消費税は滞納しやすい!法人・個人事業主が気をつけるべき点を解説

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

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消費税は滞納しやすい!法人・個人事業主が気をつけるべき点を解説

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 この記事を読んでわかること

  • 消費税を滞納したら起こること
  • 消費税を滞納したときの対処方法
  • 消費税を滞納しないための方法

インボイス制度の導入以降、消費税の滞納問題が注目を集めています。消費税はもともと法人が支払う税金の中でも、滞納が起こりがちな租税ではありました。しかし最近は、新たに納税義務が生じた適格請求書発行事業者が消費税の納税に不慣れなゆえに滞納してしまうケースが問題視されているのです。

この記事では、消費税を滞納したらどのようなことが起こるのかについて詳しく解説したうえで、滞納したときの対処方法などを解説します。

1章 消費税を滞納するとどうなる?

消費税は、定められた納付期限を1日でも過ぎると滞納とみなされます。

納付期限は法人と個人事業主で異なり、法人の場合はその事業年度の最終日から2か月後までです。例えば12月決算で12月28日が最終日だとすると、2月28日が納付期限になります。

一方、個人事業主の場合は課税される期間の翌年の3月31日までです。つまり、例えば2024年1月から12月までの消費税は2025年3月31日が納付期限ということになります。もしも3月31日の曜日が土日ならば、翌日の4月1日が期限です。

消費税を滞納すると、次のような事態が発生します。

  • 延滞税が加算される
  • 財産の差押えを受ける

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1−1 延滞税が加算される

消費税を延滞すると、納付までにかかった日数に対して延滞税を課せられます。具体的には、法定納期限の翌日から完納した日までの期間に延滞税が発生することになるのです。

延滞税の税率は固定されておらず、毎年見直しされます。また、納期限の翌日から2か月まで(a)とそれ以降(b)は延滞率が変わるため、注意が必要です。

延滞税の計算式は、以下に示す通りです。

延滞税=納期限の翌日から2か月を経過する日までの延滞金(A)+納期限から2か月を経過する日の翌日から完納した日までの延滞金(B)

また、(A)と(B)の計算式は以下です。

(A)消費税の額✕税率(a)✕日数(納期限から完納した日あるいは2か月)÷365日

(B)消費税の額✕税率(b)✕完済までの日数(2か月を経過した日の翌日から)÷365日

  • (a)年7.3%、あるいは延滞税特例基準割合+1.0%のどちらか低い割合
  • (b)年14.6%、あるいは延滞税特例基準割合+7.3%のどちらか低い割合

上記にある延滞税特例基準割合とは、前々年の9月から前年の8月までの銀行の新規短期貸出約定平均金利の平均に1.0を加えた割合です。

例えば、令和6年1月1日から12月31日まで適応される延滞税特例基準割合は1.4%なので、令和6年の場合は延滞税の税率(a)(b)はそれぞれ以下が適応されます。

  • (a)2.4%
  • (b)8.7%

参考:延滞税の割合/国税庁

完納までの日数がかかるほど延滞税は増えるので、支払いの負担は大きくなります。さらに、消費税は毎年度ごとに納税が必要です。今年度の納税がまず優先されるため、もしも前年度の消費税を滞納していたら後回しになり、そのまま延滞税が加算され続けます。

1−2 財産の差押えを受ける

消費税を滞納すると、納期限から2週間〜1か月程度で督促状が届きます。また、督促の電話が入ったり、担当の税務局によっては直接訪問されたりすることも。それでも納税しない場合は、次のような過程を経て最終的に財産を差し押えられます。

  1. 差押えにあたって事前の財産調査
  2. 差押予告通知書の発送
  3. 差押えの実行

財産調査では、預貯金口座や売掛金の金額を銀行を通して調べる他、不動産や保険の有無などについても調査されます。

税金の滞納での差押えは債務の場合と異なり、裁判所に申し立てる必要がありません。差押予告通知書に記載された期日までに納税できなければ、いつ差し押えられてもおかしくないということを覚えておきましょう。

税金滞納での差押えについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

2章 消費税を滞納しやすい理由

消費税は私達にとって身近な税金の一つですが、納税者側にとっては滞納しやすい税金です。国税庁の調査によると、令和4年度に新しく発生した消費税の滞納額は3,630億円にのぼります。これは税金の中で最も多額で、法人税の956億円に比べると4倍もの金額です。

