差押えで持っていかれるもの・持っていかれないもの｜回避方法とは？

差押えの対象となって持っていかれるものと、そうでない財産を知るのは、債務者にとって重要です。差押えが行われる際に、どの財産が持っていかれるのか、またどの財産が保護されるのかを理解しておけば、予期せぬ損失を避けられます。

差押えは法的手続にもとづいて行われ、債務者の財産が強制的に回収される手段です。しかし、すべての財産が差押えの対象となるわけではありません。

たとえば、生活に必要な最低限の現金や家財道具、信仰に関わる物品などは保護されています。一方で、給料や預貯金、不動産などは差押えの対象となるため、適切な対策が求められます。

今回の記事では、差押えの対象となる具体的な財産と、その回避方法について詳しく解説します。差押えを回避するための具体的な手段や、保護される財産の詳細についても触れますので、ぜひ参考にしてください。

1章　差押えで持っていかれるもの

差押えの対象となりやすい財産には、基本的に換金性が高いものが含まれます。これらは現金化しやすいため、債権者が迅速に回収できる資産として目をつけられるのです。

特に給料や預貯金は、差押えの優先対象です。債務者の勤務先が発覚するのは、申込時の申告か財産開示請求などからです。預貯金口座も、同様に金融機関からの情報提供や取引履歴から特定されます。

差押えの対象となる財産が多岐にわたるため、債務者は自身の資産を適切に管理し、必要に応じて専門家の助言を求めるのが肝要です。それにより、予期せぬ差押えによる生活の困難を避けられます。

この章では差押えの対象となる、次の4項目について、詳しく見ていきます。

• 給料
• 預貯金
• 換金できる財産
• 不動産

なお、差押えの強制執行や差押えの対象外となるものは何かについて、以下の記事で詳しく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にしてください。

1-1　給料

給料は差押えの対象となりやすい財産のひとつです。差押え命令が裁判所から発行されると、債務者の勤務先に通知が送られます。それにより、債務者の給料から一定額が差し引かれ、債権者に支払われるでしょう。

通常、差押え対象となるのは手取り額のうち一定割合であり、生活に必要な最低限の金額は保護されますが、それでも生活に大きな影響を与える場合があります。

借金による差押えの場合、給与の手取り額（所得税、住民税、社会保険料を差し引いた後の額）の4分の1が差押え上限額となります。ただし、手取り額の4分の3が33万円を超えていれば、その超過部分が差押えの対象です。

給料差押えが行われると、債務者の勤務先に借金問題を知られる事態となり、職場での立場が事実上不利になる可能性もあります。そのため、差押えの前に債権者と交渉し、分割払いなどの返済計画を立てるのが賢明です。

給与差押えの手続を避けるためには、早期の対応と専門家のアドバイスが不可欠です。それにより、債務整理をスムーズに進め、生活への影響を最小限に抑えられます。  

なお、差押えが原因で会社をクビになるのは違法であることや、不当解雇時の対処法について、以下の記事で詳しく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にしてください。

なお、給与の差押えは個人再生の申立てで解除されるかどうかや、強制執行停止までの流れについて、以下の記事で詳しく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にしてください。

1-2　預貯金

預貯金は、差押えの対象として一般的です。差押え命令が発行されると、金融機関に対して差押えの通知が送られます。それにより、債務者の預貯金口座が凍結され、指定された金額が債権者に支払われるでしょう。

預貯金の差押えは、迅速かつ確実に債務の一部を回収する手段として利用されますが、債務者にとっては生活資金が一時的に利用できなくなるという大きなデメリットがあります。

預貯金が差押えされると、生活費や緊急時の支出に困る事態に陥るかもしれません。そのため、事前に債権者と返済計画を協議し、預貯金の差押えを避ける方法を探るのが大切です。

また、複数の口座を持って、全額が一度に差し押さえられるリスクを分散する手段もあります。差押えが予感されるみなさんは、専門家の助言を受けながら、差押えに対する対策を講じておきましょう。

1-3　換金できる財産

換金できる財産も差押えの対象となります。たとえば、株式や債券、貴金属、車両などです。これらの財産は、容易に現金化できるため、債権者が迅速に回収できる資産として優先されます。

差押え手続が開始されると、これらの財産は法的に保全され、債務者は自由に処分できません。特に、車両などの高価な資産は、競売などで売却され、債務の返済に充てられます。

換金できる財産の差押えを避けるためには、債権者と事前に返済計画を協議するのが重要です。また、必要に応じて弁護士などの専門家に相談し、法的手続を適切に進めるのがよいでしょう。

