この記事は約 9 分で読めます。
- 優先的破産債権と財団債権の違い
- 4種類の破産債権とその優先順位
- 法人に財産がない場合の公租公課や給与の支払い義務
経営状態が悪化して破産手続きを取る必要が出てきたものの、返済が難しい債務の取り扱いに困っている方がいるのではないでしょうか。債権には法律によって優先順位が決められており、優先度の高い債権から順番に支払われる仕組みです。
例えば未払いの賃金や税金は財団債権もしくは優先的破産債権であり、ほかの債権よりも優先されます。
この記事では優先的破産債権や財団債権との違い、支払いが難しくなった場合の対応について解説します。法人破産を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次 ▼
1章 優先的破産債権とは?財団債権との違いも解説
「優先的破産債権について知りたい」「優先的破産債権と財団債権の違いがわからない」という方もいるのではないでしょうか。優先的破産債権と財団債権は、どちらも破産手続において優先的に支払われる債権ですが、その性質が異なります。
ここでは、優先的破産債権と財団債権の概要を解説します。またそれぞれの違いも説明しているので、ぜひ参考にしてください。
1-1 優先的破産債権とは
優先的破産債権とは、破産手続きにおいてほかの債権よりも優先して支払われる破産債権です。財団債権ではない租税公課・従業員の給料などの労働債権、租税債権が優先的破産債権に分類されます。
そして優先的破産債権間では民法・商法・その他法律の順番で優先順位が決まるため、租税債権が労働債権よりも優先されます。なお、労働債権や租税債権は、財団債権に分類されるケースがある点に注意が必要です。
1-2 財団債権とは
財団債権とは、破産手続きに関係なく破産財団から最優先で支払われる債権です。先に支払われることによって、破産手続きをスムーズに進められる財団債権には以下のようなものがあります。
- 破産管財人の報酬
- 裁判所への予納金
- 売掛債権の回収費用
- 破産手続きを開始する前の3か月間の給与
- 破産手続の終了前に退職した従業員の退職金(退職前3か月分の給料相当額)
- 所得税や地方税及び各種社会保険料(手続き開始決定当時にまだ納期限が到来していないもの、または納期限から1年を経過していないもの)
財団債権は破産手続きを円滑かつ公正に進行させるために不可欠なので、ほかの破産債権よりも優先的に支払われることが法律で定められています。最終的に債権者への適切な弁済が可能となります。
なお、財団債権の中でも優先されるのが、破産管財人の報酬や裁判所への予納金などです。破産手続きが完了することによって債権者全員にメリットがあるため、手続きがスムーズに進むような仕組みになっています。
1-3 優先的破産債権と財団債権との違い
破産手続きにおいては、優先的破産債権よりも財団債権の方が優先的に弁済されます。また、優先順位の異なる優先的破産債権と財団債権ですが、大きく違うのはその性質と目的です。
優先的破産債権は、おもに労働者の賃金や租税債権など、個人や公共の利益を守るために設けられています。一方で、財団債権は破産手続の適正な進行を支えるために必要な費用や報酬で、破産手続きをスムーズに進めることが目的の債権です。
このように、優先的破産債権は個人や公共の利益を保護することを目的としているのに対し、財団債権は破産手続きを円滑に進めるための費用確保を目的としています。
なお、破産債権と財団債権の違いについては、免責・非免責の区分とは別の概念なので間違えないように注意しましょう。
2章 4種類の破産債権と優先順位
破産債権を優先順位で見ると、全部で以下の4種類に分類可能です。
- 優先的破産債権
- 一般破産債権
- 劣後的破産債権
- 約定劣後破産債権
ここではそれぞれについて詳しく見ていきましょう。
2-1 優先的破産債権
優先的破産債権は、ほかの破産債権よりも優先的に配当を受けられる債権です。優先的破産債権には、以下のようなものがあります。
- 破産手続き開始決定前の3か月よりも前の給与
- 財団債権に該当しない退職金
- 財団債権に該当しない所得税や地方税及び各種社会保険料
給与や退職金、税金は財団債権ですが、一定の条件を満たすと優先的破産債権になります。
2-2 一般破産債権
一般破産債権とは、優先的破産債権・劣後的破産債権・約定劣後破産債権に該当しない債権です。一般破産債権の一例は以下の通りです。
- 金融機関からの借り入れ
- 買掛金
一般破産債権には通常の商取引に基づく債権が含まれていて、破産手続きで最も多くを占めます。一般破産債権の債権者は、優先的破産債権が支払われた後の残りの財産から配当を受けられます。
