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2023年現在でも、まだまだ続いている過払い金の返還。
「払い過ぎていた借金が戻ってくる!」といったテレビコマーシャルやネットでの宣伝を見かけて、過払い金の手続きを行いたいと思っている方も多いのではないでしょうか。
過払い金の請求は、交渉を行なって返還してもらうケースと裁判で争うケースの2パターンがあります。
交渉を行なって返還してもらう場合は2~6ヶ月程度、裁判で争って返還してもらう場合は4ヶ月から1年半程度が目安となります。
この記事では、裁判で過払い金を返還してもらうケースについて詳しく解説いたします。
期間の長さや手続きから入金の流れも解説するので、これから過払い金の相談を考えている方はご参考にしてください。
目次 ▼
1章 過払い金の請求ができるケースとは?
「払い過ぎていた借金が戻ってくる」と聞くと聞こえが良いかもしれませんが、厳密に言うと借金をした額が戻ってくるわけではありません。
過払い金で何のお金が戻ってくるのかを解説すると、2010年に施行された「貸金業法」が適用される以前に借りた借金の利息が戻ってくる可能性があるということです。
以下の図は「利息制限法」と「出資法」の2種類の金利です。
2010年以前の利息制限法は、現在と同じく年20.0%を超える金利の設定は禁止していました。
しかし、出資法は年29.2%だったため金利が異なっていたのです。
この金利の差を利用して、貸金業者が「利息制限法を超えた利率設定かつ出資法の上限金利以下」のグレーンゾーン金利を設定し、債務者から多めに利息を受け取っていたのです。
しかし、2006年1月13日に最高裁判所にて「グレーゾーンでの利息の支払いは債務者が納得して支払ったものではない」と見なされ過払い金の返還が認められるようになりました。
結論、2010年以前につくった借金をグレーゾーン金利で返済していた方は過払い金の請求条件に満たしているということになります。
過払い金そのものについてや請求時の条件について詳しく知りたい方は、以下をご参考にしてください。
過払い金は借金完済日を起算点とし、2020年3月までに完済した借金であればそこから10年経過すると時効を迎えてしまいます。例えば、2019年4月30日に完済した借金であれば、2029年4月30日が過払い金請求の時効となります。
2章 過払い金請求にかかる期間は長い?
過払い金は、請求すればすぐにお金が戻ってくるわけではありません。
最短でも数ヶ月、長引くと2年近くかかってしまうことも珍しくありません。
また、交渉で過払い金を返還してもらうのと、裁判で過払い金を返還してもらうのでも期間は異なります。
ここからは、順番にどれくらいの期間がかかるのかを見ていきましょう。
2-1 交渉で和解が成立した場合【目安期間:2ヶ月〜6ヶ月】
交渉で和解が成立した場合は、2ヶ月〜6ヶ月間を目安に期間を見ておいた方が良いでしょう。
はあくまで弁護士や司法書士などの専門家が貸金業者と交渉をした場合の目安期間となります。
専門家が過払い金の返還の交渉を貸金業者と行い、双方納得した額がまとまったら和解となり過払い金が返還されます。
2-2 裁判になった場合【目安期間:4ヶ月〜1年半】
裁判で過払い金を回収する場合、4ヶ月〜1年半を目安に期間を見ておいた方が良いでしょう。
裁判になった場合、貸金業者が異議を申し立てたり、争点がある場合は和解が長引くためその分期間が長くなる可能性もあります。
当然、自分が納得いかない額まで回収額を減らされるケースも十分に考えられます。
裁判中にすんなり和解まで辿り着いた場合は、交渉での回収とそう変わらない期間で返還されます。
しかし、債権者や回収額によっては長期化する可能性もあるということを覚えておきましょう。
3章 過払い金請求の裁判の流れ
一般的に、過払い金請求は裁判の方が長引くことがほとんどです。
ここからは、過払い金請求の裁判の流れについて見ていきましょう。
また、過払い金の請求は家族や友人が代理で行うことも可能です。
代理で行いたい場合は、以下の記事をご参考にしてください。
3-1 弁護士や司法書士などの専門家に相談する【目安期間:3日前後】
まずは「過払い金が発生するかも?」と思ったら弁護士や司法書士に相談しましょう。
自力で交渉することも可能ですが、過払い金の請求には法律知識が必要となります。
この法律知識がないと、交渉がスムーズに進められず相手のペースとなる場合も多いでしょう。
