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妻が多額の借金をしていることが発覚し、問題解決に向けて債務整理を検討することもあるでしょう。
しかし、妻だけ債務整理した場合、様々な不安や疑問がよぎることとなります。
「そもそも妻だけ債務整理できるのか」
「妻に代わって夫や家族へ請求が及ばないか」
「信用情報への影響は?」
そこで、妻だけが債務整理したい場合の夫や家族の返済義務や信用情報などの影響について、次の5つの章に分けて説明していきます。
- 妻だけ債務整理することは可能
- 妻だけ債務整理するときの夫への影響
- 妻の借金で夫に返済義務が発生するケース
- 妻だけ債務整理したときの配偶者や家族への影響
- 妻だけ債務整理した場合のローンへの影響
妻だけが債務整理するケースだけでなく、配偶者である夫のみが手続する場合にも参考にしてもらえる記事のため、債務整理を検討しているならぜひご一読ください。
目次 ▼
1章 妻だけ債務整理することは可能
結論からお伝えすると、妻だけが債務整理をすることは可能です。
債務整理には次の3つの手続があります。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
3つのいずれかを妻だけが手続する場合でも、
「妻だけ任意整理しても夫にも請求が及ぶのではないか」
「個人再生で減額された借金を夫が支払わなければならないのではないか」
「妻だけ自己破産しても夫名義の家を手放さなければならないのではないか」
などのように、生計を共にする夫婦だからこそといえる不安を抱えることが多いといえます。
中には、
「妻だけが自己破産しても夫婦揃って路頭に迷うことになるのではないか?」
と不安になる方もいるでしょうが、妻だけが債務整理した場合にその配偶者である夫に請求が及ぶことは、原則ありません。
2章 妻だけ債務整理するときの夫への影響
妻だけが債務整理することは可能でも、その配偶者である夫に何も影響はないのか「不安」になる方もいることでしょう。
夫婦である以上、たとえ妻が個人的に借りたお金でも、夫に返済義務が生じるのではないかと考えてしまいがちです。
そこで不安を感じる方のために、妻だけ債務整理するときの夫への影響について、次の2つに分けて説明します。
- 保証人でなければ返済義務なし
- 信用情報にも影響なし
2-1 保証人でなければ返済義務なし
妻だけが債務整理するとき、配偶者である夫が代わりに返すように請求されることは基本的にはありません。
夫婦の一方のみが債務整理する場合、
「配偶者が代わりに支払わなければならなくなるのではないか?」
と心配する方もいるようですが、配偶者が請求されることも取り立てに追われることもありません。
ただし債務整理の対象に含まれている借金のうち、夫が「連帯保証人」になっている場合は請求されてしまいます。
夫が保証人となっている借金は除き、他の借入れのみ債務整理の対象としたいなら、「任意整理」を選ぶことになります。
2-2 信用情報にも影響なし
妻だけが債務整理すると、配偶者である夫の信用情報にも影響が及ぶのでは心配する方もいるようですが、ブラックリスト状態になるのは妻のみです。
債務整理した場合、信用情報機関の管理している「個人信用情報」に事故情報が記録され、一定期間はいわゆるブラックリスト扱いになります。
ブラックリスト入りすると、銀行など金融機関から融資を受けることやクレジットカードを利用することはできなくなりますが、あくまでも債務整理した妻だけの問題です。
配偶者である夫の信用情報に影響が及ぶことはないため、ローンを組むこともクレジットカードを利用することもできます。
3章 妻の借金で夫に返済義務が発生するケース
妻だけ債務整理した場合、基本的にその夫が借金を代わりに返済する必要はありません。
あくまでも借金はお金を借りた個人の問題であり、生計を共にする夫婦でも配偶者個人の借金を背負う必要はないとされているからです。
ただし次の2つに該当する場合、妻の借金であっても夫に返済義務が発生してしまいます。
- 借金が日常家事債務の場合
- 連帯保証人になっている場合
それぞれ説明していきます。
3-1 借金が日常家事債務の場合
本来、妻だけが借金をつくっても妻個人の問題として扱われますが、借金をした理由が「日常家事債務」である場合は、夫も共同責任を負う可能性があります。
日常家事債務とは、婚姻生活で必要な費用のための借金であり、たとえば次の費用負担を目的とした借金が該当すると考えられます。
- 食料品
- 水道光熱費
- 子どもの教育費
- 家具・家電
日常生活で必要なものの購入や支払いで借金をしていた場合には、たとえ妻名義の借入れであっても夫に返済義務が発生する可能性があるといえます。
ただし日常家事債務が具体的に問題になることはほとんどありません。
3-2 連帯保証人になっている場合
妻のみの借金だとしても、夫がその「連帯保証人」になっている場合、妻の債務整理で夫に請求が及ぶ可能性があります。
債務者が返済できなくなったとき、代わりに支払う義務を負うのが連帯保証人のため、妻が返済できないなら夫が代わりに返すように求められます。
ただし「任意整理」なら、夫が連帯保証人になっている借金のみを除き、他の借金だけ債権者と交渉することはできます。
4章 妻だけ債務整理したときの配偶者や家族への影響
妻だけが債務整理した場合でも、その配偶者である夫や家族の「生活」に影響が及ぶこともあります。
どのような影響が及ぶかは、債務整理のうちどの手続を選ぶかによって異なります。
そこで、債務整理の種類ごとの配偶者や家族に対する影響について、次の3つに分けて説明していきます。
- 妻だけ任意整理した場合
- 妻だけ個人再生した場合
- 妻だけ自己破産した場合
4-1 妻だけ任意整理した場合