差押えが行われると、生活や事業運営に大きな影響を及ぼす可能性があるため、早期の対応が不可欠です。それにより、資産の保全と生活の安定を図れます。

なお、差押えから競売までの流れや、競売にかけられないための対策ついて、以下の記事で詳しく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にしてください。

1-4　不動産

不動産も差押えの対象として重要です。不動産差押えは、裁判所の命令にもとづき行われ、債務者の所有する土地や建物が対象となります。

不動産は高価な資産であり、売却によって大きな返済資金を確保できるため、債権者にとって非常に有利な手段です。差押えが行われると、不動産の所有権が制限され、売却や賃貸が制限されます。

不動産の差押えを回避するためには、債権者との返済計画の協議が必要です。また、不動産が生活の基盤である場合、差押えによって住居を失うリスクがあるため、早期の段階で専門家に相談し、適切な対策を講じるのがよいでしょう。

それにより、差押えによる生活の混乱を防ぎ、債務整理をスムーズに進められます。不動産差押えは重大な影響を及ぼすため、計画的な対応が不可欠です。

なお、差押えを解除する手続とはどういうものか、その方法や期限について、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、参考にご覧ください。

2章　差押えで持っていかれないもの

上記のように差押えで持っていかれない、主な項目は次のとおりです。

• 66万円以下の現金
• 生活に必要不可欠な家財道具
• 生活に必要な3ヶ月分の食料・燃料
• 配偶者が結婚前から所有している財産
• 仕事に欠かせない道具・器具
• 信仰や礼拝の対象になるもの

個別に内容を、詳しく見ていきましょう。

2-1　66万円以下の現金

日本の法律では、差押えが行われても66万円以下の現金は自由財産として保護されます。これは、生活に必要な最低限の現金を確保するための措置であり、受給者が生活の基盤を失わないようにするためです。

この保護措置により、債務者は差押え後も基本的な生活費の維持ができます。しかし、66万円を超える現金がある場合、その超過分は差押えの対象です。

この制度は、債務者にとっての急な出費や生活費の確保に役立ちます。特に、予期せぬ差押えが行われた場合でも、一定額の現金が手元に残れば、日常生活に大きな支障をきたす事態を避けやすくなるでしょう。

したがって、差押えが予想される場合には、現金の管理を適切に行い、必要な生活費の確保が大切です。

なお、家計が困窮して税金が払えない場合の差押えについて、以下の記事で解説しています。ぜひ、参考にご覧ください。

2-2　生活に必要不可欠な家財道具

差押えの対象外となる生活に必要不可欠な家財道具には、家具や家電製品などの日常生活に欠かせない物品が含まれます。これらの家財道具は、債務者が生活を維持するために必要なものです。

差押えが行われても持っていかれないよう法律で保護されているのは、たとえば、冷蔵庫や洗濯機、ベッドなどの基本的な家具や家電製品などです。

差押えによって生活に必要な家財道具がなくなると、債務者の生活が一層困難になるため、これらの物品は特に保護されています。これらが残れば、債務者は差押えの際にも、生活を続けられるようになっています。

2-3　生活に必要な3か月分の食料・燃料

差押えが行われても、生活に必要な3か月分の食料や燃料は対象外となります。債務者が差押え後も、基本的な生活を維持できるようにするための重要な保護措置です。3か月分の食料や燃料が確保されれば、日々の生活が途絶えずに続けられるようになります。

この措置は、生活の安定を保つために欠かせないものです。特に、寒冷地に住む人々にとっては、燃料の確保が重要です。燃料が差押えの対象外となるので、暖房や調理のためのエネルギー源を失うリスクが避けられます。

また、食料の確保により、差押え後も安心して生活を続けるため、債務者の生活基盤が守られます。それにより、差押え後の生活の混乱を最小限に抑えられるでしょう。

2-4　配偶者が結婚前から所有している財産

配偶者が結婚前から所有している財産は、債務者の差押えの対象外です。これは、結婚前に取得した財産は夫婦の共有財産ではなく、個人のものであり、債務者の借金とは無関係であるという法律上の原則にもとづいています。

そのため、配偶者が結婚の前から所有してきた財産は、債務者の借金による差押えから保護されます。たとえば、配偶者が結婚前に購入した不動産や自動車、あるいは貯金などです。

