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- 国民年金の未納を続けると差押えの対象になるかがわかる
- 国民年金の滞納による差押えの基準がわかる
- 国民年金未納から差押えまでの流れがわかる
国民の義務である年金の納付。毎月一定額を引き落とされる代わりに、老後にお金を受け取ることができる制度です。
しかし、コロナ禍や数々の値上げラッシュをきっかけに、国民年金の未納が増えていると社会問題になっています。
国民年金が払えないからと言って滞納してしまうと、最終的には差し押さえをして強制回収の手段に移行してしまうため必ず納付する必要があります。
この記事では、国民年金の未納から差し押さえになるまでの流れと、払えない場合の対処法を解説します。
督促状・催告書を無視した際に起こることを知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
目次 ▼
1章 国民年金の未納は差し押さえの原因になる!
厚生労働省の結果によると、令和3年度(令和元年度分保険料)の最終納付率は77.95%だということが分かりました。
約10人に8人は国民年金を支払っていますが、逆を言うと10人に2人は未納になっているのが現状です。また、納付率には保険料免除・猶予の対象者も含まれているため、そちらの方を除くともっと割合が低くなります。
このことから、国民年金の支払いにあまり前向きではない方が多いことが分かりますが、国民年金の未納は差し押さえの原因になるためそのまま放っておくのは得策ではありません。
例えば、差し押さえの対象になるのは以下のものが挙げられます。
- 銀行預金
- 給与
- 不動産
- 自動車
- 貯蓄型保険
- 証券
- 債券
未納になっていた分を全て納付し終わらないと差し押さえが続くため、生活に不便を強いられてしまいます。
差し押さえにならないためにも、納付できるのであれば早めに納付をしましょう。
1-1 国民年金の支払いの対象者は?
日本国内に住んでいる20歳から60歳の方は国民年金に加入する必要があります。
その中でも、自営業者や農業、漁業に従事している方は自分で国民年金を納める必要があります。このような職業に就いている方を第1号被保険者といいます。
また、第1号被保険者に扶養されている配偶者や、厚生年金に加入している65歳以上の受給権者に扶養されている配偶者も、自分で保険料を納める必要があるため注意が必要です。
会社勤めで厚生年金保険や共済組合に加入している方は、厚生年金保険や共済組合が代わりに国民年金を負担しているため自分で納める必要はありません。そのため、未納になる可能性はほとんどありません。
未納になる可能性があるのは、
- 第1号被保険者
- 第1号被保険者に扶養されている配偶者
- 65歳以上の受給権者に扶養されている配偶者
といった、自分で支払う必要がある対象者が該当しやすいと言えます。
1-2 配偶者の給料も差し押さえられるので注意
未納を続けていて差し押さえになった場合、配偶者の給料も差し押さえられるので注意が必要です。
消費者金融などの借金の差し押さえであれば、自分だけで差し押さえが済みます。
しかし、国民年金保険料はそうはいきません。
年金の納付は国民の義務のため、世帯主や配偶者は連帯責任があるという考えに基づいているため、家族のお金や財産も差し押さえられてしまうのです。
2章 国民年金の滞納者の差し押さえ基準
国民年金が差し押さえになるには、ただ単に滞納しただけではありません。
国民年金が強制徴収の対象者となる基準は、
- 年間所得300万円以上
- 未納期間が7か月以上
の2つを満たしていると対象者になります。
ここからは、強制徴収になる2つの基準について解説していきます。
2-1 年間所得300万円以上
1つ目は、年間所得が300万円以上であることです。
所得は年収とは異なるもので、月収から必要経費を差し引いた金額で算出されます。
例えば、
- 30万円の収入(月収)
- 必要経費が5万円かかった(必要経費)
この2つの条件に当てはめると、月収から必要経費を差し引いた金額は25万になるので、25万円が所得にあたります。
この所得が年間300万円以上、つまり1ヶ月の所得が平均して25万円以上である場合は強制徴収の対象になります。
2-2 未納期間が7ヶ月以上
2つ目は、未納期間が7ヶ月以上あることです。
例えば、2023年の1月から7月まで未納で、年間所得が300万円以上の場合は強制徴収される可能性が非常に高いです。
現在未納の月がある方で、収入が減ってしまい払うのが難しかったり、直近で退職してしまってお金がなく払えない場合は保険料の免除や支払い期限の延長などで対応しましょう。
