消費者金融による給与の差押えは転職・退職で解除される?

司法書士渡邊優太

監修者:グリーン司法書士法人   渡邊優太
【所属】大阪司法書士会 登録番号大阪第4454号 / 大阪府行政書士会所属 会員番号第17260997号 【保有資格】司法書士・行政書士

借金返済の知識

この記事は約 11 分で読めます。

 この記事を読んでわかること

  • 給与の差押えはいつまで続くのか
  • 給与差押え中の転職・退職で起きること
  • 給与の差押えを解除する方法

消費者金融で給与が差し押さえられるのは、借金の返済が滞った場合です。給与差押えは、債務者の給与から強制的に、返済金を回収する手段として利用されます​。この差押えは、債権者が裁判所に申立てを行い、債務名義を取得した後に行われるものです​。

しかし、転職や退職をしても、新しい職場で給与を受け取るようになれば、その給与も再び差し押さえの対象となる可能性があります。したがって、転職や退職は給与差押えの問題を、根本的に解決する方法ではありません​。

今回の記事では、消費者金融による給与の差押えの概要や、それが転職・退職で解除されるかどうかの詳細を解説します。転職で差押えの心配があるみなさんは、対処法のための参考にしてください。

1章 消費者金融による給与の差押えは借金完済まで続く

消費者金融などの貸金業者による給与の差押えは、給与差押え額が債権額に満たない場合、元金、遅延損害金を含む利息、執行費用が全額回収できるまでは継続します​。

債務者が借金返済を滞納した場合、債権者である消費者金融などの貸金業者は、給料総額から所得税、住民税、社会保険料などを控除した後の手取り額のうち、4分の1までが差押えの対象です。

ただし、手取り額の4分の3が33万円を超えている場合(手取りの総額が44万円を超えている場合)は、33万円を超えている部分が全額差押え対象となります​。

なお、当事者間で特段の合意がないかぎり、差し押さえられた金額は次のような順番に充当されることとなっています

  1. 執行費用
  2. 遅延損害金を含む利息
  3. 元金

強制執行中も遅延損害金は加算され、返済負担がどんどん増えていくので、できるかぎり任意かつ早期に支払うほうがダメージが少なくて済みます。

なお、差押えは給与だけでなく、ボーナスや退職金も対象となるので注意が必要です。

⚠️給与だけでなく「ボーナス」や「退職金」も差押えの対象となる

ボーナスが差し押さえられる範囲は、給与と同様に、原則として手取りの4分の1までです。また、手取りが44万円を超える場合には33万円を超える額すべてが対象というのも、給与と同じです。

まだもらっていない退職金が対象となる理由は、退職金が給料の後払いとして考えられ、働いている間から徐々に権利が発生しているからです。そのため、退職金をもらう前でも差押えの対象となります。

ただし、給与やボーナスとは異なり、税金や社会保険料を控除した金額が33万円を超えても、退職金については一律で4分の1が差押えの限度となります。このため、退職金は給料やボーナスよりも多くの部分を手元に残しやすいといえます。

なお、中小企業退職金共済制度や確定拠出年金制度などの特定の制度における退職金は、民事執行法で差押えが禁じられています。

給与の差押えは、以下のいずれかに該当する場合に終了します。

  • 債務が完済される
  • 債権者が差押えを取り下げる
  • 借入人が破産手続開始決定を受ける
  • 借入人が民事再生手続開始決定を受ける
  • 裁判所が差押えを解除する

給与の差押えは、生活に大きな影響を与えます。差押えによって生活費が不足したり、周囲に借金問題を知られたりするおそれがあるでしょう。

なお、退職金の差押えについては、以下の記事でくわしく取り上げています。

ぜひ、参考にご覧ください。

2章 消費者金融による給与差押え中に転職・退職すると起きること

消費者金融などの貸金業者による給与の差押えが執行されている間に、転職や退職をすると次のようなことが起きると考えられます。

  • 現在の勤務先の退職金が差し押さえられる
  • 退職後は元会社への給与差押えは行われなくなる
  • 退職が見せかけ・偽装であれば差押えが続く
  • 失業保険は差押えの対象外となる
  • 転職先の給与も再び差押えの対象となる

個別に見ていきましょう。

2-1 現在の勤務先の退職金が差し押さえられる

差押えの執行中に勤務先が変わった場合は、現在(つまり転職後)の勤務先の退職金のうち、手取り額の4分の1までが差し押さえられます。

もし、退職金が差し押さえられるような事態になった場合は、早急に債務整理などの対策を検討することが重要です。また、退職金の差押えに関する詳細な情報や対策については、専門家に相談することをおすすめします​​。

差押えでお困りのみなさんは、ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。

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2-2 退職後は元会社への給与差押えは行われなくなる

給与の差押えの執行中に退職すると、元の会社への給与差押えは行われなくなります。これは、給与差押えが特定の給与(債権)に対する強制執行であるためです。したがって、退職すれば、以前の給料差押えの影響は及びません。

たとえば、A社で給料差押えを受けていた人がA社を退職してB社へ移った場合、B社の給料は差し押さえられず、全額受け取ることができます。

ただし、新しい会社で再び給料差し押さえを受ける可能性もあるため、滞納状態を解消することが優先的な課題です。滞納状態がどうしても解消できない場合は、速やかに専門家に相談するのが賢明といえるでしょう​​。

