自己破産をしても公的年金は貰える!受け取れない年金との違いは?

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

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自己破産をしても公的年金は貰える!受け取れない年金との違いは?

この記事は約 13 分で読めます。

全ての借金が免除になる自己破産。

経済的な理由で自己破産を選んだ方の中には、税金や年金の支払いを滞納してしまい今後年金が受け取れなくなってしまうのではと心配な方も少なくありません。

結論から言うと、自己破産をしても原則年金を受け取ることができますが、一部受け取ることができない年金もあるので注意が必要です。

この記事では、自己破産をした場合の年金について解説いたします。

また、年金受給者の自己破産についても解説するので、自己破産を検討している方はご確認ください。

借金や税金の滞納による年金の差し押さえについては、以下の記事をご確認ください。

1章 自己破産をしても受け取れる年金

自己破産の手続きでは、必要最低限のお金や家電、家具以外は全て失ってしまいます。

ほかにも、20万円を超える「解約返戻金」がある保険や株なども売却しなくてはいけません。

更に、退職金を受け取った後に自己破産の手続きをする場合は、20万円を超えてしまったら一部の退職金も受け取れなくなってしまいます。

失う財産が多いことから「今後の年金も受け取れなくなるのでは」と心配になる方もいるのではないでしょうか。

しかし、ほとんどの年金は自己破産をしても受け取ることができるのでご安心ください。

主に、受け取れる年金は以下の4つです。

  1. 公的年金
  2. 企業年金
  3. 障害年金
  4. 遺族年金

この章では、自己破産をしても受け取れる年金について順に詳しく解説していきます。

1-1 公的年金

国民年金や厚生年金などの公的年金は、差押え禁止財産に該当するため、自己破産をしても受給可能です。公的年金は生活をしていく上で最低限必要な財産として認められています。

公的年金とは、以下の年金のことを指します。

年金の種類加入対象者
厚生年金会社など雇用されている場合に加入
公務員共済年金公務員や私立学校教職員が加入

これらの公的年金は個人の破産手続きの対象外となります。

つまり、自己破産によって他の債務が免除されたとしても、公的年金は影響を受けずに受け取ることができます。

1-2 企業年金

企業年金とは、企業や団体が従業員のために運営する年金制度のことです。

一般的には従業員が雇用されている間に加入し、定年退職後に給付される年金を受け取ることができます。

ただし、企業年金に加入するためには企業の従業員であることが条件です。

自己破産後も企業の従業員として雇用されている場合は、条件を満たしていれば企業年金への加入が可能なため将来的に年金を受け取ることができます。

1-3 障害年金

障害年金とは、健康状態や能力に障害がある人々に支給される年金のことです。

障害によって労働能力が制約されていることから、収入を得ることが難しい場合に経済的な支援を受けることができます。

障害年金を受け取るためには、厚生労働省の指定する基準に基づいて医師の診断や検査結果などの書類を提出し、障害の程度が認定される必要があります。

障害年金は、身体障害や精神障害、知的障害などのさまざまな障害に対して支給されます。

どの障害年金も自己破産による影響はないので、問題なく受け取ることが可能です。

1-4 遺族年金

遺族年金とは、亡くなった配偶者や保護対象者(親や祖父母など)が亡くなったあとに遺族に支給される年金のことです。

自己破産をしている場合でも、配偶者や保護対象者が死亡した場合は遺族年金を受け取ることができます。

配偶者や保護対象者の死亡診断書などの証明書類を提出して、遺族年金を受け取りましょう。

2章 自己破産をすると受け取れなくなる年金

ほとんどの年金は受け取ることが可能ですが、一方で自己破産をしてしまうと受け取れなくなる年金もあります。

受け取れない可能性がある年金は、以下の2つです。

  1. 個人年金
  2. 確定拠出年金

共通して言えるのは、強制的に加入する年金ではなく、個人の意思で追加で加入していた年金かどうかということです。

追加で年金加入していた分は、受け取れない可能性があるので注意が必要です。

2-1 個人年金は個人の財産と見なされる

個人年金とは、自己破産者自身が加入していた個人的な年金制度のことです。

会社員や個人事業主として働いている場合、必ず加入する公的年金がありますが、そのほか追加で積立をすることによって老後に受け取れる個人年金に加入することができます。

この個人年金は、自己破産者の財産と見なされてしまうため、個人年金の契約が解約される場合もあります。解約によって強制的に契約終了となり、支給が停止されてしまいます。

