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投資を原因に多額の借金を負ってしまい、自己破産を検討されている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、投資による借金はギャンブルなどと同様に免責不許可事由に該当し、自己破産が認められない恐れがあります。
とはいえ、投資による借金すべてが自己破産できないわけではなく、裁判所による個別の判断で自己破産を認めてもらえる可能性もあります。
そのため、投資による借金を自己破産したい場合は、まずは借金問題に詳しい司法書士や弁護士に相談するのが良いでしょう。
この記事では、投資による借金でも自己破産は可能なのか、自己破産ができないケース、自己破産を認めてもらうためのポイントなどについて解説します。
目次 ▼
1章 投資による借金でも自己破産は可能?
投資による借金は自己破産が認められないと聞いたことはある方もいらっしゃるでしょう。
実際、投資による借金は、免責不許可事由という、破産法における「借金の免責を認めない要件」に該当します。
一方、免責不許可事由に該当していたとしても裁判所の判断で免責が認められることも往々にしてあります。
ここでは、投資による借金の自己破産の可否について詳しく解説します。
免責不許可事由一般の説明はこちらの記事をご覧ください。
1−1 投資による借金は免責不許可事由に該当する
前述した通り、投資による借金は免責不許可事由に該当します。
免責不許可事由とは借金の免除を認めてもらえない要件で、以下の項目が破産法で決められています。
- 借金を返さないためにわざと財産を隠したり、財産価値を下げる行為
- 特定の債権者だけに偏って返済する行為
- クレジットカード決済で商品を購入し、それを売るなどして換金する行為
- ギャンブルや、投資、不要なショッピングなどによる浪費行為
- 自己破産をする前提で新たに借金をする行為
- 裁判所に嘘の債権者一覧や借金額など虚偽の報告をする行為
- 過去7年以内に自己破産をしている
投資による借金は上記4の浪費行為に該当することとなります。
1−2 裁判所の判断で免責が認められる可能性もある
免責不許可事由に該当しても、裁判所の判断で免責を認められることはあります。これを「裁量免責」と言います。
そもそも自己破産は借金で苦しい思いをしている人を救済する制度であるため、頭ごなしに「投資が原因だからダメ」と認めずにいると、自己破産の制度が機能しなくなってしまいます。
そのため、投資が原因であっても裁量免責によって自己破産が認められることは往々にしてあります。
2章 投資による借金で自己破産が認められないケース
前章では、投資による借金だとしても裁量免責で自己破産が認められることも多いと説明いたしました。
しかし、裁量免責でも認められないことも当然あります。
具体的には、以下のようなケースです。
- 他にも免責不許可事由がある
- 過去7年以内に自己破産をしている
- 手続き中に投資をした
それぞれ詳しく解説します。
2−1 他にも免責不許可事由がある
投資以外にもギャンブルをしていたり、自己破産をする前提で投資に高額なお金をかけていたりと、複数の免責不許可事由に該当するような場合には免責が下りない可能性が高いと言えます。
ギャンブルだけでなく、たとえば偏頗弁済が高額に過ぎていたり、わざと一部の債権者を除外したりすると免責は下りなくなるでしょう。
2−2 過去7年以内に自己破産をしている
投資による借金に関わらず、過去7年以内に自己破産をしている場合、基本的に自己破産は認められません。
そもそも、自己破産の要件に「過去7年以内に自己破産をしていないこと」という要件があるからです。
とはいえ、破産の原因が全く違う場合などは、真摯に反省をすれば免責を得られる可能性もあるにはあります。
2−3 手続き中に投資をした
自己破産の手続き中に投資をすることはご法度です。
