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- 自己破産をすると土地を没収される可能性が高い背景
- 自己破産をしても土地を手元に残せるケース
- 自己破産をしても土地を手元に残したい際の対処法
- 土地を所有している人が自己破産する際の注意点
自己破産は、借金問題を解決するための手段のひとつですが、所有する資産、特に土地や不動産がどのように扱われるかについては慎重な検討が必要です。
自己破産を申請すると、債務者の所有する土地や不動産が処分される可能性があり、その結果、生活の基盤を失う事態にもなりかねません。
今回の記事では、自己破産によって土地を没収されるリスクや、特定の条件下で土地を手元に残せるケースについて詳しく解説します。また、自己破産する際の注意点とその対処法についても見ていきましょう。
目次 ▼
1章 自己破産をすると土地を没収される可能性が高い
自己破産は、債務者が債務の返済を続けるのが困難な場合に、裁判所を通じてすべての債務を免除する法的手続です。しかし、この手続を進めると、債務者が所有する財産が処分され、特に土地や不動産がその対象となる可能性は極めて高いでしょう。
土地が自己破産手続の対象となるのは、多くの場合その価値が高く、債権者に対する債務の返済に充てられるためです。この章では、自己破産をすると土地を没収される可能性が高い背景を、次の2つの視点から解説します。
- 土地のローンを返済中の場合は債権者に没収される
- 土地に対して住宅ローンを組んでいない場合は破産管財人に処分される
なお、自己破産とはどういうものかや、メリットおよびデメリット、手続およびその流れや事例などについては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、参考にご覧ください。
1-1 土地のローンを返済中の場合は債権者に没収される
自己破産を申請すると、土地のローンが残っている場合は、債権者が抵当権を行使し、土地が没収されます。抵当権とは、土地を担保にして貸し付けられた借金の返済が滞った場合に、債権者がその土地を差し押さえ、競売などで売却して借金を回収する権利です。
たとえば、住宅ローンが未払いのまま自己破産を申請すると、債権者はこの抵当権を行使し、土地を競売にかけるでしょう。土地が競売にかけられると、その売却代金が債務の返済に充てられます。
競売の結果、残債が全額回収されない場合でも、土地は買受人のものとなり、債務者の手元には残りません。また、競売が開始されると、裁判所の管理下で手続が進行し、債務者は土地を明け渡す義務があります。
この間に新たな住居を探す必要があり、債務者やその家族にとって大きな負担となる場合があります。
自己破産を検討している方は早い段階で専門家に相談し、土地や不動産の担保状況を確認のうえ、必要な手続を進めるのが賢明です。
自己破産を検討するなら、ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。債務問題のプロフェッショナルであるグリーン司法書士法人では、個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。
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1-2 土地に対して住宅ローンを組んでいない場合は破産管財人に処分される
自己破産を申請する際、土地に住宅ローンが組まれていない場合でも、その土地が破産財団に組み込まれ、処分されてしまいます。破産財団とは、債権者への返済に充てるために換価処分されるべき、債務者の所有する財産を指す言葉です。
具体的には、裁判所が選任した破産管財人が土地を管理し、換価処分を行います。破産管財人による土地の処分は、自己破産手続の一環として行われるものです。
債務者の負債を可能なかぎり返済するためのものであり、破産申請者は所有していた土地を失うのはやむをえません。土地の売却代金は、債権者への配当に回されることになります。
まれに、土地の価値が低いか売却が困難である場合には、破産管財人が土地を放棄する可能性があります。
1-2-1 相続したまま未分割の土地は注意が必要!
