差押えを解除する手続きとは?方法や期限についてわかりやすく解説

   司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

借金返済の知識
差押えを解除する手続きとは?方法や期限についてわかりやすく解説

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財産の差押えを受けてしまったときでも、解除する手続きはあります。

特に給与など差し押さえられてしまうと、手元に残るお金が少なくなり、他の支払いや返済ができず生活に支障をきたします。

そのため早急に差押えを解除したいところですが、本人が手続きできるのか、それとも専門家に頼るしかないのかによってやるべきことは変わってきます。

そこで、差押えを解除する手続きや方法、期限について次の4つの章に分けて詳しく説明していきます。

  1. 差押えとは
  2. 差押えが解除される要件
  3. 差押えを解除する7つの手続き
  4. 差押え解除の期限

差押えを解除する手続きが知りたい方や、差押えを受ける生活状況から脱出したい方は、ぜひこの記事を参考にされてください。

1章 差押えとは

「差押え」とは、借金の返済や税金の支払いが滞っている債務者に対し、債権者である金融機関や国などが債権を「回収」するため行う手続きです。

債務者の財産の事実上・法律上の処分を禁止し、競売で換金・処分することで返済や支払いに充てます

対象となる「財産」は、以下のとおりです。

  • 不動産(土地・建物など)
  • 金銭債権(預貯金・給与など)
  • 動産(自動車など)

法律に則って行う「強制執行」の1つであり、債権者が「債務名義」を取得することで裁判所を通して手続きできます。

2章 差押えが解除される要件

民事執行法では、差押えを「解除」しなければならない場合や解除できる「要件」を定めていますが、大きく分けると次の5つです。

  1. 差押超過の場合
  2. 差押財産に金銭的価値がなくなった場合
  3. 適当な財産の提供があった場合
  4. 公売で売れない場合
  5. その他の事情がある場合

それぞれ差押えが解除される要件について説明していきます。

2-1 差押超過の場合

差押えが解除される要件として、「差押超過の場合」が挙げられます。

債務者の財産を強制執行の対象とする際、「過大」で行き過ぎた差し押さえは債務者にとって不利益が大きくなるため、解除の対象です。

たとえば500万円の債務に対する差押えにおいて、800万円の財産を差し押さえるのなら差押超過には該当しません。

しかし800万円の財産と1,000万円の財産を差し押さえれば、1つの財産で回収できるのにもかかわらず過大に差し押さえることとになり、「差押超過」に該当します。

2-2 差押財産に金銭的価値がなくなった場合

差押えが解除される要件として、「差押財産に金銭的価値がなくなった場合」が挙げられます。

たとえば建物が火災で燃えたときなど、金銭的価値が失われたケースと考えられるでしょう。

また、差押え対象が金銭的価値のある財産の場合でも、滞納している借金などより支払いが優先される抵当権が設定されている場合の被担保債権が、差押え対象の価値より高いときなども解除されます。

2-3 適当な財産の提供があった場合

差押えが解除される要件として、「適当な財産の提供があった場合」が挙げられます。

たとえば貴金属など、お金に換えることができる財産などを提供し、滞納中の支払いに充てることができれば差押さえは解除されます。

2-4 公売で売れない場合

差押えが解除される要件として、「公売で売れない場合」が挙げられます。

公売とは
公売とは、差押財産を国が売却することです。
滞納者が税金を納付しない場合など、差し押さえた財産を入札など方法で売却し、金銭に換えて滞納国税に充てます。

たとえば不動産などを差し押さえた場合、競り売りにより「入札」で買い受けの申し込みを待つことになります。

しかし不動産の形状などで価値が見込めず、公売で売れる「見込み」がないときや、同じ財産を「3回」公売にかけても売れなかったときには差押えが解除されます。

2-5 その他の事情がある場合

差押えが解除される要件として、「その他の事情がある場合」が挙げられます。

たとえば土地が差押えられている場合において、隣地所有者と境界紛争が起きたケースや、事件や事故現場になったことで、著しく「財産価値」が損なわれた場合などが該当します。

3章 差押えを解除する7つの手続き

実際に財産の差押えにあった場合、2章で説明した要件に該当すれば解除されます。

要件に該当しない場合でも、次の7つの「手続き」により差押えを解除させることができます。

  1. 債務の全額弁済
  2. 債権者との和解交渉
  3. 不服申立制度の活用
  4. 差押禁止債権の範囲変更の申立て
  5. 任意売却(不動産)
  6. 自己破産
  7. 個人再生

それぞれどのような手続きか説明していきます。

3-1 債務の全額弁済

債務者が期日までに借金や税金などの滞納分を全額返済すれば、差押えは解除されます
債務者の財産を差し押さえる「目的」は、滞納している借金などを「回収」することであるため、全額弁済すれば差押えを「継続」する必要はなくなるからです。