自己破産手続きが開始されたあとの財産(給与など)は自由に使うことができます。しかし、また投資をしたとなれば、裁判所からの心証はよくありません。
「投資が原因で自己破産をしたのに、また懲りずに投資をするのか」と思われ、裁量免責が下りなくなる可能性が高くなります。
また、投資による借金の場合、自己破産の手続きにおいて破産管財人が選任されることがほとんどです。破産管財人は破産者のお金の流れを逐一チェックしていますので、隠れて投資をしようとしてもバレる可能性が高いでしょう。
そのため、自己破産手続き中には決して投資をしないようにしてください。
3章 投資による借金で自己破産を認めてもらうポイント
投資による借金でも自己破産を認めてもらうためには、以下のことを心がけましょう。
- 手続き中は投資を一切行わない
- 嘘をつかない
- 誠実に対応する
それぞれ解説します。
3−1 手続き中は投資を一切行わない
前章でも解説しましたが、手続き中に投資をするのはNG。裁判所からの心証が悪くなり、裁量免責が下りなくなってしまいます。
そのため、手続き中は一切投資を行わないようにしましょう。
もちろん、投資以外のギャンブル等も一切禁止です。破産者であることをしっかりをわきまえた行動を心がけましょう。
3−2 嘘をつかない
「投資が原因の借金だと自己破産ができない」という思い込みから、裁判所に対して「投資はしていたけど、借金の原因は投資ではありません」といった嘘の申告をする人がいらっしゃいますが、それは逆効果です。
裁判所へは、投資の話以外のことも含め、すべて正直に話すようにしましょう。
万が一嘘をついたとしても、手続きをする上で裁判所はお金の流れを詳細にチェックしますので、いずれ辻褄が合わなくなりバレてしまう可能性があります。
嘘をついていることがバレてしまうと、免責を認めてもらえなくなる可能性が高いですので、自己破産をする際には決して嘘をつかないようにしましょう。
3−3 誠実に対応する
嘘をつかないことはもちろん、手続きをする上で裁判所や後述する破産管財人への対応を誠実に行うことが重要です。
当たり前のことですが、「期限内に書類を提出する」「裁判所からの連絡に応対する」など、裁判所の調査にしっかりと協力するようにしてください。
書類を期限内に出さず、裁判所へ悪い態度を取っていると「反省の色が見えない」と判断され、免責が認められなくなる可能性があります。
4章 投資が原因の借金は自己破産費用が高くなる可能性がある
自己破産の手続きには大きく分けて「同時廃止」「管財事件」の2種類です。
破産法上、破産管財人が選任される「管財事件」が原則とされますが、免責をする上で裁判所が特段問題がないと判断した場合には「同時廃止事件」として処理されることがあります。
しかし、投資による借金の場合には免責不許可事由に該当しており、一般的にその金額も高額であることから「管財事件」として処理されることがほとんどです。
同時廃止の手続きは費用が1〜5万円、期間は準備期間含めて半年程度なのに対し、管財事件の場合には費用が50万円、期間が1年程度。管財事件は同時廃止に比べ費用も手間もかかるのです。
それぞれを比較した表を以下にまとめましたので参考にしてみてください。
同時廃止 | 条件 | 財産額が20万円未満 |
費用相場 | 裁判所での手続き費用:1〜5万円 専門家への依頼費用:25〜35万円程度 | |
手続き期間 | 準備期間:2〜6ヶ月 手続き期間3〜4ヶ月 | |
管財事件 | 条件 | 以下のいずれかにあてはまること ・財産額が20万円以上 ・法人の代表や個人事業主 ・債務額が5000万円以上 ・免責不許可事由に関する調査が必要 ※最終判断は裁判所による |
費用相場 | 裁判所での手続き費用:50万円〜 専門家への依頼費用:35万円〜 | |
手続き期間 | 準備期間:3〜6ヶ月 手続き期間:6ヶ月以上 ※債務・財産状況などにより変わる |
同時廃止、管財事件それぞれの詳細については以下の記事を御覧ください。
5章 投資をしている人が自己破産をするリスク
自己破産をすることで借金の返済義務を免除してもらえますが、その分以下のようなリスクもあります。
