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会社が倒産した場合は、社長個人の「末路」にどのような影響を及ぼすのでしょうか。自己破産は倒産した会社の社長が取る選択肢のひとつであり、その後の人生にも多大な影響を与える可能性があります。
倒産と自己破産によって生じる具体的な影響を理解することは、経営者が直面するリスクを知り、将来に備える上で重要です。今回の記事では会社が倒産した社長の末路について、自身の自己破産時に受ける影響も含めてわかりやすく解説します。
目次 ▼
1章 会社倒産の件数はどれくらい?
まず、会社倒産の件数を、帝国データバンクの2023年報(令和5年 1月1日〜12月31日)から見てみましょう。2023年の倒産件数は8497件で前年の33.3増です。
バブル崩壊後で最も高い増加率であり、15年ぶりに全7業種・全9地域で前年を上回っています。この増加は、新型コロナウイルス関連の影響や人手不足、物価高などが背景にあるとされています。
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年度 | 2023年(前年対比) | 2022年 |
---|---|---|
倒産件数 | 8497件(133.3%) | 6376件 |
負債総額 | 2兆3769億300万円(100.2%) | 2兆3723億8000万円 |
負債額が100億円を超える大型倒産は、前年の14件をしのぎ18件も発生しました。2年連続で負債総額2兆円を超えるのは、10年ぶりです。
また、全7業種で前年を上回るのは15年ぶりです。「サービス業」(2099件:31.1%増)が最も多く、「小売業」(1783件:47.7%増)においては、「飲食店」が前年から約7割の大幅増となっています。
主因別では「不況型倒産」で、前年から3割以上増えています。これは2000年以降、初めてのことです。態様別では「破産」が、2015年(7985件)以来8年ぶりの高水準となる7986件です。
規模別では負債額「5000万円未満」が、全体の6割近くを占め、5000件を超えました。業歴別にみると「新興企業」が、11年ぶりに2500件を超え、2527件です。
地域別では15年ぶりに、全9地域で前年を上回っています。「北海道」(258件:35.1%増)や「東北」(443件:27.3%増)、「関東」(3066件:30.6%増)、「九州」(708件:40.5%増)においては、コロナ禍以前の水準を超えています。
なお、倒産とは定義上どういうことか、廃業や破産との違いなどを以下の記事でくわしく取り上げていますので、ぜひ参考にご覧ください。
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2章 会社が倒産した社長の末路
会社が倒産した際の社長の行く先には、複数のシナリオが存在します。ここでは、会社の保証人・連帯保証人の場合、会社から借りているお金の返済義務、不正をしていた場合の責任、そして税金や社会保険料の支払い責任について、くわしく見ていきましょう。
2-1 会社の連帯保証人の場合は借金の返済義務を負う
経営者が会社の債務について連帯保証人になっている場合、会社が倒産すれば個人的に返済義務を負うことになります。連帯保証人は責任が重く、債務全額の支払いを求められるのが一般的です。
法人と個人が別の法的主体であるため、会社の借金を連帯保証人である個人が返済する義務があります。この場合、自己破産を含む債務整理が必要になることが多いです。
自己破産や個人再生などの債務整理手続を行うことで、連帯保証人である経営者の負担を軽減できるでしょう。返済義務の一部または全額が、免除されることがあります。
しかし、自己破産にはデメリットも存在し、財産の処分や一定期間の信用情報の悪化が伴うものです。特に、連帯保証人の場合は、会社とは別に個人の財産も影響を受けることがあります。
経営者が連帯保証人になっている場合、自己破産を選択する前に他の債務整理手続の選択肢を検討することも大切です。個人再生や任意整理など、個々の状況に応じた最適な解決策を見つける必要があります。
任意整理に関しては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、そちらも参考にしてください。
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2-2 会社から借りているお金は返済しなければならない
経営者が会社から借り入れたお金については、会社が倒産しても返済の義務が残ります。ただし、その経営者自身が自己破産した場合は、免責を受けることが可能です。
債務整理の過程で、経営者個人の資産が評価され、会社への返済に充てられることがあります。
債務整理の専門家に相談することで、経営者は自身の状況に最適な解決策を見つけることができます。任意整理や個人再生などの手続を通じて、返済負担を軽減することも可能です。
