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- 日常家事債務の連帯責任について
- 日常家事に含まれる費用の例について
- 借金が日常家事を原因としない場合の配偶者の返済義務について
- 配偶者が連帯保証人の場合の返済義務について
- 夫婦のみで借金問題を解決できないときの対処法について
日常家事債務の連帯責任とは、夫婦の一方による日常の家事に関する法律行為の債務について、夫婦の他方が連帯して負わなければならない責任です。
「日常の家事に関する法律行為」とは、夫婦が共同生活を営む上で通常必要とされる契約や行為のことを指します。例えば、食料品の購入や子どもの教育費の支払いなどが該当します。
連帯責任のため、夫婦が離婚した後も継続し、夫婦の一方の債務を他方が支払わなければなりません。
ただし、夫婦間で連帯債務を負うのは、日常の家事に関して生じた債務のみです。
そこで、日常家事債務の連帯責任について、具体的な費用例や夫婦の借金の返済義務等を解説します。
目次 ▼
1章 日常家事債務の連帯責任とは
民法では「日常家事債務の連帯責任」が定められており、夫婦の一方による日常の家事に関する法律行為の債務については、夫婦の他方も連帯して責任を負います。
夫婦の共同生活において、日常的に必要な費用やそのために支出される債務が「日常家事債務」です。
夫婦一方のみが契約した借金でも、日常家事債務であれば、夫婦の他方も連帯責任を負わなければなりません。
ただし夫婦で連帯責任を負うのは、日常的に支出される債務のみです。
以下の項目で、該当する費用か総合的に判断します。
- 購入した商品・価格
- 夫婦の社会的地位・職業
- 経済的状況
- 地域の慣習
実際には個別で判断するため、日常的に支出される債務か判断が難しいときは専門家に相談することをおすすめします。
2章 日常家事に含まれる費用の例
日常の家事に関して生じた債務には、以下の費用が含まれます。
- 食費や光熱費・被服費
- 保険料
- 娯楽費
- 医療費
- 子供の教育費
- 家具や調度品の購入費用
ただし債務の範囲は同一ではなく、夫婦の生活規模や内部的事情、地域慣習や取引の性質などを客観的に観察した個別判断となります。
以上を前提に、それぞれの費用例を説明します。
2-1 食費や光熱費・被服費
日常家事債務に該当する費用として、食費・光熱費・被服費が挙げられます。
いずれも日常生活を送る上で必要不可欠とされる費用といえますが、個人の趣味で購入した高額なブランド品などは含まれないでしょう。
2-2 保険料
日常家事債務に該当する費用として、保険料が挙げられます。
たとえば自宅の火災保険や自動車の損害保険、医療保険などは日常家事債務に含まれるでしょう。
2-3 娯楽費
日常家事債務に該当する費用として、一定の娯楽費が挙げられます。
たとえば交際の範囲による飲食代や、贅沢ではない昼食代などです。
しかしギャンブル目的の借金は日常家事債務には該当せず、夫婦間で連帯して支払う義務はないと考えられます。
ギャンブル依存症の状態で夫婦関係を続けることは難しいため、預金口座やクレジットカードの明細などの写し等、お金の出入りを証拠として残しておきましょう。
2-4 医療費
日常家事債務に該当する費用として、医療費が挙げられます。
たとえば風邪や骨折など、一般的な診療に係る費用です。
ただし美容整形などは、日常家事債務に含まれないと考えられます。
2-5 子供の教育費
日常家事債務に該当する費用として、子の教育費が挙げられます。
ただし子の教材費用は、夫婦の内部的な事情と、客観的な観察での契約の種類や性質が日常生活に必要かで判断されます。
そのため同じ教材費用でも、夫婦によって認められることもあれば、そうではない場合もあります。
2-6 家具や調度品の購入費用
日常家事債務に該当する費用として、家具や調度品の購入費用が挙げられます。
家具や調度品は、日常生活に深く関係し利用される商品のため、日常家事の範囲内といえます。
