五十二条第一項
債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
引用:破産法
財産隠しは、債権者への配当が減ってしまい債権者への公平さが失われるため、自己破産以上に財産隠しは重く受け止めます。
また、自己破産ができないだけでなく「詐欺破産罪」という犯罪に該当するケースもあります。
破産法 第二百六十五条
破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。
一 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し、又は損壊する行為
二 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
三 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
四 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為
引用:破産法
簡単に言うと「債権者が平等に配当が受けられない行為を行った」と判断されたら詐欺破産罪が成立してしまいます。
詐欺破産罪が成立した場合、
- 10年以下の懲役
- 1000万円以下の罰金
- 10年以下の懲役と1000万円以下の罰金の両方
が課せられてしまいます。
自己破産が認められないと、元々ある借金に加えて罰金も更に支払う必要が出てきてしまいます。
ですので、リスクを背負ってでも財産隠しをするメリットは1つもありません。
また、財産隠しが発覚した場合は、協力者も詐欺破産罪が成立することがあるので注意が必要です。
例え破産者から「自己破産でどうせ没収されちゃうし、私のジュエリー譲ってあげるよ」と言われたとしても、必ず断るようにしましょう。思わぬ形で借金を背負わないためにも、覚えておいて損はありません。
4-1 免責不許可事由を隠しても同様に自己破産ができない
自己破産ができないケースとしては、財産隠しだけでなく免責不許可事由を隠す行為も該当します。
- 本当はギャンブルで借金を作ったけれど家計のために借金したことにした
- 贅沢のしすぎで借金を作ったけれど自分の会社の経営が苦しいことにした
など、本来であれば免責不許可事由になる理由だけれど、認められないのを恐れ別の理由を作って自己破産しようとした場合が挙げられます。
当然ですがこちらも財産隠し同様に、裁判官に嘘の情報を教えていることになるため「反省していない」「不誠実だ」と捉えられます。
ここで覚えておきたいのは、免責不許可事由だからと言って絶対に認められないわけではないことです。ケースによっては裁判所の裁量で認められる場合もあるため、必ず本当のことを正直に話しましょう。
5章 残しておきたい財産がある場合は専門家に相談を
「自己破産したいけれど、どうしても残しておきたい財産がある」という方は、財産を隠す方向ではなく専門家に残しておきたい旨を伝えるようにしましょう。
例えば、子どものために積み立てておいた学資保険やジュニアNISA、親のために加入している保険など様々な事情があるかと思います。
そういった場合の救済措置として「自由財産拡張」があります。自由財産拡張を使うと、99万円以下の現金と生活必需品以外にプラスして財産を手放さなくて済みます。
もちろん、自由財産拡張は裁判官に認めてもらう必要があるため難しいと言えますが、今後生活するのにおいてどうしても必要な理由があれば承認される可能性もあります。
自由財産拡張の申し立ては早ければ早いほど良いので、依頼したい場合は専門家に自己破産の相談をした段階で伝えておくことをおすすめします。
5-1 財産が多い場合は個人再生も視野に
中には、マイホームに車に土地に…手放したくない財産が多いという方もいるのではないでしょうか。
自己破産は相当の理由がない限り、必要最低限の財産以外は全て失ってしまいます。
ですので、全て思い通りに財産を残すということはできません。
もし、手持ちの財産を失いたくない場合は個人再生を検討するのも手です。
個人再生は借金を返済する必要がありますが、手放したくない財産を残したまま借金を大幅に減額できます。毎月給料が貰えるなど、少しでも返済能力があるのであれば、視野に入れてみてはいかがでしょうか。
残しておきたい財産と現状の借金を把握した上で専門家に相談し、どちらが適切かアドバイスを受けるのをおすすめします。
6章 自己破産は徹底的に調べられるので財産隠しは不可能!
結論、自己破産の際に財産隠しをするのは不可能です。
相手は、相当数の自己破産の手続きに携わってきたプロです。バレないと思っていてもあっという間に調べられてしまいます。
もし財産隠しが発覚した場合、自己破産できなくなるだけではなく、10年以下の懲役か1000万円以下の罰金、もしくは両方が課せられてしまいます。
自己破産は人生の再スタートのチャンスでもあります。この機会を不意にしてまで財産隠しをするメリットは全くありません。
どうしても残しておきたい財産がある場合は、隠すのではなく専門家に相談して残す方法を取りましょう。
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よくあるご質問
- 自己破産で財産隠しはできる?
- 自己破産時の裁判所の調査は徹底しているため、財産隠しを行うことはできません。
自己破産時の財産隠しについて詳しくはコチラ
- 自己破産で財産隠しをするとどうなる?
- 財産隠しは免責不許可事由の対象になると定められおり、自己破産ができなくなってしまいます。
自己破産時の財産隠しについて詳しくはコチラ