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- 国民年金保険料が払えないとどうなるのか
- 国民年金保険料を払えないときの対処法
国民年金保険料を支払えないと、将来の年金受給に大きな影響を与える可能性があります。保険料の滞納が続くと、財産を差し押さえられるリスクや、将来受け取れる年金額が減少するなど、さまざまな問題が発生します。
特に、遺族年金や障害年金を受け取れなくなる恐れもあるため、早急な対策が求められます。今回の記事では、国民年金保険料を払えない場合の具体的なリスクと、その対処法についてくわしく解説します。
滞納が続いた場合の影響や、免除や猶予制度を利用する方法、さらに後から保険料を納める手段についても見ていきます。過去に国民年金を滞納したまま気になっているみなさんは、ぜひ参考にしていただき、しかるべき手を打ちましょう。
目次 ▼
1章 国民年金保険料を払えないとどうなる?
国民年金保険料を払えない場合には、次の3つのことが起こってきます。
- 年金保険料の滞納が続くと財産を差し押さえられる恐れがある
- 遺族年金・障害年金を受け取れなくなる恐れがある
- 将来受け取れる年金額が減ってしまう
それぞれの内容を、くわしく見ていきましょう。
1-1 年金保険料の滞納が続くと財産を差し押さえられる恐れがある
国民年金保険料の滞納が続くと、最終的には財産を差し押さえられる可能性があります。まず、未納期間が続くと日本年金機構から催告状が届きます。さらに無視し続けると、特別催告状が送られ、最終的には督促状が届くでしょう。
督促状を無視すると、財産差し押さえの強制執行が始まります。差し押さえの対象となるのは、銀行口座や給与、不動産などです。
また、事態がここまで進展すると、金融機関の信用情報にも影響が出る可能性があります。このような状況を避けるためにも、早めに対策を講じることが重要です。
なお、国民年金の未納を続けると差し押さえになる件や、そうなる流れと払えない場合の対処法について、以下の記事でくわしく解説しています。
ぜひ、参考にご覧ください。
1-2 将来受け取れる年金額が減ってしまう
国民年金保険料を払わないと、将来受け取れる年金額が減少する可能性があります。年金額は、保険料を納付した期間にもとづいて計算されます。
未納期間が長引くと、それだけ将来に受け取れる年金受給額が少なくなります。具体的には、未納期間が1か月あるごとに、受給額が減少します。
また、納付済み期間が短いと、受給資格そのものを失う可能性もあります。このように、年金保険料の未納は将来の生活に直接的な影響を与えるため、納付は非常に重要です。
1-3 遺族年金・障害年金を受け取れなくなる恐れがある
国民年金保険料を滞納すると、遺族年金や障害年金を受け取れなくなる恐れがあります。遺族年金を受け取るためには、被保険者が死亡する前の一定期間にわたり、保険料が納付されている必要があります。
具体的には、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上であることが要件です。
また、令和8年3月末日までに死亡した場合には、死亡日の前日に65歳未満であれば、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に、保険料の未納がなければよいとされています。
障害年金についても、同様に一定の保険料納付要件を満たしている必要があります。たとえば、初診日の前日において、直近1年間に保険料の未納がないことなどです。このように、保険料を滞納すると、これらの年金を受け取る権利を失うリスクが高まるので、注意が必要です。
2章 国民年金保険料を払えない場合の対処法
国民年金保険料を払えない場合の主な対処法としては、次の4つの方法があります。
- 払い忘れてしまうなら口座引き落としにする
- 年金保険料の免除や猶予を受ける
- 年金保険料を後から納める
- 他に借金があるなら債務整理を検討する
ひとつずつ、内容を見ていきましょう。
2-1 払い忘れてしまうなら口座引き落としにする
国民年金保険料の支払いを忘れやすい場合、口座振替が有効な方法です。口座振替を利用すると、指定した銀行口座から自動的に保険料が引き落とされるため、支払い忘れを防げます。
手続は金融機関の窓口や年金事務所で行い、書面での手続や「ねんきんネット」からも申し込めます。月末に自動引き落としが行われるため、口座残高の管理が必要です。
口座振替の利用で、まとめて前払い(前納)する場合に割引が適用され、経済的なメリットもあります。たとえば、2年前納では16,590円の割引が受けられます。
手続後、年金事務所から振替開始月の通知が届きます。口座残高が不足していると引き落としができないため、月末までに必ず入金をしておくことが重要です。
クレジットカードやPay-easy(ペイジー)など、ほかの支払い方法もありますが、口座振替は特に忘れ防止に優れています。金融機関の口座振替を利用する際には、事前に申込締切日を確認しておくことが大切です。
締切日を過ぎると前納ができなくなるので注意が必要です。具体的な割引額や手続方法については、最新情報を確認してください。
2-2 年金保険料の免除や猶予を受ける
国民年金保険料の免除や猶予を受ける制度が存在します。免除制度には全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除があり、それぞれの免除には所得制限が設けられています。