個人再生に関しては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、そちらも参考にしてください。
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2-3 不正をしていた場合は責任が問われる場合がある
不正行為が発覚した場合、会社の倒産以外にも、経営者個人に対する刑事責任や民事責任が問われることがあります。たとえば詐欺や横領など、会社の経営中に行われた不正な行為が挙げられます。
会社経営における不正行為は、会社の倒産後も重大な影響を及ぼします。不正行為の内容によっては、経営者が刑事責任を問われ、罰金や懲役刑に処されることもあるでしょう。
民事責任の観点からは、不正行為により被った損害を賠償する責任が経営者に課されることがあります。これは、被害者や債権者からの損害賠償請求に直面することを意味するものです。
不正行為を理由に、経営者が業界内での信用を失うこともあるでしょう。そうなってしまえば、将来的に新たなビジネスの起業や、再起のための就職を困難にする可能性があります。
法律専門家によるアドバイスを求めることが、不正行為に関連するリスクを最小限に抑える方法です。早期に法人破産やそのほかの適切な対応を取ることで、最悪のシナリオを避けることが可能になります。
なお、法人破産については以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、参考にご覧ください。
2-4 税金や社会保険料の支払責任を負う場合がある
会社が倒産した場合、税金や社会保険料の支払いに関して、経営者の責任が問われることは原則としてありません。法人破産の場合は、債務者がいなくなることから、税金等の債権を含むすべての債権が消滅するからです。
ただし、以下の2つのケースでは、法人破産後も税金の支払い義務が残る可能性はあるので、注意を要します。
- 過去に納税保証書を提出していた
- 第二次納税義務が発生していた
なお、会社が倒産して税金や社会保険料の支払いが免責になっても、経営者個人の税金等はまた別問題です。しかも、経営者個人が自己破産したとしても、税金等は免責の対象外です。
会社が倒産した社長がどうなるかについては、以下の記事でも特集しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
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3章 会社倒産により社長が自己破産したときに受ける影響
会社倒産後の社長には法律上や経済的、社会的なさまざまな影響が生じます。これらの影響は、社長の財産から生活の質、さらには社会的信用に至るまで多岐にわたります。具体的に見ていきましょう。
3-1 社長個人の財産は没収される
会社倒産に伴い社長が自己破産すると、社長個人の財産の多くが没収および処分されます。現金はもとより、換金できる財産である不動産や、自動車および貴金属などの高価な品物などです。
つまり、自己破産を行うと必要最低限の生活費・財産以外は処分・換金のうえ弁済に充てられます。
財産の保有状況によりますが、ある程度の財産は没収されること覚悟しなければなりません。
とはいえ、自己破産は本人が生活を再建する目的の制度なので、生活をしていくために必要なものまでは没収されません。倒産した社長が再出発するための、最低限の生活基盤を残せます。
残せる対象として、主なものは以下のとおりです。
- 99万円以下の現預金は「自由財産」として残せる
- 合計20万円以下の評価額となる財産(不動産を含む)は残せる
3-2 一部の職業・資格の制限を受ける
自己破産をすると、法律によって一時的に利用できなくなる職業や資格があります。
まず、破産開始決定によって一旦退任しなければならないのは、銀行の取締役や信用協同組合の役員など、金融機関関連の職務です。ただし、破産開始決定が退任理由になるだけで、退任後すぐに再任される場合もあります。
また、破産手続中に制限を受ける資格は、たとえば弁護士、税理士、公認会計士などの士業の資格が挙げられます。
また、破産手続開始決定後に登録取り消しなどの手続を経て、資格が使えなくなる職業もあります。たとえば生命保険外交員(生命保険募集人)などです。
ただし、免責決定が下れば、これらは復権することが一般的です。一方、医師や看護師などの医療関連職や、教員や一般の公務員などは、自己破産による職業制限の対象外です。
自己破産に関しては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、そちらも参考にしてください。
3-3 自己破産手続中は行動制限を受ける
自己破産手続中、経営者は管財事件に該当する可能性が高く、旅行や転居、出張などに裁判所の許可が必要です。また、郵便物が破産管財人に転送され、破産者に直接届かなくなるため、通信の取り扱いにも制限が生じます。
