夫の借金が発覚!妻の返済義務は?離婚せず問題解決するための対処法

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

借金返済の知識
夫の借金が発覚!妻の返済義務は?離婚せず問題解決するための対処法

この記事は約 17 分で読めます。

妻の把握していない夫の借金が発覚し、しかもその理由がギャンブルや浮気などに多額のお金を使ったことによるものだったとしたら、夫婦関係に大きな亀裂を生じさせます。

そして妻は自分が把握しきれていなかった夫の借金で、今後自身に降りかかる返済義務などに不安を抱えることになるでしょう。

もっとも、本来、夫の借金はあくまでも夫個人のものであり妻に返済義務はないのが原則です。

ただ、例外的に妻も夫の借金を返済することが必要になるケースもあるため、離婚という道を選ぶことなく借金問題を解決できる対処法を知っておくと安心です。

そこで、

  1. 夫の借金を妻が請求される2つのケース
  2. 夫の借金が見つかったとき確認しておきたいこと6つ
  3. 夫の借金返済を手伝うとき必要な5つの準備
  4. 夫婦だけでは解決できないときに検討したい3つの債務整理

について、それぞれ章ごとに詳しく説明していきます。

1章 旦那の借金を配偶者が返済する必要はない

旦那名義の借金は通常、夫婦の共有財産とはみなされないため、離婚時に妻がその借金を負担する必要はありません。
しかし、借金の原因が生活費の不足分などであり夫婦の共同の借金と見なされる場合は、財産分与の対象になる可能性があります。

旦那の借金を妻が支払わなければならないケースは、本記事の2章で詳しく解説します。

2章 夫の借金を妻が請求される2つのケース

借金は借りた本人が返済義務を負うため、借金の保証人になっていない限り、夫の借金を妻が返済する義務はありません

ただし、夫の借金について、妻が請求される次の2つケースには注意しましょう。

  1. 夫の借金が日常家事債務に該当すると認められるとき
  2. 妻が夫の借金の保証人になっているとき

それぞれどのようなケースか説明していきます。

2-1 夫の借金が日常家事債務に該当すると認められるとき

夫婦の場合、本当に夫の借金が夫本人だけのものなのか、「日常家事債務」に該当しないか確認することが必要です。

夫の借金が「日常家事債務」に含まれる場合、妻にも返済責任が生じることになります。

日常家事債務とは
「日常家事債務」とは、夫婦が日常生活に必要な範囲で負担する債務であり、夫婦が共同生活を送る上で生活必需品など購入したときなどが該当します。

基本的に夫婦が公平に負担するべきといえる支払いは次のような費用が挙げられます。

  • 家賃
  • 公共料金
  • 食費
  • 教育費
  • 医療費
  • 日用品購入費

ただし「日常家事債務」に該当するかという明確な線引きはないため、専門家に相談した上で判断したほうがよいといえます。

ただ、上記のような支払いは夫婦ともに把握していることが多いでしょう。

夫が妻に内緒で借金をしている場合、その借金が「日常家事債務」に該当することは少ないと考えられるため、原則として夫のみが返済義務を負う​こととなります​。

2-2 妻が夫の借金の保証人になっているとき

夫の借金に対し、妻が「保証人」や「連帯保証人」になっているときには、妻にも同等の返済義務が発生します。

お金を借りるときに保証人を求められると、

  • 保証人
  • 連帯保証人

のどちらかを選択することになります。

「保証人」と「連帯保証人」は、債務者本人が借金の返済ができなくなったとき、代わりに返済する義務を負うことは共通しています。

しかし保証人には次の3つの権利が認められています

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催告の抗弁権「まずは債務者本人に請求をしてください」と主張する権利
検索の抗弁権債務者本人に返済可能とする資力があるときには、債務者本人の財産に対して強制執行するよう主張する権利
分別の利益保証人の保証債務は、保証人の数により分割された金額を上限とする利益

ただし、これら3つの権利は連帯保証人には認められません

「連帯保証人」は保証人とは異なり債務者本人と同じ責任を負うこととなるため、妻が夫の借金の連帯保証人になっていれば、全部の返済義務を負わなければならないと理解しておいてください。

3章 夫の借金により離婚するメリット・デメリット

夫の借金が発覚し「信用できない」「トラブルに巻き込まれたくない」と離婚を考える人もいるのではないでしょうか。
夫の借金により離婚するメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。

