債務整理できる年齢に制限はある?高齢者や未成年者が選びたい手続とは

   司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

借金返済の知識
債務整理できる年齢に制限はある?高齢者や未成年者が選びたい手続とは

この記事は約 11 分で読めます。

債務整理で借金問題を解決したいけれど、60歳過ぎた高齢の方や未成年の方などの場合、年齢に制限はあるのか心配することもあるでしょう。

結論からお伝えすれば、債務整理に年齢制限はありませんが、年齢だけでなく状況などによって選ぶべき手続は異なります。

どの債務整理を選ぶべきか適切な判断が求められるため、次の4つを章ごとに説明していきます。

  1. 債務整理に年齢制限なし
  2. 高齢者が債務整理するときの4つの注意点
  3. 中間労働世代が債務整理する場合のポイント
  4. 未成年者が債務整理できる4つの借金

なお、年齢も踏まえてどの債務整理を選ぶべきか迷っている方は以下の記事も参考にされてください。

1章 債務整理に年齢制限なし

「債務整理」には次の3つの手続があります。

  • 任意整理
  • 個人再生
  • 自己破産

の3種類があります。

このいずれも「年齢制限」はなく、たとえば20代の労働世代の方でも70歳以上の高齢の方でも、条件さえ満たせば問題なく手続できます

それぞれ年齢制限がない理由は以下のとおりです。

任意整理貸金業者と個別に交渉する手続であり、年齢を制限する法律上の規定はない
個人再生民事再生法に基づく手続であり、民事再生法には年齢を理由とした手続の制限はない
自己破産破産法に基づく手続であり、破産法には年齢を理由とした手続の制限はない

なお、最近では10代でもクレジットカード利用などで悩むケースが増えつつあるようですが、仮に未成年者の場合でも債務整理は可能です。

2章 高齢者が債務整理するときの4つの注意点

債務整理に年齢制限はないため、60歳で定年退職した「高齢者」でも手続は可能です。

ただし高齢者が債務整理するときには、次の4つの注意点に留意しておく必要があります。

  1. 収入の要件にひっかかる可能性
  2. 住む場所を失う可能性あり
  3. 個人年金は処分の対象になる
  4. 成年後見人が必要になる場合あり

それぞれの注意点で該当する債務整理の種類をまとめると以下のとおりです。

任意整理個人再生自己破産
1.収入の要件にひっかかる可能性×
2.住む場所を失う可能性あり××
3.個人年金は処分の対象になる××
4.成年後見人が必要になる場合あり

それぞれ説明していきます。

2-1 収入の要件にひっかかる可能性

高齢者の場合、債務整理のうち「任意整理」と「個人再生」では、「収入」の要件にひっかかる可能性があります。

任意整理と個人再生は、どちらも「返済」を続けることを前提とした手続のため、収入の見込みがなければ選ぶことはできません

そこで、高齢者が債務整理する場合、収入の見込みの有無によって次のどちらかを検討しましょう。

  • 収入の見込みありなら任意整理か個人再生
  • 収入の見込みなしなら自己破産

それぞれ説明していきます。

収入の見込みありなら任意整理か個人再生

高齢者が債務整理する場合、この先も収入の見込みがあるのなら「任意整理」か「個人再生」を検討できます。

任意整理と個人再生は、どちらも借金が免除されるのではなく、3年程度返済を続けることになる手続です。

年齢よりも返済を続けることができるかが焦点となりますが、高齢者の場合には収入は年金のみという場合や、働きたくても仕事がみつからなかったり身体的な理由で働けなかったりというケースもあるでしょう。

そのため返済に充てる収入が見込めるときのみ、任意整理か個人再生も選ぶことができます。

例えば定年退職後も嘱託社員となるケースや自営業者のケースです。

収入の見込みなしなら自己破産

高齢者の債務整理において、収入の見込みがない場合には「自己破産」を検討することになります。

自己破産の場合、所有する財産の多くは手放さなければなりませんが、その代わりに借金は免されます。

返済義務がなくなるため、この先収入の見込みがない高齢者でも申請可能です。

なお、「年金」や「退職金」もすべて没収されるのではないかと不安になる方もいるでしょうが、公的年金は差し押さえの対象ではなく、退職金も受け取るタイミングによってすべて没収されるわけではありません。

返済の見込みが立たないのなら、最終的には自己破産をするしかないでしょう。

2-2 住む場所を失う可能性あり

債務整理のうち「自己破産」を選ぶと、「持ち家」は処分しなければならなため、住む場所を失う可能性があります。

そのため自己破産では、手続すると同時に、その後どこに住むのか考えなければなりません。

収入がない上に高齢者であれば、賃貸住宅は借りにくい状況に陥る可能性もあります。

この場合、頼れる親族などがいなければ、生活保護など利用するといった検討も必要となるでしょう。

2-3 個人年金は処分の対象になる

債務整理のうち、「自己破産」を選ぶと、任意で加入した「個人年金」も処分の対象になります。

高齢者の場合、債務整理で年金受給に影響はないか気になる方も少なくないでしょうが、公的年金は法律で差し押さえを禁止された「差押禁止財産」に相当するため、仮に自己破産しても処分されることはありません。