ただし、個人破産の場合は、債務者に財産があっても多くを財団債権に充当されるため、配当がほとんどないケースも多いです。
2-3 劣後的破産債権
劣後的破産債権とは、優先的破産債権および一般破産債権が支払われた後に、余剰財産があれば弁済される債権です。劣後的破産債権には、以下のようなものがあります。
- 破産手続き開始後の利息・遅延損害金・延滞税
- 破産手続き開始後の不履行による損害賠償
- 破産手続きへの参加費用の請求権
劣後的破産債権が弁済されるかどうかは破産財団の状況に大きく依存するため、優先的破産債権や一般破産債権と比べると配当を受ける可能性が低いです。
2-4 約定劣後破産債権
約定劣後破産債権とは、債権者と債務者の契約によって配当の順位が最も下位に定められている債権です。約定劣後破産債権はほかのすべての債権が弁済された後ではないと弁済されないため、基本的には配当を受けられません。
3章 法人に財産がない場合の公租公課や給与の支払い義務
破産債権に優先順位があることを解説してきましたが、「法人に財産がない場合でも優先的破産債権の支払い義務はあるの?」「勤務先が倒産してしまったが、給与や退職金は受け取れるの?」と疑問に思っている方もいるでしょう。
ここでは、法人に財産がない場合の公租公課や給与の支払い義務について解説します。
3-1 公租公課
税金や社会保険料の公租公課は、手続き開始決定当時にまだ納期限が到来していないもの、または納付期限から1年を経過していないものが財団債権に分類されます。そして、それ以外の公租公課は優先的破産債権です。
もし債務者に財産がなくて弁済が難しい場合、破産手続きが完了した後も財団債権・優先的破産債権問わず支払い義務は残りますが、法人格が消滅するため回収不能になるのが一般的です。
ただし、個人事業をしていた場合、破産手続き後の支払いを続けていく必要があります。
3-2 給与や退職金
給与や退職金も公租公課と同様に、財団債権から優先的に支払う必要があります。財団債権に該当しない給与や退職金もほかの破産債権よりは優先的に支払われますが、法人に財産がない場合は弁済できません。
もし勤務先が倒産して給与や退職金を受け取れなくなった場合は、未払賃金立替払制度を活用しましょう。未払賃金立替払制度は、企業が倒産し労働者が未払い賃金を受け取れなくなった場合に、国(労働者健康安全機構)が立て替えて支払う制度です。
労働者の生活を守るために設けられていて、労働基準監督署を通じて申請できます。なお対象となる労働者や支払われる金額に条件があるため、申請を検討している方は事前に厚生労働省の「未払賃金立替払制度の概要と実績」を確認しましょう。
4章 法人破産の手続きを進める際は弁護士・司法書士に相談しよう
財団債権や優先的破産債権は弁済される際の優先順位が高いですが、必ずしも支払う必要はありません。破産手続き完了後に財産がなければ、優先順位が高い公租公課や給与、退職金も支払えないためです。
しかし、優先順位に反して返済した場合、債権者から損害賠償請求を受ける恐れがあります。そのため、法人破産を検討している方は、破産手続きや債権者との交渉に精通している弁護士への相談がおすすめです。
一方、個人で借金に困っている方の場合は司法書士への相談も有効です。グリーン司法書士法人では、債務整理方法の選択や手続きに関してアドバイスを提供し、借金問題の解決をサポートいたします。
まとめ
優先的破産債権は、一般破産債権や劣後的破産債権よりも優先的に弁済される破産債権です。そして優先的破産債権よりも優先度が高いのが財団債権です。
どちらもほかの債権よりも優先されるという点では同じですが、個人や公共の利益を守るために設けられた優先的破産債権、破産手続きをスムーズに進めることが目的の財団債権という違いがあります。優先的破産債権と財団債権には、以下のようなものがあります。
優先的破産債権 |
|
財団債権 |
|
優先的破産債権の後は、一般破産債権・劣後的破産債権・約定劣後破産債権という並びで優先順位が決まっています。なお順番通りに返済しなければ債権者の不利益につながって、損害賠償を請求されるケースもあるため、法人破産を検討している方は弁護士に相談しましょう。
また個人で借金を抱えていて破産を検討している方は、司法書士への相談も選択肢の一つです。グリーン司法書士法人では、自己破産や任意整理といった債務整理に関するサポートを行って借金問題の解決をお手伝いします。無料診断も実施しておりますので、お気軽にご相談ください。
借金返済に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。
アクセス数が多いキーワード:債務整理 クレジットカード
借金返済の無料相談ならグリーンへ

お気軽にお問い合わせください!