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- 債務の承認とは何か
- 債務の承認にあたる例
- 債務の承認をしたときに時効はどうなるか
「あなたは以前に債務の承認をしたので、時効が適用されません」
抱えている借金が時効になったと思って時効を主張したものの、このように返されてしまい驚いたというケースは少なくありません。
今まで支払いをしていないのにもかかわらず時効が適用されない場合、無意識のうちに債務の承認をした可能性が考えられます。
債務の承認とは、消滅時効が完成する前に債務があることを認める行為のことです。この債務の承認をすることで、時効が適用されずにリセットされてしまう可能性があるので注意しておく必要があります。
この記事では、債務の承認にあたる行為と時効との関係について解説いたします。
時効の期間や年数については、以下の記事をご参考にしてください。
目次 ▼
1章 債務の承認とは?
「債務の承認」とは、借金の存在や返済義務を認めることです。
例えば、消費者金融から借金返済を要求されたときに、債務者が「急には支払えないので待ってください」などの意思表示を行う行為は債務の承認にあたります。
なお債務の承認は消滅時効が完成する前だけでなく、消滅時効が完成した後に債務があることを認める場合も「時効によって利益を得ることを放棄する」ことに該当するため、債務の承認と同様の効果が発生するため注意が必要です。
債務の承認は、実際に借金を払ったかどうかではなく「債務があることを認めたかどうか」がポイントとなります。
そのため、借金を一切返済していないからといって、債務の承認に該当しないわけではないのでご注意ください。
2章 債務の承認にあたる意思表示の例
では、債務の承認にあたる意思表示にはどんなものがあるのでしょうか。
つい督促を受けたら無意識のうちに承認してしまい、借金が時効の適用がされずに消滅されないケースが多いので、消滅時効を援用したい方は債務の承認をしないよう気を付けましょう。
ただし、何が承認に当たるかは個人の判断で進めると危険なので、時効を援用したい場合は専門家に相談するのをおすすめします。
2-1 債務の一部を返済する
この場合「一括では支払えない」と言った支払いの意思を見せた言動だけでなく、実際に一部返済までしてしまっていることから完全に債務の承認に当てはまります。
例え、全額返済しなかったとしても支払いをした時点で借金の存在を認めているため、債務の承認と見なされるので注意しましょう。
2-2 債務を認める書面に署名捺印をする
実際に支払いをしなかったとしても、債務の残高を確認する書類に署名捺印をした場合、債務の承認に当てはまります。
債務の承認は「支払わなければ承認していないのと同じ」と思われがちですが、債務を認める書面に記載した場合も承認したことになります。
そのほか、以下の書面も債務の承認に影響する可能性があるので注意しましょう。
- 確認書類
- 借用確認書
- 信用書
- 残高確認書
- 債務承認弁済契約書
いずれも名前は異なりますが、債務を認めるような書類への署名捺印は全て債務の承認になるため注意しましょう。
2-3 電話などで債権者に対して支払猶予を求める言動をする
債権者に対して「支払いますけど、少し待ってください」「そのうち返済します」など支払い猶予を求める言動をした場合も、債務の承認に当てはまります。
債権者にいきなり家まで訪問されたり、電話や書面で一括請求された場合、とっさに支払いをする意思を見せてその場を切り上げようとする方も多いですが債務を承認したことになるので、消滅時効は認められなくなります。
消滅時効を狙っている方の中には「支払いますって言っておいて期限まで逃げ切ればチャラになる」と思っているケースも多いですが、支払いますと言った時点で自分に債務があることを認めていることになります。
「支払いますと言わなければ大丈夫だろう」と思うかもしれませんが、債権者から強い言葉で督促されたり差し押さえや一括請求といった内容で脅された場合「分かったから今日のところは勘弁してくれ」など無意識のうちに承認してしまっているケースもあります。
債権者は何としてでも支払って欲しいので、少しの言動も債務の承認に該当していないか録音をしてる場合も多いので注意しましょう。
3章 債務の承認をすると時効は更新されるので注意
もし、2章の中のいずれかの意思表示に該当してしまった場合は、残念ながら時効が更新されてしまいます。
借金の時効成立までの期間は、ほとんどの場合は5年です。
この間に債務承認をしてしまうと時効期間の更新がされるので、また0日目からのカウントになります。
また、時効成立後に債務の承認をしてしまった場合も、時効を援用する権利を失うため時効が更新されてしまうので注意が必要です。
3-1 債権の種類毎の時効が完成するまでの期間とは?