ただ、以下に該当する資産は、「換価」され返済に充てられます。

  • 99万円を超える現金
  • 売却して現金化したとき1点20万円を超える財産

1点20万円を超える財産には、加入している生命保険の「解約返戻金」や将来受け取る個人年金保険の「年金」も含まれるため、処分されてしまいます。

2-4 成年後見人が必要になる場合あり

債務整理を希望する高齢者が仮に「認知症」でも手続はできますが、「個人再生」と「自己破産」では注意が必要です。

認知症は判断能力」が十分とはいえない状態のため、裁判所への申立ては困難と考えられることから、「成年後見人」が必要になる可能性があります。

成年後見人とは

成年後見人とは、認知症などで判断能力が著しく低下した方の代わりに、財産を保護・管理する人のことです。

一般的に成年後見人になるのは「親族」が多いですが、家庭裁判所が選定するため「弁護士」や「認定司法書士」などの専門家が就任する場合もあります。

「任意整理」においても、成年後見人が必要な状況では本人が返済計画などについて適切な判断をすることができません。成年後見人が代わって判断する必要がありますので、任意整理手続きにおいても無関係とは言えません。

この場合には、専門家に相談しどの方法が最適か判断してもらうことをおススメします。

3章 中間労働世代が債務整理する場合のポイント

20~50代の「中間労働世代」が債務整理する場合、年代ごとの「ライフイベント」などに注意しつつ、どの手続を選ぶか検討したほうがよいでしょう。

特に30~40代は比較的収入が安定しやすい反面、マイホーム購入や子どもの教育費などで出費がかさみやすくなるため、債務整理する場合にもそれらを踏まえた検討が必要になります。

ただ、年齢や状況により様々なケースが考えられるため、最適な方法を選ぶためには専門家に相談したほうが安心です。

以下、年代ごとの出費がかさみやすいライフイベントについて、ぜひ参考にしてください。

20代まだ収入が低いため資金不足になりやすい奨学金返済の開始により手元にお金が残りにくい友人との付き合いやイベント参加などで出費が増えやすい金銭感覚が十分身についていないこともある
30代収入が増えるため高額なローン契約をしやすい自動車やマイホームなどで高額なローンを契約しやすい結婚や出産などで新居や養育費などの出費が増えやすい
40代子どもの習い事や塾など教育費がかかりやすい住宅ローンの負担が大きくなりやすい健康問題が発覚し医療費負担が増えやすい親の介護問題が表面化し出費が増えやすい冠婚葬祭など急な出費が多くなりやすい
50代子どもが大学や専門学校に進学するなど教育費の負担がさらに増えやすいマイホームの修繕やバリアフリー化などリフォーム費用負担が増えやすい自身の健康問題に加え親の介護にお金がかかりやすい突然のリストラなどで収入が途絶えるリスクが出てきやすい
60代定年を迎え正社員から契約社員へ変わるなど収入が低下しやすい退職金で住宅ローンを一括返済し家計が悪化しやすい借金返済に充てる資金目途が年金と退職金のみという場合も多い

4章 未成年者が債務整理できる3つの借金

2022年4月からは成人年齢が「18歳」に引き下げられ、これまでであれば未成年者として制限されていた18歳や19歳の方でも、保護者の同意を得ることなくいろいろな「契約」を結ぶことができるようになりました。

しかし、18歳未満の人は現在も未成年として扱われます。

そして保護者の同意なく未成年者がした借金については、親が取り消せば最初から「なかったこと」になります

では、たとえ未成年者がした借金でも、「有効」と認められ債務整理しなければ解決しにくいのはどのような借入れでしょう。

該当するのは、主に次の3つの借金です。

  1. 保護者の同意ありの奨学金
  2. 年齢詐称による借金
  3. 保護者の同意書を偽造した借金

それぞれ説明していきます。

4-1 保護者の同意ありの奨学金

保護者の「同意」のもとで借りた「奨学金」は、たとえ未成年者の借入れでも有効と認められます。

そのため債務整理の対象ではありますが、奨学金の「貸与型」には有利子と無利子の2つがあり、「有利子」でも年3%が上限のため任意整理には向いていません

また、奨学金の債権者は日本学生支援機構ですが、延滞金や利息カットには応じないといわれているため、仮に利息がカットされても大きな借金減額は期待できないといえるでしょう。

そして奨学金は保護者が「連帯保証人」になっている場合が多く、債務整理で減額または免除された借金は、連帯保証人である保護者が代わりに返済することになってしまいます。

4-2 年齢詐称による借金

未成年者の「年齢詐称」による借金も有効と認められます。

親の同意を得ず、未成年者が単独で借金をした場合には、その契約は取り消しできます。

しかし、未成年者なのに成年と偽って契約を結んだ場合、基本的にはその契約を取り消すことはできず、借金として返済義務を負います。

4-3 保護者の同意書を偽造した借金

繰り返しになりますが、未成年者が借金するときには保護者の同意が必要であるため、同意を得ていなければ取り消しできます。

しかし、保護者から同意を得たとするため「同意書」を偽造して借りた借金については取り消しできず、返済義務を負うことになります。

なお、これらの場合に、もし契約そのものが無効だとか取り消したいとか言いたい場合には、弁護士に相談することをお勧めします。

まとめ

債務整理には年齢制限がなく、何歳でも借金問題を解決するための手続として利用できます。

ただ、債務整理の中でも任意整理や個人再生については、借金が免除されるわけではなく返済を続けなければならないため、安定した収入がなければできません。

たとえば高齢者の場合、収入が年金のみの場合や働けないなどの理由で収入の見込みがたたないこともあるでしょう。

その場合には自己破産を選ぶことになりますが、持ち家など処分する必要が出てくるため、その後の住まいなどまで検討した上で慎重に判断することが必要です。

借金問題を解決させずに後回しにすると、状況はどんどん悪化し、リスクの高い手続を選ばなければならなくなります。

年齢に関係なく、借金問題で困っているときには、できるだけ早くグリーン司法書士法人グループへご相談ください。

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