給料の差し押さえが原因で会社をクビは違法!不当解雇時の対処法

   司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

借金返済の知識
給料の差し押さえが原因で会社をクビは違法!不当解雇時の対処法

この記事は約 11 分で読めます。

悩む男性
悩む男性
給料が差し押さえられそうですが、これが原因で会社をクビになることはありますか?
司法書士
司法書士
給料の差し押さえのみが原因で、会社が労働者をクビにすることは認められていません。

給料が差し押さえられたことを原因として、会社が労働者をクビにすることは違法です。
給料の差し押さえは、解雇の正当な理由に該当しないからです。

ただし、給料の差し押さえは確実に会社にバレてしまいますし、差し押さえにより会社や同僚、上司からの信頼が下がる恐れはあります。

万が一、給料の差し押さえが原因で会社をクビになった場合は、解雇理由証明書の請求や解雇撤回の要求などを行いましょう。

本記事では、給料の差し押さえが原因で会社をクビになったときの対処法を解説します。
給料の差し押さえについては、下記の記事もご参考にしてください。

1章 給料の差し押さえが原因で会社をクビになることはない

結論から言うと、給料の差し押さえを原因に勤務先が解雇できません。
法律によって、勤務先が正当な理由なく労働者を解雇することは認められていないからです。
そして、差し押さえを受けたことは解雇の正当な理由には当たりません。

しかし、会社経営者や担当者によっては法律を知らず、労働者の差し押さえを知った時点で「信用に欠ける」「面倒ごとは避けたい」と感じ、クビにしようとする場合もあります。

その場合、本記事の3章で解説する対処法をお試しください。

2章 給料の差し押さえを会社に隠すことはできない

先ほど解説したように、給料の差し押さえが原因で会社をクビになることはありません。
ただし、給与が差し押さえられると、会社に連絡が届くので差し押さえや借金滞納の事実を隠せません。

その結果、会社からの信頼が下がる恐れがありますし、経理や給与の支払担当者の手間が増え迷惑をかけてしまいます。

それぞれ詳しく解説していきます。

2-1 会社からの信頼が下がる恐れはある

給与の差し押さえを会社に隠すことはできません。
差し押さえは、下記の仕組みで行われます。

給与差し押さえの仕組みを図解

上図のように、給与の差し押さえは債務者を介さずに、裁判所が勤務先に対して債権差押命令正本を発送し行われます。
差し押さえ後に債務者に給料が渡ってしまうと、給料を使われてしまい債権者が回収できなくなる恐れがあるからです。そうなると差押えの意味がなくなってしまいます。

司法書士
司法書士
そのため、債務者が受け取った給料が差し押さえられるわけではなく、これから支払われる給与が差し終えられます。

そのため、給料の差し押さえは確実に会社にバレますし、差し押さえが行われたことや借金の事実が経理担当者や同僚、上司にバレ信頼を失う可能性は十分にあるでしょう。

派遣社員は派遣先に差し押さえがバレないケースもある
派遣社員は派遣先の企業ではなく、派遣元の企業から給料が支払われます。
そのため、給料の差し押さえに関する通知も派遣先ではなく派遣元に届きます。

派遣先が派遣元に給料差し押さえの件をバラさない限り、派遣元が給料差し押さえを知る可能性は低いでしょう。

2-2 経理担当者や給与支払い担当者の事務作業が増える

給料の差し押さえ通知が勤務先に届くと、勤務先の経理担当者や給料の支払い担当者の事務手続きが増えてしまいます。
給料の差し押さえ通知が届くと、債権者に支払う金額を計算した上で、残りを債務者に支払う必要があるからです。

  • 顧問弁護士に対応を相談、確認する
  • 債権者に支払う金額を計算する
  • 債権者と債務者それぞれに計算した金額を振り込む

上記の手間が発生するので、勤務先の規模や忙しさによっては事務手続きが増え、面倒だと思われる可能性もあるでしょう。

3章 給料の差し押さえが原因で不当解雇されたときの対処法

本記事の1章で解説したように、給料の差し押さえのみが原因で会社をクビにされるのは違法です。
違法にもかかわらずクビを命じられ、納得いかないと感じたときには下記の対処法を試しましょう。

  1. 解雇理由証明書を請求する
  2. 解雇の撤回を要求する
  3. 会社側と交渉する
  4. 労働審判・訴訟を起こす

なお、労働者のかわりに労働問題を扱えるのは弁護士のみなので、自分で対応できるか不安な場合は解雇理由証明書を請求する段階で弁護士に相談しておくのも良いでしょう。
それぞれの対処法を詳しく解説していきます。

STEP① 解雇理由証明書を請求する

給料の差し押さえが原因で会社をクビになったら、最初に解雇理由証明書の請求書を行いましょう。
解雇理由請求書とは、解雇された理由や根拠を具体的に書面で記載したものです。
解雇理由証明書を請求すれば会社をクビにされた理由がわかりますし、給料の差し押さえ以外にクビの原因があったと判明する可能性もあるでしょう。

解雇理由証明書の請求方法は特に決められていませんが、下記の流れで行うのが一般的です。

  1. 口頭で請求する
  2. 会社が応じてくれない場合は書面で請求する
  3. 解雇理由証明書の内容が不明確な場合は、具体的な記載を求める

書面で解雇理由証明書を請求するときには、証拠が残るように内容証明郵便で請求しましょう。
解雇理由証明書は退職後も請求できますが、2年間の消滅時効がある点にはご注意ください。

STEP② 解雇の撤回を要求する

勤務先に解雇理由証明書を請求した結果、解雇の原因が給料の差し押さえのみが理由であれば、解雇の撤回を要求しましょう。
本記事で解説しているように、給料の差し押さえは会社をクビにする正当な理由に該当しないからです。