2-3 退職が見せかけ・偽装であれば差押えが続く

債務者が会社を退職した場合、裁判所は退職の理由や状況、手続きの正当性などから、退職が実際に行われたかを調査します。偽装であると判断された場合は、差押えが継続します。

したがって、退職を考えている場合は、正当な理由と手続きで行うことが重要です。

また、退職して同じ会社に再就職するケースでも、先のケースと同様に退職が形式的であったり、再就職までの期間が短かったりするといった特別な事情がある場合は、最初の給与差押えが再就職後の給与にも及ぶ可能性があります。

とはいえ、差押えを避ける意図がないような正当な再就職の場合は、通常、最初の差押えの効力は及ばないと考えられます。

2-4 失業保険は差押えの対象外となる

失業保険(は通称であり、正しくは雇用保険)の失業給付(基本手当)は、個人が失業した際に一定期間給付される給付金です。この失業給付は、失業者の生活を支えるための重要な収入源となります。

失業者の最低限の生活水準維持を保障するための措置として、失業給付は民事執行法で差押えを禁じられています。ただし、銀行口座に入ったものは、それが失業給付であっても、預金差押えの対象とはなるので注意が必要です。

2-5 転職先の給与も再び差押えの対象となる

差押えの執行中に転職した場合、債務が完済に至るまで、転職先の給与も再び差押えの対象となります。これは、債務者が転職しても、借金の返済義務が消滅するわけではなく、再度債権者が差押えを申し立ててくる可能性があるためです。

また、債務者が転職先を消費者金融などの債権者に伝えていなくても、もしくは隠していても、債権者にわかるのには理由があります。

財産開示手続という裁判上の手続きがありますが、かつては虚偽報告をして発覚しても有名無実の過料で済むものでした。近年この手続を無視して虚偽報告をすることに、刑事罰が設けられたのです。

なお、差押えの強制執行やその対象、および差押え禁止財産については、以下の記事でも取り上げています。

ぜひ、そちらも参考にしてください。

3章 給与の差押えを解除する方法

給与の差押えを解除するためにできる対処法として、次の2種類の選択肢があります。

  • 借金を一括返済する
  • 債務整理をする

それぞれを見ていきましょう。

3-1 借金を一括返済する

給与の差押えが執行される状況から抜け出す、最も直接的な方法は、シンプルに借金を一括返済することです。借金を完済すれば、債権者である消費者金融などの貸金業者は、もはや差押えを継続する権利がなくなり、当然ながら給与の差押えは解除されます。

ただし、多重債務者にとっては、一括返済は困難な場合が多いです。この場合、債務整理の手続きを検討することがひとつの解決策となります​。

3-2 債務整理をする

債務整理には、自己破産、個人再生、任意整理などの方法があります。自己破産を選択した場合、破産手続き開始時点で給与差押えが解除されます。

また、個人再生を選択した場合、裁判所が中止の必要があると判断すれば、一時的に差押えを中止させることが可能です。

なお、任意整理では強制執行を止めることはできないため、差押えを解除するには債権者である消費者金融などの貸金業者との和解が必要です。とはいえ、一括払いでなければ和解は困難です。

現実的には一括払いは困難だと思われるので、差押えを受けそうなら早めに司法書士などの専門家に相談しましょう。

債務整理の主な種類ごとの特徴やメリット、デメリットについては、以下の表にわかりやすくまとめてあります。

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債務整理の種類任意整理個人再生自己破産
特徴裁判所を通さずに、債権者と直接交渉して借金の減額や返済計画の見直しを行う方法裁判所に申立てを行い、借金の減額と返済計画の認可を得る方法裁判所に申立てを行い、全ての借金を免除してもらう方法
メリット・手続きが比較的簡単で費用が安い
・裁判所への申立て記録が残らない
・家族や勤務先に知られる
・借金を大幅に減額できる
・住宅ローンや車ローンなどの財産を守れる
・将来、再び借金問題に陥る可能性が低い
・借金が全て免除される
・新しい生活をスタートできる
デメリット・減額できる金額は債権者との交渉次第
・将来、再び借金問題に陥る可能性がある
・裁判所への申立て記録が残る・裁判所への申立て記録が残る
・官報に永久に掲載される
・一定期間、クレジットカードやローンを利用できない
・一定期間、就業制限を受ける
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債務整理の種類と生活への影響に関しては、以下の記事でくわしく解説しています。

ぜひ、そちらも参考にご覧ください。

以下の返済シミュレーションツール【バーチャル債務整理】を使えば、借金問題の解決のために債務整理を行った場合に、借金がどれくらい減るのかの目安がわかります。

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まとめ

消費者金融による給与の差押えは、借入人にとって大きな負担となります。転職や退職は、差押え問題の根本的な解決にはつながりません。借金を一括で返済できれば、差押えは解除されますが、多重債務者にとっては現実的ではない場合が多いです。

転職や退職では、差押え問題は根本的な解決につながりません。差押えが行われる前に相談をするほうが解決策の選択肢は広いので、差し押さえされそうな状況になった場合はできるだけ早く、差押えが開始されたなら直ちに、司法書士や弁護士などの専門家に相談すべきです。

借金問題を抱えて自力返済が難しくなり、お困りのみなさんは、緊急度に応じてグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。

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