免除もしくは 一部免除など対応してくれるケースが多いので、まずはすぐに連絡をしましょう。
3章 未納から差し押さえになるまでの流れ
年金の未納を続けていると、やがて財産が差し押さえになってしまいます。
年金に限らず、他の税金や借金でも支払いを滞納すると差し押さえにまで発展しますが、年金や税金など必ず納付しなくてはいけないものに関しては差し押さえまでのスピードが早いので注意しましょう。
「差し押さえ寸前になったら払えばいいや」と思っていると、あっという間に差し押さえまで進んでしまいます。
では、未納から差し押さえになるまでの流れを見ていきましょう。
①電話や封筒で催告が来る
最初は、未納になっている月があると電話や封筒で催告が来ます。
催告とは「未払いの年金があるのですぐに支払ってください」といった内容が記された催促の通知のようなものです。
催告は強く支払いを促していることが一般的のため、催告が来た時点で無視はできません。
今すぐ払えない場合は、すぐに催告状に記載されている電話番号に電話して、免除申請を送付してもらうようにしましょう。
②特別催告状が届く
催告が来ても、年金の支払いを無視していると次に特別催告状が届きます。
特別催告状は数回にわたり送付されます。
このような書類が届くので、納付されていない月と合計金額を確認しましょう。
期限が記載されているので、納付できそうであれば期限内に納付しましょう。
この時点では、まだ市役所や年金事務所も優しく対応してくれます。
分割払いや免除・猶予申請などの提案もしてくれるので、やむを得ず納付できない場合は記載されている電話番号に問い合わせてサポートを受けてください。
③最終催告状が届く
特別催告状を無視してしまうと、最終催告状が届きます。
催告状の中でも「最終」と記載されていることもあって、この催告状が最終警告となります。
次のステップを無視してしまうと余分なお金を払う羽目になるので、ここで食い止めたいものです。
④【延滞金発生】督促状が届く
最終催告状が届いても何も対応をしない場合は、督促状が届きます。
督促状と聞くと、一般的には催告状よりもライトな印象かもしれませんが、年金に関しては督促状がここで届きます。
この督促状には年金事務所が指定する期限内が記載されています。
期限内に納付しなければ延滞金が課せられる旨が記載されているので、余分なお金を支払わないためにもここが最後のチャンスと言って良いでしょう。
⑤【最終警告】差押予告通知書が届く
督促状も無視すると、差押予告通知書が送られてきます。
差押予告通知書は、その名の通り「このまま放っておくと差し押さえしますよ」という差し押さえ予告が記された通知書です。
これが差し押さえ前の本当に最後の最後のチャンスです。
財産の差し押さえを避けたいのであれば、無理をしてでも必ず支払いましょう。
⑥財産の差し押さえに!
差押予告通知書に記載された期限内に納付ができなければ、いよいよ差し押さえが実行されます。
消費者金融の借金が原因で差し押さえをするには、ここで裁判所を通さなくてはいけません。裁判所で債務名義(判決)を取得し、差し押さえの許可を貰ってから行われます。
しかし、年金は裁判所を通さなくても市役所や年金事務所で差し押さえを進めることができるので、差押予告通知書の期限内が過ぎたらすぐに差し押さえが実行されます。
そのため、放っておくとあっという間に差し押さえになるので1日でも早く対応しましょう。
4章 国民年金が支払えないときの対処法
住民税に保険料に家賃に光熱費に…生きていく上で出費が嵩んでしまい、年金まで手が回らないという方も多いことだと思います。
しかし、放置しているとどんどん差し押さえまでのステップが進んでしまうので無視は危険です。
国民年金が支払えないときの対処法を紹介するので、やむを得ない事情で支払いができない場合は放置をせずに必ず対応するようにしましょう。
①保険料の免除や猶予申請をする
収入が減ってしまったり病気や怪我によって働けなかった場合は、住んでいる地域の市役所か年金事務所に保険料の免除や猶予申請をしましょう。
数日〜数週間後に申請書が自宅に届くので、書類に必要事項を記載し送付しましょう。
無事承認されると、保険料の納付が免除されます。
保険料は、以下の4つの中から収入や状況によって判断されます。
- 全額
- 4分の3
- 半額
- 4分の1
全額免除を希望するのであれば、診断書や離職票など免除の判断材料になる書類のコピーを一緒に送付するとより効果的でしょう。
②滞納分を分割して支払う
年金は納付しなかった分だけ将来受け取れる額が減ってしまうことから、滞納していた分を時間をかけてでも払いたいという方も多いのではないでしょうか。
