自己破産すると車のローンが組めなくなる?審査通過のポイントとは

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

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自己破産すると車のローンが組めなくなる?

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自己破産をすれば、原則としてすべての借金の返済義務がなくなります。
借金に悩まされることがなくなるので、借金の自力返済が難しい人や生活を立て直したい人に向いています。

一方で自己破産をすると信用情報機関に事故情報が登録され、完済や解約から5~7年間は自動車ローンを組めなくなってしまうので注意が必要です。
また、自己破産時に所有していた車はローン返済中であれば回収されてしまいますし、ローンを完済していても価値が高い車は処分される恐れがあります。

本記事では、自己破産をすると自動車ローンを組めなくなるのか、手続き時に所有している車はどうなるのかを解説します。
自己破産については、下記の記事もご参考にしてください。

1章 自己破産後は車のローンが5~7年組めない

自己破産をすると手続き後5~7年間は自動車ローンが組めなくなってしまいます。
自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が登録されてしまうからです。

信用情報機関とは、個人のクレジットカードの利用情報や借金の返済情報などの信用情報を収集、管理している機関です。
自動車ローンを提供している金融機関や信販会社は、新規利用者の審査を行うときに信用情報機関にて情報照会を行っています。
そのため、照会時に信用情報機関に事故情報が登録されていると「自動車ローンをきちんと返してくれない可能性が高い」と判断され、審査に落ちてしまいます。

なお、カーリースの審査でも信用情報機関への情報照会を行うので、自己破産後5~7年間はカーリースを利用できません。

日本国内に信用情報機関は3つあり、それぞれ事故情報が登録される期間が下記のように異なります。

信用情報機関加盟機関事故情報の登録期間(目安)
CIC信販会社・クレジットカード会社5年以内
JICC消費者金融・クレジットカード会社5年以内
KSC全国の銀行7年以内
自社ローンなら審査に通る可能性がある
中古車販売店などで行っている自社ローンであれば、審査時に信用情報機関へ照会をかけないことが多いので、ローンの審査に通る可能性があります。
ただし、保証人をつけなければならない、手数料が高いなど自動車ローンの条件が悪くなる恐れもあるのでご注意ください

2章 自己破産後に自動車ローンの審査に通過するコツ

自己破産から5~7年経過すれば、自動車ローンの審査に通過できる可能性があります。
ただし、必ず審査に通るわけではないので、下記のコツを実行し少しでも審査に通りやすくするのがおすすめです。

  1. 信用情報を確認しておく
  2. 多重申込みをしない
  3. クレジットカードの良い利用履歴を作る
  4. 頭金を多めに用意する
  5. ローンでの取引に実績があるお店を選ぶ
  6. 審査に通りやすい時期をねらう
  7. 収入を安定させておく

それぞれ詳しく解説していきます。

2-1 信用情報を確認しておく

自己破産後に自動車ローンを申し込む場合には、信用情報機関で事故情報が抹消されているか確認しておくのがおすすめです。
信用情報機関にて事故情報が抹消されているか確認するには、情報開示請求を行う必要があります。

具体的には、下記の方法で情報開示請求を行えます。

信用情報機関請求方法
JICCスマホアプリで申し込む
郵送で申し込む
CICインターネットで申し込む
郵送で申し込む
KSCインターネットで申し込む
郵送で申し込む

2-2 多重申込みをしない

自動車ローンに申し込む際には、クレジットカードやキャッシング、他のローンなどの申し込みは避けましょう。
信用情報機関には返済履歴だけでなく、ローンやクレジットカード作成の申し込み履歴も記録されています。

短期間で複数の審査に申し込んでいるのを確認した債権者は「お金に困っているのかもしれない」「計画性に欠けるかもしれない」と判断し、審査に落とす恐れもあります。

司法書士
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無用なローン審査は避けるようにし、審査落ちの履歴を残さないようにしましょう。

2-3 クレジットカードの良い利用履歴を作る

信用情報機関に記録される情報は、クレジットカードやローンの申し込みや利用の履歴、携帯電話料金などの支払い状況などです。
自己破産など債務整理に関する事故情報もそのひとつですが、事故情報が消失すればそれまでのクレジット利用履歴も消えます。

