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債務整理には「個人再生」という手続きがあります。債務整理をご検討の方は聞いたことがあるのではないでしょうか。
実は、「個人再生」には
- 小規模個人再生
- 給与所得者再生
の2種類があります。
個人再生の手続きをする人のほとんどは「小規模個人再生」を選択します。
それは、小規模個人再生のほうが大きな減額が可能だからです。
ただし、場合によっては小規模個人再生を選択することができず、給与所得者再生を選択せざるを得ないケースもあります。
この記事では、
- 小規模個人再生とは
- 小規模個人再生と給与所得者再生の違い
- 小規模個人再生のメリット・デメリット
- 小規模個人再生以外の債務整理
について解説します。
目次 ▼
1章 小規模個人再生とは?
小規模個人再生とは個人再生手続きの一種であり、収入や財産が不足して借金の返済が困難な人が、裁判所に認可を受けた上で、借金を5分の1〜10分の1に減額し、原則3年で返済する再生計画を立てる手続きです。
個人再生には、「小規模個人再生」の他に「給与所得者再生」というものがありますが、小規模個人再生のほうが結果的に借金の減額率が高くなることが多く、メリットが大きいため、ほとんどの方が小規模個人再生を選択します。
ただし、ケースによっては小規模個人再生が選択できず、給与所得者再生を選択せざるを得ないこともあります。
小規模個人再生と給与所得者再生を比較しながら、詳しく見ていきましょう。
小規模個人再生か給与所得者等再生のどちらの申し立てにするかは慎重に検討する必要がございます。 どちらの申し立てにすべきかは司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
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1−1 小規模個人再生と給与所得者再生の違い
横スクロールできます
小規模個人再生 | 給与所得者再生 | |
要件 | ・安定した収入の見込みがある ・住宅ローン以外の債務総額が5,000万円以下 | ・安定した収入の見込みがある ・住宅ローン以外の債務総額が5,000万円以下 ・給与などの定期収入の見込みがあり、その変動幅が少ない |
職業形態の制限 | ・給与所得者 ・自営業者 | ・給与所得者 |
債権者による承認(不同意の権利) | あり | なし |
弁済金額 | 以下のうちいずれか高い方 ・最低弁済額 ・清算価値 | 以下のうちいずれか高い方 ・最低弁済額 ・清算価値 ・可処分所得の2年分 |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
要件
個人再生では、手続き後も借金が残り、それを原則3年で返済しなければいけないため、どちらにも以下のような条件があります。
- 安定収入の見込みがある
- 住宅ローン以外の債務総額が5,000万円以下
しかし、給与所得者は小規模個人再生よりも「収入の安定性」については厳しく取り決められており、
- 給与などの定期収入の見込みがあり、その変動幅が少ない
という条件が加えられています。
職業形態の制限
「小規模個人再生」「給与所得者再生」と並べると、「給与所得がある人は給与所得者再生をしなければいけない」と思うかもしれません。
しかし、給与所得者であっても「小規模個人再生」を選択することはでき、実際ほとんどの方が小規模個人再生を選択しています。
一方で、「給与所得者再生」は「給与所得があること」が要件にあるため、個人事業主の方は選択できません。
債権者による承認
「小規模個人再生」と「給与所得者再生」の大きな違いが債権者による承認の有無です。
とはいえ、この承認によって小規模個人再生ができなくなるケースはほとんどありません。
小規模個人再生をする際、債権者の半数以上または債権額の過半数以上が、債務者が個人再生をすることに異議を唱えた場合、小規模個人再生をすることができなくなります。
具体的には、再生計画案を出した後、裁判所が債権者に対して「この計画案に反対の者は書面で意見を出しなさい」という旨の書面付議通知を送ることになりますが、ここで意見を出す債権者はほとんどいないのが実情です。
弁済金額
弁済金額も、「小規模個人再生」と「給与所得者再生」の大きな違いの一つです。
個人再生では「弁済金」といって、手続き後に返済していく金額を決定します。
小規模個人再生では、この弁済額を以下のうちいずれか高い方で決めます。
- 最低弁済額
- 清算価値
一方で、給与所得者再生の場合、これに「可処分所得の2年分以上」というものが加わります。
可処分所得とは、給与から社会保険料や税金などを差し引いた金額で、いわゆる「給料の手取り」「額面」と言われるものです。
例えば、月収25万円の人の可処分所得は約20万円ですので、2年分の可処分所得となると240万円になります。
実際にはもっと複雑な、しかし定型的な計算によって算出されますが、「可処分所得の2年分以上」は最低弁済額や清算価値よりも高額になることが多いため、弁済額が小規模個人再生よりも高額になる可能性があり、給与所得者再生が選ばれにくい所以でもあります。
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「最低弁済額」「清算価値」「可処分所得」とは?