なお、忘れられがちですが、相続したまま未分割の(名義変更を放置している)土地も処分の対象となります。支払い不能の状態で遺産分割すると否認される可能性があるうえ、免責不許可事由にも該当するので注意が必要です。
⚠️相続発生後の未分割の土地も没収の対象となるので要注意! |
2章 自己破産をしても土地を手元に残せるケース
自己破産をしても、所有している土地を手元に残せるケースが存在します。主なケースを挙げると、次の2つです。
- 土地の価値がほとんどないケース
- 土地が破産者のものでないケース
それぞれの内容を、詳しく見ていきましょう。
2-1 土地の価値がほとんどないケース
自己破産をしても土地を手元に残せるケースとして、土地の価値が非常に低い場合が挙げられます。この場合、土地が市場で売却される見込みがほとんどないため、破産管財人が、その土地を破産財団から放棄する可能性があるのです。
放棄された土地は破産者の手元に残り、結果的に債務者がその土地を保持できます。同様の現象は、土地の売却費用が回収見込み額を上回ると判断された場合にも起こります。
具体的に土地が手元に残る可能性が高いのは、たとえば僻地にある利用価値の低い土地や、有害物質が含まれているために市場での取引が困難な土地などです。このような土地の場合、買い手が見つからず、破産管財人が手放すしかない状況に陥ります。
もし管財人が土地の売却を試みたとしても、買い手が見つからなければ土地はそのまま債務者に戻されます。債務者にとっては有難いことですが、土地を保持するための費用(固定資産税など)が続く点には注意が必要です。
自己破産を検討している場合は、土地の市場価値や今後の管理費用についても詳しく調査し、専門家に相談しましょう。
2-2 土地が破産者のものでないケース
自己破産において、所有権が破産者にない土地破産財団に組み入れられないため、処分の対象とはなりません。破産申請者が借地権を持つ土地の上に、建物を建てている場合などが典型的です。
借地権を持つ建物は、建物が競売や任意売却される際に「借地権付きの建物」として売却される場合があります。この場合、建物の購入者が借地権も引き継ぐのが原則です。
借地権そのものが競売にかけられる可能性はないものの、借地権の設定に関する契約内容や土地所有者の承諾が必要な場合もあります。たとえば、土地所有者が借地権の移転に同意しない場合、特別な手続が必要になるでしょう。
なお、土地の所有者が他者である事実を証明するために、固定資産評価証明書や借地権設定契約書などの書類が必要です。
3章 自己破産後も土地を手元に残したい場合の対処法
自己破産後も土地を手元に残したい場合には、主に次に挙げる3つの対処があります。
- 自己破産以外の債務整理を検討する
- 親族などに土地を購入してもらう
- リースバックを活用する
それぞれの対処法の内容を、詳しく見ていきましょう。
3-1 自己破産以外の債務整理を検討する
自己破産を避けたい場合、ほかの債務整理手段として「任意整理」と「個人再生」が考えられます。
任意整理は、債権者と交渉して借金の利息や返済期間を調整する法的手続であり、通常は弁護士や司法書士が代理人として実務を行うのが一般的です。
任意整理では裁判所を通さずに済むため、官報に名前が掲載されることがなく、また保証人に迷惑をかけずに済むというメリットがあります。
一方、個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に減額する法的手続です。この手続では、借金の総額が5分の1から10分の1程度にまで減額されます。
個人再生の大きな特徴は、住宅ローン特則を利用することで、持ち家を残しつつ借金を減額できる点です。この特則を適用するためには、住宅ローンを組んでいて、その住宅が再生債務者の居住用である必要があります。
任意整理と個人再生の選択は、借金の総額や返済能力に応じて決めるのが賢明です。任意整理は比較的手続が簡素で、借金の元本は減額されませんが、将来の利息がカットされるため、返済の負担が軽減されます。
一方、個人再生は、より大幅な借金減額を求める場合に適しており、特に住宅や車などの財産を守りながら借金問題を解決したい場合に有効です。どちらの手続も専門家と相談しながら進めるのがよいでしょう。
これらの手続は、自己破産に比べると生活への影響が少なく、財産を保持できます。
債務整理を考えているみなさんは、自身の財産状況や返済能力を考慮し、最適な方法を選択することが重要です。また、各手続にはメリットとデメリットが存在するため、慎重に検討しましょう。
ここで挙げた任意整理と個人再生に、自己破産も含めて各債務整理のメリットとデメリットや向いているケースを比較しやすい表を使って検討しましょう。
債務整理の種類 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
特徴 | 裁判所を通さずに、債権者と直接交渉して借金の減額や返済計画の見直しを行う方法 | 裁判所に申立てを行い、借金の減額と返済計画の認可を得る方法 | 裁判所に申立てを行い、全ての借金を免除してもらう方法 |
