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- 借金は死んだらチャラになるかどうか
- 借金をしている家族・親族が亡くなった際の対処法
- 相続手続の完了後に借金が発覚した場合の対処法
多くの人が「借金は死んだらチャラになる」と考えていますが、実際にはそうではありません。家族や親族が借金を抱えたまま亡くなった場合、その借金は相続人に引き継がれます。
今回の記事では、亡くなった人の借金の取り扱いと、相続人が負債に対処するための方法について詳しく解説します。借金が相続に与える影響や、相続放棄や限定承認、債務整理といった具体的な対処法についても見ていきましょう。
目次 ▼
1章 借金は死んだらチャラになる?
借金は死んだらそれでチャラになってしまうと考えている人も多いかもしれませんが、そうではありません。故人の借金は「負の遺産」として、相続人に受け継がれます。詳しく見ていきましょう。
1-1 亡くなった人の借金は相続人に受け継がれる
借金は、借主が死亡した場合でも消滅しません。借主の負債は相続財産の一部として、相続人に受け継がれます。
民法では、相続開始は相続人の権利義務の承継を意味すると規定されています。つまり相続人は、被相続人の遺産を受け継ぐと同時に、借金も引き継ぐ義務が生じるのです。
そのため、被相続人の借金は、相続人が支払う義務を負うことになります。しかし、相続人には相続放棄や限定承認といった選択肢もあります。
相続放棄をすれば、相続人は被相続人の財産および負債を放棄できるのです。限定承認の場合、相続人は相続財産の範囲内でのみ借金を負担することになります。これらの手続を行うことで、相続人は借金の負担を軽減できます。
1-2 相続人になる人・相続順位(相続の優先順位)
相続人になる人の順位は、日本の民法によって定められています。第1順位は、被相続人の直系卑属、つまり子供や孫です。
第2順位は、被相続人の直系尊属である親や祖父母です。第3順位は、被相続人の兄弟姉妹です。また、配偶者は常に相続人となり、ほかの相続人とともに相続します。
相続の割合(法定相続分)は、配偶者と子供が相続する場合、配偶者が2分の1、子供が残りの2分の1を等分に相続します。配偶者と直系尊属の場合、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1を相続します。
配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続します。相続人が誰もいない場合、被相続人の財産は国庫に帰属します。
このように、相続人の範囲とその優先順位は法律で明確に規定されています。以下の表に、相続順位を一覧でまとめてありますので、参考にしてください。
相続順位 | 相続人 | 配偶者がいる場合の相続割合 | 配偶者がいない場合の相続割合 |
第1順位 | ・子供 | ・配偶者1/2・子供1/2を等分 | ・子供がすべてを等分 |
第2順位 | ・親 | ・配偶者2/3・親1/3 | ・親がすべてを等分 |
第3順位 | ・兄弟姉妹 | ・配偶者3/4・兄弟姉妹1/4 | ・兄弟姉妹がすべてを等分 |
借金などの金銭債務については、相続の割合(法定相続分)にて負担が決められますので、この割合は重要です。
1-3 保険金目当ての自殺では生命保険金は支払われない
生命保険に加入している場合でも、保険金目当ての自殺では保険金が支払われない場合があります。一般的に、保険契約には「自殺免責期間」が設定されています。
この期間内に被保険者が自殺した場合、保険金は支払われません。自殺免責期間は通常、保険契約開始から2年以内とされています。
ただし、保険金目当ての自殺と判断された場合には、免責期間後でも保険金の支払いが拒否される可能性は否めません。保険会社は、自殺の動機や状況を慎重に調査し、支払いの可否を判断します。
したがって、生命保険に加入していても、保険金目当ての自殺は無効とされるケースも珍しくありません。
1-4 団体信用生命保険に加入していれば死亡後の住宅ローンは返済義務がなくなる
住宅ローンを利用する際、多くの人が団体信用生命保険(団信)に加入します。団信に加入している場合、借主が死亡したり高度障害状態になったりすると、残りの住宅ローンの返済義務が免除されます。
これは、団信が借主の死亡または高度障害時に保険金を支払い、その金額で住宅ローンを完済するためです。団信は、住宅ローンの契約と同時の加入が一般的であり、借主の年齢や健康状態によって保険料が異なります。
団信に加入していることで、借主が万が一の事態に陥った場合でも、遺族が住宅ローンの返済に苦しむことなく住み続けられます。
ただし、団信の保障内容は保険会社や契約内容によって異なり、保障が有効となる期限もあるので、個々のケースでは契約書の慎重な確認が必要です。
