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- 年金だけで生活するのは苦しい可能性が高い
- 年金生活が苦しい場合は公的支援制度を活用する方法もある
- 生活が苦しく借金をしている場合は債務整理がおすすめ
- 自己破産をしても年金は失わないが個人年金は処分の対象になる
年金の受給年齢の引き上げや近年の物価高など、テレビやネットで暗い話題を耳にするたびに「年金だけで生活するのって本当にできるのだろうか?」と不安に感じる方も少なくないでしょう。
令和4年の厚生労働省による国民生活基礎調査では、公的年金のみで生活している方は44.0%でした。しかし、実際には年金だけで生活するのは苦しい状況となるでしょう。
この記事では、年金生活が苦しい原因と対処法を解説します。年金生活がなぜ苦しくなるのかチェックして、将来の不安を解消しましょう。
目次 ▼
1章 年金は月にいくらもらえる?
実際のところ、年金は月にいくらもらえるのでしょうか。まずは厚生労働省のデータをもとに、令和6年度の年金を見ていきましょう。
令和5年度(月額) | 令和6年度(月額) | |
---|---|---|
国民年金 | 66,250円 | 68,000円 |
厚生年金 | 224,482円 | 230,483円 |
年金額は前年度から2.7%の引上げになりましたが、近年の物価高などから十分な生活ができないと感じるかと思います。もし少ないと感じた場合は、年金だけで生活するのが苦しい可能性があるでしょう。
また、国民年金に加入していた場合は毎月の生活がより厳しくなるので、退職前するに資金計画を立てておく必要があります。
2章 年金だけで生活するのは苦しい
毎日の生活費や子どもの教育費などで貯蓄がままならない場合、年金だけで生活できるのか心配な方も多いのではないでしょうか。結論から言うと、年金だけで生活するのは苦しいといえるでしょう。
年金だけで生活するのが苦しい根拠として、総務省の令和4年の支出データにあります。
年金を受給している世帯 | 毎月の平均消費支出 |
---|---|
65歳以上の夫婦のみの無職世帯 | 236,696円 |
65歳以上の単身無職世帯 | 143,139円 |
65歳以上の夫婦のみの無職世帯を見ると、毎月の消費支出は平均で236,696円でした。厚生年金の月額受給額が230,483円なので、毎月ギリギリの生活になることが予想されるでしょう。
65歳以上の単身無職世帯は、毎月の消費支出が平均で143,139円でしたが、国民年金で生活している場合や賃貸物件に住んでいて家賃がかかる場合などは年金以外に貯蓄で補わなければいけません。
さらに、病気や入院などで思わぬ出費が増えると年金だけで生活するのは不可能です。今後、物価の値上がりなど支出が増える可能性を考えると年金以外で収入を増やすか支援を受ける必要もあるでしょう。
3章 年金生活が苦しくなる原因
毎月の平均消費支出を見ても、普通に生活しているだけでも年金だけで生活するのは苦しいといえるでしょう。さらに、予期せぬ支出が発生した場合はさらに負担が大きくなります。
では、平均よりも支出が増えて年金生活が苦しくなる原因を見ていきましょう。
3-1 物価の値上がりによる生活費の負担が重くなっている
物価が上昇すると、日常の食費や光熱費、生活用品などの支出が増えます。しかし、年金の額は支出に見合うように増えないことが多いため、年金受給者にとって経済的な負担が重くなるでしょう。
特に年金が主な収入源である高齢者は、物価上昇に対応する収入増加の手段が限られており、節約しても生活費がカバーできない状況に陥る可能性があります。
3-2 介護や医療費などの支出が多い
年齢を重ねると健康状態が悪化しやすく、病院への通院や薬代、治療費がかさむケースが増えます。また、介護が必要になると、施設の利用料やヘルパーの費用が発生するため介護費が年金の範囲を超えてしまう可能性もあるでしょう。
医療や介護の支出は長期的に続くことが多いため、貯金を使い果たしたり、他の生活費を削らざるを得ない状況に陥る可能性があります。
3-3 子どもの学費や仕送りなどの支出が多い
高齢になってからも子どもの大学費用や生活費を支援し続けると、年金生活者にとって大きな経済的負担となります。