何のクレジット利用履歴もない状態から信用情報が再スタートすることになりますが、何も載っていないことで逆に「過去に破産などしたのではないか」と怪しまれ、審査に不利になるケースもあります。
返済能力があると証明するため、期日を守り返済を続けている優良なクレジット利用履歴をある程度作っておくことも大切です。

2-4 頭金を多めに用意する

ローンの申し込みの審査では返済能力の有無が重視されることになりますが、事前に頭金を多く準備できていれば借入金額も少なくなるため審査のハードルを下げやすいです。
貯金できる経済状況や計画性の高さもアピールできるため、車のローンの審査でも有利になることが期待できます。

2-5 ローンでの取引に実績があるお店を選ぶ

信用情報機関に登録された自己破産の記録が消えた後も、車のローンで審査に通るか心配であればできるだけ審査に通りやすいローンを選ぶようにしましょう。

司法書士
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銀行系よりは、ディーラーや自社ローンなどのほうが比較的審査に通りやすいはずです。

ローンによる取引実績が高い販売店などであれば、ローン会社の得意先の可能性が高いため他社よりローンが組みやすいケースもあります。

2-6 審査に通りやすい時期をねらう

法人の決算期は3月であることが多く、その場合、9月は中間決算の時期となります。

この時期は営業担当者が達成しなければならないノルマが決められており、決算とノルマ期限が重なることから、駆け込みで契約を取るため審査通過の確率が高くなる傾向が見られます。

2-7 収入を安定させておく

自動車ローンの審査項目は信用情報機関に登録されている内容だけではありません。
収入状況や勤続年数、勤務形態など多岐にわたるので、他の条件を少しでも良くし、審査に通過しやすくすることも大切です。

3章 自己破産するとローンが残っている車はどうなるのか

自己破産で借金を整理しようと考えるタイミングが、必ずしも車のローンを支払い終えた後とは限りません。
車を普段使用する方の中には「車はローンを支払い続けながら手元に残したいけれど、他の借金は整理したい」と考える方も多数いらっしゃるでしょう。

もしも車のローンが残っている状態で自己破産する場合には、まず誰が車の所有者なのか車検証の「所有者」欄を確認してください。
所有者がローン会社なのか、それとも自己破産する本人なのかによって、その後の対応は異なります。

3-1 【所有者=ローン会社】ローン支払中の車は処分される

車の所有者がディーラーやローン会社の場合で、まだローンを完済できていなければ自己破産により所有者は車を引きあげます。
車のローンが残っている場合、完済されるまではローン会社などに車の所有権が留保されていることが一般的ですので、車検証と合わせて契約書を確認しましょう。

所有者であるディーラーやローン会社が車を引きあげるタイミングは、自己破産手続を専門家などに依頼し、ローン会社が受任通知を受け取ってから3か月以内が目安となっています。
ただし、ローン会社としては、自動車の価値が少しでも高いうちに引き上げて現金化したいと考えるので、受任通知を受け取ってすぐに回収しようと動くケースも多いです。

いずれにしても、自己破産を裁判所に申し立てる前の段階で引き揚げられることが多いです。

3-2 【所有者=本人】完済していても価値が高い車は処分される

車のローンを完済すると所有権留保が解除され、ローン会社に留保されていた所有権が本人に移ります。

ただし、ローンを完済してさえいれば必ず車を残すことが可能というわけではありません。
自分名義の車でも20万円以上の価値があることが認められれば、破産手続の中で裁判所による処分の対象になってしまいます。(管財人が売却し、代金を破産財団に組み入れて配当に回します。)

反対に車の査定額が20万円未満であれば、裁判所から差し押さえられることもなく、手元に残すことが可能です。

司法書士
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実務的には、初年度登録から7年以上経過していれば、価値がないとみなされて手元に残せます。
車の価値が20万円以上でも没収されないケース
生活に必要な最低限の財産は「自由財産」と呼ばれ、自己破産をしても処分の対象にはなりません。
自由財産に該当するものは、主に下記の財産です。