メリット | ・手続が比較的簡単で費用が安い ・裁判所への申立て記録が残らない ・家族や勤務先に知られない | ・借金を大幅に減額できる ・住宅ローンや車ローンなどの財産を守れる ・将来、再び借金問題に陥る可能性が低い | ・借金が全て免除される ・新しい生活をスタートできる |
デメリット | ・減額できる金額は債権者との交渉次第 ・将来、再び借金問題に陥る可能性がある | ・裁判所への申立て記録が残る | ・裁判所への申立て記録が残る ・官報に永久に掲載される ・一定期間、クレジットカードやローンを利用できない ・一定期間、就業制限を受ける |
適したケース | ・債務額が大きくなく、将来的に返済できる見込みがある場合 ・任意整理の詳細・解決事例はコチラ ↓ 借金をなくせる任意整理とは?メリット・デメリットや向いている人 任意整理の経験談・解決事例 | ・一定収入はあるが債務額が大きく、任意整理では難しい場合 ・個人再生の詳細・解決事例はコチラ ↓ 小規模個人再生とは|給与所得者再生との違いやメリット・デメリット 個人再生の経験談・解決事例 | ・債務額が非常に大きく、他の方法では返済が難しい場合 ・自己破産の詳細・解決事例はコチラ ↓ 自己破産とは?メリット・デメリットや手続きの流れを徹底解説 自己破産の経験談・解決事例 |
債務整理の種類と生活への影響に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
以下の返済シミュレーションツール【バーチャル債務整理】を使えば、借金問題の解決のために債務整理を行った場合に、借金がどれくらい減るのかの目安がわかります。
返済シミュレーションツール【バーチャル債務整理 】|大阪債務整理・自己破産相談センター
借金問題を抱えて自力返済が難しくなり、お困りのみなさんは、新たに借入をせずに解決する方法を検討しましょう。ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。当司法書士法人では借金問題に関する個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。
3-2 親族などに土地を購入してもらう
自己破産後に土地を手元に残す方法として、親族に土地を購入してもらうことがあります。しかし、この方法にはいくつかのリスクがあるのも否めません。
まず、親族間で不当に低い価格で土地を売却した場合、破産管財人が「否認権」を行使するリスクがあります。否認権とは、債権者を害する行為を防ぐために、破産管財人がその取引を無効にする権利です。
特に、破産者が支払い不能になった後に行われた売買が、市場価格よりも著しく低い場合、詐害行為とみなされ、土地は破産財団に戻されるでしょう。
また、親族間での土地売買が不当な利益を意図していると見なされると、詐欺破産罪に問われるリスクもあります。詐欺破産罪は、破産者が資産を隠匿したり、価値を偽装したりして、債権者を欺く行為です。
これに該当する行為が発覚した場合、刑事罰の対象となる可能性があり、厳重な調査が行われます。さらに、親族に不当に低い価格で土地を売却した場合、受贈者に贈与税が発生するケースもあるでしょう。
適正価格で親族に土地を売却する場合でも、税務上の問題が発生するリスクがあります。たとえば、贈与とみなされる場合、受贈者に対して贈与税が課税されかねません。
また、親族間の取引では、特別の条件で取引が行われやすく、税務署が取引の妥当性を精査する場合があります。そのため、自己判断での取引は避け、弁護士や税理士に相談しながら進めるのが賢明です。
3-3 リースバックを活用する
リースバックは、自己破産後も土地や自宅に住み続けたい場合に有効な方法です。この方法なら、所有する不動産を売却し、その後も賃貸として同じ場所に住み続けられます。
まとまった資金を得ると同時に、生活環境を変えずに済むのがリースバックのメリットです。また、固定資産税や修繕費用などの維持費が不要になり、経済的な負担が軽減されます。
特に高齢者や子供のいる家庭など、生活基盤の維持が重要なケースに向いている方法です。
なお、契約内容によっては、将来的に再び不動産を買い戻せるオプションもあります。一時的な資金調達が目的の場合に、経済的に余裕ができたときに再度購入できるわけです。
しかし、リースバックには注意点も存在します。まず、通常の不動産売却に比べて売却価格が低く設定される場合が少なくありません。
また、リース契約終了後の更新が難しい場合もあり、その後の住まいを確保する必要が生じるリスクもあります。さらに、契約条件によっては賃料が高額になるケースもあるので、長期的な試算が重要です。
リースバックを検討する際には、これらのメリットとデメリットを十分に理解し、専門家に相談しましょう。正しい情報と適切な判断に基づいて進めれば、リースバックは有効な選択肢となりえます。
4章 土地を所有している人が自己破産するときの注意点
土地を所有している人が自己破産する際には、次に挙げる3項目に注意が必要です。
- 共有で所有している土地は破産者の持分のみ没収される
- 土地を所有している人が自己破産すると管財事件になる可能性が高い
- 土地の資産価値が高い場合は自己破産前に任意売却を検討する