特に、定年退職後は収入が年金に限られるため、学費や仕送りのために貯金を取り崩したり、生活費を削る必要が出てくるケースも多いです。
長期間続くと、老後に備えていた資金が不足し、自分の生活費や医療費がまかなえなくなるリスクが高まります。子どもへの支援は重要ですが、自分自身の老後生活を守るためにも、無理のない範囲での支援を考えることも大切です。
3-4 住宅ローンの返済が終わっていない
住宅ローンは働いている間に完済するケースが多いですが、定年後も返済が残っている場合は、年金収入だけでは月々の返済が大きな負担となります。
年金は現役時代の給与に比べて少ないため、生活費や医療費に加えて住宅ローンの返済を続けることが難しくなり、貯蓄を取り崩すこともあるでしょう。返済が遅れると、家を手放さなければならないリスクがあるため老後の生活がより厳しくなるので注意が必要です。
3-5 年金そのものが少ない
年金の額は、現役時代の収入や納付期間に基づいて計算されます。そのため、非正規雇用や自営業だった方は、納付額が少なかったり納付期間が短かったりで受給額が十分でない場合があります。
年金の基本額が生活費や医療費、介護費用を払うには不十分なことも多く、貯蓄を取り崩して生活することを余儀なくされてしまうでしょう。
3-6 家の修繕費などがかかる
持ち家に長年住んでいると、屋根の修理や外壁の塗装、水回りの設備交換など定期的なメンテナンスが必要になります。家の修繕費は高額になることが多く、年金だけで生活している高齢者にとって大きな負担となるでしょう。
特に、急な修繕が必要になった場合、貯蓄が足りなければ借金に頼ることになるため、生活苦に陥る原因につながります。
4章 年金生活が苦しい場合の対処法
医療の発達や近年の健康ブームにより、今や人生100年時代といわれています。65歳から年金を受給した場合でも数十年と年金生活が続く可能性があるでしょう。
このまま生活費が足りないまま年金生活を続けてしまうと、やがて借金で生活費を補うことになってしまいます。年金生活が苦しい場合は、借金をする前に生活を立て直しましょう。
では、年金生活が苦しい場合の対処法を解説します。
4-1 定年後も働く
年金だけでは生活が苦しい場合、再雇用制度やシニア向けのアルバイト、パートタイムの仕事に就くことで追加の収入を得ることができます。
生活費の不足を補い、貯蓄の取り崩しを抑えることができるため、経済的に立て直すことができます。また、仕事を続けることで社会とのつながりを保ち、健康維持にもつながるメリットも大きいです。
4-2 年金生活者支援給付金制度を利用する
年金生活者支援給付金制度とは、所得が一定額以下の年金受給者を対象に、生活を支えるための給付金を支給する制度です。障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取っている低所得者が対象となり、年金に加えて毎月一定の金額が支給されるため、生活費の補填ができます。
受給できるかどうかは年金事務所などで確認できるので、生活が苦しいと感じた場合は積極的に活用して生活費の負担を軽減しましょう。
4-3 生活困窮者自立支援制度を利用する
生活困窮者自立支援制度とは、収入が少なく生活に困っている人を支援するための制度です。自治体がサポートをしており、さまざまな支援メニューがあります。
例えば、生活費の補助や家賃の一部を支援する住居確保給付金や、家計の管理や相談ができる支援などです。年金だけでは生活が成り立たないと感じた場合、最寄りの自治体に相談して、生活困窮者自立支援制度を活用しましょう。
4-4 家族にサポートしてもらう
年金だけでは生活費が苦しい場合は、家族に経済的支援や日常生活の手助けをお願いするのも方法の一つです。家族と同居することで家賃や光熱費を分担したり、食費や医療費の一部をサポートしてもらったりすることで、生活費の負担が大幅に減ります。
また、家族の協力によって精神的な安心感も得られるので孤立感を防ぐこともできるでしょう。年金生活の厳しさを共有し、無理のない範囲で家族に協力をお願いするのもおすすめです。
4-5 生活の固定費を見直す
生活が苦しい場合は、家賃や光熱費、保険料や通信費などの固定費を見直しましょう。固定費を削減することで毎月の出費を減らし、家計の負担を軽減することができます。
