自己破産前に名義変更しても大丈夫?家や車の名義を変えるリスクを徹底解説

   司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

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自己破産前に名義変更しても大丈夫?家や車の名義を変えるリスクを徹底解説

この記事は約 10 分で読めます。

借金問題を解決するために自己破産はしたいけれど、家や車などの財産は残したいという場合、自己破産前に名義変更すれば所有し続けることができるのではないかと考えてしまうものでしょう。

しかし家や車など財産を隠す目的で自己破産前に名義変更することには、様々なリスクがあります。

そこで、自己破産前に名義変更しても大丈夫なのか、どのようなリスクがあるのかなど次の4つの章に分けて詳しく説明していきます。

  1. 自己破産前にやってしまいがちな4つの名義変更
  2. 自己破産前に名義変更すると起きる3つのこと
  3. 自己破産前に名義変更しなくても残せる資産の種類
  4. 自己破産前に名義変更してしまったときの対応方法

自己破産を検討しているけれど、残したい財産がある方はぜひこの記事を一読ください。

1章 自己破産前にやってしまいがちな4つの名義変更

自己破産前にやってしまいがちな4つの名義変更

借金問題を自己破産で解決しようとするとき、

「所有する財産を処分したくない」

という気持ちから、申立て前に家族などの名義に変更したいと考えてしまう方もいることでしょう。

自己破産では、99万円以下の現金など生活に必要最低限の財産は「自由財産」として所有を認められますが、それ以外は換価・処分の対象になります。

自由財産とは
自由財産とは、破産者が自由に管理・処分できる最低限生活に必要とされる以下の財産です。

  • 新得財産(破産手続開始決定後に取得した財産)
  • 金銭以外の差押禁止財産(生活に必要な法律上差押禁止の財産)
  • 99万円までの現金

財産の処分を回避することを目的として、自己破産申立て前に次のような財産の名義変更が行われがちです。

  1. 自動車の名義変更
  2. 持ち家の名義変更
  3. 生命保険の名義変更
  4. 携帯電話の名義変更

それぞれ説明していきます。

1-1 自動車の名義変更

財産の処分を回避することを目的として、自己破産申立て前に行われがちなのが「自動車」の名義変更です。

名義変更を検討するということは、自動車ローンは払い終わっていることが前提でしょう。

自動車は市場価値が20万円以下であれば処分されず減価償却期間を経過している自動車も処分見込み額ゼロとして扱われるため、処分されることはありません。

そのため、高級外車を新車で買ったような特殊な場合を除いて名義変更する必要はないといえますが、もし不安なときには変更する前に専門家に相談してください。

1-2 持ち家の名義変更

不動産は高く市場価値が認められると考えられるため、「持ち家」が処分されてしまうことを回避しようと、自己破産申立て前に名義変更が行われがちです。

長年住み続けた家に自己破産後も暮らしたいという方や、生活環境を変えたくないという方などに特に多く見られます。

しかし、不動産は一般的に数百万円以上の高額な価値がつくものです。個人の所有する財産の中では最も高いものと言ってもいいくらいです。

そのため、不動産の処分については裁判所もかなり厳しく調べます。破産直前や、まして破産手続中に勝手に名義変更をすると大問題になりかねません。

1-3 生命保険の名義変更

「生命保険」の契約名義を、家族・親族などへ変更するケースも見られます。

子供のために加入した学資保険や、死亡したときに保険金が支払われる生命保険など、積み立てタイプの生命保険を解約したときに払い戻される「解約返戻金」も20万円を超えていれば処分の対象になってしまいます。

掛け捨てだと思っていたら実は高額の解約返戻金があった、ということもあり得ます。独断で行動せず、専門家としっかり相談することが重要です。

1-4 携帯電話の名義変更

「携帯電話」を失うことになると生活に支障をきたすことも少なくないため、自己破産申立て直前に家族などに名義変更しようとするケースが見られます。

携帯電話の端末代金を「分割」で支払っている場合において、未払いの代金があれば自己破産で支払免除の対象です。

ただし分割代金の未払いや通信費滞納がある場合において、専門家から通信会社に受任通知を送ると、電話回線が「強制解約」されることが多いといえます。

解決方法としては現在使用している回線を無理に継続させようとせず、家族名義などで「新規契約」してもらったほうがよいでしょう。

2章 自己破産前に名義変更すると起きる3つのこと

自己破産で財産が処分されることを避けるため、手続き前に名義変更をすると財産隠しとみなされ免責不許可になってしまう恐れがあるので絶対にやめましょう。
自己破産前に名義変更すると起きる問題は、下記の3つです。

  1. 破産手続による換価・処分の対象になる
  2. 免責不許可事由として扱われる
  3. 詐欺破産罪で処罰される

それぞれどのような問題が起きるのか説明します。

2-1 破産手続による換価・処分の対象になる

自己破産前に名義変更してしまうと、名義を変更した財産も破産手続による「換価」「処分」の対象になる可能性があります。

名義変更は財産を「減少」させるための行為と判断されれば、名義変更された財産でも処分の対象になるため、意味のない行為となってしまいます。

否認権
破産管財人は、債務者(破産者)がした行為のうち、債権者間の公平を害する行為(偏頗行為)があると、それを取り消して財産の流出を防ぐことができます。これを専門用語で否認権と呼びます。
たとえば、手元に残したいからと不動産の名義変更をしたときに、それを否認権の行使によって名義変更がなかった状態にできてしまう、というものです。
これがあるので、破産直前に色々と画策しても結局無駄になることが多く、かつ破産手続上の大きな問題になります。

