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ご結婚されている方が、自己破産をする場合家族への影響を考えて離婚を選択されることもあるでしょう。
自己破産と離婚のタイミングについて特に決まりはありませんが、実務の話をすると、自己破産の手続き後に離婚をするのがおすすめです。
自己破産前に離婚してしまうと、財産分与や慰謝料の支払いが財産隠しと疑われる可能性があるからです。
もし、自己破産の前後に離婚をする場合には婚姻費用や慰謝料、養育費などお金に関することも注意しておきましょう。
この記事では、自己破産前後に離婚をする場合の注意点などについて解説します。
目次 ▼
1章 自己破産をするなら、離婚前のほうが良い
自己破産と離婚を並行して考えていて、離婚のタイミングを選べるのであれば、離婚前に自己破産をするのが得策です。
ただし、相手方からDVを受けていたり、債権者から厳しい取り立てを受けて家族に迷惑をかける恐れがあったりと緊急性が高い場合にはその限りではありません。
ここでは、自己破産を離婚前にするべき理由について解説します。
【理由①】財産分与や慰謝料の支払いが財産隠しと疑われる可能性がある
自己破産の手続きをする際、裁判所は過去の財産の流れを調査します。
離婚時に財産分与や慰謝料として相手に必要以上の財産を渡してしまうと、その行為が財産隠しと判断され、自己破産が認められなくなる可能性があります。
【理由②】管財事件になり手続きの手間と費用が余計にかかる
もし、裁判所に財産隠しを疑われてしまうと、自己破産手続きが管財事件として扱われてしまいます。
管財事件は、簡易的な手続きである同時廃止よりも手間と費用がかかります。同時廃止であれば、手続き期間が半年程度、費用が1〜5万円程度である一方、管財事件では期間が1年程度、費用が50万円ほどかかります。
本来であれば同時廃止で手続きできたところを、離婚によって管財事件になってしまっては損をしてしまうことになります。
2章 離婚前に自己破産をする場合の注意点
離婚前に自己破産をする場合には、以下の点について注意しましょう。
- 配偶者が保証人になっている場合配偶者が一括請求を受ける
- 別居中の婚姻費用は自己破産をしても免れない
- 自己破産中には滞納している婚姻費用を支払うことができない
それぞれ詳しく解説します。
2−1 配偶者が保証人になっている場合配偶者が一括請求を受ける
配偶者が借金やローンの保証人になっているケースもあるかと思います。あなたが自己破産をすると、保証人である配偶者に借金が一括で請求されてしまします。
なお、保証人は離婚をしたとしても解除されるわけではありません。
借金額によっては、配偶者も自己破産をせざるを得なくなってしまうリスクがあることは理解しておきましょう。
2−2 別居中の婚姻費用は自己破産をしても免れない
配偶者の収入があなたより低い場合、別居中は婚姻費用として生活費を支払う必要があります。
なお、婚姻費用とは夫婦と未成熟の子供がそれぞれの収入に対して最低限の社会的生活を維持するための生活費を指します。
この婚姻費用は非免責債権となるため、自己破産をしたとしても支払い義務は免れません。
そのため、毎月通常発生する婚姻費用は破産手続中でも支払わなければいけません。また、婚姻費用は非免責債権に該当するため、支払ったとして偏頗弁済には当たることもありません。
2−3 自己破産中には滞納している婚姻費用を支払うことができない
借金の支払いが難しい状況だと、婚姻費用の支払いも難しく、滞ってしまっていることもあるでしょう。
その場合、配偶者は債権者ということになります。
債権者である以上、他の消費者金融などと同列・平等に扱う必要があります。
自己破産の手続き中(専門家に自己破産を依頼した後から免責許可が下りるまで)は、特定の債権者に偏って返済することは法律上認められていません。そのため、婚姻費用を滞納していたとしても、それを支払うことはできないので注意しましょう。
また、支払いを受ける側の方も滞納されると生活に困ってしまうのはよく分かりますが、相手方が自己破産手続き中は請求しないようにするべきです。滞納分は自己破産の手続きが終了してから請求するようにしましょう。
3章 離婚後に自己破産をする場合の注意点
離婚後に自己破産をする場合には、以下の点に注意しましょう。
- 離婚したからといって保証人から外れるわけではない
- 自己破産をしても慰謝料の支払いが免除されない可能性もある
- 自己破産をしても養育費の支払い義務は免れない
- 自己破産手続き中は滞納している慰謝料や養育費の支払いはNG
- 財産分与や慰謝料が過大である場合、財産隠しを疑われる可能性がある
