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- 自己破産の手続きには債権者一覧表の作成が必要
- 記載漏れが発覚したら問題になるケースとならないケースがある
- わざと債権者を記載しなかったら自己破産が認められなくなる
- 病院の治療費や個人間の借金、家賃や光熱費も記載する必要がある
- 債権者一覧表の漏れを防ぐためにも専門家と一緒に進めるのがおすすめ
自己破産の手続きで免責を受けるためには、債権者一覧表を作成する必要があります。債権者一覧表とは、裁判所に提出する書類で、債権者や債務の情報を一覧にしたものです。
この債権者一覧表に漏れがあると、借金が免除されない可能性があるため、手続きをするときは慎重に進めましょう。
債権者一覧表の漏れを確実になくすためにも、借金問題の経験が豊富な司法書士や弁護士に破産手続きを依頼して一緒に手続きを進めていくのがおすすめです。
この記事では、債権者一覧表に記載漏れがあった場合の手続きへの影響や対処法を解説します。確実に自己破産の手続きを進めるためにも参考にしてください。
目次 ▼
1章 自己破産の申し立てには債権者一覧表が必要
自己破産の申し立てには、債権者一覧表を提出しなければなりません。債権者一覧表が必要な理由は、債務者が誰にどれだけの借金があるかを裁判所に正確に伝える必要があるからです。
債権者一覧表には、債権者の名前や住所、借入金額や借入日など借金に関する詳細を記載していきます。債権者一覧表に不備や漏れがあると手続きが遅れる可能性があるため、正確に作成するようにしましょう。
債権者一覧表に記載された債権は、免責許可決定が確定すると支払義務が免除されます。
2章 自己破産で債権者一覧表に漏れがあった場合どうなる?
確実に自己破産の手続きをするためにも、債権者一覧表は漏れがないように作成しなくてはいけません。万が一、記載漏れがあると漏れた債権に免責が適用されず、借金が残ってしまう可能性があります。
では、債権者一覧表に漏れがあった場合の影響や対処法を、漏れが発覚したタイミング別に見ていきましょう。
2-1 破産手続開始決定前に発覚したケース
破産手続開始決定前に記載漏れが発覚した場合は、すぐに訂正すれば問題ないケースが多いです。債権者一覧表の記載漏れに気付いた時点で、裁判所に報告しましょう。
上申書と漏れがあった債権者を追加した債権者一覧表を裁判所に提出することで、問題なく手続きを進めることができます。
2-2 破産手続開始決定後に発覚したケース
破産手続開始決定後に記載漏れが発覚した場合は、破産手続きが同時廃止事件か管財事件かで対処法が異なります。
20万円以上の財産がないケースに適用される同時廃止の場合は、上申書と漏れがあった債権者を追加した債権者一覧表を裁判所に提出して、開始決定通知書等を漏れがあった債権者に送付しましょう。
債務者に20万円以上の財産があるケースに適用される管財事件の場合は、破産理由や財産を調査する破産管財人が選任されるため、裁判所と破産管財人の両方に必要書類を提出しなくてはいけません。
上申書と漏れがあった債権者を追加した債権者一覧表を裁判所と破産管財人に送付し、追加で漏れがあった債権者に送付する開始決定通知書等と発送報告書を破産管財人に送付します。
また、管財事件では、返済義務の免除について債権者の申述期間が設定されており、この期間が終わるまでなら漏れがあった債権者を追加することが可能です。
2-3 免責許可決定確定後に発覚したケース
免責許可決定の確定後に記載漏れが発覚した場合、債権者一覧表を訂正することができません。そのため、破産手続きをしたことを債権者に直接知らせる必要があります。
免責許可確定通知書もしくは免責許可決定通知書を債権者に送付して、免責許可の確定を知らせます。しかし、漏れていた借金を免責処理するかは債権者によるため、トラブルになるケースも考えられるでしょう。
3章 債権者一覧表に漏れがあったら問題になる?