破産手続中に受けるこれらの行動制限は、手続が完了すれば解除されますが、手続中は日常生活において多くの制約が課せられることになるでしょう。
3-4 自己破産手続中は郵便物の受取が制限される
自己破産手続中は、破産者の郵便物がすべて破産管財人に転送されます。破産管財人が郵便物の中身を確認し、問題がなければ破産者に手渡されます。
この措置により、破産者は自分宛の郵便物を直接受け取ることができなくなります。破産管財人による郵便物の確認は、資産隠しを防ぎ、破産手続の透明性を保ち、債権者への公平な配当を確保するのが目的です。
このプロセスを通じて、債権者や関係者に対する公正な情報提供が行われます。自己破産の手続が完了し、免責許可が下りれば、破産者は再び郵便物を直接受け取ることができるようになります。
3-5 自己破産後7年はクレジットカードを利用できなくなる
自己破産や個人再生を行うと、信用情報機関に事故情報として5年(CICとJICC)から7年(KSC)ほど保存されます。3つの信用情報機関の情報は共有されるので、(延滞等なら5年ですが)自己破産と個人再生は長い方の7年を超えない期間はブラックになります。
結果として7年間は、クレジットカードの新規作成や利用はできません。ちなみに自己破産手続の際には、カード会社への受任通知が送られた時点で強制解約となり、カードの返還が求められます。
信用情報から事故情報が削除された後も、すぐにクレジットカードを作れる保障はなく、あくまで申込先の事業者の判断次第です。事故情報が削除されたかどうかは、各信用情報機関に開示請求を行うことで確認できます。
自己破産した場合でも、配偶者や家族名義のクレジットカードには原則影響しないため、その家族カードの利用は可能です。とはいえ、自己破産をするほど借金を背負ったのであれば、家族カードが利用できるとしてもおすすめはできません。
また、デビットカードやプリペイドカードは自己破産後も新規発行や利用が可能で、キャッシュレス決済の手段として利用できます。
なお、個人が信用情報機関に情報開示請求を行うことのメリットやデメリットを以下の記事でくわしく取り上げていますので、ぜひ参考にご覧ください。
3-6 自己破産後7年はローンの審査に通らなくなる
自己破産により信用情報に事故情報が登録されると、ローンの審査に通ることが困難になります。この影響はクレジットカードの新規申込みに限らず、住宅ローンや自動車ローンなど、あらゆる種類の借入れに及ぶものです。
信用情報の事故情報が消去されるまでの期間は、CICおよびJICCはともに原則として5年以内です。
全国銀行個人信用情報センター(KSC)は延滞などの事故情報は5年ですが、自己破産や民事再生に関しては、官報に公告された破産・民事再生手続開始決定日から7年以内(2022年11月4日に7年に短縮されるまでは10年)となっています。
つまり自己破産後の5年から7年ほどは、新たなローンを組むことが難しくなります。
自己破産の事実が信用情報機関から消去された後も、過去に自己破産したことがあると、ローンの審査で不利になることがあります。各信用情報機関への開示請求を通じて、自己の信用情報の状況を確認し、必要に応じて対策を講じることが重要です。
事故情報の登録期間が終了した後、ローン申請時には信用回復に向けた取り組みや、安定した収入の証明などが審査において有利に働くことがあります。
しかし、自己破産の経歴は一定期間、金融機関の内部記録に残ることがあるため、すべての金融機関で審査が通るわけではない点に注意が必要です。
なお、信用情報機関の事故情報と住宅ローンの関係について、以下の記事でくわしく取り上げていますので、ぜひ参考にご覧ください。
3-7 官報に氏名・住所が掲載される
自己破産手続開始の決定が出た場合、その事実は官報に掲載されます。官報とは、政府が発行する公式告示を掲載する機関紙のことで、法律や公的な通知などが公開される場です。
官報に自己破産の事実が掲載されることにより、債権者や一般の人が自己破産者の情報を知ることが可能になります。ただし、官報は一般の新聞と異なり、通常は特定の人や機関が閲覧するものであるため、広く世間に知られることは少ないです。
官報に掲載される情報には、自己破産者の氏名や住所、破産手続の開始決定日などが含まれます。この掲載は、自己破産手続の公開性と透明性を保つためのものであり、債務整理の公正な進行を促すことが目的です。
官報に掲載されることによる直接的な影響は限定的ですが、自己破産手続の事実が公的記録として残ることを意味します。官報の掲載情報は、信用情報機関のデータベースとは別に管理されるため、信用情報の復旧とは異なる注意が必要です。
なお、自己破産の件数や破産理由については、以下の記事でくわしく取り上げていますので、ぜひ参考にご覧ください。
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4章 会社倒産後は再び起業できる?