もちろん、自己破産によって経済的な困難が生じてしまい、個人年金の支払いが不能になる場合も解約になるため支給されることはありません。

ただし、契約内容によっては自己破産後でも一部の支給が継続される場合もあるので、個人年金に加入している場合は確認しておきましょう。

2-2 確定拠出年金は換価処分対象となる可能性も

確定拠出年金とは、個人が自己負担で加入して自己破産者自身が積み立てていた個人年金のことです。

自己破産の手続きでは、債権者に対して一定の財産や資産を売却して返済するため、確定拠出年金も取り崩しの対象となり、一部または全額の受け取りが制限されることがあります。

確定拠出年金は任意加入制度のため、自己破産後に再度加入することは可能ですが再加入に制約がかかる可能性があるので注意しましょう。

3章 年金受給中の人が自己破産をする場合は?

高齢者や障害年金を受給している方の中には、年金暮らしの生活が困難になり自己破産を選ぶケースは少なくありません。

近年では老後2,000万円問題が話題となったこともあり、十分な資金を貯めることができずに老後破産へ追い込まれる方も増えてきています。

自己破産は必要最低限の財産以外は失うこともあり「年金も失うとなるといよいよ生活できないのでは…」と心配になることでしょう。

この章では、年金受給中の自己破産について解説していきます。

3-1 年金が差し押さえられることはない

結論から言うと、年金受給中に自己破産をする場合でも年金が差し押さえられることはほとんどありません。

自己破産の手続きが完了し免責が認められても、年金受給額や年金資産は差し押さえの対象外となります。

ただし、税金の滞納や公共料金の未払いなど、自己破産によって免責されない特定の債務については年金への差し押さえが行われる可能性があるので注意が必要です。

3-2 年金が振り込まれる銀行口座が差し押さえられるケースはある

ここで注意しておきたいのが、年金が振り込まれる銀行口座が差し押さえになるケースはあることです。

例えば、毎月15万円の年金が貰える場合、年金自体は差し押さえの対象ではないので、そのまま指定の銀行口座に15万円が振り込まれます。

しかし、年金が口座に振り込まれた時点で「年金」ではなく「預金残高」の扱いになるため、自己破産をすると金額によっては換価処分の対象になります。

そのため、生活のための15万円だったとしても「預金残高」になると差し押さえられてしまう可能性があります。

年金が差し押さえられてしまうと生活ができないという方は、あらかじめ生活分の年金を口座から引き出しておくか、受け取り口座を変更しておくことをおすすめします。

4章 加入している年金の種類の確認方法

自分が加入している年金が自己破産後も受け取れるのか心配だという方は、加入している年金の種類を確認しましょう。

確認方法は3つあります。

  1. 年金に関する書類や通知を確認する
  2. 年金証書を確認する
  3. 企業や年金事務所に連絡する

では、順番に確認方法を見ていきましょう。

4-1 年金に関する書類や通知を確認する

国民年金や厚生年金、企業年金などの加入に関する書類や通知、納付書などを確認しましょう。

また、加入している年金制度によっては年金手帳に年金の受給情報や加入情報が記載されているのでこちらでも確認することができます。

4-2 年金証書を確認する

年金証書とは、年金を受ける権利があることを証明するものです。

各種の届書を提出するときなどに使われるもので、年金を受けている方の身分証明書のようなものです。

どの年金を受け取れるのか分かるので、手元にある場合は確認しましょう。

4-3 企業や年金事務所に連絡する

加入している年金を確認したい場合は、企業や担当の年金機関に問い合わせることができます。

具体的な問い合わせ先は、年金手帳や通知書、公的な年金機関のウェブサイトなどに記載されています。

企業年金の場合は、所属している企業に連絡して確認することができます。人事部や給与担当者などに加入している年金を聞いてみましょう。

また、企業によっては企業のウェブサイトや社内通知などで確認することもできます。

5章 【年金を支払う場合】自己破産しても公的年金の支払いは免除されない

ここまで、自己破産後に年金を受け取れるケースと受け取れないケースについて解説していきました。

ここからは、年金を支払っている側が自己破産をするケースについて見ていきましょう。