債権者一覧表に漏れが発覚した場合「自己破産できなくなるのでは?」と心配になるかもしれません。債権者一覧表の漏れは、問題になるケースと問題にならないケースがあります。
もし問題になるケースに該当した場合は、借金が免除されない可能性が高いので注意が必要です。
では、債権者一覧表に漏れがあった場合に問題になるケースを見ていきましょう。
3-1 わざと債権者を記載しなかった
破産者が借金の相談を知っていたのに、債権者一覧表に記載しなかったケースは問題になります。なぜなら、虚偽の債権者一覧表を提出すると免責不許可事由に該当するからです。
例えば、家族や友人から借りたお金だけでも返済しようと意図的に債権者一覧表から外したり、持ち家を手放したくないからと住宅ローンの借入を記載しなかったりと、自分が返済したい借金を外すケースが挙げられます。
もし、債権者を意図的に記載していないことが発覚すると、すべての借金の返済義務が免除されなくなるので注意しましょう。
3-2 債権者が破産手続きの開始を知らなかった
債権者が、破産手続きの開始を知らなかったケースも問題になります。債権者一覧に漏れがあったことで、債権者が破産手続きをしていることを知らなかった場合は免責の対象にならないので注意しましょう。
ただし、例外として破産者自体が債務があると知らなかった場合は、債権者一覧に漏れがあっても問題にならない可能性もあります。
4章 債権者一覧表に漏れがあっても問題にならないケースもある
ここまで、債権者一覧表に漏れがあった場合のリスクを解説していきましたが、場合によっては記載漏れがあっても大きな問題とならないケースもあります。
ただし、必ずしも問題にならずに解決できるとは限らないため、債権者一覧表に漏れが発覚した時点で専門家に相談するのをおすすめします。
では、どのような条件で問題にならないのかを見ていきましょう。
4-1 債権者が破産手続きの開始を知っていた
債権者一覧表に記載されていなくても、債権者が破産手続きの開始を知っていた場合は問題になりません。なぜなら、漏れていた債権者の債権にも免責の効力があるからです。
自己破産の手続きが決まると、裁判所が破産手続きをすることを官報にて告知するため、債権者は破産の事実を知ることができます。
実際に破産法253条でも、以下のように定められています。
第二百五十三条免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
つまり、債権者が破産手続開始決定を知っていた場合は、免責の対象になるので覚えておきましょう。
4-2 破産者が債務の存在に気付いていなかった
破産者が債務の存在に気付かず、そのまま手続きが終わった場合も問題になりません。
例えば、借入時期が古く契約書などの確認書類を紛失しており、債権者から一度も請求されずに債務の存在に気付かなかったケースや、借金を相続しており借金があることを初めて知ったケースが挙げられます。
債権者一覧表の記載漏れに対して、免責を認めないほど破産者の過失がないと判断した場合は、記載漏れがあった債権者でも免責の効力がある可能性が高いです。
4-3 金融機関が免責に同意した
金融機関からの借金の場合、債権者一覧表に記載されていなくとも免責の効力を受け入れるケースが多いです。なぜなら、債務者は返済能力がないため債権を回収するのは現実的ではないと判断するからです。
破産手続きの開始を知らなかった場合でも、免責許可確定通知書もしくは免責許可決定通知書を送付すれば免責に同意する可能性があるでしょう。
ただし、必ずしも免責に同意してくれるとは限りません。免責が不当だと判断されたら請求される場合もあるので注意が必要です。
5章 債権者一覧表に漏れやすい借金は?
債権者一覧表を作成するときは、抜け漏れがないように細かなチェックリストが配布されるため、現実的には漏れが発生する可能性は低いです。しかし、なかには見落としがちな債務も少なくありません。
特に、自分の名義でも親が返済している奨学金や個人間の借金、債務者以外が返済している保証債務などが漏れやすいので注意しましょう。
では、債権者一覧表に漏れやすい借金の特徴を解説します。確実に手続きを進めるためにも、改めてチェックしておきましょう。
5-1 多重債務で借入件数を把握していない借金
多重債務に陥り、複数の消費者金融から借入をしている場合、借入件数を把握していない方も少なくないです。特に、消費者金融やクレジットカードのキャッシングなどを頻繁に利用していると、管理しきれずに見落としやすい傾向があります。
借金の漏れを防ぐためにも、過去の取引明細や契約書類を整理して、すべて債権者を正確にリストアップするようにしましょう。
5-2 代位弁済や債権譲渡があった借金
代位弁済や債権譲渡があった借金は、債権者一覧表に漏れやすい傾向があります。