2章 借金をしている家族・親族が亡くなったときの対処法
借金をしている家族や親族が亡くなった際の対処法としては、次の3つが挙げられます。
- 相続放棄をする
- 限定承認をする
- 単純承認をする
個別に見ていきましょう。
2-1 相続放棄をする
相続放棄とは、相続人が被相続人の財産や負債を一切相続しないことを決定する手続です。これにより、相続人は借金を含むすべての相続財産を放棄し、自らの資産を守ることが可能です。
相続放棄をする場合、家庭裁判所に対して申述書を提出しなければなりません。この手続は、被相続人の死亡を知った日から3か月以内に行う必要があります。この期間内に手続を行わなかった場合、相続人は財産と負債を全て受け継ぐことになるのです。
また、相続放棄をした場合、次順位の相続人に相続権が移行します。相続放棄は、一度行うと取り消すことができないため、慎重な判断が必要です。
相続放棄の申述が受理されると、裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が発行されます。これを債権者に提示することで、債務の責任がないことを証明できます。
さらに確実に証明するためには、「相続放棄受理証明書」の発行という方法もありますが、ほとんどの場合は通知書で済みます。
2-1-1 相続放棄の注意点
相続放棄を行う際に、注意すべきポイントは以下のとおりです。
期間制限
相続放棄は、自分が相続人となったことを知った日(多くの場合、被相続人の死亡した日)から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。この期間を過ぎると、相続放棄ができなくなります。
一度行うと撤回不可
相続放棄は、一度行うと取り消すことができません。慎重な判断が求められます。
相続放棄の効果
相続放棄をした相続人は、初めから相続人でなかったものとみなされます。遺産分割などもほかの相続人のみで行うことになるのです。先順位の相続人が全員相続放棄をした場合には、次順位の相続人に相続権が移行します。
相続放棄の手続
家庭裁判所に申述書を提出し、相続放棄の申述が受理されると「相続放棄申述受理通知書」が発行されます。これを債権者に提示することで、債務の責任がないことを証明できます。
2-2 限定承認をする
限定承認は、相続財産の範囲内でのみ、負債を引き継ぐ手続です。相続財産を超える負債があった場合でも、相続人の自己資産から支払う必要はありません。
この手続を行うには、相続人全員が共同で家庭裁判所に対して申述を行う必要があります。限定承認も、自分が相続人となったことを知った日から3か月以内に行わなければなりません。
限定承認を行うことで、相続人は相続財産の範囲内で負債を返済し、残りの財産を受け取ることができます。また、限定承認を選択することで、相続人は自己資産を守りつつ、相続財産を有効に活用することが可能です。
ただし、限定承認の手続は相続放棄に比べて複雑であり、専門家の助言を受けることが推奨されます。限定承認を行う場合、家庭裁判所から「限定承認申述受理通知書」が発行され、債権者に対して提出することで手続を完了します。
2-3 単純承認をする
単純承認は、相続人が被相続人の財産および負債を、すべて無条件で受け継ぐことを意味します。相続人が相続放棄も限定承認も行わなかった場合、自動的に単純承認と見なされるのです。
単純承認を行うことで、相続人は被相続人のすべての資産と負債を受け継ぎます。このため、負債が資産を上回る場合、相続人はその差額を自らの資産から支払わなければなりません。
単純承認を選択する場合、特別な手続は不要です。単純承認を行った後に負債が発覚した場合でも、相続人はその返済義務を負うことになります。
3章 相続手続完了後に借金が発覚したときの対処法
相続手続の完了後に、故人に借金があると発覚したときの主な対処法としては、次の3つが考えられます。
- 相続人が借金を返済する
- 時効援用の手続をする
- 債務整理をする
それぞれの内容を見ていきましょう。
3-1 相続人が借金を返済する
相続手続が完了した後に新たな借金が発覚した場合、相続人はその借金を返済する義務があります。この場合、相続人は被相続人の財産をすでに受け取っているため、これを活用して返済しなければなりません。
もし、相続財産をすべて使い切ってしまった場合でも、相続人が個人の資産から借金を返済する義務を負います。借金の返済義務を果たさないと、債権者から法的な手続を取られる可能性があります。
相続人が借金の存在を知らなかった場合でも、法律上の義務として返済が求められるため、注意が必要です。このような状況を避けるためには、相続手続の際に被相続人の財産や負債の確認が欠かせません。
3-2 時効援用の手続をする