貸金業者によっては、素人との交渉だと思い「早く入金するから過払い金をカットして欲しい」「相場はこれくらいだから」と言って、相手に足元を見られて和解させられるケースもあります。
希望通りの額に近い過払い金を回収するためにも、専門家に任せた方が結果的に失敗することなく手元にも多く残るため、ぜひとも専門家の力を借りることをおすすめします。
弁護士と司法書士、どちらに依頼するか悩んでいる方は以下の記事をご参考にしてください。
3-2 取引履歴の開示請求をする【目安期間:2週間~2ヶ月】
専門家に相談する際に、まずは本当に過払い金が発生しているのかを確認しましょう。
調査方法は、借入れや返済など過去の取引を確認して行なっていきます。
その際、貸金業者に窓口や電話、インターネットなどで取引の履歴を請求し取り寄せましょう。
貸金業者によっても請求してから開示までに時間がかかるため、それだけで数ヶ月経ってしまうことも珍しくありません。
3-3 引き直し計算をする【目安期間:3日前後】
貸金業者から取引履歴を取り寄せたら、その内容をもとに引き直し計算を行っていきます。
引き直し計算とは、過払い金がいくら発生するのかを確認する計算のことです。この作業によって満額の場合はいくらもらえるのかを確認することができます。
この計算は自分でもできますが、専門家と一緒に確認して算出してもらった方が確実です。
もし専門家に相談する前に、過払い金が発生するか自力で確認したいという方は、以下の記事をご参考にしてください。
3-4 貸金業者へ過払い金を請求する【目安期間:3日前後】
引き直し計算をしてみて、過払い金が発生することが分かったら貸金業者に過払い金を請求しましょう。
貸金業者に、過払い金返還請求書と引き直し計算書を郵送します。
その際に、いつ・誰が・どのような内容の文書を送ったのか証明できるように、内容証明郵便にて送付します。
3-5 貸金業者との交渉をする【目安期間:1ヶ月~3ヶ月】
貸金業者に郵送した後は、貸金業者との交渉を始めます。専門家に依頼している場合は原則専門家と貸金業者で交渉を行なっていきます。
交渉では、以下の3点を主に交渉していきます。
- 返還金額
- 返還期日
- 返還方法
この交渉がまとまり、双方が納得して和解に至れば、合意書を取り交わします。
交渉で和解できた場合は、貸金業者から過払い金を受け取り無事に成立です。
ほとんどの場合は交渉で和解しますが、交渉で和解できなさそうな場合や、裁判を起こした方が多く返還が期待できそうな場合は交渉を行わずにいきなり裁判を進めるケースもあります。
3-6 和解できない場合は訴訟を提起する【目安期間:1ヶ月~2ヶ月】
交渉で和解できない場合は、ここで裁判に発展させます。
裁判所に対し過払金返還訴訟を起こして、過払い金の回収を行なっていきます。
引き直し計算の時点で、専門家が訴訟した方が良いとの判断に至ったときは、交渉を行わずいきなり提訴するケースもあります。
裁判の場合、主張が認められたら請求した金額の満額に近い金額を返還してもらえる可能性が高くなるため、過払い金の額が大きい場合は訴訟を視野に入れて相談すると良いでしょう。
ほとんどの
3-7 手続きを行い裁判が開始される【目安期間:3ヶ月~半年】
裁判所に過払金返還訴訟を起こした後は、1ヶ月後くらいに第1回期日が開かれます。
その後は1ヶ月ごとに期日が設定され、原告(債務者)と被告(貸金業者)が交互に主張・反論します。
特に争点がなく、納得のいく金額が提示された場合は3回程度の期日で和解するため、訴訟を起こしてから3ヶ月〜4ヶ月程度で裁判は終わります。
どこかで合意に至るケースが多いですが、争点がある場合はその分期日を重ねる必要があるため、半年以上かかるケースもあります。
3-8 和解または判決後に過払い金が返還される【目安期間:2ヶ月~4ヶ月】
和解または判決後、合意した返還期日に過払い金が返還されます。
過払金の返還までの目安期間は2ヶ月~4ヶ月程度です。交渉や裁判が終わってすぐに過払い金が手元に入るわけではないので注意しましょう。
3-9 過払い金を受け取る【目安期間:1週間前後】
専門家に依頼している場合、過払い金は一時的に専門家の預かり金口座に振り込まれます。
その後、報酬金を差し引きその残額を債務者に送金し完了です。
専門家によっても異なりますが、貸金業者の過払い金返還期日から1週間程度で口座に入金されます。
4章 過払い金請求の裁判が長期化するケース
過払い金請求の裁判は、目安として4ヶ月〜1年半と言われています。
しかし、貸金業者と裁判になるため必ずしもその期間で和解できるわけではありません。
