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借金の救済制度として、債務整理が挙げられます。
債務整理とは、多重債務で苦しむ方などが膨れ上がった借金の問題を解決するための救済制度であり、いくつか種類があるため状況などに応じた方法を選ぶことが重要です。
抱えている借金の額や借入先、個人の事情などに合った救済制度を選ばなければ、かえって生活が苦しくなってしまう恐れもあります。
そこで、借金の救済制度について、債務整理のメリット・デメリットや、手続する方法などを解説していきます。
- 借金の救済制度とは何の手続か
- 借金の救済制度を利用するメリットは何か
- 借金の救済制度を利用するデメリットは何か
- 各制度のメリット・デメリット・手続方法について
- 借金の負担を軽減できる制度とは何か
目次 ▼
1章 借金の救済制度とは
「借金の救済制度」とは、広告によって「借金の救済措置」や「借金返済の制度」などいろいろな表現がされているものの、一般的には「債務整理」などのことを指しています。
膨れ上がってしまった借金で悩んでいるときに頼りたくなる救済制度ですが、以下の3つについて確認しておきましょう。
- 借金の救済制度の範囲
- 借金の救済制度は怪しい手続きではない
- 借金の救済制度は昔からある手続きである
それぞれ説明していきます。
1-1 借金の救済制度の範囲
借金の救済制度は、広告やメディアの範囲によってその「範囲」は異なります。
多くは、「債務整理」を救済制度としており、過払い金請求も範囲に含めるケースもありますが、任意整理はあくまでも債権者との交渉であるため対象外とされることもあるようです。
「国が認めた」と紹介する広告もありますが、実際には「国」が「借金の救済制度」とすることを認めているわけではありません。
自己破産や個人再生は裁判所を介して手続する法律で認められた手続のため、国が認めているとも考えられます。
しかし任意整理は、貸金業者と借金減額の交渉をする手続のため、「国が認めた」という表現に合っているとはいえません。
そのため「国が認めた」と表現している広告は、制度利用者の目を引くための宣伝文句と捉えておいてください。
1-2 借金の救済制度は怪しい手続きではない
借金の救済制度とされている債務整理は怪しい手続ではありません。
ただし、特に何の説明もなく、借金の返済が免除されたり減額されたりといった結果のみ見せている広告などは、詳しい説明を求めたほうがよいといえます。
借金がどのような仕組みで免除されたり減額されたりするのか、その内容を確認しておきましょう。
1-3 借金の救済制度は昔からある手続きである
「借金の救済制度」の広告を目にする機会は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響や、物価高など様々なことが影響し、ここ数年で増えています。
ただ、借金問題を解決する新たな制度が創設されたわけではなく、借金問題を解決できる手続として昔から存在していました。
そのため借金の返済負担に苦しんでいるのなら、信頼できる専門家に相談して手続を依頼することをおすすめします。
2章 借金の救済制度を利用するメリット
借金の救済制度を利用する最大の「メリット」は、借金の支払いが免除されたり返済総額が減額されたりすることです。
どの制度を活用するかによって結果は異なるものの、たとえば自己破産なら借金の返済義務が免除され、任意整理なら将来利息のカットと分割払いの交渉で毎月の返済負担が軽減されます。
借金の返済義務そのものがなくならなかった場合でも、毎月無理のない範囲で返済できるようになれば、支払いで悩むことはなくなり生活を立て直しできます。
また、司法書士や弁護士などの「専門家」に手続を依頼することで、債権者からの取立てが一時的に停止するため、催促の連絡で不安やストレスを感じることもなくなります。
3章 借金の救済制度を利用するデメリット
借金の救済制度は、返済を免れることができたり負担軽減されたりといったメリットがある一方で、選ぶ制度によっては想定していたほど効果を得ることができない場合もあります。
また、救済制度の種類によって、手続そのものに費用がかかる場合や専門家への報酬が発生することも留意が必要です。
他にも借金の救済制度には、以下の3つの「デメリット」があります。
- 連帯保証人に借金の請求が行く恐れがある
- 信用情報機関に事故情報が掲載される
- ローン返済中の資産を回収される恐れがある
それぞれどのようなデメリットがあるのか説明します。
3-1 連帯保証人に借金の請求が行く恐れがある
借金の救済制度のデメリットの1つ目は、債務者に代わって「連帯保証人」が返済を請求される恐れがあることです。
連帯保証人が設定された借金がある状態で、自己破産や個人再生などの手続を行うと、連帯保証人が「一括返済」するように求められます。
ただし任意整理であれば、連帯保証人の設定されている借金を手続の対象から外すことができるため、迷惑をかけることはありません。
3-2 信用情報機関に事故情報が掲載される
借金の救済制度のデメリットの2つ目は、信用情報機関の管理している信用情報に、「事故情報」として登録されることです。
事故情報が登録される期間は、信用情報機関と手続する債務整理の種類によって以下のとおり異なります。