妻だけが任意整理したときの配偶者や家族に対する影響は特になく、たとえば配偶者の信用情報に傷がついたりローンが組めなくなったりなどはないといえます。
ただし妻の借金の「連帯保証人」になっているときには代わりに返済を求められるため、妻が任意整理の対象とする借金から「除外」して手続することで、請求されずに済みます。
なお、任意整理する妻名義人に紐づいた「家族カード」については利用できなくなるため注意してください。
4-2 妻だけ個人再生した場合
妻だけが個人再生した場合、任意整理のように手続対象とする借金を選ぶことはできないため、夫が連帯保証人になっている借金も手続することになります。
そのため夫が妻の借金の連帯保証人になっている場合、妻が個人再生することで返済するように請求されてしまいます。
また、任意整理と同じく、個人再生する妻名義人に紐づいた家族カードについては利用できません。
4-3 妻だけ自己破産した場合
妻だけが自己破産する場合でも、手続の対象とする借金を選ぶことはでず、すべての借金が対象となります。
妻名義に紐づいた家族カードも利用できなくなり、連帯保証人になっていれば返済するように一括請求されます。
妻が「住宅ローン」を利用している場合、個人再生と異なり自己破産では住宅ローンも手続の対象となるため、家は「処分」されることとなり転居が必要になります。
住宅ローンを完済していても所有する「財産」とされるため、処分の対象となり結局「転居」しなければなりません。
不動産だけでなく、自動車や預金などにも影響が及ぶことで一緒に生活している夫や家族の暮らしが「変化」する可能性はありますが、生活に最低限必要とされるものまで、すべて没収されるわけではありません。
5章 妻だけ債務整理した場合のローンへの影響
妻だけが債務整理した場合、夫が直接請求されることはなくても、「間接的」に影響を受けることはあります。
特に気になるのはすでに借りているローンなどで、中でも利用が多い「住宅ローン」と「奨学金」については気になるところでしょう。
妻だけが債務整理した場合のローンへの影響として、主に次の4つが挙げられます。
- 家族カード利用の制限
- ペアローンは利用不可
- 途上与信によるカード利用条件の変更
- 奨学金の保証人変更
それぞれ説明していきます。
5-1 家族カード利用の制限
妻だけが債務整理をした場合でも、妻名義のクレジットカードにより作った「家族カード」は利用が制限されます。
債務整理の対象となったクレジットカードは使用できなくなるため、そのカードに紐づく家族カードも使えなくなってしまいます。
ただし夫の信用情報に傷がつくわけではないため、夫名義でカードを作ることは可能です。
5-2 ペアローンは利用不可
妻が債務整理したことで「ブラックリスト扱い」になると、「住宅ローン」の組み方が制限される可能性があります。
ブラックリストに掲載される期間中、新たに住宅ローンを組むことはできなくなるため、夫婦で持ち分を決めそれぞれがローンを組む「ペアローン」や、「収入合算」によるローンは組めなくなります。
そのため夫のみで住宅ローンを組むか、妻がブラックリストから解消されるまで待つことが必要です。
5-3 途上与信によるカード利用条件の変更
妻のカードが「途上与信」されると妻の債務整理が発覚することとなり、夫の「カード利用条件」が変更されることもあります。
途上与信とは、クレジットカード発行後にカード会社が利用者の信用状態を確認することです。
住所や電話番号などの情報から生計を共にする妻のブラックリスト扱いが判明してしまい、夫も経済状態が悪化していると推測して、債務整理していない夫のカードの利用まで停止したり限度額を引き下げたりといった対応を取ることも稀ですがあります。
5-4 奨学金の保証人変更
奨学金は学生である「子」が借りる制度であり、採用されるには次の3つの「審査基準」をクリアすることが必要です。
- 成績が一定以上であること
- 学校の推薦があること
- 家庭の収入が基準以下であること
そのため申し込み段階で「親」の信用情報が確認されることはなく、親が債務整理する場合でも審査に影響はありません。
ただし奨学金は保証人をつけなければ借りることができず、債務整理中の親は「連帯保証人」になることができません。
妻が連帯保証人になっている期間中に債務整理した場合、連帯保証人を変更するように求められることとなるでしょう。
なお、この場合には「夫」が連帯保証人になるか、「機関保証」を選択すれば問題ないといえます。
日本学生支援機構が指定する保証機関が連帯保証を受ける制度で、保証機関に対し保証料を支払うことで、奨学金返還を一定期間延滞した場合でも代わりに返済してもらえます。その後、保証機関から奨学生に対し、代わりに返済してもらった額が一括請求されます。
まとめ
妻だけが債務整理をしても、夫が連帯保証人になっていなければ代わりに支払うように請求されることはありません。
夫婦の一方のみの債務整理で、配偶者の信用情報に傷がつくこともなく、ブラックリスト扱いされることもないといえます。
ただし住宅ローンの組み方が制限されることや、妻名義のカードに紐づいた家族カードの利用はできなくなるなど、不便さを感じることはあるでしょう。
また、クレジットカードの途上与信により、債務整理したわけではない夫のカード利用まで制限を受けてしまうことも稀にあります。
借金負担は債務整理で軽減されますが、どの手続をすれば配偶者や家族に迷惑がかからないか悩んでいるときなど、専門家に無料相談したほうが安心です。
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よくあるご質問
- 妻だけ自己破産できる?
- 妻だけが債務整理をすることは可能です。
妻が債務整理したとしても、夫名義の財産が没収されることもないのでご安心ください。
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