中には裁判が長期化するケースもあるため、すぐに手元にお金が欲しい方はその点も踏まえて考える必要があります。
過払い金請求の裁判が長期化するケースとしては、以下の2つが考えられます。
- 争点がある場合
- 敗訴した貸金業者が控訴してくる場合
では、順番に見ていきましょう。
4-1 争点がある場合
裁判を開始し、原告と被告のやり取りの際に争点がある場合は裁判が長期化するケースが多いです。
過払い金での争点でよくあるケースとしては、取引の分断があったかどうかが挙げられます。
取引の分断とは、最初に借入した借金を完済した後に再度借金をした場合、その取引は一連計算なのか個別になるかといった問題です。
例えば、2003年3月から2007年3月まで借金をして完済した後に、2009年5月から2015年5月まで借金をして完済をした場合は取引の分断があるかどうかが争点になります。
この取引の分断のあるなしで、過払い金の金額が異なってくるため争点の対象になりやすいです。
また、借金の完済日から10年経過すると時効の成立により過払い金の返還義務がなくなることから、貸金業者は時効を狙って個別であることを主張するケースもあります。
もし個別だと認められた、2003年3月から2007年3月までの借金の場合、2023年は時効が発生してしまっているため過払い金の返還はなくなってしまいます。
そうなると、債務者側としてはほとんど回収できないことから、長期化しやすくなるでしょう。
時効について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参考にしてください。
4-2 敗訴した貸金業者が控訴してくる場合
争点以外にも、敗訴した貸金業者が控訴してくる場合も裁判が長期化する傾向があります。
裁判を起こして勝訴した場合、まれに敗訴した貸金業者が控訴してくるケースがあります。
控訴とは、判決に不服がある場合に上級裁判所にやり直しを申し立てる行為のことです。つまり、過払い金の裁判を再度やり直したいという申立てです。
控訴になり、再度の裁判になったとしても判決が覆るケースはあまりありませんが、その場合は更に2ヶ月〜3ヶ月はかかるので更に長期化するでしょう。
中には、債務者が根負けして減額で和解するのを狙っている場合もあるので、絶対に希望通り回収したい場合は長期化しても裁判を続けるようにしましょう。
なお、裁判が控訴審以上に掛かった場合、これに対応できる専門家は弁護士のみとなります。
5章 過払い金の裁判で負けるケースはある?
過払い金の訴訟で、勝訴した場合は過払い金と裁判にかかった費用を回収することができます。
実際に、過払い金の訴訟を起こして完全に敗訴したケースは聞いたことがありません。
当然、敗訴する可能性も0ではありませんが、ほとんどないと言って良いでしょう。
しかし、当初の希望額よりも減額された場合を「負けた」と定義するのであれば、残念ながらよくあるケースといえます。
訴訟を起こしても、実際に回収できるのは6割・7割が目安です。高くても8割の場合が多いです。
このことを踏まえると、当初の請求額が100万円だった場合、実際に貸金業者から回収できるのは60万か70万が相場になります。
そこから専門家への費用として基本料金と報酬額を差し引くので、実際に手元に残るのは40万程度です。
ですので、100万円回収できると思って裁判を起こしたものの、40万円しか手元に残らなかった場合は「負けた」と感じる方もいるかもしれません。
6章 【結論】長くても過払い金の裁判の方が多く取れるケースが多い
5章を踏まえると「長期的に裁判をしたとしても結局あまり手元に残らないのか…」とガッカリするかもしれませんが、それでも裁判を起こした方が結果的に得するケースは多いです。
交渉で専門家と貸金業者が交渉するよりも、訴訟を起こした方が第三者が判断するため、双方が納得する金額を提案してくれるからです。
「少しでも減額したい貸金業者」と「少しでも回収したい債務者」が対立する以上、第三者からの視点で提案があるのは裁判のメリットといえるでしょう。
ですが、訴訟をした方がより多く取れるケースはあっても絶対ではありません。
訴訟をする場合、弁護士や司法書士が勝訴の可能性や費用対効果など全体的に検討した上で、やる価値があると判断したからこそ行うものです。
そのため、過払い金は訴訟して回収すると決める前に、まずは専門家に相談してから判断するようにしましょう。
6-1 裁判をした貸金業者の利用はできなくなるので注意
過払い金で裁判を行う場合、同じ貸金業者からの借入れができなくなるデメリットがあるのを覚えておきましょう。