参考:令和4年度租税滞納状況/国税庁

法人税はその年の所得が赤字ならば発生しませんが、消費税は赤字かどうかに関係なく納税義務があります。

それは、消費税は法人税などの直接税とは異なり、消費者から受け取った代金の中から預かって支払う「間接税」だからです。しかし現実には、代金には消費税を含むとわかっていながらも、納税意識を持ちにくいところがあります。

特に資金繰りがうまくいっていない企業では、年度末には資金が足りなくなり、支払うべき消費税を運転資金に充ててしまうことが滞納の主な原因です。

最近では、インボイス制度の影響で個人事業主が消費税を延滞するケースも増加してきました。消費税は納税額の計算が難しく、納税のタイミングが限られていることなどからも滞納しやすい状況が生まれています。

3章 消費税を滞納したときにとるべき対処方法5つ

消費税の納付期限を過ぎてしまったら、一日でも早く対処しましょう。支払うあてがないからといって放置していると、その間にも延滞金は加算され、差押えの実行が近づいてしまいます。

ここでは、消費税を滞納したときの対処方法を解説しますので、ぜひ参考にしてください。

3−1 分割払いを交渉する

消費税が多額で一括納付が難しい状況なら、税務局へ分割払いできるか相談してみましょう。納税の意思があることや消費税が支払えなくなった経緯、一括納付すると事業や生活が困難になることなどを丁寧に説明すれば「職権による換価の猶予」で分割払いが認められることがあります。

納税には基本的に1年の猶予が認められ、1年では難しいようなら再度申し出れば、最大2年まで納税期間を延長できます。

3−2 猶予を申請する

納税の猶予には「職権による換価の猶予」以外にも受けられるケースがあります。

  • 換価の猶予
  • 納税の猶予

それぞれ受けるための要件が満たされていることと、申請書の提出が必要です。

以下で詳しい内容を見ていきましょう。

3−2−1 換価の猶予

換価の猶予とは、差押えによる財産の換価を原則1年間猶予してもらう制度です。

換価の猶予申請書を納税期限を過ぎて6か月以内に提出する必要があるほか、消費税額に相当する担保を用意しなければなりません。

さらに、次の要件を満たしていることが猶予を受ける条件です。

1 国税を一時に納付することにより、事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがあると認められること。

2 納税について誠実な意思を有すると認められること。

3 換価の猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと。

4 納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請書が提出されていること。

5 原則として、担保の提供があること。

引用:No.9206 国税を期限内に納付できないとき/国税庁

ただし、猶予を受ける金額が100万円以内、あるいは3か月以内の猶予ならば担保は必要ありません。

換価の猶予を受けることで、差押えまで猶予期間を与えられるだけでなく、すでに差し押さえられている場合は解除されます。さらに、猶予を認められた期間中の延滞税を一部免除してもらえるというメリットもあります。

3−2−2 納税の猶予

また、次に該当する状況にある場合は、納税局へ申請すれば納税の猶予を受けられます。

1 次の(1)から(6)までのいずれかに該当する事実があること。

(1) 財産について、災害を受けたり盗難にあったこと。

(2) 納税者や家族が病気にかかったり負傷したこと。

(3) 事業を廃業したり休業したこと。

(4) 事業について著しい損失を受けたこと。

(5) 上記の(1)から(4)に類する事実があったこと。

(6) 本来の期限から1年以上経過した後に、修正申告などにより納付すべき税額が確定したこと。

2 猶予該当事実に基づき、納税者がその納付すべき国税を一時に納付することができないと認められること。

3 申請書が提出されていること(上記1(6)の場合は納期限までの提出)。

4 原則として、担保の提供があること。

引用:No.9206 国税を期限内に納付できないとき/国税庁

納税の猶予も換価の猶予と同様に担保を求められますが、消費税が100万円以内の場合は不要です。

3−3 資金援助先を探す

資金繰りが厳しいために消費税を滞納している場合は、第三者に資金援助を求めて解決を図るのも一つの方法です。

しかし消費税を滞納している状態では、日本政策公庫からはもちろん銀行からの融資を受けるのも難しくなります。そのままにしておけば倒産も免れないため、増資して自社の株式を購入してもらう他、経営権がなくなるのを覚悟でM&Aを検討する選択もあります。