経済的に困っていたり、借金の返済に追われている場合は年金の支払いが難しく滞納してしまう場合も少なくありません。

しかし、自己破産をしても公的年金の支払いは免除されないので注意しましょう。

年金は国民の義務のため、自己破産をしても支払わなければいけません。自己破産をしても年金を受け取れる分、必ず支払う必要があることを覚えておきましょう。

5-1 自己破産で免除されない支払いは?

年金だけでなく、自己破産手続きによって免除されない支払いには他にもあります。

例えば、公共料金や税金も免除にならない支払いの一つです。税金や公共料金は国民の義務と見なされるので、自己破産をしても支払わなければいけません。

他にも、未払いの損害賠償や慰謝料、養育費なども免除になりません。

個人の過失や法的責任に基づく賠償金は自己破産の対象外となるので注意しましょう。

特に、自己破産で免除されない支払いについては差し押さえまでのスピードが速いため、他の借金よりも優先して支払うことを意識しましょう。

自己破産後の免除されない支払いについては、以下の記事を参考にしてください。

6章 自己破産後に生活保護を受給することもできる

自己破産の手続きをして債務が免除された後は、必要最低限の財産しか手元に残らないため生活が困難になる方も少なくありません。

自己破産をして借金の苦しみから逃れたものの、生活を立て直すことができずにまた借金に手を出してしまうのであれば元も子もありません。

もし、生活することができないと判断したのであれば、生活保護の申請を視野に入れましょう。

生活保護は、最低限の生活費や暮らしを支援する制度です。自己破産後に満足なお金がつくれない事情があればサポートを受けるのも手です。

ただし、生活保護の受給資格は、収入や財産、世帯構成、生活費など様々な要素に基づいて判断されるため、誰しも受けられるわけではありません。

しかし、経済事情で自己破産を選択したのであれば生活保護が受けられる可能性もあります。

まずは地方自治体や社会福祉事務所などの担当機関に相談しましょう。

6-1 生活保護の受給中に借金はできないので注意

生活保護は最低限の生活費や暮らしを支援する制度のため、借金の返済に充てたり追加でお金を手に入れる行為はその趣旨に反するとされています。

もし生活保護を受けている間に新たに借金をした場合は、受給資格の喪失や返還請求を受ける可能性があります。

ただし、緊急の医療費や生活必需品の購入に関する費用など、特別な事情がある場合は一時的な借入が認められることがあります。

しかし、こういったケースでも事前に関係機関に相談し、許可を得る必要があります。

ここで注意したいのが、自己破産後は消費者金融で借入ができないということです。

そのため、地域の社会福祉事務所や相談窓口に相談し、国や県から融資を受けたり支援を受けるようにしましょう。

中には「審査不要!」「自己破産後も借入OK!」など、甘い言葉で誘ってくる業者もいますが、全て闇金業者といっても過言ではありません。絶対に借入をするのはやめましょう。

闇金の手口の恐ろしさと勧誘については、以下の記事で詳しく解説しています。

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7章 自己破産での年金の影響はあまり考えなくてOK

この記事では、自己破産をした場合の年金について解説しました。

結論、自己破産をした後に年金が受け取れない心配はあまりしなくて良いでしょう。

ただし、一部例外として追加で加入した年金は財産扱いになるため、受け取れない可能性もあるため注意が必要です。

もし受け取れない年金を支払っていて自己破産を考えている方は、他の債務整理も検討することをおすすめします。

自己破産に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。

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自己破産をすると年金は受け取れない?
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自己破産では99万円を超える現金や20万円を超える預貯金は処分の対象となります。
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