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- 個人事業主が個人再生を利用する際のチェックポイント
- 個人事業主が個人再生を利用するメリット
- 個人事業主が個人再生を利用する際の注意点
個人再生とは、裁判所に借金返済が難しいことを認めてもらうと、原則3年で計画的に返済できる借金額に減額できる債務整理方法です。「そもそも個人事業主は個人再生できるのか」「個人再生をした後も事業を継続できるのか」といった疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、個人事業主でも個人再生は可能ですが、その後に事業を継続できるかは事業の状況によって異なります。
本記事では、個人事業主が個人再生をする際のチェックポイントやメリットを解説します。条件や注意点も説明しているので、ぜひ参考にしてください。
目次 ▼
1章 個人事業主でも個人再生できる!利用する際のチェックポイント3選
冒頭でも述べた通り、個人事業主でも個人再生をして借金問題の解決を目指せます。ただし、手続きを進められなかったり、そもそも借金額が減らなかったりする恐れがあるため、事前に以下のポイントを確認しましょう。
- 事業を継続するかどうか
- 負債総額はどのくらいか
- リース物件の取り扱いをどうするか
ここではそれぞれの内容を詳しく解説します。
1-1 事業を継続するかどうか
個人事業主が個人再生を利用する際に、必ず考えるべきなのが事業を継続するかどうかです。安定収入が欠かせない個人再生を利用するにあたっては、どのようにして収入を確保するかを提示する必要があるためです。
事業がうまくいかず借金が膨らんでしまった個人事業主は、事業を継続する場合は安定収入が期待できないので、個人再生を利用できない恐れがあります。経営不振が理由で借金の返済が滞っているならば、会社員になって給与所得を受け取ることも検討しましょう。
しかし、感染症や世界情勢の変動によって一時的に経営状況が悪化した場合であれば、事業を継続したうえで個人再生を利用できる可能性があります。
1-2 負債総額はどのくらいか
個人再生は負債総額が5,000万円以下でないと利用できないため、利用を検討している場合は負債総額を確認してください。
事業性融資を受けている個人事業主の場合、買掛金やプライベートの借金(住宅ローンを除く)によって負債総額が5,000万円を超えているかもしれません。
個人再生で減額を希望する借金総額が5,000万円以上の場合は、より複雑な民事再生の手続きを行う必要があります。個人再生と比較すると多大な手間と費用がかかるため、負債総額が大きくなりすぎる前に手続きを開始しましょう。
1-3 リース物件の取り扱いをどうするか
事業に必要な機器類をリース契約によって調達していた場合は、リース物件の取り扱いについても確認しましょう。個人再生後も事業を継続するのであれば、リース物件の継続契約が必要な可能性があるためです。
自己破産と違い、個人再生ではリース料金を支払っている方は、借金減額後もリース物件を使用可能です。またリース料金が未払いでも、別除権協定という制度によってリース物件を使用し続けられます。
ただし、別除権協定を利用するためには、リース業者と継続契約に関して合意して裁判所の許可を得る必要があります。そのため、個人再生を行う前にリース物件の取り扱いを決定して準備を進められるようにしておきましょう。
2章 個人事業主が個人再生を利用するメリット
個人事業主が個人再生を利用するメリットは以下の通りです。
- 借金額が大幅に減る
- 借金の原因は基本的に問われない
- マイホームを手放す必要がない
ここではそれぞれについて詳しく解説しましょう。
2-1 借金額が大幅に減る
個人再生を行うことによって借金額は5分の1(最大で10分の1)になるため、借金問題の解決が見えてきます。減額後は原則3年(最長5年)で完済を目指し、計画的に返済していくことになります。
例えば1,000万円の借金がある場合、個人再生を利用することで借金額を200万円まで減額可能です。200万円を36か月で分割する計算になるので、毎月約5万5,500円ずつ返済すると完済できます。
利息のカットがメインの任意整理と違い、借金額を大幅に減らせるのが個人再生のメリットです。
2-2 借金の原因は基本的に問われない
借金を帳消しにする自己破産では、ギャンブルや投機取引による借金は免責不許可事由に該当し、手続きを進められないことがあります。しかし、個人再生では借金の原因を問われないため、問題なく個人再生できます。
なお、個人事業主が利用する小規模個人再生では、債権者の半数以上または債権額の過半数以上が異議を唱えると手続きを進められません。特定の民間債権者、政府系金融機関は反対するケースがあるため、個人再生できないリスクを把握しておきましょう。
2-3 マイホームを手放す必要がない
個人再生には住宅資金特別条項(住宅ローン特則)という制度があるため、マイホームを手放す必要がありません。住宅資金特別条項とは、利用条件を満たす場合に住宅ローンの返済を続ければ、マイホームに住み続けたまま借金を整理できる制度です。
ただし、以下の状況では住宅資金特別条項を使用できず、マイホームが競売にかけられる可能性がある点に注意が必要です。
- 住宅の資産価値が住宅ローンの残債よりも高い
- 2件以上の住宅ローンを抱えている
- 借り換え時に資金使途が住宅ローンの支払いではなくなっている
- マンション購入のために組んだ住宅ローンを滞納している
- マンション管理費を滞納している
マイホームを残して現在の生活を維持したまま借金を減らしたい方は、住宅資金特別条項の条件を満たしているか確認して個人再生の手続きを進めましょう。
3章 個人事業主が個人再生をする際の条件
以下の条件を満たしていない場合、個人事業主は個人再生できません。
- 負債総額が5,000万円以下に収まっている
- 継続的または反復した収入の見込みがある
- 小規模個人再生の場合は債権者の半数以上または債権額の過半数以上の反対意見がない