ただし、借金滞納は経済的に苦しい状況にあることを理由としているケースがほとんどであるため、全額弁済による差押え解除は現実的には難しいでしょう。

3-2 債権者との和解交渉

差押えを解除する手続きの2つ目は、「債権者との和解交渉」です。

債権者に差押えによる競売を取り下げてもらうように交渉し、「合意」を得れば解除してもらえますが、滞納した借金を支払ってもらえる保証もなく簡単には取り下げてもらえません

ただ、差押え対象が「不動産」の場合、競売よりも有利に売却できる「任意売却」を条件に交渉することで解除してもらう可能性はあります

任意売却については、下記「3-5 任意売却(不動産)」にて詳しく説明します。

3-3 不服申立制度の活用

差押えを解除する手続きの3つ目は、「不服申立制度の活用」です。

不服申立ては、処分に不服がある場合に権利や異議を「主張」する手続きにより、取り消しや変更を求めます。

ただし専門性の高い手続きであるため、「専門家」に一度相談した上で検討するようにしましょう。

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3-4 差押禁止債権の範囲変更の申立て

差押えを解除する手続きの4つ目は、「差押禁止債権の範囲変更の申立て」です。

「差押禁止債権の範囲の変更」では、財産を差し押えることで一般的な生活水準よりも生活に著しい支障が出る場合などに、差押えの範囲を「減縮」するか裁判所が決定します。

たとえば年金や生活保護費などが差し押さえられてしまうと生活が成り立たなくなる場合、裁判所に申立てることで実情も勘案した変更が行われることがあります。

範囲の変更が認められれば差押えの全部または一部が取り消されるものの、差押え自体が解除されるわけではないため、「根本」から解決したいときには別の方法を検討しましょう。

3-5 任意売却(不動産)

差押えを解除する手続きの5つ目は、「任意売却」です。

「任意売却」は、自宅売却の価格が住宅ローン残債より低い「オーバーローン物件」を、債権者の同意のもと「一般市場」で売却することです。

競売では安く買いたたかれる可能性があるため、高く売却できる可能性がある任意売却のほうが、「債権者」にとってもメリットがあるといえます。

任意売却で不動産を売却することを債権者に認めてもらえれば、差押えを解除してもらえます。

なお、グリーン司法書士法人なら、任意売却に特化した不動産会社もグループに有するため、詳しく知りたいときにはぜひご相談ください。

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3-6 自己破産

差押えを解除する手続きの6つ目は、「自己破産」です。

「自己破産」とは、借金を返済できない状態であることを裁判所に認めてもらい、返済義務を「免除」してもらう手続きのことをいいます。

差押え対象が給与の場合など、自己破産手続きを開始すると一旦「中止」されますが、破産手続開始決定までは解除されません。

また、給料の差押え解除は民間の債権に限るため、「税金」などは破産手続開始決定が出た後も解除されず、支払い義務が残ることは留意しておきましょう。

3-7 個人再生

差押えを解除する手続きの7つ目は、「個人再生」です。

「個人再生」とは、借金返済が困難であることを裁判所に認めてもらい、5分の1程度など「大幅減額」してもらう手続きのことをいいます。

差押え対象が給与の場合、個人再生手続開始決定で差押えは「中止」されます

しかし個人再生に失敗する可能性もあるため、再生計画が認可決定するまで管理されることになり、「確定」した時点でまとめて支払われることになります。

そのため個人再生を申立てて給与差押えを「止める」ことはできても、すぐに元通りの金額を受け取ることができるわけではなく、少ない収入で生活を維持しなければなりません

4章 差押え解除の期限

差押え解除の手続きは、財産を差し押さえられてから「1週間以内」に行うことが必要です。

たとえば預金が差し押さえられてしまったとき、口座に残っていたお金は差押えと同時に引き落とされますが、すぐに債権者に渡るのではありません。

引き落とされた預金残高には、本来であれば差押え対象にならない年金などが含まれている可能性があるため、確認するために1週間程度は銀行に留まります。

しかし1週間後に債権者から取り立てがあれば、債権者に渡ることとなり、その後に差押えが解除されても取り戻すことはできません

そもそも差押え解除を求める主張や事情は「正当」なものでなければならないため、仮に解除の必要性などが認められた場合でも、既に取り立てがあった後では間に合わない可能性もあります。

手続きは速やかに行うことが必要であるため、差押え解除を求めるときには「専門家」にまずは相談しましょう。

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まとめ

借金を返済できず滞納し続ければ、いずれ財産の差押えの処分を受けることになってしまいます。

もしも差押えを受けたとしても、一定条件をクリアすれば解除する手続きも可能ですが、全額返済するか債権者との交渉などが必要です。

原則として、財産の差押えがあれば手元に戻ってこないと考え、解除の手続きはすぐに行動に移すことが必要といえます。

ただし専門的な分野であり知識なども必要となるため、もしも差押えを解除する手続きを検討しているときなどは、グリーン司法書士法人グループへご相談ください。

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