3−4 法人破産する

どうしても消費税を支払えない場合は、最終手段として法人破産を選べば納税義務がなくなります。法人破産すれば、法人の権利や義務は消えるためです。

ただし、合名会社や合資会社の場合、無限責任社員は会社の弁済義務があります。つまり、この場合は法人破産しても納税義務はそのまま残ってしまいます。

法人破産について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

3−4−1 経営者保証で融資を受けている場合は個人の債務整理が必要になることも

経営者保証で金融機関から融資を受けていると、法人破産のときに合わせて経営者個人の債務整理も必要になる場合があります。しかし、銀行や大手の債権回収会社からの債権は「経営者保証に関するガイドライン」に従って保証債務を整理すれば、個人破産を回避することが可能です。

参考:経営者保証に関するガイドラインを活用してみませんか/金融庁・中小企業庁

3−5 債務整理する

個人事業主で他に借入れやローンの返済が苦しいために消費税を滞納しているならば、債務整理を検討しましょう。

債務整理には任意整理と個人再生、自己破産の3つの方法があります。

  • 任意整理…債権者と話し合いをして借金の減額を交渉する
  • 個人再生…裁判所に申し立てて借金を5分の1〜10分の1へ減額してもらい、原則3年での完済を目指す
  • 自己破産…裁判所に申し立てて借金を免除してもらう

それぞれメリットとデメリットがあるため、自分にあった方法を選びましょう。

任意整理、個人再生、自己破産のメリット・デメリットについて詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

借金の負担がなくなれば、その分納税にまわすことができます。

債務整理の手続きは個人で行うには大変で時間がとられるため、事業の合間に取り組むのは大変です。グリーン司法書士法人では、債務整理に経験が豊富なスタッフが手続きを代行いたします。電話やオンラインでも相談可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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4章 消費税を滞納しないための対策3つ

消費税は基本的には事業年度末に一括して納税するため、年間を通して対策しておかなければいざ納税するときになって資金を確保できていないことも少なくありません。

逆にあらかじめ、うまく対策しておけば年度末に頭を抱えることもなくなるでしょう。

ここでは、滞納しないためにできる対策を2つ紹介します。

4−1 毎月の売上から消費税分を計上して貯めておく

予想以上に消費税が高額になり、支払いに回せるお金が足りなくなって滞納することはめずらしくありません。

できるだけ毎月の売上から消費税分を計算しておき、別口座などに貯金しておくことで、年度末に安心して消費税を納税できます。

計算するのが大変ならば、信用金庫や銀行によっては消費税を積立預金できる金融商品もあるので検討してみてもよいでしょう。1年間一定額を積立しておいて、事業年度末に積み立てた金額がもしも消費税分に届かなかった場合、不足した分は融資を検討してもらえるメリットがあります。ただし、融資には審査が必要です。

4−2 簡易課税を申請する

インボイス制度が始まり、法人・個人事業者を問わず消費税の計算は複雑化しました。そのため、年度末に一気に経理計算しようとしても膨大な時間がかかってしまい、申請が期限に間に合わないということも。

特に個人事業主の場合は、簡易課税を選択しておく、あるいは2割特例を活用すると計算がわかりやすくなります。

ただし、簡易課税で計算するには事前に申請が必要になることや2年間は本則課税へ変更ができないことを留意しておきましょう。

4−3 ダイレクト納付で予納する

ダイレクト納付とは、税務署へあらかじめ届出して指定した預金口座から予定した期日に電子納付できるサービスです。

このダイレクト納付で、毎月消費税の見込み額を納付できる予納制度を利用できます。

事業年度末にもしも実際の額より払いすぎていたら還付を受けられますが、一度支払ったお金を自己都合で取り戻すことはできません。

消費税を確実に納付したい人にはおすすめできる方法です。

5章 消費税のために借金をしてしまった方はグリーン司法書士法人へご相談ください

消費税を支払うために、消費者金融などへ借入れして月々の返済に悩む方もおられるのではないでしょうか。

もし借金返済に悩まれているのならば、グリーン司法書士法人へご相談ください。

あなたの状況に寄り添って親身にお話を伺います。

消費税は滞納しやすい税金ではありますが、納税の意識をもって対策しておけば怖くありません。借金に頼らずに消費税を納税できる体制を整えていきましょう。

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