- 所有している財産が処分される
- クレジットカードの利用・作成や新たな借入ができなくなる
- 住所・氏名が官報に載る
- 連帯保証人・保証人が借金を肩代わりすることになる
- 手続き中、一部の職業が制限される
- 手続き中、引っ越しや旅行に制限がかかる
それぞれ詳しく解説します。
5−1 所有している財産が処分される
自己破産をすると、ほぼすべての借金の返済を免除する代わりに、破産者自身が所有している財産はお金に替えられて、債権者に分配されます。
所有している不動産(持ち家など)や、99万円以上の現金などは失う可能性が高いでしょう。当然、株や海外通貨も処分の対象となります。
なお、自己破産後も手元に残せる財産もあり、それを自由財産と呼びます。
自由財産の基準は各裁判所で異なりますが、東京地裁では以下のように定められています。
- 破産手続開始後に取得した財産(新得財産)
- 法律で差押えが禁止されている財産
- 99万円以下の現金
- 裁判所が自由財産拡張を認めた財産
- 破産管財人が破産財団から放棄した財産
また、裁判所に自由財産の拡張が認められれば、以下の財産も残すことが可能になります。
- 残高が20万円以下の預貯金
- 見込額が20万円以下の生命保険解約返戻金
- 処分見込額が20万円以下の自動車
- 居住用家屋の敷金債権
- 電話加入権
- 支給見込額の8分の1相当の額が20万円以下の退職金債権
- 支給見込額の8分の1相当の額が20万円を超える退職金債権の8分の7に相当する額
- 家財道具
5−2 クレジットカードの利用・作成や新たな借入ができなくなる
自己破産に関わらず、債務整理をすると、信用情報機関に事故情報が登録され(いわゆる「ブラックリスト」です)、情報が削除されるまでの期間以下のようなことができなくなります。
- クレジットカードの利用・新規作成
- 新たな借入
- 住宅ローンやカーローンなど各種ローンの利用
- スマートフォン本体の分割払い
信用情報機関には「CIC」「JICC」「KSC」の3種類あり、それぞれ加盟している機関や事故情報の登録期間が異なります。具体的には以下のとおりです。
信用情報機関 | 加盟機関 | 事故情報の登録期間(目安) |
CIC | 信販会社・クレジットカード会社 | 5年以内 |
JICC | 消費者金融・クレジットカード会社 | 5年以内 |
KSC | 全国の銀行 | 7年以内 |
上記で分かる通り、ブラックリストに事故情報が登録されると、借金の完済・解約から5〜7年間は情報が残るということです。
なお、自己破産前に3ヶ月以上返済を滞納している場合にはすでにブラックリストに情報が登録されています。また、自己破産以外の債務整理であってもブラックリストへの登録は避けられません。
5−3 住所・氏名が官報に載る
自己破産をすると、官報という国が発行する機関紙に破産者の氏名や住所が掲載されます。
とはいえ、官報を逐一チェックしている人は非常にまれですので、官報が原因で周囲の人にバレることは考えにくいでしょう。
しかし、会社が官報の破産者情報チェックしているようなケースもあるので、バレてしまう可能性は0ではありません。
5−4 連帯保証人・保証人が借金を肩代わりすることになる
借金に連帯保証人や保証人がついている場合、自己破産をするとその人たちが債権者から一括請求を受けます。借金額によっては、連帯保証人・保証人も自己破産を余儀なくされるでしょう。
自身が自己破産をすることによって迷惑を掛ける人がいるということは理解しておかなければいけません。
連帯保証人・保証人がいる場合には、手続きをする前にきちんと伝えておくようにしましょう。
5−5 手続き中、一部の職業が制限される
自己破産の手続き中、一部の職業・資格が制限されます。お金を取り扱う職業・資格は制限される傾向にありますので注意が必要です。
なお、制限されるのは手続き中のみです。手続きが終了すれば制限は解除されますので、仕事に復帰することができます。
以下に、制限される職業・資格の一例を列挙していますので参考にしてください。