それぞれの注意点の内容を、詳しく見ていきましょう。
4-1 共有で所有している土地は破産者の持分のみ没収される
自己破産する際に、複数の名義で共有している土地がある場合、その土地の破産者の持分(共有持分:比率=%で表される持分)のみが処分の対象です。
共有者が自己破産した場合、その持分は破産財団に組み入れられ、破産管財人が任意売却や競売を行う可能性があります。
そうなった場合は、ほかの共有者は赤の他人との共有となるわけです。その結果、共有物分割請求を受けたり、ほかの持分を買い取るよう求められたりなど、土地の運用や処分に制約が生じることがあり、想定していないトラブルが発生することがあります。
つまり、共有持分を没収されると、ほかの共有者に迷惑をかけてしまいかねません。したがって、自己破産をする際には、共有者への影響や可能性のある法的手続を十分に理解し、専門家の助言に沿って慎重に進める必要があります。
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4-2 土地を所有している人が自己破産すると管財事件になる可能性が高い
自己破産手続において、土地や不動産を所有している場合、それが管財事件となるかどうかは、所有している土地や建物の資産価値によって異なります。
管財事件とは自己破産者に、処分して債権者への配当に充当できる財産がある場合の破産手続です。
特に、土地や建物に住宅ローンが残っている場合、その評価が重要です。一般的に、住宅ローンの残高が土地や建物の評価額を上回る、いわゆる「オーバーローン」が確実な状態なら、破産手続は同時廃止として進行します。
同時廃止とは、裁判所が債権者への配当に回す財産がほとんどない場合に適用される破産手続です。管財事件のような、破産管財人が選任される管財手続などを省略して、書類上で進行します。
管財事件とされるかどうかは、裁判所の運用に依存する部分が大きく、各地の裁判所で取り扱いが異なるものです。
ただし、ローン残高が土地(家込み)の価値の1.5~2倍以上であれば、この不動産の件のみで同時廃止として取り扱うことが多く見られます。なぜなら、抵当権実行で競売され、余剰が出る見込みがほぼないからです。
なお、自己破産手続においては、すべての財産が処分されるわけではなく、生活に必要な一定の財産は手元に残せます。自己破産を検討する際には、所有している不動産の価値と残債務の状況を把握し、専門家の助言を得ながら進めましょう。
自己破産における管財事件については、費用や手順の詳細も含めて、以下の記事で解説しています。そちらもぜひ、参考にご覧ください。
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4-3 土地の資産価値が高い場合は自己破産前に任意売却を検討する
土地や住宅の資産価値が高い場合、自己破産前に任意売却を検討するのが賢明です。任意売却とは、債務者が不動産を通常の市場取引で売却し、その代金を債権者への返済に充てる手続を指します。
任意売却では、競売よりも高い価格で不動産を売却できる可能性があり、債務者にとって有利な結果を得られる場合が少なくありません。
ただし、依頼先の選択には注意が必要です。不動産業者によっては、任意売却による仲介手数料を得るため、手続のリスクを十分に説明しない場合があります。
たとえば、「任意売却をすれば残りの住宅ローンが免除される」といった誤解を招く説明を受けたケースもあるようです。任意売却後に残債が免除されるわけではありません。
そのような不利益を避けるためにも、任意売却の検討の際には、まずは法律の専門家である司法書士に相談するのが賢明です。
なお、任意売却の詳細や通常売却との違、メリットデやメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、参考にご覧ください。
任意売却を検討するなら、ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。法律のプロフェッショナルであるグリーン司法書士法人では、個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。
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まとめ
自己破産は、借金問題の解決策として有効ですが、その過程で土地や不動産が処分されます。しかし、土地の価値が非常に低い、あるいは借地権などの理由で土地が手元に残る場合もあるでしょう。
自己破産を検討する際には、自身の所有する土地や不動産の価値を正確に把握し、どのような手続が必要になるかを理解することが重要です。
また、自己破産を回避するための方法として、自己破産以外の債務整理を検討する、親族などに土地を購入してもらう、リースバックを活用するなどがあります。
なお、任意売却は競売よりも高値で不動産を売却できる可能性があり、債務者にとって有利な結果をもたらす場合があります。ただし、まず専門家である司法書士に依頼して進めましょう。
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