この保護措置により、配偶者の財産が差押えの影響を受けないで維持されます。結婚後の共有財産とは異なり、そのまま保護されるため、配偶者の生活基盤が守られるでしょう。

なお、車が差し押さえられるケースや、差押えを回避する方法については、以下の記事で詳しく解説しています。そちらも併せて、ご覧ください

2-5　仕事に欠かせない道具・器具

仕事に欠かせない道具や器具も差押えの対象外です。これは、債務者が差押え後も仕事を続け、収入を得られるようにするための重要な措置といえるでしょう。

この保護措置は、差押え後の生活再建を支援するために設けられています。仕事に必要な道具が差押えされると、債務者の収入源が失われ、生活が一層困難になるため、これらの道具は特に保護されています。

たとえば、職人や技術者が使用する工具や農業用の機械など、仕事に必要不可欠な道具が該当します。それにより、債務者は職業活動を継続し、安定した収入を得られるでしょう。

債務者が差押え後も仕事に欠かせない道具・器具を持ち続けられれば、安定した収入を得られ、生活の再建がより現実的なものとなります。

2-6　信仰や礼拝の対象になるもの

信仰や礼拝の対象となるものも、差押えの対象外とされています。これは、宗教的な自由を保障するための措置です。差押えによって信仰生活が妨げられるのを防ぐため、信仰や礼拝のために必要な物品が、保護されています。

たとえば、聖書や仏具、神棚などです。それにより、債務者は差押え後も変わらず信仰生活を続けられます。

信仰や礼拝は多くの人々にとって精神的な支えとなる重要な要素であり、これを失うのは生活の質を大きく低下させるおそれがあります。そのため、信仰に関する物品は特に保護されており、債務者が安心して信仰生活を続けられるでしょう。

ただし、換金性が高く投機対象となりえる純金の仏具などは、場合によっては持っていかれる可能性があります。

3章　差押えが行われるまでの流れ

差押えが行われるまでの具体的な流れは以下のとおりです。

• STEP①支払い督促の開始
• STEP②支払い督促状の送付
• STEP③仮執行宣言の取得
• STEP④差押え命令の発行
• STEP⑤差押えの実行

それぞれを詳しく見ていきましょう。

STEP①　支払い督促の開始

債務者が返済を滞納すると、債権者はまず電話や郵便で督促を行います。この段階では、支払いを促すための通知や連絡が行われます。

STEP②　支払い督促状の送付

督促に応じない場合、債権者は裁判所を通じて支払い督促状を送付します。これは法的な文書であり、指定された期日までに返済を行うよう要求します。

STEP③　仮執行宣言の取得

支払い督促状に応じない場合、債権者は裁判所に仮執行宣言の申請を行います。仮執行宣言が認められると、債権者は差押え手続を進められます。

STEP④　差押え命令の発行

仮執行宣言の後、裁判所は差押え命令を発行します。この命令により、債務者の財産に対して差押えが行われます。

STEP⑤　差押えの実行

差押え命令が発行されると、実際に債務者の財産が差し押さえられます。具体的には、給料、預貯金、不動産などが対象です。この段階で、差押え対象の財産は凍結され、債権者に引き渡されます。

これらのステップを経て差押えが正式に行われ、債務者の財産が債権者に引き渡されるのです。

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4章　差押えを回避する方法

差押えを事前のアクションにより、回避する主な方法は次の3つです。

• 債権者に相談する
• 家族や親族などに借金を返済してもらう
• 債務整理する

それぞれの方法を、詳しく見ていきましょう。

4-1　債権者に相談する

差押えを回避するための最も基本的な方法のひとつは、債権者への直接の相談です。借金の返済が困難な状況にある場合、債権者に対して現状を正直に説明し、返済計画の見直しや分割払いの提案を行うのが重要です。

多くの債権者は、差押えや法的手続にかかる費用や時間を回避したいと考えているため、交渉に応じてもらえる可能性があります。早期に相談すれば、差押えのリスクを減らし、柔軟な返済条件を設定できるでしょう。

債権者との交渉は、一見難しいように思えるかもしれません。しかし、誠実に返済の意思を示し、具体的な返済プランを提示すれば、理解を得られる場合が多いです。

また、債権者も借金の全額を回収するのが難しいと判断した場合、分割払いの提案や返済期間の延長に同意する場合があります。重要なのは、返済が難しくなった段階で早めに行動し、債権者に相談する姿勢です。

それにより、差押えを未然に防ぎ、経済的な困難を軽減できます。

4-2　家族や親族などに借金を返済してもらう

差押えを回避するもうひとつの方法として、家族や親族に借金の返済を支援してもらう方法があります。特に大きな金額の借金がある場合、一時的に家族や親族に助けを求めて、差押えを防げるでしょう。