- 証券外務員
- 商品投資販売業
- 商品投資顧問業
- 金融商品取引業
- 警備員
- 宅地建物取引士
- 生命保険外交員・募集人
- 貸金業会社の取締役
- 不動産鑑定士
- 弁護士
- 司法書士
- 税理士
- 公認会計士
- 社会保険労務士
- 旅行業
など
5−6 手続き中、引っ越しや旅行に制限がかかる
自己破産の手続きが管財事件になった場合、引っ越しや旅行に制限がかかることがあります。引っ越し・旅行の際には、都度裁判所に許可をもらわなければいけません。
特別な事情のない引っ越しや、娯楽のための旅行は認められない可能性が高いでしょう。
一方、転勤や家賃を安く抑えるための引っ越し、冠婚葬祭を目的としたやむを得ない遠征などであれば認められるやすい傾向にあります。
なお、破産手続きが終了すればこの制限はなくなります。
6章 投資による借金で自己破産が認められない場合の選択肢
本記事で解説したように、投資による借金は免責不許可事由に該当する恐れがあります。
万が一、免責不許可事由により自己破産が認められなかった場合は、①任意整理や②個人再生など別の債務整理も検討しましょう。
本章では、任意整理および個人再生の特徴を解説します。
6-1 任意整理
任意整理とは、司法書士や弁護士が債権者と交渉し、将来の利息をカット(減額)し、3年〜5年程度で分割払いするよう計画する手続きです。
裁判所を介して手続きをしないため、自己破産に比べて手続きが簡単であり、資産を失うリスクもないため最も多く活用されています。
また、自己破産と異なり任意整理には免責不許可事由はなく、債権者が合意すれば返済負担を軽くしてもらえるのもメリットといえるでしょう。
一方で、任意整理は将来発生する利息をカットする、分割返済のリスケジュールをするだけで借金の元金そのものを減額することは難しいです。
また、任意整理を行う際には債権者が交渉に納得してくれるだけの安定した収入も求められます。
そのため、借金の金額や収入によっては、任意整理が難しいケースや任意整理では借金問題を解決できない恐れもあることを理解しておきましょう。
6-2 個人再生
個人再生は、裁判所に再生計画の認可を受けた上で借金を大幅に減額し、3~5年間で返済するよう計画を立てる手続きです。
自己破産のように借金がすべてなくなるわけではありませんが、家などの財産を残せる可能性があります。
自己破産と比較した場合の個人再生のメリットは、マイホームを残しつつ借金問題を解決できる点です。
個人再生には、住宅資金特別条項があるため条件を満たせば、マイホームを残した状態で借金を減額可能です。
住宅資金特別条項を利用すれば、住宅ローンに関しては個人再生の手続き後も従来通りの支払いスケジュールで返済できるようになります。
ただし、住宅資金特別条項を利用するには要件を満たす必要があるので、すべての人が利用できるわけではありません。
いずれにせよ、借金問題に詳しい司法書士や弁護士であれば、投資による借金の自己破産が認められそうかどうかやどの債務整理が適しているかを判断可能です。
借金の自力返済が難しいと感じた時点で、専門家に相談するのが良いでしょう。
7章 投資が原因の借金ならグリーン司法書士法人にお任せください
投資が原因の借金は、免責不許可事由に該当するため手続きが複雑になります。一般の方が一人で手続きをするのは難しいでしょう。
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よくあるご質問
- 投資している人が自己破産するデメリットとは?
- 投資している人が自己破産するデメリットは、下記の通りです。
・所有している財産が処分される
・クレジットカードの利用・作成や新たな借入ができなくなる
・住所・氏名が官報に載る
・連帯保証人・保証人が借金を肩代わりすることになる
・手続き中、一部の職業が制限される
・手続き中、引っ越しや旅行に制限がかかる
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