- 元配偶者が破産者名義の家に暮らしている場合、退去してもらう必要がある
それぞれ詳しく解説します。
3−1 離婚したからといって保証人から外れるわけではない
自己破産を理由に離婚したいと考える要因の一つとして「自分に迷惑をかけてほしくない」という方が多いかと思います。しかし、実際には自己破産をしたことで配偶者に対して直接的な影響を与えることはありません。
可能性として挙げられるのが、破産者の配偶者が保証人・連帯保証人になっているというケースです。その場合、自己破産をすると保証人・連帯保証人に借金の請求が一括でいくこととなり、共倒れ状態になってしまいます。
しかし、これは離婚している・していないは関係ありません。離婚しただけで自動的に保証人から外れるわけではないのです。
そのため、離婚後に元配偶者が破産した場合、その時点では赤の他人になっていたとしても、保証人だとして一括請求を受けることになります。
3−2 自己破産をしても慰謝料の支払いが免除されない可能性もある
あなたが有責配偶者である場合、離婚時に慰謝料を請求される可能性もあります。
自己破産をするほど生活が困窮している状態では、慰謝料の支払いが厳しいという方もいるでしょう。
その際「自己破産をすれば、慰謝料の支払いも免れる」と思うかもしれませんが、免除されないケースもあります。
DVやモラハラなど悪意に基づく慰謝料は非免責債権に該当し、自己破産をしても免除されないものと法律で定められています。
もし、離婚時にそのような行為に対して慰謝料の支払いを命じられたら、自己破産をしても支払わなければ行けないということは理解しておきましょう。
なお、慰謝料が請求されるケースとして、不貞行為(不倫)がよくありますが、不倫に対する慰謝料は非免責債権には該当しません。
3−3 自己破産をしても養育費の支払い義務は免れない
養育費は親が子供に支払う義務のあるお金であり、非免責債権に該当します。
そのため、自己破産をしても養育費の支払いは免れません。
具体的な取り扱いは婚姻費用の場合と同じです。養育費について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてください。
3−4 自己破産手続き中は滞納慰謝料や滞納養育費の支払いはNG
離婚後、慰謝料や養育費の支払いを滞納していたとしても、自己破産手続き中(専門家に自己破産を依頼した後から免責許可が下りるまで)は返済してはいけません。
慰謝料や養育費を滞納している場合、元配偶者は債権者となります。自己破産手続き中に特定の債権者に対して偏って返済する行為は「偏頗弁済」として法律で禁止されています。
万が一返済してしまうと、自己破産が認められなくなる可能性がありますので、返済は免責が下りた後に行うようにしましょう。
また、元配偶者の方も、支払ってほしい気持ちは十分わかりますが、自己破産手続き中は請求せず、手続きが終わるのを待つようにして下さい。
3−5 財産分与や慰謝料が過大である場合、財産隠しを疑われる可能性がある
離婚時には財産分与として、財産を分け合うことになります。また、ご自身が有責配偶者の場合には慰謝料を請求されることもあるでしょう。
しかし、この財産分与や慰謝料が過大である場合、財産隠しを疑われる可能性があります。
通常、自己破産をすると破産者が所有している財産は処分され、債権者に分配されます。そのため、本来分配されるはずの財産を破産者が直前に財産を処分することは認められません。
財産分与や慰謝料として元配偶者に財産を渡してしまうと「財産を隠すために、離婚したのでは?」と判断されてしまう可能性があります。
社会通念上、妥当と思われる金額であれば問題ないかもしれませんが、100%大丈夫とはいきれません。
財産分与や慰謝料の支払いがある場合には、必ず専門家に依頼するようにしましょう。
3−6 元配偶者が破産者名義の家に暮らしている場合、退去してもらう必要がある
自己破産をすると、マイホームは処分されてしまいます。そのため、離婚後に元配偶者がその家に暮らしている場合退去してもらうことになります。
どうしてもマイホームを残したいのであれば、リーズバックを活用したり、家族に家を購入してもらったりする必要があります。
4章 自己破産を理由に離婚することは難しい
「配偶者が自己破産をしようとしているから、離婚したい」と思っている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、自己破産を理由に強制的に離婚することは難しいと言えます。離婚するには、離婚事由が必要だからです。
ひとくちに離婚といっても、夫婦の話し合いで合意して離婚する「協議離婚」と、話し合いがまとまらないので裁判で強制的に離婚する「裁判離婚」があります。