家族や親族の支援を受ける際には、借りたお金をどのように返済するのか、明確な計画を立てておくのが重要です。それにより、家族との信頼関係を維持しながら、経済的な困難を乗り越えるための協力が得られます。

また、家族や親族からの支援を受ければ、金融機関からの借り入れに比べて、無利子や低金利での支援を受ければ、将来の返済負担を大幅に軽減可能です。

さらに、差押えによる財産の喪失を防げるので、生活の安定を保てます。家族や親族に相談する際には、現状を正直に説明し、感謝の気持ちを忘れずに伝えるのが大切です。

4-3　債務整理する

債務整理は、差押えを回避するための有効な手段のひとつです。債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の3つの方法があります。

債務整理を行う場合は、専門家である司法書士などの専門家に相談するのが賢明です。専門家は債務整理の手続をサポートし、最適な解決策を提案してくれます。

また、債務整理を行えば差押えリスクを軽減し、生活の再建を図れます。専門家の支援を受けての債務整理であれば、法的手続の複雑さを解消し、安心して問題解決に取り組めるでしょう。

早期に行動すれば、差押えのリスクを最小限に抑えられます。

債務整理を依頼すると、専門家が代理人となり、債権者からの督促を止められます。債務整理の主な種類ごとの特徴や差押えの扱い、メリット、デメリットについては、以下の表にわかりやすくまとめてあります。

債務整理の種類	任意整理	個人再生	自己破産
特徴	裁判所を通さずに、債権者と直接交渉して借金の減額や返済計画の見直しを行う方法	裁判所に申立てを行い、借金の減額と返済計画の認可を得る方法	裁判所に申立てを行い、全ての借金を免除してもらう方法
差押えの扱い	・交渉に依存するので差押えされるケースもありえる	・個人再生手続開始決定により差押えはできなくなる ・開始決定以前に強制執行中止命令の獲得によっても差押を止められる	・自己破産開始決定により差押えはできなくなる ・開始決定以前に強制執行中止命令の獲得によっても差押を止められる
メリット	・手続が比較的簡単で費用が安い ・裁判所への申立て記録が残らない ・家族や勤務先に知られない	・借金を大幅に減額できる ・住宅ローンや車ローンなどの財産を守れる ・将来、再び借金問題に陥る可能性が低い	・借金が全て免除される ・新しい生活をスタートできる
デメリット	・減額できる金額は債権者との交渉次第 ・将来、再び借金問題に陥る可能性がある	・裁判所への申立て記録が残る	・裁判所への申立て記録が残る ・官報に永久に掲載される ・一定期間、クレジットカードやローンを利用できない ・一定期間、就業制限を受ける
適したケース	・債務額が大きくなく、将来的に返済できる見込みがある場合 ・任意整理の詳細・解決事例はコチラ 　　　　↓ 借金をなくせる任意整理とは？メリット・デメリットや向いている人 任意整理の経験談・解決事例	・一定収入はあるが債務額が大きく、任意整理では難しい場合 ・個人再生の詳細・解決事例はコチラ 　　　　↓ 小規模個人再生とは｜給与所得者再生との違いやメリット・デメリット 個人再生の経験談・解決事例	・債務額が非常に大きく、他の方法では返済が難しい場合 ・自己破産の詳細・解決事例はコチラ 　　　　↓ 自己破産とは？メリット・デメリットや手続きの流れを徹底解説 自己破産の経験談・解決事例

債務整理の種類と生活への影響に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。

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まとめ

差押えで持っていかれる対象となる財産には、給料、預貯金、換金できる財産、不動産などがあります。これらの財産は、債権者が迅速に回収できるため、差押えの優先対象となるわけです。

一方、66万円以下の現金や生活に必要不可欠な家財道具、生活に必要な3か月分の食料・燃料などは差押えの対象外として保護されています。それにより、債務者の基本的な生活を維持できるでしょう。

差押えを回避するための具体的な方法としては、債権者に相談して返済計画の見直しを提案する方法、家族や親族に借金を返済してもらう方法、そして債務整理を行う方法などが挙げられます。

債権者との交渉や専門家の助言を受ければ、差押えのリスクを減らし、生活の安定を保てるでしょう。特に、債務整理は法的な手続を通じて借金の返済負担を軽減する有効な手段です。

差押えが予想されるほどの借金問題を抱えておられるみなさんは、早めにこれらの手段を検討し、適切なアクションを起こすのが望ましいでしょう。

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