どんなに財産が少なくても最低限返済をしなければいけない金額で、借金の総額に応じて定められます。
具体的には以下のとおりです。
所有する財産を現金化した場合の金額で、基本的に20万円以上の財産がこれに計上されます。
計上される財産の例は以下のとおりです。
99万円までの現金
残高20万円以下の預貯金
見込み額20万円以下の生命保険解約返戻金
査定額が20万円以下の自動車
居住する賃借物件の敷金
支給見込み額の8分の1が20万円以下の退職金
家財道具
その他,差押えを禁止されている財産
なお、計上される内容は、各地の裁判所ごとに異なります。
例えば、大阪地裁の場合は、現金以外の財産は20万円未満であっても一律にで清算価値として計上する運用となっています。
申し立てをする地裁の運用についての詳細は、各地の司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
個人再生をするための条件について詳しく知りたい方はこちらを御覧ください。
2章 小規模個人再生のメリット
小規模個人再生は給与所得者再生よりもメリットが大きく、ほとんどの人が選択していることは説明しましたが、では、他の債務整理と比べた時にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、小規模個人再生のメリットについて解説します。
2−1 借金を大幅に減額できる
小規模個人再生では、借金を5分の1から10分の1程度に減額することができます。
借金を大幅に減額することができるため、月々の負担も減り、計画的に返済することが可能です。
2−2 家や車を残すことができる
自己破産の場合、家や車など価値のある財産は、債権者への返済に充てるために没収されてしまう可能性が高いですが、小規模個人再生では、家や車などの財産を残したまま借金を減額することが可能です。
詳しくはこちらの記事をご覧ください
2−3 ギャンブルなどが原因の借金でもできる
自己破産には、ギャンブルや過剰な浪費などを原因とした借金など、借金を免責できない要件が複数もうけられており、それに該当する場合は認められない可能性があります。
一方で、個人再生には借金の原因に制限はありませんので、ギャンブルなどが原因であっても手続きが可能です。
3章 小規模個人再生のデメリット
小規模個人再生にもデメリットがあります。
ここでは小規模個人再生のデメリットについて解説します。
3−1 借金がすべてなくなるわけではない
小規模個人再生では、自己破産のように借金を全額免除することはできません。
借金は5分の1から10分の1になりますが、それでも手続き後に借金は残り、先3年間は返済を続けなければいけません。
3−2 返済額が増える可能性がある
住宅ローンの残債よりも自宅の査定額が大幅に高い場合や、生命保険金の解約返戻金が高額の場合など、所有している財産が高額になると「清算価値」が高額になります。
そのため、場合によってはそれほど借金が減額されないようなケースもあるのです。
しかし、小規模個人再生では原則として3年間で返済しなければいけません。(状況によっては5年まで延長することは可能)あまり減額できなかった借金を3年間という短期間で返済するとなると、月々の返済額が手続前より高額になることもあります。
返済額が高額になってしまっては、手続き前よりも返済が厳しくなり、本末転倒になってしまうでしょう。
そのような方は、自己破産の検討をおすすめします。
グリーン司法書士法人では、あなたのご状況に適した債務整理の方法をご提案します。
債務整理についてお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
【具体例① アンダーローンの場合 】
アンダーローンとは、住宅ローンの残額よりも住宅の査定価値が高いことをいいます。【住宅ローン残額<住宅の査定額=アンダーローン】
- 住宅ローン残額 500万円
- 自宅の査定価値 1,000万円
- その他財産 40万円
- 借金総額 1,000万円
- 住宅ローン残額と自宅の査定価値との差額500万円が財産価値に上乗せされる
- その他財産と合わせて、財産総額は540万円
- 借金総額ベースで考えると圧縮率が1/5なので200万円
- 財産総額540万円と圧縮後債務200万円とで多い方の540万円が返済額となる
→借金が約1/2にしかならない結果となります。また、540万円を3年36回分割で返済するので、月の返済額は15万円にもなってしまいます。
【具体例② 自動車を残したいため車ローンを支払った場合 】
オーバーローンの場合は、自宅の価値は査定額とローン残額の差額を若干(5%程度)目減りさせて算定します。