しかし高額で常識的な範囲を超える商品の購入費用は、日常家事債務に該当しないと考えられます。
3章 借金の原因が日常家事でない場合は配偶者に返済義務は発生しない
夫婦の一方の借金の原因が、日常家事債務でなければ、夫婦の他方に返済義務はありません。
たとえば競馬やパチンコなど、ギャンブルを目的とした借金などが、その例として挙げられます。
夫婦が連帯責任を負うのは、日常家事債務に該当する債務です。
ギャンブル以外にも、男性であれば釣り道具やゴルフ用具を購入するための借金、女性ならエステ・カルチャースクールへ通うための借金などは、直接夫婦の生活に結びつくといえません。
夫婦の共同生活に関係のない個人的な債務は、日常家事債務に含まれるといえず、配偶者に返済義務は発生しないと考えられます。
4章 【注意】配偶者が連帯保証人となっている場合は返済義務が発生する
日常家事債務に該当する債務ではなくても、夫婦の一方の借金で、夫婦の他方が連帯保証人になっている場合は、返済義務を負います。
たとえば夫が妻の知らない間に貸金業者からお金を借りていた場合、法的には妻に支払い義務はありません。
しかし夫の借金について、妻が貸金業者と連帯保証契約を締結していれば、借金の目的が日常家事債務に該当しなくても妻に支払義務が発生します。
仮に夫が借金を返済できなくなった場合は、妻が代わりに返さなければなりません。
夫婦間で連帯保証人になった場合、仮に離婚した後でも支払い義務は残るため注意してください。
5章 夫婦のみで借金問題を解決できないときの対処法
夫婦で連帯責任を負うのは、日常家事債務に該当する場合のみです。
配偶者本人のみの借金の返済義務はないため、日常家事債務に該当しないか確認するとともに、夫婦のみで解決できない借金問題は以下の方法で対処するべきといえます。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
それぞれの対処法を説明します。
5-1 任意整理
「任意整理」とは、債権者と直接交渉し、将来利息のカットなどの方法で借金を減額させて、3~5年程度で返済するための手続です。
手続の対象に含む借入れを選べるため、配偶者が連帯保証人の借金は除くこともできます。
たとえば夫が任意整理をする場合、夫名義の家族カードは使用できなくなります。
ただ、妻名義のローンやクレジットカード利用には影響はありません。
5-2 個人再生
「個人再生」とは、借金を5分の1程度まで大幅減額させ、原則3年で返済するための手続です。
任意整理のように手続の対象を選べないため、配偶者が連帯保証人の借金も対象となります。
夫が個人再生をする場合、夫名義の住宅ローン返済中の自宅は、特則を利用することで手放さずに手続できます。
また、妻のローンやクレジットカード利用に影響はないものの、夫名義の家族カードは使えなくなります。
5-3 自己破産
「自己破産」とは、全ての借金返済を免除してもらうための手続です。
個人再生と同じく配偶者が連帯保証人になっている借金も対象となります。
夫が自己破産する場合、妻のローンやクレジットカード利用に影響はありません。
ただし夫名義の家族カードは使用できなくなることと、夫名義の財産は処分の対象に含まれることには注意が必要です。
自宅名義が夫の場合も処分されるため、新しく住む場所を見つけることが必要です。
まとめ
日常家事債務の連帯責任とは、夫婦の一方による日常の家事に関する法律行為の債務について、夫婦の他方が連帯して負わなければならない責任です。
連帯責任のため、仮に夫婦が離婚した後も継続し、夫婦の一方の債務を他方が支払わなければなりません。
また、夫婦の一方による日常家事債務以外の借金でも、夫婦の他方が連帯保証人になっていれば、離婚した場合でも完済まで返済義務が発生します。
日常家事債務に含まれるのか、明確な線引きはなく、個別の事情などで判断されます。
どのような場合に日常家事債務に該当するのか、判断が難しいときはグリーン司法書士にご相談ください。
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