信用情報機関名 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | 特定調停 |
日本信用情報機構(JICC) | 5年 | 5年 | 5年 | 5年 |
シーアイシー(CIC) | 5年 | 5年 | 5年 | 5年 |
全国銀行個人信用情報センター(KSC) | 5年 | 7年 | 7年 | 5年 |
登録開始は債務整理が開始されたときであり、登録終了は「完済(任意整理・個人再生・特定調停)」または「免責確定(自己破産)」のタイミングから上記期間を経過した後です。
KSCの個人再生と自己破産に関してのみ、登録開始は開始決定からとなります。
3-3 ローン返済中の資産を回収される恐れがある
借金の救済制度のデメリットの3つ目は、所有権が留保されているローン返済中の資産を、「回収」される恐れがあることです。
たとえば自動車購入におけるローン契約で、「所有権留保特約」を結んでいる場合は、ローン完済までの車の所有者は債権者となります。
そしてローンの支払いが滞ったときには、債権者が車を回収・処分できる契約となっています。
そのためローンを残したまま自己破産の手続を行うと、ローン会社に自動車を回収されてしまう可能性があります。
住宅ローン返済中の持ち家も、自己破産では処分されますが、個人再生であれば手放すことなく手続できます。
4章 【借金の救済制度①】個人再生
借金の救済制度の1つ目「個人再生」とは、裁判所を介して借金を5分の1程度まで減額してもらい、原則3年(最大5年)で分割払いするための手続です。
個人再生について、以下の3つを説明します。
- 個人再生のメリット
- 個人再生のデメリット
- 個人再生の手続き方法
4-1 個人再生のメリット
個人再生の「メリット」は、主に次の3つです。
- 借金を大幅に減額できる
- マイホームを残したまま手続できる
- 借金が増えた理由を問われない
借金総額が5分の1程度まで「大幅」に減額されることが個人再生のメリットといえます。
また、「住宅ローン」を返済中の持ち家については、一定要件を満たした上で「住宅ローン特則」を適用させることで、ローン返済を継続し家を手放す必要もなくなります。
自己破産では借金が増えた理由によって、返済を免除してもらえない恐れもありますが、個人再生では手続において借金が増えた理由は問われません。
4-2 個人再生のデメリット
個人再生の「デメリット」は主に次の3つです。
- 手続に手間や時間がかかる
- 手続する借金を選べない
- 官報に掲載される
個人再生では、裁判所を介して手続を行うため、手間や時間がかかるだけでなく対象とする借金を選ぶことはできません。
また、借金返済が免除されるわけではないため、完済するまで返し続けるだけの安定した収入も求められます。
個人再生したことは官報に掲載されるため、他人に知られる可能性もゼロではないと留意しておくべきでしょう。
4-3 個人再生の手続き方法
個人再生は、以下の流れで手続を行います。
- 専門家から貸金業者へ受任通知を発送
- 裁判所へ申立て
- 個人再生手続の開始
- 賃金業者による債権届出
- 債権認否一覧表の提出
- 再生計画案の提出
- 書面による決議
- 裁判所から再生計画認可決定
- 再生計画に基づく返済開始
なお、個人再生の手続など詳しい内容は下記の記事を参考にしてください。
5章 【借金の救済制度②】自己破産
借金の救済制度の2つ目「自己破産」とは、裁判所に支払不能状態であることを認めてもらい、返済を免除してもらう手続です。
多重債務で借金が膨れ上がり、多額の借金を抱えていたとしても、自己破産で免責が認められれば返済義務から免れることができます。
自己破産について、以下の3つを説明します。
- 自己破産のメリット
- 自己破産のデメリット
- 自己破産の手続き方法
5-1 自己破産のメリット
自己破産の「メリット」は、多額の借金を抱えていても、法的に返済義務が「免除」されることです。
借金をほぼ帳消しにできることが最大のメリットといえますが、税金や損害賠償金などは免除の対象にならないため注意してください。
5-2 自己破産のデメリット
自己破産の「デメリット」は、主に以下の5つです。
- 手続に手間や時間がかかる
- 手続する借金を選べない
- 官報に掲載される
- 必要最低限以外の財産は処分しなければならない
- 一定の資格や職業に制限がかかる
自己破産は裁判所を介して手続を行うため、手間や時間がかかり、対象とする借金を選ぶことはできません。
また、個人再生と同じく、「官報」に掲載されるため自己破産したことを他人に知られるリスクもあります。
生活に必要な最低限の財産以外は処分されることになり、一定の資格や職業についても、手続が終わるまで制限されることはデメリットといえるでしょう。
5-3 自己破産の手続き方法
自己破産は、以下の流れで手続を行います。
- 専門家から貸金業者へ受任通知を発送
- 債権の調査
- 裁判所へ申立て
- 破産手続の開始
- 破産管財人の選任(管財事件)
- 財産調査・換価(管財事件)
- 債権者集会の開催(管財事件)
- 配当手続(管財事件)
- 免責審尋(同時廃止・管財事件)
- 免責許可決定(同時廃止・管財事件)
6章 【借金の救済制度③】特定調停