チェックポイントでも解説していますが、負債総額が5,000万円以上になると、より大きな手間と費用がかかる民事再生をする必要があります。また、個人再生では5分の1に減額した借金を3年で計画的に返済していくため、継続的または反復した収入の見込みがあることも必須条件です。
個人再生には、給与所得者再生と小規模個人再生がありますが、個人事業主は小規模個人再生しか利用できません。小規模個人再生のみ、債権者の半数以上または債権額の過半数以上の反対意見があると、個人再生を利用できなくなってしまう点に注意が必要です。
4章 個人事業主が個人再生を利用する注意点
マイホームに住み続けながら借金問題の解決を目指せる個人再生ですが、個人事業主が利用する際は以下の点に注意が必要です。
- 必要書類が多いケースがある
- 事業を継続する場合は個人再生できない恐れがある
- 高額な資産を保有している場合は返済額が増える可能性がある
ここではそれぞれについて詳しく解説しましょう。
4-1 必要書類が多いケースがある
収入の安定性に欠ける傾向がある個人事業主は、「申し立ての際に継続的または反復した収入の見込みがあること」を証明しなければなりません。そのため、会社員が個人再生をする場合よりも必要書類が多いケースがあります。
会社員は源泉徴収票で収入の状況を明確にできますが、個人事業主は確定申告書のほか、申立て前6か月間の事業収支表・収支予定表の提出を求められるかもしれません。
また、書類の記載内容についても、給与所得者より詳しく質問されるケースが多いです。説明内容に説得力がないと個人再生が認められない恐れもあるため、書類を用意する際に事業内容や将来性などについて説明できるように準備しておきましょう。
4-2 事業を継続する場合は個人再生できない恐れがある
個人事業を継続する場合、基本的に個人再生はできません。なぜなら、返済が難しい借金を抱えるほどの事業は成功しているとは言えず、個人再生をした後も返済の目途が立たないためです。
事業の継続が難しい場合は、「継続的または反復した収入の見込みがある」という条件を満たすために、安定した給与収入を稼げる会社員になっておく必要があります。給与所得者となることで、小規模個人再生か給与所得者再生かを選択することもできるようになります。
ただし、「新型コロナウイルス感染症によって数年間だけ売上が急激に下がって借金が膨らんだ」のようなケースであれば、情勢が変わると再び事業が軌道に乗って借金を返済できるかもしれません。
そのため、やむを得ない事情がある場合は、個人事業を継続しながらでも個人再生できる可能性があります。
4-3 高額な資産を保有している場合は返済額が増える可能性がある
個人と事業の境界線が曖昧な個人事業主は、個人で高額な資産を保有していると返済額が増える可能性があります。個人再生をする際、債務者は財産価値の総額以上は最低でも支払う必要があるという清算価値保障の原則が定められているためです。
例えば借金1,000万円に対して財産総額が200万円以下の場合、減額後は200万円を返済していくことになります。一方で、300万円の財産を保有していれば、最低でも300万円を支払う必要があります。
また、個人事業主の個人再生で見落としがちなのが、店舗やオフィスを借りる際に支払った保証金です。退去時に返還される保証金は、入居時に支払った金額が資産として計上されます。
しかし、退去する際には保証金から原状回復費用が引かれるため、資産価値ほどの現金を受け取れません。しかも入居時に支払った数百万円は、退去時の費用で大半が消えてしまいます。保証金によって資産があると判断されてしまい、個人再生をしても借金額がほとんど変わらないケースに注意が必要です。
5章 個人事業主が個人再生を利用する際は弁護士・司法書士に相談しよう
個人再生の手続きは非常に複雑なうえに、個人事業主が行う場合は考えるべき要素が増えます。チェックポイントを押さえないまま手続きを始めようとすると、借金を減額できなかったり、マイホームを手放すことになったり、そもそも個人再生の申し立てが受理されなかったりする恐れがあります。
日本弁護士連合会の「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、代理人に依頼せずに個人再生の申し立てをした人の割合は0.73%でした。このことから、個人再生を行うにあたって大半の人が弁護士・司法書士に相談していることがわかります。
専門家を頼らずに進めるのが難しい手続きなので、個人事業主が個人再生を利用する際は、弁護士・司法書士への相談がおすすめです。個人再生に詳しい専門家に相談することで、手続きをサポートしてもらえます。また、適切な債務整理方法も提案してもらえるため、日々の生活を守りながら迅速な借金問題の解決が可能です。
グリーン司法書士法人では、個人事業主の個人再生をサポートしてきた実績が豊富にあります。無料診断も実施しておりますので、お気軽にご相談ください。
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まとめ
個人事業主でも個人再生を利用すれば、借金を減額することが可能です。借金問題の解決に向けて個人再生を検討している方は、以下のポイントをチェックして利用するかどうかを判断しましょう。
- 事業を継続するかどうか
- 負債総額はどのくらいか
- 収入の見込みがあるか
- リース物件の取り扱いをどうするか
- 買掛金・売掛金の取扱いをどうするか
マイホームに住み続けながら借金を5分の1程度に減額できる個人再生は、借金問題の解決にあたって非常に有効な債務整理方法です。
しかし、個人再生には条件が定められていて、満たさない場合は利用できません。また手続きを進められても、借金額がほとんど変わらなかったり、マイホームに住めなくなったりする恐れもあります。
そのため、借金問題の解決を目指して個人再生の手続きをスムーズに進めたい方は、最初に専門家に相談しましょう。グリーン司法書士法人では、債務整理に関するご相談に幅広く対応しています。
経験豊富な専門家が状況や目的に合わせたサポートを提供するので、借金問題でお困りの方はお気軽にお問い合わせください。
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