家賃が高い場合は家を小さくしたり、不要な保険や契約を見直したりするのも有効です。固定費を減らすことで、年金生活でも安定した家計管理がしやすくなるため生活の質を維持できます。
4-6 生活保護を受ける
生活保護は、最低限の生活を維持するために国が提供する支援制度です。年金だけでは生活が成り立たない場合に、足りない分を補う形で支給されます。
生活保護を受けると生活費だけではなく、医療費や介護費用も支援されるため、経済的な負担が大幅に軽減できるのもメリットです。ただし、受給するには一定の条件があり、資産や収入が基準を満たしている必要があります。生活が苦しくなったときには、無理をせず早めに自治体に相談して生活保護の申請を検討しましょう。
4-7 不要なものを売る
自宅にある使っていない家具や家電、趣味で集めたコレクションなどをフリマアプリやリサイクルショップで売ることで手軽に現金化できます。特に、高価なブランド品や貴金属などは思わぬ金額になることもあるでしょう。
また、不要なものを売ると家の中が整理され、スペースが有効活用できるメリットもあります。年金だけでは補えない生活費を一時的に補充して、少しでも家計の負担を軽減しましょう。
5章 借金が原因で年金生活が苦しい場合は債務整理を検討しよう
借金の返済が原因で年金生活が苦しい場合は、債務整理を検討しましょう。債務整理は、借金を減額したり返済条件を緩和したりできる手続きです。
債務整理は、大きく分けて3種類の方法があります。借金の減額幅や手続きの特徴が異なるので、借金の総額や経済状況など自分に合った方法を確認しましょう。
債務整理の種類 | 手続きの方法 | こんな人におすすめ |
---|---|---|
任意整理 | 利息や手数料など元金以外の支払いをカットする手続き | 借金の返済が長期化して利息が膨らんでしまった人 減額する借金を選んで返済したい人 |
個人再生 | 借金そのものを大幅にカットして完済を目指す手続き | 借金の総額が大きい人 家や車など失いたくない財産がある人 |
自己破産 | 借金自体を免除して支払い義務をなくす手続き | 借金が返済不能に陥った人 貯蓄がなくこれ以上返済ができない人 |
年金で生活をしている方は収入が限られているため、早めに専門家に相談することで生活を立て直す助けになります。無理な返済を続ける前に、ぜひ債務整理を検討しましょう。
5-1 自己破産をしても年金は失わない
自己破産をすると、借金が全額免除になりますが、必要最低限の財産以外は失ってしまいます。そのため、年金を今後受給できないのではと不安に感じる方もいるかもしれません。
しかし、年金の受給そのものが止められたり年金口座が差し押さえられたりすることはないです。年金は、高齢者の最低限の生活を支える重要な収入源とされているため、自己破産後も引き続き受け取ることができます。
ただし、株や積立投資などそのほかの財産は処分の対象となるため注意しましょう。自己破産を検討する場合は、専門家に相談して自分の状況に合った対処法を確認することが大切です。
5-2 個人年金は処分の対象になるので注意しよう
公的年金とは異なり、個人が民間の保険会社などで積み立てた個人年金は資産として扱われます。そのため、自己破産の手続きで処分の対象になるので注意しましょう。
自己破産の手続きによって、積み立ててきた個人年金を受け取ることができなくなるため、老後の資金計画に影響を及ぼす可能性があります。
債務整理の手続きで個人年金がどのように扱われるかをしっかり確認し、専門家と相談しながら進めようにしましょう。
6章 年金生活が苦しいなら早めの相談がおすすめ
物価の値上がりや医療費などの支出、住宅ローンの支払いや家賃の固定費など年金だけでは生活が苦しい方も少なくありません。年金生活が苦しいと感じる場合は、収入を増やしたり公的支援を利用したりと毎月の支出を軽減させましょう。
借金を増やしてしまうと、借金の返済に追われてしまうため、より生活が苦しくなることが予想されます。早い段階で専門家に相談して生活を立て直すことが大切です。
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