納付猶予制度は、50歳未満の人を対象に、経済的に困難な場合に納付を猶予するものです。免除・猶予を受けるためには、役所や年金事務所で申請が必要で、申請手続には申請書類の提出や所得証明書の添付が求められます。
各免除の条件や手続方法、留意点などを表にまとめましたので、参考にしてください。
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区分 | 全額免除 | 4分の3免除 | 半額免除 | 4分の1免除 | 納付猶予制度 |
---|---|---|---|---|---|
内容 | 保険料全額が免除される | 保険料の75%が免除される | 保険料の50%が免除される | 保険料の25%が免除される | 保険料の納付が一定期間猶予される |
対象者 | 所得が一定基準以下の人 | 50歳未満の人 | |||
条件 | 所得が一定以下であること | ||||
手続き方法 | 住民税非課税証明書・所得証明書を提出 | 所得証明書などを提出 | |||
留意点 | ・年金額は1/2 ・追納で減少分を補える | ・年金額は通常の5/8 ・追納可能 | 年金額は通常の3/4 ・追納可能 | 年金額は通常7/8 ・追納可能 | ・年金額には反映されない ・後納可能 |
2-2-1 保険料免除制度
国民年金保険料の免除制度は、所得が一定基準以下の場合に適用されます。免除の種類は全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4種類です。
全額免除は保険料全額が免除され、4分の3免除は保険料の75%、半額免除は50%、4分の1免除は25%が免除されます。これらの免除を受けるためには、住民税の非課税証明書や所得証明書などの書類を提出し、役所や年金事務所で手続を行います。
免除を受けた期間も年金受給資格期間に含まれますが、年金額は減少します。たとえば、全額免除の場合、年金額は本来の2分の1になります。免除期間中に追納すれば、減少分を補うことも可能です。
2-2-2 保険料納付猶予制度
保険料納付猶予制度は、50歳未満の人が対象で、経済的に困難な場合に利用可能です。この制度を利用すると、一定期間、保険料の納付が猶予されます。
納付猶予期間も年金受給資格期間に含まれますが、将来の年金額には反映されません。猶予を受けるためには、申請書類を提出し、所得証明書などの書類が必要です。
申請は役所や年金事務所で行います。納付猶予を受けた期間の保険料は、後からまとめての納付もできます。また、猶予期間中に所得が回復した場合は、納付の再開が求められます。
2-3 年金保険料を後から納める
国民年金保険料を納められなかった場合、後から追納する方法があります。追納制度を利用すると、未納や免除された期間の保険料を後で支払うことができ、将来の年金額を増やせる制度です。
また、60歳を過ぎても任意で加入し、保険料の納付もできます。この任意加入制度を利用すると、受給資格期間を満たすことができ、年金額を増やす助けになるでしょう。
それぞれの制度には特定の手続や条件があるため、個別に補足しておきましょう。
2-3-1 保険料の追納制度を利用する
保険料の追納制度は、経済的な理由などで保険料の免除や納付猶予を受けた期間の保険料を後から支払う方法です。追納を行うことで、その期間が納付済み期間として扱われ、将来受け取る年金額を増やせます。
追納できる期間は、追納が承認された月の前月から10年以内であり、それを過ぎると追納はできません。追納の手続は、年金事務所で行う必要があります。
追納する場合、保険料の額は当初の額に加えて、経過年数に応じた加算金が付加されることがあります。未納期間や免除期間があると、満額の年金を受け取れないため、追納は重要な対策となるでしょう。
追納を行うことで、老齢基礎年金の受給額が増加し、将来の生活の安定に寄与します。保険料の追納制度の概要を、表にまとめましたので、参考にしてください。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 保険料の免除・納付猶予を受けた人 |
条件 | 追納が承認された月の前月から10年以内の期間 |
手続き方法 | ・年金事務所で追納手続き ・必要書類を提出 |
手続きに必要な書類 | ・追納申込書 ・身分証明書 ・所得証明書など |
留意点 | 追納は当初の保険料額に加え、経過年数に応じた加算金が付加されることもある |
メリット | 追納することで未納期間をカバーし、将来の年金受給額を増加させることができる |
2-3-2 国民年金の任意加入を利用する
国民年金の任意加入制度は、60歳以上65歳未満の人が国民年金に任意で加入できる制度です。それによって、未納期間や加入期間が不足している場合でも、保険料を納付して受給資格を満たせます。
任意加入の条件には、日本国内に住所があり、厚生年金や共済組合に加入していないことが含まれます。加入の手続は、市区町村の年金担当窓口で行います。
任意加入による保険料納付は、将来の年金額を増やすことができるため、特に年金受給額が少ない人にとって有効な手段です。また、任意加入中に納付した保険料は全額が社会保険料控除の対象となります。
加入期間中は、口座振替を利用した納付が一般的ですが、納付書やクレジットカードでの支払いも可能です。