協議離婚であれば、夫婦が合意しさえすればどんな理由であっても離婚できるので、破産を理由にした離婚も可能です。
しかし、裁判離婚となるとそう簡単にはいきません。強制的に離婚させることになるので、それなりの理由が必要になります。
- 判上の離婚事由に該当するもの
- ①婚姻中に他の人と性行為を行った(不貞行為)
②正当な理由なく、夫婦の共同生活を放棄すること。生活費を渡さない、理由なく同居を拒否するなど(悪意の遺棄)
③配偶者の生死が3年以上不明(失踪)
④配偶者が重度の精神疾患を患い、回復の見込みがない
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由。DVやモラハラ、家事育児の放棄、セックスレス、浪費やギャンブル、借金の繰り返しなど
ここに挙げられているように、借金を繰り返してギャンブル漬けでどうしようもない、手の打ちようがないといった特別に酷い状況であればともかく、「破産」そのものは直接的な離婚原因にはならないのです。
5章 自己破産以外で借金問題を解決する方法
債務整理には複数あり、自己破産以外の解決方法も用意されています。
自己破産以外の債務整理として代表的なものは①任意整理と②個人再生です。
それぞれの特徴および自己破産との違いを解説していきます。
5-1 任意整理
任意整理とは、司法書士や弁護士が債権者と交渉し、将来の利息をカット(減額)し、3年〜5年程度で分割払いするよう計画する手続きです。
裁判所を介して手続きをしないため、自己破産に比べて手続きが簡単であり、資産を失うリスクもないため最も多く活用されています。
一方で、任意整理は将来発生する利息をカットする、分割返済のリスケジュールをするだけで借金の元金そのものを減額することは難しいです。
また、任意整理を行う際には債権者が交渉に納得してくれるだけの安定した収入も求められます。
そのため、借金の金額や収入によっては、任意整理が難しいケースや任意整理では借金問題を解決できない恐れもあることを理解しておきましょう。
5-2 個人再生
個人再生は、裁判所に再生計画の認可を受けた上で借金を大幅に減額し、3~5年間で返済するよう計画を立てる手続きです。
自己破産のように借金がすべてなくなるわけではありませんが、家などの財産を残せる可能性があります。
自己破産と比較した場合の個人再生のメリットは、マイホームを残しつつ借金問題を解決できる点です。
個人再生には、住宅資金特別条項があるため条件を満たせば、マイホームを残した状態で借金を減額可能です。
住宅資金特別条項を利用すれば、住宅ローンに関しては個人再生の手続き後も従来通りの支払いスケジュールで返済できるようになります。
ただし、住宅資金特別条項を利用するには要件を満たす必要があるので、事前に司法書士や弁護士に相談した上で準備を進めるのがおすすめです。
6章 離婚を伴う自己破産もグリーン司法書士にお任せください!
結婚されている方が自己破産をするとなると、ご家族が不安に思い離婚を検討される方もいらっしゃるでしょう。
しかし、実際には自己破産をすることで配偶者に直接影響が出ることはありません。
グリーン司法書士法人では、そのような事情をご家族にきちんとお話しし、スムーズに解決できるようサポートいたします。
また、そもそも離婚が決まっている方、すでに離婚されている方についても、問題なく自己破産ができるようアドバイスいたしますのでご安心下さい。
初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しておりますので、お気軽にご相談下さい。
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よくあるご質問
- 自己破産は離婚前と離婚後のどちらがいい?
- 自己破産と離婚を並行して考えていて、離婚のタイミングを選べるのであれば、離婚前に自己破産をするのが得策です。
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- 自己破産を理由に離婚できる?
- 自己破産を理由に強制的に離婚することは難しいと言えます。離婚するには、離婚事由が必要だからです。
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- 夫が自己破産すると妻はどうなる?
- 夫が自己破産すると、夫名義の自宅や車は手放さなければなりません。
そのため、引越しや車のない生活を強いられる可能性があります。
また、夫名義の家族カードも使用できなくなります。
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