時効が完成するケースは、債務の内容によっても異なります。
債務の種類 | 時効の期間 |
---|---|
一般債権 | ・債権者が権利を行使できることを知ったときから5年(主観的起算点) ・権利を行使できるときから10年(客観的起算点) |
不法行為による損害賠償権 | ・被害者が損害と加害者を知ったときから3年(主観的起算点) ・不法行為がなされたときから20年(客観的起算点) |
生命・身体の侵害による損害賠償請求権 | ・被害者が損害と加害者を知ったときから5年(主観的起算点) ・不法行為がなされたときから20年(客観的起算点) |
消費者金融や銀行からの借金は「一般債務」にあたるため、ほとんどのケースは一般債務の時効の期間が適用されます。
通常の借金では、返済日が決まっており、債権者も当然それを知っているので、基本的には5年が適用されると思っておけば大丈夫です。
ただし、相手を傷付ける行為や慰謝料などの損害賠償は期間が異なる場合もあるため確認しておきましょう。
令和2年4月1日以降の借金には新民法、令和2年3月31日以前の借金には旧民法が適用されるので、そちらも間違えないように注意が必要です。
4章 債務の承認以外に時効が更新されるケース
債務の承認以外にも、時効が更新されるケースは他にもあります。
例えば、以下のケースは時効が更新になるため注意が必要です。
- 督促の電話や督促状が届いた
- 財産が差し押さえになった
- 債権者が裁判をおこして判決が出た
どのケースも時効のカウントがリセットされるため、ここからまた時効の成立を狙うのは難しいと言って良いでしょう。
4-1 裁判所から支払督促が届いた
借入した借金について、裁判所から支払い督促が届き、何もせずに2週間が経った場合、時効が更新されます。
支払督促が確定した場合、時効のカウントがリセットされるので、支払わずに無視をしたとしても時効はカウントされません。
当然、クレジットカードやカードローンでの借入返済でも支払いが滞った場合も、督促の電話や督促状が届きます。
この督促状が届く限りは時効がどんどんリセットになるので注意が必要です。
4-2 財産が差し押さえになった
支払いを滞納し続けると、強制的に債権を回収する「差し押さえ」に発展してしまいます。
暫く督促が来ないからと言って油断していると、財産の差し押さえ手続きを取っていることも多いです。もし差し押さえになった場合は時効がリセットになるので注意しましょう。
財産が差し押さえられた上に、支払いは残っている状態を避けるためにも早めの支払いをおすすめします。
4-3 債権者が裁判をおこして判決が出た
債務者が支払いを滞納し続けると、債権者は強制回収しようと裁判を起こすケースがあります。
こういった、債権者が債務者に対して、債権の返還を求める訴訟を起こして裁判が確定した場合、新たに時効がスタートとなります。
このスタートから時効がカウントされるので、債務の承認をしなかったとしても裁判で判決が出た以上は時効が適用されません。
また、この場合は新たな時効が成立するまで10年必要になります。
5章 時効が成立した場合は債務の承認をしないでご相談を
一般的な借金であれば、最後の返済から5年で消滅時効が成立します。
もし、時効が成立した場合はまずは専門家に相談をするようにしましょう。自己判断で進めてしまうと、ついうっかり債務の承認をしてしまってリセットになってしまう可能性もあります。
そのため、時効の援用手続きを自分自身で行うのは非常に危険と言えるでしょう。
当メディアを運営しているグリーン司法書士法人では、時効の援用手続きを行なっています。
債権者が債務の承認を主張している場合でも解決できる場合があるので、「債務の承認をしてしまったかもしれない」と思ってもあきらめずに相談されることをおすすめします。
無料相談も行なっているので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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