国民年金の任意加入の概要について、わかりやすく表にまとめたので、参考にしてください。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | ・60歳以上65歳未満の日本国内に住所がある人 ・厚生年金保険や共済組合に加入していない人 |
条件 | ・老齢基礎年金の繰り上げ支給を受けていないこと ・20歳以上60歳未満までの国民年金保険料の納付月数が480月未満の人 |
手続き方法 | ・市区町村の国民年金担当窓口で手続 ・必要書類を提出 |
手続きに必要な書類 | ・任意加入申込書 ・身分証明書 ・年金手帳 ・預貯金通帳および金融機関の届出印 |
留意点 | ・任意加入中は免除などの申請が行えない ・納付方法は原則口座振替となる |
メリット | ・保険料納付期間を増やすことで年金受給額を増加させることができる ・納付した保険料は全額社会保険料控除の対象となる |
2-4 ほかに借金があるなら債務整理を検討する
借金が多くて国民年金保険料の支払いが困難な場合、債務整理を検討しましょう。債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の3つの方法があります。
任意整理は、債権者と直接交渉して返済条件を緩和する方法です。個人再生は、裁判所を通じて借金を減額し、計画的に返済する方法です。自己破産は、財産を処分して借金を免除する方法で、最終手段となります。
債務整理を行うことで、月々の返済額を減らし、生活費の負担を軽減できます。この結果、国民年金保険料の支払いも可能となり、年金受給資格を維持できます。専門家に相談して、自分に最適な方法を選ぶことが大切です。
債務整理を依頼すると、専門家が代理人となり、債権者からの督促を止められます。債務整理の主な種類ごとの特徴やメリット、デメリットについては、以下の表にわかりやすくまとめてあります。
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債務整理の種類 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
---|---|---|---|
特徴 | 裁判所を通さずに、債権者と直接交渉して借金の減額や返済計画の見直しを行う方法 | 裁判所に申立てを行い、借金の減額と返済計画の認可を得る方法 | 裁判所に申立てを行い、全ての借金を免除してもらう方法 |
メリット | ・手続が比較的簡単で費用が安い ・裁判所への申立て記録が残らない ・家族や勤務先に知られない | ・借金を大幅に減額できる ・住宅ローンや車ローンなどの財産を守れる ・将来、再び借金問題に陥る可能性が低い | ・借金が全て免除される ・新しい生活をスタートできる |
デメリット | ・減額できる金額は債権者との交渉次第 ・将来、再び借金問題に陥る可能性がある | ・裁判所への申立て記録が残る | ・裁判所への申立て記録が残る ・官報に永久に掲載される ・一定期間、クレジットカードやローンを利用できない ・一定期間、就業制限を受ける |
適したケース | ・債務額が大きくなく、将来的に返済できる見込みがある場合 ・任意整理の詳細・解決事例はコチラ ↓ 借金をなくせる任意整理とは?メリット・デメリットや向いている人 任意整理の経験談・解決事例 | ・一定収入はあるが債務額が大きく、任意整理では難しい場合 ・個人再生の詳細・解決事例はコチラ ↓ 小規模個人再生とは|給与所得者再生との違いやメリット・デメリット 個人再生の経験談・解決事例 | ・債務額が非常に大きく、他の方法では返済が難しい場合 ・自己破産の詳細・解決事例はコチラ ↓ 自己破産とは?メリット・デメリットや手続きの流れを徹底解説 自己破産の経験談・解決事例 |
債務整理の種類と生活への影響に関しては、以下の記事でくわしく解説しています。
ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
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まとめ
国民年金保険料を払えない場合、まず考慮すべきは滞納が続くことによる影響です。財産の差し押さえや将来受け取れる年金額の減少、さらには遺族年金や障害年金を受け取れなくなるリスクが存在します。
これを避けるためには、早めの対応が重要です。具体的には、支払いを忘れやすい場合には口座引き落としを設定し、免除や納付猶予の制度の活用が推奨されます。
また、追納制度を利用した未納期間をカバーや、60歳以上でも任意加入制度を利用した保険料の納付も効果的です。ただし、ほかに借金がある場合には債務整理を検討しましょう。
債務整理を行うことで、月々の返済額を減らし、国民年金保険料の支払いを可能にできます。任意整理や個人再生、自己破産といった方法を専門家に相談し、自分に最適な解決策を見つけることが大切です。
それによって、経済的な負担を軽減し、年金受給資格を維持するための道を切り開けます。以上の対策を踏まえ、適切な対応を取ることで、将来の生活の安定を図りましょう。
国民年金保険料を払えない原因が借金問題の場合、新たに借入をせずに解決する方法を検討しましょう。ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。当司法書士法人では借金問題に関する個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。
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