借金の救済制度の3つ目「特定調停」とは、簡易裁判所の調停委員が債権者と債務者を仲介し、返済の条件や方法を決める手続です。
特定調停について、以下の3つを説明します。
- 特定調停のメリット
- 特定調停のデメリット
- 特定調停の手続き方法
6-1 特定調停のメリット
特定調停の「メリット」は、主に次の2つです。
- 手続が簡易的で費用も抑えられる
- 手続する借金を選べる
特定調停では、簡易裁判所の調停委員が債権者との間に入り、合意を仲介してくれる簡易的な手続であり、対象とする借金も選べます。
個人で手続すれば専門家に支払う報酬など必要なく、費用も安く抑えることができます。
6-2 特定調停のデメリット
特定調停の「デメリット」は、主に次の2つです。
- 裁判所に行く手間がかかる
- 合意できないことがある
簡易裁判所で行う手続であるため、開所している平日の時間帯に出向く必要があるため、働いている方は有給休暇など取得しなければならないでしょう。
また、あくまでも債権者と債務者との合意が必要なため、調停委員に任せれば必ずしも円満に解決できるわけではなく、合意に至らず調停不成立で終わることもあります。
6-3 特定調停の手続き方法
特定調停の手続は、以下の流れで行います。
- 申立書類の作成
- 特定調停の申立て
- 呼出状による通知
- 調停委員の選任
- 調停期日
- 調停調書の作成
- 返済の実行
7章 【借金の救済制度④】時効援用
借金の救済制度4つ目の「時効援用」とは、時効期間の完成により、借金の消滅を主張することです。
債権者に、時効が完成したため援用する旨を意思表示します。
時効援用について、以下の3つを説明します。
- 時効援用のメリット
- 時効援用のデメリット
- 時効援用の手続き方法
7-1 時効援用のメリット
時効の援用の「メリット」は、主に以下の4つです。
- 借金の返済義務がなくなる
- 財産を処分されることがない
- 連帯保証人の債務も消える
- 費用や時間をかけず手続できる
借金の時効期間が過ぎて手続すれば、借金の返済義務はなくなります。
この際、所有する財産を処分させることもなく、費用や時間などもかかりません。
また、連帯保証人の付いた借金についても、返済義務はなくなるため迷惑をかけることはないといえます。
7-2 時効援用のデメリット
時効援用の「デメリット」は以下の3つです。
- 失敗すると一括返済を求められる恐れがある
- 手続した金融会社から借入れできなくなる
- 債務承認に該当する行為に注意が必要である
時効の援用は時効完成後に行うことが必要であるため、完成前に債権者に連絡してしまった場合、一括返済される恐れがあります。
時効の進行も止められてしまうため、時効期間が経過しているか正確に判断することが重要といえます。
債権者からの裁判上の請求や、債務承認なども時効の更新事由となるため注意してください。
また、時効援用に成功しても、対象となった金融会社とその後、ローン契約を結ぶことなどは半永久的にできません。
7-3 時効援用の手続き方法
時効援用の手続は以下の流れで行います。
- 時効の成立を確認する
- 債権者に時効援用通知書を送る
- 債権者からの反応を待つ
- 必要に応じて法的手続を行う
8章 借金の負担を軽減できる制度
借金の救済制度を利用しなくても、毎月の負担を軽減させることで問題を解決できる場合もあります。
また、すべての借金を対象に手続しなくても、一部のみの返済負担を軽減すれば支払いが楽になるケースもめずらしくありません。
特に連帯保証人がついた借金を抱えている場合、仮に自己破産してしまうと迷惑をかけてしまいます。
この場合、次の2つの借金の負担を軽減できる制度を利用すれば、対象となる借金を選んで手続できます。
- 任意整理
- 過払い金請求
それぞれの方法について説明していきます。
8-1 任意整理
「任意整理」とは、債権者である貸金業者に借金減額などの交渉を行い、毎月無理なく返済できるようにするための手続です。
交渉により和解が成立すれば、将来利息がカットされ、軽減された額での返済が可能となります。
借金の救済制度を利用しなくても、支払い総額の減額だけでなく返済期間の引き延ばしも交渉することができるため、毎月の返済を楽にできる場合もあります。
8-2 過払い金請求
「過払い金」とは、支払う必要のなかった払い過ぎたお金を貸金業者に返してもらう手続です。
2010年6月18日の法改正で撤廃されたグレーゾーン金利による貸し付けによる払い過ぎた利息を返してもらう方法であるため、2010年6月17日以前の借入れであれば返還対象になる可能性があります。
借金の救済制度を利用しなくても、払い戻された過払い金を借金返済に充てることで、返済負担の軽減につながる可能性があります。
ただし過払い金が発生していない場合もあるため、専門家に相談・確認することをおすすめします。
まとめ
借金の救済制度とされるのは、主に自己破産や個人再生、借金の時効援用です。
ただし一定の条件を満たす必要があり、生活に何らかの影響が及ぶこともあるため、それぞれのメリットやデメリットを踏まえて最適な手段を選ぶことが必要といえます。
一人で判断がつかないときには、専門家に相談することで、どの方法が最善策か提案を受けることができます。
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