滞納していた分を免除ではなく納付したい場合は、延滞分の分割払いを申請しましょう。
ただし、分割払いの最小単位は1ヶ月分の額になるので注意が必要です。
それ以下の金額に分割することはできないので、1ヶ月分の額を支払うのが難しい場合は免除申請をするほうがおすすめです。
5章 年金の支払いにも時効があるが99%不可能
実は、年金にも時効があります。2年間支払いをしなければ時効消滅します。
しかし、消滅時効のカウントは督促状が届いた時点でリセットになってしまうので99%不可能と言えます。
例えば、2023年1月から年金を滞納していたとしたら2025年1月に時効消滅します。
しかし、その間に督促状が届いたらまたそこから2年間経たなければ時効は消滅しません。
残りの1%は、市役所か年金事務所が2年間督促し忘れたらもしかして…というレベルなので、まず現実的ではないでしょう。
一応時効が設定されていますが、2年間も催告状も督促状も届かないというケースは聞いたことがありません。絶対に逃げきれないと言っても良いでしょう。
6章 国民年金を払わらずにいると将来の年金受給額にも影響する
老後に老齢基礎年金を受給するには、保険料納付機関と保険料免除期間の合計した受給資格期間が10年以上という条件を満たさなければなりません。
国民年金の未納が続き受給資格期間が10年に満たない場合、老齢基礎年金を一切受け取ることができないのでご注意ください。
なお、受給資格期間が10年を超える場合でも、未納期間があると老齢基礎年金が満額支給されず、老後資金が不足してしまう恐れがあります。
国民年金の未納は時効を迎える可能性も低く、放置していると将来もらえる老齢基礎年金の金額が減ってしまいます。
未納が続く場合は、問題を放置するのではなく家計の改善や借金問題の解決などを行いましょう。
7章 自己破産で年金の未納は免除されないので注意!
借金を減額したり免除したりできる自己破産。
年金を滞納してしまい、支払い総額がどんどん膨れ上がってしまい払えないことから、自己破産をして免除したいと考えている方もいるのではないでしょうか。
残念ですが、自己破産をしても年金を滞納した分は免除されません。
自己破産では、金融機関や消費者金融、知人などからの借金に該当するものは減額したり免除することができます。
しかし、年金は「非免責債権」に含まれていることから自己破産をしても必ず支払う義務があります。
非免責債権とは、免責許可決定の効力が及ばない債権のことです。つまり、どんな状況であれ必ず支払わなければいけないお金ということです。
非免責債権に該当するものは、他にも年金以外の税金や慰謝料、損害賠償金や罰金などが含まれます。
自己破産をした場合の税金の対処については、以下の記事で詳しく解説しています。
7-1 借金の支払いで納付が難しい場合は利用するのも手
他の借金の返済が原因で年金の支払いができず、未納をしている場合は債務整理を利用するのも方法の1つです。
前述の通り、税金は必ず支払う必要があります。例え、自己破産の手続き中だったとしても税金の支払いは許されているほど効力が強いです。
ですので、借金の返済に追われているよりは、借金を債務整理で減額してもらって、逃れられない年金の方を優先的に支払うのも方法の1つです。
借金で悩んでいる方はぜひグリーン司法書士法人にご相談ください。
8章 先延ばしは危険!年金の差し押さえを回避しよう
ここまで解説してきたとおり、年金の支払いから逃れられることはほぼ絶対にないと言って良いです。
年金の未納を続けていると、差し押さえになり配偶者にまで迷惑が及んでしまいます。
支払いが厳しい場合は、すぐに市役所や年金事務所に相談して免除や分割払いの相談をしましょう。
とにかく黙っていて何もしないのが、一番状況を悪化させてしまう原因になります。
年金を始めとする税金関係は、先延ばしをしないで優先的に対処しましょう。
借金返済に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。
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よくあるご質問
- 年金未納で差し押さえられる流れとは?
- 年金を滞納していると、下記の流れで差し押さえられます。
①電話や封筒で催告が来る
②特別催告状が届く
③最終催告状が届く
④【延滞金発生】督促状が届く
⑤【最終警告】差押予告通知書が届く
⑥財産を差し押さえられる
年金滞納による差押えについて詳しくはコチラ
- 年金を払わないとどうなる?
- 国民年金を滞納していると、最終的には財産を差し押さえられてしまいます。
年金滞納について詳しくはコチラ