3-1 夫の借金により離婚するメリット

夫の借金が原因で離婚した場合、信頼できない相手と一緒に暮らさなくてすむなどといった下記のメリットがあります。

  • 信頼できる相手と一緒に暮らす必要がない
  • 夫が浪費していた、経済DVをしていた場合、離婚により経済的に安定する可能性がある

夫の借金が発覚し、二度と信頼できない、一緒に暮らすことが難しいと感じる場合には、離婚も視野に入れても良いかもしれません。

3-2 夫の借金により離婚するデメリット

夫の借金が発覚し離婚した場合、子供を育てる環境が変わることがデメリットとなる場合もあるでしょう。
夫の借金が原因で離婚するデメリットは、下記の通りです。

  • 引っ越しなど子供の教育、育児環境が変わる恐れがある
  • 離婚により子供の心身に影響を及ぼす恐れがある
  • 子供が父親と会えなくなることを嫌がる恐れがある
  • 自分が専業主婦の場合、離婚により家計が苦しくなる恐れがある

子供への影響や経済状況、借金の理由などを考えた結果、離婚せずにもう一度夫と向き合ってみよう、夫婦で協力して借金を返済しようと考える場合もあるでしょう。

4章 夫の借金が見つかったとき確認しておきたい6つのポイント

妻が把握できていなかった夫の借金が発覚したとき、夫婦で協力して返済するのか考えていく必要がありますが、適切な判断をするためにも次の6つをまずは確認しましょう。

  • 借金の理由
  • 借入先
  • 借入総額
  • 担保のついた借金の有無
  • 保証人のついた借金の有無
  • 滞納や督促の有無

それぞれ何を確認するべきか説明していきます。

4-1 借金の理由

まずは夫が隠れて借金を重ねてきたその「理由」をたずねてみましょう。

「給料が減給されてしまったことを相談できず補填していた」「会社の運転資金に充てていた」

など、やむを得ないと考えられる事情だったとしたら、たとえ内緒で重ねた借金でも同情の余地はあると感じてしまうものです。

しかし借金の理由が、

「ギャンブルなど遊興費」「キャバクラ通いなど娯楽費」「浮気相手との旅行やプレゼント購入費」

などの場合には、その理由から「断絶」してもらわなければ、また借金を繰り返す可能性が高いですし、夫婦関係を修復することも困難になると考えられます。

収入を超えた「浪費」や「ギャンブル」などを理由に借金を繰り返す借金癖がある場合、お金の管理は妻が徹底して行いましょう

ギャンブルと借金がセットになっているときには、問題の根が深いため再発しないよう、断固たる対応が必要になります。場合によっては、法律的に借金を解決するだけでなく、医学的なカウンセリング等が必要になることもあるでしょう。

4-2 借入先

借金返済に向けて、どこからお金を借りたのか、「借入先」も確認しておくことが必要です。

銀行または貸金業者のどちらから借りたのか、借入先が1社だけか・複数社なのかなどによって、毎月の返済負担は大きく変わります。

万が一、借入先に闇金が含まれている場合には、放置すると家族へ取立てが来るなどの悪影響が出てくる可能性も考えられます。この場合には、闇金専門の弁護士に頼んで解決してもらわなければ根本的な解決にはならないでしょう。

4-3 借入総額

どこからお金を借りたのか、借入先だけでなく「借入総額」についても確認が必要です。

毎月の「返済額」と「返済日」なども明確にすることで、今後の「返済計画」を立てやすくなります。

支払いできないほど借金が膨れあがっているときには、借金地獄から抜け出す方法も検討しなければならないため、「利用明細」や「契約書」などを出してもらうようにしましょう。

借金の総額によって毎月返済すべき金額も変わりますし、その額を家計から出せるかによって解決方法も大きく変わってくる可能性があるため、正直に話してもらうように冷静に粘り強く確認するようにしましょう。

4-4 担保のついた借金の有無

夫の借金に、自宅や自動車などを「担保」にした借入れはないか確認することも必要です。

お金を借りるときは、担保を付けたほうが審査に通りやすく、借入限度額も増えます。そのため担保付きの借金がないとは言い切れません。

担保とは
「担保」とは、債務者がお金を返せないときに債権者の損害を補うため、保証として差し出す財産的価値のあるものなどのことです。

代表例は、住宅ローンを組む時に、自宅不動産に抵当権を設定するケースです。この場合、住宅ローンが返せなくなったら自宅を競売に掛けて強制的に返済に充てることになります。