  • 新得財産(破産手続開始決定後に取得した財産)
  • 差押禁止財産(生活に必要なもので法律上差押えが禁止されている財産)
  • 99万円以下の現金

価値が高い車は自由財産には該当しませんが、生活を送る上でその車が必要不可欠であることを裁判所に説明し、裁判所から特別な許可を得ることができたときは手元に残せます。
例えば、足が不自由で車がなければ移動手段を奪うことになる場合などです。

4章 車を残したくても自己破産前にしてはいけないこと

「自己破産後も車を残したい」と考えてしまい、自己破産の手続きをする前に自動車ローンだけ返済してしまおうと考える人もいるかもしれません。
結論から言うと、自己破産前に自動車ローンだけ優先して返すなどといった以下の行為は絶対に避けましょう。

  1. 車の名義を変える
  2. 車のローンが残っていることを隠す
  3. ローンを一括で返済する
  4. 不当に車を処分する

それぞれ詳しく解説していきます。

4-1 車の名義を変える

自己破産しても車の所有者が自分でなければ処分の対象にはならないと考え、手続前に家族や第三者名義に変更するといった行為は財産隠しとみなされてしまいます。
自己破産が認められなくなる恐れもありますし、詐欺破産罪として刑事事件になる可能性も否定できませんので、絶対に行わないようにしましょう。

4-2 車のローンが残っていることを隠す

自己破産するときには、どのような借金があるのかすべて裁判所に申告しなければなりません。
しかし、中には「車のローンのみ申告せずこっそり支払い続ければよいのでは…?」と考える方もいるようです。

自己破産の手続き時に自動車ローンを隠していたとしても、自己破産をした通知は自動車ローンの会社にも届きいずれ発覚してしまいます。

また、自己破産時に虚偽の報告をすることは免責不許可事由にあたり、裁判所に自己破産を認めてもらえない恐れもあるので絶対にやめましょう。

司法書士
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自己破産ができないだけでなく、詐欺破産罪として処罰される恐れもあります。

4-3 ローンを一括で返済する

車をローン会社に引きあげられてしまうことを恐れ、「先に一括返済しておけば問題ないだろう」と先にローンを完済させようと考える人もいるでしょう。
しかし、自動車ローンなど一部の借金のみを返済し特定の債権者を優遇する行為は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」という詐害行為にあたります。

偏頗弁済は破産上のルールとされる「債権者平等の原則」に反するため、免責不許可事由に該当します。
そのため、財産隠し同様に裁判所に自己破産を認めてもらえなくなる恐れがあるのでやめましょう。

4-4 不当に車を処分する

自己破産したときには、20万円以上の価値のある財産は換価され、債権者の返済や配当に充てられます。
「どうせ回収されるのであれば、自分でしてしまおう」と考え、先に車を処分して現金として手元に残そうと考える人もいるかもしれません。

しかし、車を勝手に安い値段などで処分することは、破産法で禁止されています。
車を不当に処分した場合には、破産法の「詐欺破産罪」に該当し10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、または両方が科されてしまう恐れがあります。

一方で、自己破産前であっても車を適正価格で売却し、売却代金を借金返済に充てるのなら問題はありません。

ただし、売却に関する資料(車検証、売買契約書、領収書など)は残しておきましょう。
破産手続において提出しなければならない可能性があるからです。

5章 自己破産後も車に乗り続ける方法

日常の買い物や通勤に必要などの理由で、自己破産後も車を利用したいと考える人もいるでしょう。
自己破産をしてからも車に乗り続ける方法は、主に下記の通りです。

  • 第三者にローンを返済してもらう
  • 自己破産以外の債務整理を行う
  • レンタカーやカーシェアリングを利用する
  • 現金一括払いで車を購入する
  • 家族名義の車を使用する

それぞれ詳しく解説していきます。

5-1 第三者にローンを返済してもらう

車のローンを自己破産前に一括返済してしまうと「偏頗弁済」に該当してしまいますが、これは自己破産する本人自らが一括返済したときです。
自己破産する方の親族や知人など第三者が肩代わりし、車のローンを一括で支払うのであれば法律的に問題はありません。