相続手続完了後に発覚した借金については、時効援用の手続を行えます。借金の消滅時効は、債権者が返済を請求できる期間が過ぎると成立します。
通常、消滅時効の期間は5年です。時効援用の手続を行うことで、相続人は借金の返済義務から解放されます。
時効援用の手続は、債権者に対して時効の完成を主張する内容の書面を、債権者に送付することで行います。書面には、具体的な借金の内容や時効の成立を主張する旨の記載が必要です。
時効援用が認められると、債権者は法的に返済を請求できなくなります。ただし、時効の成立には条件があり、債権者がその間に裁判所を通して訴状や支払督促を送っていないことが前提となります。
また、時効援用の手続は法律の専門知識を要するため、司法書士などの専門家への相談が推奨されます。
なお、時効援用のメリットやデメリット、および司法書士に依頼すべき理由について、以下の記事で解説しています。ぜひ、参考にご覧ください。
3-3 債務整理をする
相続手続完了後に多額の借金が発覚した場合、債務整理を行うことが有効な対処法となります。債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の3つの方法があります。
任意整理は、債権者と直接交渉して返済条件を緩和する方法で、個人再生は裁判所を通じて借金を大幅に減額し、残りを分割返済する手続です。また、自己破産は財産を処分し、借金を免除してもらう方法です。
これらの手続は、それぞれメリットとデメリットがあるため、状況に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。債務整理を行うことで、相続人は借金の負担を軽減し、経済的な再出発を図られます。
債務整理の主な種類ごとの特徴やメリット、デメリットについては、以下の表にわかりやすくまとめてあります。
債務整理の種類 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
特徴 | 裁判所を通さずに、債権者と直接交渉して借金の減額や返済計画の見直しを行う方法 | 裁判所に申立てを行い、借金の減額と返済計画の認可を得る方法 | 裁判所に申立てを行い、全ての借金を免除してもらう方法 |
メリット | ・手続が比較的簡単で費用が安い ・裁判所への申立て記録が残らない ・家族や勤務先に知られない | ・借金を大幅に減額できる ・住宅ローンや車ローンなどの財産を守れる ・将来、再び借金問題に陥る可能性が低い | ・借金が全て免除される ・新しい生活をスタートできる |
デメリット | ・減額できる金額は債権者との交渉次第 ・将来、再び借金問題に陥る可能性がある | ・裁判所への申立て記録が残る | ・裁判所への申立て記録が残る ・官報に永久に掲載される ・一定期間、クレジットカードやローンを利用できない ・一定期間、就業制限を受ける |
適したケース | ・債務額が大きくなく、将来的に返済できる見込みがある場合 ・任意整理の詳細・解決事例はコチラ ↓ 借金をなくせる任意整理とは?メリット・デメリットや向いている人 任意整理の経験談・解決事例 | ・一定収入はあるが債務額が大きく、任意整理では難しい場合 ・個人再生の詳細・解決事例はコチラ ↓ 小規模個人再生とは|給与所得者再生との違いやメリット・デメリット 個人再生の経験談・解決事例 | ・債務額が非常に大きく、他の方法では返済が難しい場合 ・自己破産の詳細・解決事例はコチラ ↓ 自己破産とは?メリット・デメリットや手続きの流れを徹底解説 自己破産の経験談・解決事例 |
債務整理の種類と生活への影響に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
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まとめ
借金がある家族が亡くなった場合、その借金は相続人に引き継がれるため、相続人はその返済義務を負うことになります。相続人は相続放棄により、すべての財産と負債を放棄することが可能です。
限定承認の選択によって、相続財産の範囲内で負債を引き継ぎ、自己資産からの返済の回避もできます。単純承認を行った場合、相続人はすべての財産と負債を引き継ぐことになります。
相続手続が完了した後に新たな借金が発覚した場合、時効援用の手続を行うか、債務整理の検討が有効です。相続放棄や限定承認、時効援用の手続にはそれぞれの条件と期限があるため、すみやかに専門家に相談するのが賢明です。
相続に関する問題は複雑であり、適切な対応を怠ると大きな経済的負担を抱えることになります。相続の際には、被相続人の財産や負債をしっかりと確認し、最善の選択肢を選ぶための知識を持っておきましょう。
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