一般的に、担保として差し入れるのは自宅など不動産が多いですが、もし担保付きの借金を返済できなくなれば担保に入れた財産は差押えされてしまいます。

そのため夫の借金に担保が付いているか、契約内容を確認しておくようにしましょう。

夫から伝えられた内容に疑念がある場合には、法務局で自宅の「不動産登記事項証明書」を取得することにより、担保が設定されているか確認できます

4-5 保証人のついた借金の有無

夫の借金に「保証人」が付いていないか、その有無も必ず確認しましょう。

もしも保証人や連帯保証人が付いている借金がある場合、夫が借金を返済できなくなれば迷惑をかけることになってしまいます。

保証人がいる場合には、夫婦だけでなく、その保証人も交えて話し合う必要も出てくるでしょう。

また、逆に夫が誰かの借金の保証人になっていないかを確認することも必要です。

4-6 滞納や督促の有無

返済中の夫の借金のうち、「滞納」している借入れや「督促」されている借金はないか確認しましょう。

返済が遅れ督促されている借金を放置している場合、その借金に担保や連帯保証人などが付いていれば、生活に支障をきたしたり連帯保証人に迷惑をかけたりといったことになってしまいます。

5章 夫の借金返済に協力するとき必要な5つの準備

夫の借金の内訳を確認した上で、妻も返済に協力するのなら、状況に応じて次の5つの準備をはじめましょう。

  • 妻の特有財産から返済する
  • 妻が働いて借金返済を手伝う
  • 借金の原因と断絶する
  • お金の管理は妻が徹底して行う
  • 借金返済に向けた計画を立てる

それぞれの準備について説明します。

5-1 妻の特有財産から返済する

「結婚前」から妻が保有している自身の預貯金などは、妻個人の財産です。これを妻の特有財産といいます。

この妻の「特有財産」は夫婦共有の財産に含まれないため、夫の借金を妻の特有財産で返済するときには、夫に「肩代わり分」を返済してもらうよう請求できます。

このとき、たとえ夫婦間での取り決めであっても、口約束で済ませずに「債務承認弁済契約書」を交わしておいたほうが安心です。

債務承認弁済契約書とは
債務承認弁済契約書とは、借金を負っていることを承認し、その借金の原因や発生日、弁済方法など記した契約書のことです。

契約書には、次の内容を記載しておくようにしましょう。(なお、あくまで必要最低限の事項なので、これらを記載すれば絶対に十分であるというわけではありません。)

  • 妻から夫に貸した金額と貸し付けた日
  • 夫が妻に対し返済義務を負っている旨
  • 返済期日と返済方法
  • 保証人を付けるときは保証に関する内容

5-2 妻が働いて借金返済を手伝う

妻が働いて夫の借金返済を肩代わりするなど、働きながら借金返済を手伝う場合もあるでしょう。まとまったお金は手元にないけれど、妻の給料から毎月1万円や2万円など、夫の借金返済に充てるなど協力して完済を目指すケースです。

しかし夫の借金が「浪費」「ギャンブル」「不倫など不貞行為」による場合には、なぜ苦労してまで借金返済に協力しなければならないのか、そもそも肩代わりしたくないと思うこともあるでしょう。また、代わりに払ったとしたら肩代わりした分は返してほしい」と感じるものです。

その場合、返済の都度お金を夫に貸す形になるため、返済期日の異なる「借用書」を複数作らなければなりません。そこで、それらを1つにまとめる「準消費貸借契約書」を作成しましょう。

「準消費貸借契約書」に記載する内容は、「債務承認弁済契約書」とほぼ同じと考えてよいといえます。

書面の呼び方はともかく、貸したお金の内容をしっかりと書面に残しておくことが非常に重要なのです。

5-3 借金の原因を断絶する

夫の借金の原因が浪費・ギャンブル・浮気などの場合、その原因を断絶することも必要です。

原因から断ち切ることができなければ、仮に借金を完済しても再び借金問題が発生する不安を残します。

「お金の使い方」「交友関係」「生活習慣」なども見直すように夫婦で話し合いましょう。

ギャンブルなどの「依存症」が理由の場合には、カウンセリングを受けてもらうことも必要になる可能性があります。

5-4 お金の管理は妻が徹底して行う

再び借金問題を繰り返すことのないように、お金の「管理」は妻が徹底して行うようにしましょう。

仮に夫からクレジットカードやローンカードを取り上げたとしても、家賃や住宅ローンなどの支払いに充てるはずのお金を手にすれば、使い込んでしまう可能性もあるからです。

夫の毎月の収入を示す「給与明細」などの証拠資料と、給料など受け取ったお金はすべて妻に渡してもらうようにし、夫が毎月自由に使える一定金額のみを渡すなど「お小遣い制」にしたほうが安心です。