- 住宅ローン残額 1,000万円
- 自宅の査定価値 1,200万円
- 自動車ローン返済 150万円
- 退職金 240万円
- 借金総額 900万円
- このケースでは、自宅の価値は140万円となります。
- 手続中の返済は偏頗弁済としてそのまま財産額に載せられるので、150万円加算
- 退職金は1/8に圧縮するので30万円
- 以上より、財産総額は320万円となります。
- 借金総額ベースで考えると圧縮率が1/5なので180万円
- 財産総額320万円と圧縮後債務180万円とで多い方の320万円が返済額となる
→借金が約1/3にしかならず、月の返済額は約9万円に上ります。
3−3 手間と時間がかかる
小規模個人再生の手続きは、再生計画案の提出が必要など、他の債務整理に比べて複雑と言われています。
法律の専門知識が必要な場面も多く、司法書士などの専門家の力を借りなければ難しいでしょう。
そのため、小規模個人再生をする場合にはほとんどの方が専門家に依頼することとなります。
また、口座の履歴や給与明細、課税資料、家計簿など多くの資料が必要であり、書類集めにもかなりの手間と時間を要します。
個人再生に必要な書類についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
3−4 ブラックリストに載る
小規模個人再生だけでなく、自己破産や任意整理などの債務整理をすると、「金融事故」として信用情報機関、いわゆるブラックリストに情報が登録され、借金やクレジットカードの作成・使用ができなくなります。
ブラックリストの情報は、一定期間経過すれば消えますが、いつ消えるかどうかは明確ではありません。
信用情報機関は「CIC」「JICC」「KSC」の3つがあり、「CIC」は信販会社・クレジットカード会社、「JICC」は消費者金融・クレジットカード会社、「KSC」は全国の銀行が加盟しています。
それぞれの情報登録期間は以下のとおりです。
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信用情報機関 | 事故情報の登録期間(目安) |
CIC | 任意整理・個人再生・自己破産共に5年以内 |
JICC | 任意整理・個人再生・自己破産共に5年以内 |
KSC | 任意整理は5年以内、自己破産・個人再生は7年以内 |
3−5 連帯保証人・保証人に影響が出る
小規模個人再生に限りませんが、債務整理をすると連帯保証人・保証人は借金の支払い義務を背負うこととなります。
しかも、連帯保証人・保証人には一括請求される可能性が高いため、連帯保証人・保証人も同時に個人再生や自己破産をしなければいけなくなってしまうことは珍しくありません。
このように、連帯保証人・保証人に迷惑をかけることは留意しておく必要があるでしょう。
保証人への影響についての詳しい解説はこちら
3−6 官報に掲載される
小規模個人再生をすると、官報という国が発行している機関紙に氏名と住所が掲載されます。
裁判所内の書店などでしか販売されず、一般に公開されることはないため、知り合いに知られるようなことはほとんどありませんが、闇金業者のような違法業者が情報を取得して連絡が来る可能性があるので注意が必要です。
官報についての詳しい解説はこちら
5章 借金でお困りならグリーン司法書士法人にご相談を
小規模個人再生は、前述したとおり手続きが複雑で、自身で行うことは非常にむずかしいでしょう。
グリーン司法書士法人では、小規模個人再生をはじめとした債務整理を多数取り扱っており、経験が豊富です。
ご依頼いただければ、迅速かつスムーズに対応いたしますので、ぜひご相談ください。
また、初回の相談料は無料ですので、お気軽にご利用いただけます。
個人再生に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。
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よくあるご質問
- 小規模個人再生の適用要件は?
- 小規模個人再生の適用要件は、下記の通りです。
安定した収入の見込みがある
住宅ローン以外の債務総額が5,000万円以下
給与所得者再生と異なり、小規模個人再生は毎月の収入に幅のある自営業者でも適用可能です。
小規模個人再生の適用要件について詳しくはコチラ
- 小規模個人再生の流れとは?
- 小規模個人再生も個人再生同様に、以下の流れで進みます。
相談・契約
費用の支払い
受任通知
債権調査
申立書作成
申立て・追完
開始決定
債権届出・異議申述
再生計画案作成・提出
書面付議決定意見聴取手続開始決定
認可決定
精算
返済
個人再生および小規模個人再生の流れについて詳しくはコチラ