2-2 免責不許可事由として扱われる

自己破産前に財産の名義変更をすると、「財産隠し」と認定されてしまい、「免責不許可事由」として扱われる可能性があります。

免責不許可事由とは
破産者の借金の返済義務を免除することを「免責」といいますが、「免責不許可事由」とは裁判所から免責を認めてもらえない一定の事情のことであり、債権者に対する酷な行為などが該当します。

免責不許可事由に該当してしまうと、自己破産しても借金返済が免除されなくなるため、注意してください。

財産の名義変更が財産隠しと認定され、名義変更が「贈与」と認定されてしまうと、財産を受け取った側に贈与税が発生することもあります。

2-3 詐欺破産罪で処罰される

破産手続開始前後に関係なく、財産の名義を変更したことが「財産隠し」と認定されれば、「詐欺破産罪」として「処罰」されます。

詐欺破産罪で処罰の対象になると、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金が科せられることとなりますが、事実を知って協力した者も対象です。

たとえば家を残すために自己破産する夫から妻の名義に変更した場合、夫婦どちらも詐欺破産罪で処罰される可能性があるため注意してください。

3章 自己破産前に名義変更しなくても残せる資産の種類

自己破産では、所有する財産を処分しなければなりません。

しかし自己破産前に名義変更しなくても、次の資産であれば残すことができる可能性があります。

  1. 無価値といえる自宅
  2. 新車登録から6年以上経過している車
  3. 価値が20万円以下の物品
  4. 生活に不可欠と認められる資産

それぞれ説明していきます。

3-1 無価値といえる自宅

自己破産で高額な財産は残すことができませんが、ほぼ価値がないとされる不動産なら「自由財産の拡張」という形で処分を「回避」することができます。

自由財産の拡張とは
自由財産の拡張とは、自由財産以外の財産のうち、裁判所が破産者の経済的更生に必要な一部の財産について自由財産と認めることです。

また、自己破産手続開始後に、破産管財人を通して家族などに「適正価格」で家を「一括購入」してもらうことで、他人に渡ることを防ぐことができます。

もっとも、価値のつかない不動産は滅多にありません。特に土地の値段は、田舎の山奥でもない限り、なかなか下がらないでしょう。

3-2 新車登録から7年以上経過している車

新車登録から「7年以上」経過している車で価値がないと判断される場合には、名義変更しなくても処分の対象にはなりません。

一般的に、新車の法定耐用年数(資産が利用に耐えることのできる年数)は7年とされていることが多いため、それ以上経過していれば価値がないとみなされます

3-3 価値が20万円以下の物品

裁判所によって扱いは多少異なるものの、目安として物品の価値が「20万円以下」の場合には、自由財産として所有し続けることができます。

日用品など全ての財産について逐一報告しなくて良いのはこのためです。

3-4 生活に不可欠と認められる資産

生活に不可欠なものは基本的に自由財産として、自動的に手元に残せるものがほとんどです。

しかし、例えば障がいのある方で高額な医療器具が必要だという場合など、一般的な99万円の枠内では収まらないものでも事情によって生活に不可欠と言えるものはあるでしょう。

このような場合、先にも説明したとおり「自由財産の拡張」が認められれば財産の処分を回避できます。

4章 自己破産前に名義変更してしまったときの対応方法

もしも自己破産前に名義変更してしまったときには、その旨を正直に伝えましょう

処分されることを恐れ、自己破産直前に名義変更してしまうと後で様々な問題が起きてしまいます。また、知らずにやってしまったことを隠すと、後で発覚した時の方が心証は悪くなります。

申立て前に財産の名義を変更してしまうと免責不許可事由に該当する可能性が高く、裁判所に裁量免責を求めることが必要になります。

裁量免責は裁判所の裁量により決定されるため、名義変更について悪意がなかったことや自己破産を繰り返さないことなど、反省の意思や今後の計画を誠実に説明することが必要です。

専門家などにサポートしてもらいながら裁判所への説明を尽くすことで、免責を認められる可能性が高くなるといえるでしょう。

逆に、バレたくないとして隠すと裁判所の心証は最悪となり、酷い場合には裁量免責が認められなくなります。隠すのではなく、正直に話して、その上で残せるかを前向きに検討することが重要です。

どうしても残したい財産があるときには、自己破産以外の方法を検討することをおススメします。

まとめ

借金問題解決に向けて自己破産を検討している方が、自己破産前に家や車など残したい財産の名義変更をした場合、財産隠しとみなされれば後で大きな問題となってしまいます。

そもそも自己破産しても名義変更不要で残すことができる財産もあるため、すべての財産を失うわけではありません。

また、自己破産では財産を処分することが必要ですが、他の債務整理であれば没収されることなく借金を減額できます。

もし財産を残したまま借金問題を解決したいときや、自己破産しようか迷っているときには、一度グリーン司法書士法人グループへご相談ください。

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