ただし、第三者にローンを肩代わりしてもらう際には、下記の点に注意が必要です。

  • 第三者がかわりにローンを返済すると、肩代わりしてくれた人が債権者に加わる
  • 債権者に加わらないようにするには、支払後に債権放棄の手続きが必要

債権放棄をするにしろしないにしろ、ローンを肩代わりした第三者は何らかの書面の記入、手続きが必要です。

また、ローンが第三者により完済されれば手元に車は残りますが、その価値が20万円以上であれば処分対象の財産になります。

司法書士
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必ず車を手元に残せるとは限らないと認識しておきましょう。

5-2 自己破産以外の債務整理を行う

債務整理には自己破産以外にも複数あり、他の債務整理であれば車を手元に残せる可能性があります。
車を手元に残したいのであれば、下記の2つの債務整理をおすすめします。

種類特徴
任意整理債権者との交渉で将来発生する利息をカットし、分割払いする方法自分で交渉する債権者を選べるので、自動車ローン以外の借金を任意整理できる
個人再生借金を5分の1程度まで減額させ、原則として3年間で分割返済していく方法車がなければ仕事や生活に支障をきたす事情があれば、「別徐権協定」により車のローンを支払い続けられる場合がある

任意整理の場合には、自分で返済負担を軽くする借金を選択可能です。
自動車ローン以外の借金を債務整理すれば、任意整理をした後も車を手元に残せます。

個人再生は裁判所を通して行う手続きであり、自分で減額する借金を選択できません。
ただし、別除権協定と呼ばれるローン会社と支払いを約束する代わりに車を引きあげない契約を結び、裁判所に認めてもらう措置があります。

ただし、別除権協定は非常に例外的な措置であり、例えば運送業をしていて車を手放すと収入がなくなるなどといったケースのみ認められます。

司法書士
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単に日常生活において不便になるからといった理由では認められませんので、誰でも利用できるわけではありません。

5-3 レンタカーやカーシェアリングを利用する

自己破産をしても自動車免許が没収されるわけではないので、レンタカーやカーシェアリングの利用は問題なく行えます。
自己破産により車を処分することになっても、車が必要なときだけレンタカーやカーシェアリングを活用すれば生活に支障が出にくいです。

ただし、自己破産をした人がレンタカーやカーシェアリングの料金を払うときにはクレジットカードは利用できないので、現金払いやデビットカードなどで払う必要があります。

5-4 現金一括払いで車を購入する

自己破産後は自動車ローンの審査に通りにくいだけであり、現金一括払いであれば車を購入可能です。
ただし、自己破産時には99万円までしか現金を手元に残せません。

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購入する車の価格にもよりますが、、自己破産後に生活を立て直し収入を安定させ、車の購入費用を貯める必要があります。

5-5 家族名義の車を使用する

自己破産によって没収されるのは、自分名義の車だけです。
そのため、配偶者や両親などといった家族名義の車は没収されません。

また、自動車ローンの審査ではローン名義人の信用情報や収入が確認されるので、自己破産をした人ではなく配偶者や家族などに頼み自動車ローンを組んでもらうのも選択肢のひとつです。

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家族名義の車であれば、自己破産後も乗り続けられます。

まとめ

自己破産をすると信用情報機関に事故情報が登録されるので、完済や解約から5~7年間は自動車ローンの審査に通りにくくなります。

また、自己破産時に車を所有していた場合、車がローン返済中の場合はローン会社に回収される可能性が高いです。
車のローンを完済しているケースでも、車の価値が高い場合には処分され債権者に分配されてしまう恐れがあります。

自己破産後も車を手放さずにすむかの判断が難しい場合には、債務整理に詳しい司法書士や弁護士に相談するのがおすすめです。

グリーン司法書士法人では、自己破産に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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自己破産後は車のローンはどうなる?
自己破産後は車のローンの返済義務は免除されますが、車はローン会社に没収されてしまいます。
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