  • 解雇の撤回要求
  • 解雇日以降の業務の指示

両方を行っておけば、解雇日以降の賃金も請求できます。

STEP③ 会社側と交渉する

解雇の撤回要求をした後は、会社側と具体的な交渉を進めます。
解決方法はケースバイケースですが、下記の方法で和解を成立させることが多いです。

  • 勤務先から解決金を受け取り退職する
  • 勤務先に復職する

問題が大きくなってしまい、会社に戻っても居場所がないと不安に感じるのであれば、解決金をもらって退職するのも良いでしょう。

STEP④ 労働審判・訴訟を起こす

会社側と労働者による交渉で問題を解決できないときは、労働審判や訴訟も検討しましょう。
労働審判とは会社側と労働者が裁判所で行う話し合いであり、調停不成立となると裁判所が一時的な判断を下します。
訴訟は会社側と労働者がそれぞれ主張を交互に行い、最終的に裁判所が判決を下します。

労働審判や訴訟を起こすのであれば、個人で手続きを進めるのは難しいので労働問題に詳しい弁護士に相談するのがおすすめです。

労働審判や訴訟は解決までに時間がかかりますし、納得のいかない判決になる可能性もゼロではありません。
そのため、可能であれば問題が大きくならないうちに解決する、給料の差し押さえ自体を回避する努力が大切です。
次の章では、給料の差し押さえを回避、解除する方法を詳しく解説します。

4章 給料の差し押さえを回避・解除する方法

給料の差し押さえが原因で会社をクビにされた場合、問題を解決できても復職しにくいと感じる人もいるでしょう。
これからも今の会社で仕事を続けたいと考えている人は、そもそも給料の差し押さえの回避や解除に労力を注ぐことをおすすめします。

給料の差し押さえを回避、解除するには借金の一括返済もしくは債務整理しか方法がありません。
それぞれを詳しく解説していきます。

4-1 借金を一括返済する

借金を一括返済してしまえば、給料の差し押さえを回避できます。
また、すでに給料の差し押さえが決定した段階でも一定期間内であれば、一括返済をすることで差し押さえを解除してもらえます。

資金に余裕があるのであれば一括返済をし、知人や家族から借入を行い一括返済を行えそうであれば、知人や家族に頼んでみるのも良いでしょう。

司法書士
司法書士
個人間の借金は後々トラブルに発展しやすいので、きちんと借用書を作成しておくのがおすすめです。

また、差し押さえが決定していなく督促の段階であれば、債権者に相談してみましょう。
「滞納した原因」や「いつまでにいくら払えそうか」を債権者に誠意を持って伝えれば、分割払いや期日の延長に応じてくれる可能性もあるからです。

4-2 債務整理する

債務整理を行い借金の返済負担を軽くすれば、差し押さえ自体も回避もしくは解除できる可能性があります。
労働問題や訴訟ではなく債務整理であれば、弁護士ではなく司法書士でも対応可能です。
債務整理には複数ありますが、方法によって差し押さえを解除できるか以下のように変わってきます。

債務整理の種類差し押さえを解除できるか
任意整理
  • 差押予告通知書が届く段階では、債権者が交渉に応じてくれない可能性が高いので、差し押さえの解除は難しい
個人再生
  • 申し立て後に「個人再生手続開始決定」が出されれば差し押さえは解除できる
  • 個人再生の申し立て中は「強制執行中止命令」を申し立てれば差し押さえを解除できる
自己破産
  • 自己破産の申し立て後に「破産手続開始決定」が出されれば差し押さえは解除できる
  • ただし、自己破産をすると一定額以上の財産は没収されるので、自己破産申し立て前の財産は没収される可能性が高い

債務整理のうち、任意整理は裁判所を通さず手続きできるので、デメリットが少なく手続きにかかる手間や費用も少ない特徴があります。
しかし、任意整理はあくまでも債権者と交渉を行い内容を決定するので、差し押さえにいたるまで督促を放置していたケースでは債権者が交渉に応じてくれない可能性が高いです。

債務整理の中でも個人再生や自己破産を行えば給料の差し押さえ自体は解除できますが、裁判所に申し立てが必要な点やすべての借金が手続きの対象になるなどのデメリットもあります。

どの債務整理で対応できそうか、どの債務整理が最も適しているかの判断を行うには、専門的な知識が必要です。

司法書士
司法書士
債務整理に詳しい司法書士や弁護士に相談しましょう。

なお、借金の滞納が長引き問題が長期化すればするほど、取れる選択肢も少なくなってしまいます。
可能であれば「借金の返済が難しくなってきた」と感じた段階や督促状が届いた段階で専門家に相談しましょう。

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まとめ

借金滞納による給料の差し押さえが原因で、会社をクビになることはないのでご安心ください。
万が一、差し押さえのみが原因で会社をクビになった場合は、解雇の要求を交渉できます。

ただし、給料の差し押さえが行われると、会社に借金滞納の事実がバレてしまい信用が下がる恐れがあります。
そのため、そもそも給料の差し押さえにならないようにすることが大切です。
借金の督促は絶対に無視せず、督促状が届いた段階や借金の返済が難しくなってきたタイミングで借金問題に詳しい司法書士や弁護士に相談するのが良いでしょう。

グリーン司法書士法人では、債務整理に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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給料の差押えは会社にバレる?
給与が差し押さえられると、会社に連絡が届くので差し押さえや借金滞納の事実を隠せません。
給料の差押えについて詳しくはコチラ
差し押さえから逃れる方法とは?
差し押さえを回避する方法は、主に下記の通りです。
・借金を一括返済する
・債務整理する
給料の差押えについて詳しくはコチラ
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