代位弁済は債務者が借金の返済ができなくなった場合に、保証会社などの第三者が代わりに返済することで、債権譲渡は借金の返済先を債権者から第三者に変わることです。つまり、借金の借入先が変わります。
代位弁済や債権譲渡が発生すると、借入先が変更されたことを見落としやすく、債権者一覧表に記載漏れが発生しやすいので注意しましょう。
5-3 債権者からの取り立てがなかった借金
債権者からの取り立てがなかった借金も、債権者一覧表の漏れが発生しやすいです。取り立てがないと借金の存在を忘れてしまい、見落としやすくなります。
特に、長期間にわたり請求がなかった債務や少額の借金は漏れやすいでしょう。取り立てのない借金でも債権者一覧表には正確に記載する必要があるため、すべての借金を網羅しなくてはいけません。
5-4 個人間の借金
友人や家族、知人など個人間の借金は、消費者金融や銀行からの借金と異なり、正式な契約書がない場合が多いので債務者自身が忘れがちです。
また、お金の貸し借りが口頭での約束や日常的なやり取りの中で発生していると、債権者一覧表への記載をするほどではないと思ってしまう方も少なくありません。しかし、個人間の借金も法的には債務として扱われるため、債権者一覧表に必ず記載する必要があります。
5-5 病院の治療費
病院の治療費も債権者一覧表に記載しなくてはいけません。医療費は通常の借金と異なり、分割払いや支払猶予が適用されるケースが多いため債務者が借金として認識しにくい傾向があります。
また、治療が長期化した場合や複数の病院で治療を受けた場合、請求先が複数にわたるため記載漏れが発生しやすいので注意しましょう。債権者一覧表に記載する場合は、請求書や領収書を確認して正確に反映する必要があります。
5-6 家賃や光熱費
家賃や光熱費の未払い分も漏れやすい債務です。家賃や光熱費は生活費の一部として扱われるため、通常の借金と認識されにくく、債権者一覧表への記載を見落としやすい傾向があります。
しかし、家賃や光熱費も支払義務がある債務のため、すべての未払い分を正確に記載するようにしましょう。また、家賃は管理会社や大家への支払い、光熱費は各公共機関への支払いと請求先が異なるため、債権者の抜け漏れがないように注意が必要です。
6章 債権者一覧表の漏れを防ぐ方法
確実に自己破産の手続きをするためにも、すべての借金を正確に記載して債権者一覧表の漏れを防ぐことが大切です。
ここからは、債権者一覧表の漏れを防ぐための方法と注意点を解説します。安心して自己破産手続きを進めるためにも参考にしてください。
6-1 家族や知人からの借金も申告する
債権者一覧表の記載漏れを防ぐために、個人間の借金がないか再度確認しましょう。個人間の借金は契約書や明確な記録がない場合が多く、ほかの債務に比べて漏れやすい傾向があります。
家族や知人からの借金も漏れなく申告する必要があるため、相手が親しい人であっても正確に申告して確実に破産手続きを進めましょう。
6-2 信用情報機関に開示請求をする
債権者一覧表の記載漏れを防ぐために、信用情報機関へ開示請求をしましょう。信用情報機関には、金融機関やクレジット会社からの借入や返済状況が登録されているため、自分の債務状況を正確に把握できます。
開示請求をすることで、忘れていた借金や債権者の数が発覚するため、債権者一覧表の記載漏れを防ぐことができるでしょう。
6-3 周りの人に自己破産をすることを伝える
債権者一覧表の記載漏れを防ぐために、周りの人に自己破産の意思を伝えることも有効です。親しい家族や友人に自己破産を打ち明けることで、自分では忘れていた借金について教えてもらえる可能性があります。
特に、個人間の借金や長期間支払いが滞っている債務は忘れやすいため、周囲に相談することで債権者一覧表に正確な情報を反映できるでしょう。
6-4 専門家と一緒に進める
確実に債権者一覧表の記載漏れを防ぎたい方は、司法書士や弁護士などの専門家と一緒に手続きを進めるのがおすすめです。
専門家は債務整理の手続きの経験が豊富なため、漏れがちな債務や見落とされがちな債権者をしっかりと確認してくれます。また、債権者とのやり取りや書類作成もサポートしてもらえるため、手続きがスムーズに進められる点もメリットです。
正確で漏れのない債権者一覧表を作成するためにも、専門家の力を借りましょう。
7章 自己破産の手続きはグリーン司法書士法人にご相談を!
債権者一覧表の記載漏れは免責に影響を与える可能性があるため、慎重に対応しなくてはいけません。もし債権者の漏れが発覚した場合は、発覚した時点で正直に専門家に伝えるようにしましょう。
グリーン司法書士法人では、経験豊富な専門家が丁寧にサポートし、債権者一覧表の作成から破産手続き完了までをしっかりとサポートします。初回相談は無料なので、債務整理の不安や疑問などお気軽にご相談ください。
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