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「不当利得」は、本来利益を得るはずでない人が利益として受け取ったお金のことです。不当利得が発覚した場合、不当に利得を得た分を返還してもらうことができます。
しかし、不当利得の請求には時効があるため、発覚した時点で専門家に相談をして、早めに手続きを進めなければいけません。
この記事では、不当利得の時効を詳しく解説します。また、不当利得の請求をする場合の手続きも紹介するので不当利得の対応にお困りの方は参考にしてください。
目次 ▼
1章 不当利得とは
不当利得とは、本来利益を得るはずでない人が利益として受け取ったお金のことです。
例えば、身近なケースでは、ほかの人が所有する駐車場に第三者が勝手に車を停めたり、知人の所有している時計を勝手に売却して買取額を自分の懐に入れたりする行為が挙げられます。
不当利得はあまり聞き慣れない言葉のため、ピンとこないかもしれませんが、日常生活で発生するケースも少なくありません。
1-1 不当利得に該当する例
具体的に、不当利得に該当する例は下記のケースです。
- グレーゾーン金利による貸付で発生した過払い金
- 相続人による遺産分割前の相続財産の使い込み
- 過払いされた給料
- 契約の解約後に未返金になっている代金
- 商品の購入後に余分にもらった釣銭
紹介したケースは、あくまで一例であり、不当利得に該当するケースは数多くあります。不当利得に該当するかどうかは専門家に相談してみましょう。
2章 不当利得には不当利得返還請求ができる
不当利得が発生した場合は「不当利得返還請求」によって、不当に利益を得た人物から利益を返還してもらうことが可能です。
不当利得返還請求は、民法703条でも権利が認められています。
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
引用:e-Gov法令検索
ただし、自分が不当利得だと感じていても、条件に当てはまらない場合は、不当利得返還請求が認められないケースもあるので注意しましょう。
2-1 不当利得返還請求ができる条件
では、不当利得返還請求ができる条件を確認しましょう。
不当利得返還請求ができる条件は4つあり、全て満たしていなければ認められません。
- 被請求者が他人の財産や労務によって利益を得ている
- 請求者に損失が及んだ
- 利益と損失に因果関係がある
- 被請求者が利益を得るための法的裏付けがない
大切なポイントは、被請求者に不当利得が生じたことにより、請求者である自分に損失が発生したかどうかです。また、不当利得が原因で自分に損失を及んだことも証明できなければいけません。
そのため、不当利得返還請求は専門的な知識や手続きが必要になります。不当利得返還請求ができそうだと思ったら、司法書士や弁護士などの専門家に依頼して手続きを進めましょう。
3章 不当利得返還請求は時効があるので注意
注意したいのが、不当利得返還請求には時効があることです。不当利得を得た日によっては、既に時効期間が経過しており、請求ができない可能性があります。
そのため、不当利得返還請求ができると気付いたら、すぐに専門家に相談しましょう。
3-1 不当利得返還請求権の時効はいつ?
不当利得返還請求権の時効は、以下のいずれかの期間が経過すると適用されます。
- 不当利得返還請求権を行使することができることを知ったときから5年間
- 不当利得返還請求権を行使することができるときから10年間
例えば、10年前に過払金が発生すると知ってから何もせずに10年間が経ってしまった場合は、時効が適用されるため返還は難しいでしょう。
もし、テレビのCMやネットなどを見て、過去に払っていた借金に過払金が発生すると発覚した場合は、早めに行動するのをおすすめします。
時効が適用されるからといって、焦って連絡してしまうと、相手にしてもらえなかったりと失敗するケースも多いので、必ず専門家に相談してアドバイスをもらいましょう。
4章 不当利得返還請求の時効が成立したらどうする?
ここからは、自分が不当利得を得ていたケースを見ていきましょう。
相手から不当利得返還請求の連絡がきた時点で、既に時効を迎えていた場合、時効の援用をすれば返済義務がなくなります。
ただし、自分が時効の援用をする場合「既に時効だから返済しません」と、相手に連絡しても、言った言わないの水掛け論になってしまうおそれがあります。また、かえって余計なことを言ってしまい、消滅時効がリセットされるケースも考えられるでしょう。
そのため、時効の援用をする場合も、専門家に依頼するのを強くおすすめします。
4-1 専門家に時効の援用を依頼する
時効の期間が経過していた場合でも、自動的に不当利得の返還債務が消滅するわけではありません。不当利得返還請求をしてきた相手に、こちらから時効の援用をする必要があります。
不当利得返還請求をしてきた時点で、請求者は時効期間が過ぎていることを自覚したうえで、「時効援用できなくしてやろう」と狙っているケースも考えられるでしょう。
そのため、専門家に時効の援用を依頼して、時効が適用されるように動いてもらうのをおすすめします。専門家に依頼することで、時効になっているかどうかの確認から、時効援用の内容証明郵便の発送まで、安全に行ってもらえるので失敗するおそれがありません。
4-2 時効が認められたら返済義務がなくなる
適切に時効援用ができたときは、不当利得の返還債務が消滅します。
時効が認められたあとは返済義務がなくなるため、不当利得返還請求に従う必要はありません。