5-5 借金返済に向けた計画を立てる

夫の借金を完済するため、借金返済に向けた「計画」を立てます。

いつまでに完済するのか、目標を設定するとモチベーションも維持しやすくなります。

毎月の給料から1か月に必要な生活費や貯金額などを先に差し引き、返済に充てることができる金額を把握し、返済に使用するカードなども妻が管理します。

夫にお金を自由に使えない環境を作ることで、借金を繰り返すことを防ぐことができるでしょう。

6章 夫婦だけでは解決できないときに検討したい3つの債務整理

ここまで見てきたとおり、夫の借金を解決するには妻の協力が必要不可欠です。しかし、夫婦だけで借金問題をすべて解決できるとも限りません。夫婦で協力して借金問題解決に取り組んだものの、自力では解決に至らないという場合には専門家の力を借りましょう。

借金問題解決につながる3つの債務整理は以下のとおりです。

  • 任意整理
  • 個人再生
  • 自己破産

それぞれの方法について説明していきます。

6-1 任意整理

「任意整理」とは、債権者と直接「交渉」して、将来利息のカットなど借金を減額させ3~5年で返済する手続です。
整理対象とする借金を選択できるため、保証人が付いたものは除いて手続可能です。

任意整理を司法書士や弁護士に依頼する際には、下記の書類を用意しておきましょう。

  • 身分証明書
  • 印鑑
  • キャッシュカードやクレジットカード

また、借金の内容によっては下記の資料がさらに必要になります。

  • 収入証明書
  • 源泉徴収または給与明細
  • 貸金業者と交わした契約書または借用書
  • 借金の入金明細や返済時の領収書
  • 債権者一覧
  • 内容証明・督促状
  • 預金通帳

任意整理をスムーズに進めるためにも、どの書類がいつ必要になるのか司法書士や弁護士に確認しておきましょう。
なお、夫が任意整理すると夫名義の家族カードは使用できなくなりますが、妻名義でローンやクレジットカードを利用することは問題ありません。

6-2 個人再生

「個人再生」とは、裁判所に申立てを行い、5分の1程度まで借金を大幅に減額させ原則3年(最長5年)で返済する手続のことです。

すべての借金が手続の対象となるため、連帯保証人の付いた借金がある場合、連帯保証人に迷惑をかけることになります。

ただし夫名義の住宅ローン返済中の自宅については、特則を利用することで手放すことなく借金を減額させる手続ができます

夫が個人再生すると、妻のローンやクレジットカード利用に影響はありませんが、夫名義の「家族カード」などは使用できなくなるので注意しましょう。

6-3 自己破産

「自己破産」とは、裁判所に申立てを行って借金返済を免除してもらう手続のことです。

すべての借金が手続の対象になるため、個人再生同様に、連帯保証人に迷惑をかけることになることは留意しておいてください。

妻がローンやクレジットカードの利用に影響はありませんが、夫名義の「家族カード」などは使用できなくなり、夫名義の資産は処分の対象になります

自宅の名義が夫になっている場合、新たに住む場所を見つけ、引っ越しすることも必要となるでしょう。

まとめ

夫の借金は夫個人に返済義務があるため、妻が連帯保証人という場合以外では、妻に返済の責任が及ぶことはありません。しかし、夫の借金問題を解決するには、家族の協力が不可欠です。特に妻の協力があるかどうかで大きく変わってきます。

夫婦で協力して夫の借金を返済するためにも、なぜ借金をしたのかその理由をたずね、借金の原因から断絶することが必要です。

ひとまずの対処として、お金の管理も妻が徹底して行い、しばらくは夫にお金を自由に使うことができない環境を作るようにしましょう。

しかし借金の原因を根本的に解決しなければ、真の解決には至りません。ギャンブル等の依存症が原因ならば医者へ、闇金が原因ならば専門の弁護士へ協力を仰ぐ必要があります。

その他、借金額が多すぎて夫婦の努力だけでは解決しないという場合もあります。

そのような場合こそグリーン司法書士法人グループに問い合わせいただければ、借金問題解決に向けた最適な提案をさせていただくことができますので、ぜひご相談ください。

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よくあるご質問

夫の借金が発覚したらどうする?
夫の借金が発覚した際には、まずは借金の名義と理由を確認しましょう。
夫名義の借金であり、借金の理由も夫個人のものであれば妻は返済義務を負いません。
夫の借金が見つかったとき確認しておきたい6つのポイント
夫の借金は誰が払う?
夫の借金が夫個人のものと判断される場合には、妻が返済義務を負う必要はありません。
一方で、夫名義の借金が夫婦の共同生活の中で作った借金と認められれば返済義務を負いますし、離婚後も財産分与の対象になります。
夫の借金は夫婦の共有財産にならない
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