完済後に過払い金を請求した場合、完済をしているので金融機関の事故・延滞情報(ブラックリスト)に登録されることはありません。
しかし、貸金業者の顧客の社内リストには過払い金請求した情報が記録されるため、社内ブラックとなる可能性が高いです。
そのため、過払い金返還請求を行ったクレジットカードや、消費者金融は利用できなくなるため注意が必要です。
消費者金融の場合「もう借金なんて懲り懲りだ」という方がほとんどだと思うので、利用できなくても特に不便に感じることはないかもしれません。
しかし、クレジットカードの利用で過払い金を請求した場合は、今後不便になる可能性があります。
あらかじめ過払い金請求の前に、引き落とし先や支払い方法を変更しておきましょう。
過払い金の請求でのデメリットやブラックリストへの登録については、以下の記事をご参考にしてください。
7章 過払い金請求の裁判にかかる費用
過払い金請求の裁判にかかる費用は大きく分けて、裁判にかかる費用と専門家に依頼する費用の2つがあります。
交渉で過払い金の請求を行う場合は、専門家に依頼する費用のみになります。
しかし、裁判を行う場合は裁判にかかる費用を払う必要があるので注意しましょう。
この章では、過払い金請求の裁判にかかる費用を解説していきます。
7-1 裁判にかかる費用
過払い金の返還で裁判を起こす場合は、以下の項目にて費用がかかります。
項目 | 費用の目安 |
---|---|
印紙代 | 過払い金の請求額が100万円までは10万円ごとに1,000円 過払い金の請求額が100万円〜500万円までは20万円ごとに1,000円 |
予納郵券 | 裁判所によって異なるが東京の場合 東京簡易裁判所(訴額が140万円以下の場合)5830円 東京地方裁判所(訴額が140万円を超える場合)6000円 |
代表者事項証明書 | 書面請求:600円 オンライン請求・送付:500円 オンライン請求・窓口交付:480円 |
裁判費用と聞くと高額な金額を予想された方も多いと思いますが、2万円程度で可能なので覚えておきましょう。
なお、裁判で勝訴した場合は敗訴した側に裁判の費用を請求することができるため、勝訴の見込みがある場合は前向きに検討するのも手です。
7-2 専門家に依頼する費用
専門家に依頼する費用は各弁護士や司法書士によっても異なります。
当メディアを運営するグリーン司法書士法人の費用は以下の通りです。ぜひ参考にしてください。
費用の内訳 | 費用 |
---|---|
着手金 | 0円 |
基本料金(1社) | 19,800円(税込21,780円) ※取り返せない場合はなし |
返還成功報酬 | 取り返した額の20%(税込22%) ※裁判での回収の場合25%(税込27.5%) |
どの専門家も、基本料金と返還成功報酬は必ずかかるため覚えておきましょう。
中には、着手金や解決報酬、相談料などもかかる場合もあるので、費用と実績を比較した上で納得のいく専門家に依頼を行いましょう。
具体的な費用が知りたい方は、ぜひ一度無料相談にお気軽にお問い合わせください。
8章 過払い金のご相談はグリーン司法書士法人へ!
この記事では、過払い金の裁判の流れと期間について解説しました。
2023年現在でも、過払い金の返還はまだまだ続いています。
しかし、2010年6月に出資法が改正されたことにより、過払い金の対象となる借金は年々減少傾向にあります。
そのため、時効を迎えて過払い金の請求の権利を失ってしまったということがないように、早めのご相談をおすすめします。
以前抱えていた借金に過払い金が発生する可能性がある方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
過払い金に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。
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よくあるご質問
- 過払い金を請求できる期間は?
- 正確には、過払い金の請求には「消滅時効」があり、原則完済してから10年を経過すると、過払い金は消滅時効を迎え、請求することができなくなってしまいます。
過払い金の請求時効について詳しくはコチラ
- 過払い金の請求にはどれくらいかかる?
- 過払い金請求にかかる期間は、下記の通りです。
・交渉で和解が成立した場合【目安期間:2ヶ月〜6ヶ月】
・裁判になった場合【目安期間:4ヶ月〜1年半】
過払い金の請求期間について詳しくはコチラ