時効援用したのに請求が止まらない場合でも、自分から確認したか連絡をするのはやめましょう。なぜなら、相手も専門家に依頼しているケースが多く、うっかり時効の成立が失敗するような発言をして認められなくなる可能性があるからです。
時効が成立しているにもかかわらず、支払い義務が再度発生する恐れもあるため、最後まで専門家に任せるようにしましょう。
5章 不当利得返還請求の流れ
最後に、不当利得返還請求をする場合の流れを見ていきましょう。
不当利得返還請求は、相手によっては長期化するケースも多いため注意が必要です。希望通りに返還してもらうためにも、流れを把握してスムーズに手続きをしましょう。
STEP① 専門家に依頼する
まずは、不当利得返還請求ができると分かった時点で、専門家に依頼しましょう。特に、過払金や相続関係など専門的知識が必要なケースでは、専門家が介入しないと解決が難しいので注意が必要です。
また、不当利得返還請求は時効があるため、年数が経っている場合は時効を主張されるケースもあります。そのため、なるべく早く相談するのがおすすめです。
不当利得返還請求は、司法書士や弁護士に依頼できます。当メディアを運営するグリーン司法書士法人でも不当利得返還請求の手続きは可能なので、お気軽にご相談ください。
STEP② 相手が不当利得を得た証拠確保をする
専門家に依頼したあとは、不当利得返還請求をするために、相手が不当利得を得た証拠確保に動きます。
ここで、不当利得返還請求ができる条件を改めて確認しましょう。
- 被請求者が他人の財産や労務によって利益を得ている
- 請求者に損失が及んだ
- 利益と損失に因果関係がある
- 被請求者が利益を得るための法的裏付けがない
この4つの条件が当てはまらなければ、不当利得返還請求が適用されないため、立証するための事実調査や情報収集が必要です。
例えば、遺産相続で相手が不当利得を得ていた場合は、亡くなった人の口座の入出金履歴や保険、相続人の口座の入出金履歴など証拠になりそうなものを調べていきます。
STEP③ 不当利得の金額の計算をする
過払金など、現時点でいくらか分からない金額を請求する場合は、不当利得の金額の計算をしましょう。
過払金は「引き直し計算」をすれば戻ってくるお金が分かります。引き直し計算とは、過去の取引履歴をもとに、利息制限法に基づいた利率に直して利息を計算し直すことです。
取引履歴を確認しながら、エクセルやスプレッドシートなどのツールを使えば自分でもできますが、計算方法はいくつもあります。正確な金額を算出するためにも専門家に依頼したほうがよいでしょう。
STEP④ 請求書の送付をする
証拠が集まり、不当利得の金額がまとまったら請求書の送付をします。
請求書は内容証明郵便を相手に送付するのが一般的です。内容証明郵便で送付することで、消滅時効の完成が最大6か月間猶予になる効果があります。
また、請求の証拠も残るので、不当利得返還請求を成功させるためにも必ず内容証明郵便を使いましょう。
STEP⑤ 相手と話し合う
相手に請求書が届いたら、不当利得の返還交渉が開始します。ここでの交渉は、不当に獲得された利益かどうかの確認や返還すべき金額、支払い方法などが中心です。
専門家に依頼している場合は、専門家が相手と話し合いをしてくれるので、自分が交渉する必要はありません。
また、金融機関など相手が会社の場合は、専門家でないと相手にしてくれないケースもあるので、専門家に全てお任せするのがおすすめです。
STEP⑥ 合意の場合は合意書を作成する
交渉によって、不当利得の返還を合意した場合は、その内容をまとめた合意書を作成します。口頭のやり取りだけだと、正しい金額が支払われないなどのトラブルが起こった場合に不利になるため、必ず合意書が必要です。
請求先が、親族など一般の相手だった場合は、金額によっては一括で払えないケースも多いため、分割払いを設定することもあります。その場合は、合意書と公正証書を作成しておきましょう。公正証書があれば、相手が支払いを滞納した場合に差押えが可能になります。
過払金の返還の場合は、返還された金額が口座に振り込まれるので確認しましょう。ここで、専門家に依頼していた場合は成功報酬などを差し引かれます。
STEP⑦ 合意できない場合は裁判所に訴訟を提起
交渉で合意しなかった場合は、管轄裁判所に訴訟を提起します。過払金の返還請求をする場合は、請求額によって裁判所が異なるため確認しておきましょう。
過払元金 | 管轄裁判所 |
---|---|
140万円以下 | 簡易裁判所 |
140万円超 | 地方裁判所 |
裁判所では、専門家以外に裁判官が立ち会うため、より公平な目で判断をしてくれます。そのため、十分な証拠が揃っている場合は有利に進めることができるでしょう。
STEP⑧ 返還しない場合は強制執行を申し立てる
不当利得返還請求の裁判で勝訴しても支払いしない場合は、裁判所に強制執行を申し立てることができます。
強制執行とは、差押えから始まります。差押えが認められると、相手の給料や預金口座の財産などを差押え、強制的に返済に充てられます。
6章 不当利得返還請求は時効がある!返還請求はお早めに
不当利得が発生した場合、不当利得返還請求が可能です。ただし、不当利得返還請求権は時効があるため、返還請求できると発覚したら早めに行動するのをおすすめします。
不当利得返還請求の流れでも分かるように、不当利得返還請求をするには専門的な知識が必要です。希望通りの金額を返還してもらうためにも、専門家に相談して、適切なアドバイスを受けた上で手続きを取りましょう。
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