会社の倒産と自己破産は、経営者にとって厳しい経験ですが、これがビジネスの世界から永久に退場しなければならないという意味ではありません。法的には、自己破産後も再起業の道は開かれています。
ただし、再起業するにあたっては、いくつかの制約や考慮すべき点があります。ここでは、自己破産後の起業について見ていきましょう。
4-1 自己破産手続中はできる場合とできない場合がある
自己破産手続中、自己破産開始決定を理由に取締役を一時的に退任する必要があります。2006年5月の改正会社法の施行以降、自己破産が取締役の欠格事由からは除外されたため、原則として退任後に再起業することが可能になりました。
ただし、前述した職業制限のある一部の職業(銀行の取締役や信用協同組合の役員、弁護士・税理士・会計士など)としての起業は免責が確定するまでできません。。
4-2 自己破産後は起業できるが融資を受けることは難しい
自己破産後に新たに起業しようとした場合、特に資金面での課題が大きくなります。自己破産後は状況的に自己資産を起業資金に充てることが難しいため、資金調達には創意工夫が必要です。
そもそも自己破産すると、信用情報に事故情報が記録され、俗にいうブラックリストに載ることで、金融機関からの融資が受けられなくなります。この影響は5年から7年間続くことが一般的です。融資以外にも、事業用物件の賃貸契約にも影響が及びます。
日本政策金融公庫の「再挑戦支援資金」など、自己破産後の起業家に対する特別融資プログラムを活用することがひとつの解決策となるでしょう。自己破産の記録があっても、資金を調達して事業を開始する機会を得られる場合があります。
自己破産後に再び起業するためには、個人の信用だけに頼らずに事業計画を磨き、可能であれば家族や信頼できる共同経営者を通じて事業を運営するなどの戦略が必要です。
融資が難しい場合は、初期費用を抑えて小規模から事業を始め、徐々に拡大するやり方や、初期費用が少なく済む業種を選ぶなど、事業モデル選択の工夫が求められます。
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まとめ
会社が倒産すると、避けようがないさまざまな事態も訪れますが、社長にとって「末路」という言葉が与える印象ほどの大きな影響はありません。
個人の財産没収から職業・資格の制限、さらには自己破産手続中の行動制限など、厳しい現実に直面します。特に、自己破産手続中やその後5年から7年間はクレジットカードの使用やローンの審査に通ることが難しくなるなど、経済的な自由が大きく制限されることになります。
しかし、法的な規制や社会的な制約があるものの、自己破産後に再び起業する道は法律上閉ざされているわけではありません。自己破産手続が完了すれば、新たなビジネスを立ち上げることも可能です。
ただし、融資を受けることが難しいため、自己資金の確保や少額投資で始められるビジネスモデルの選定が重要になります。国や地方自治体などの公的支援を活用することで、再起業への道も開けることがあります。
このように、経営者にとって会社倒産と自己破産は厳しい影響を及ぼしますが、それを乗り越えるための方法も存在します。法人破産および社長の自己破産のダメージを抑え、新たなスタートを切るために、早い段階で司法書士などの専門家のサポートを受けて、きちんと債務整理を実行するのが賢明です。
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よくあるご質問
- 会社が倒産した後、社長はどうなるの?
- 会社が倒産すると、社長は下記の事態に陥るリスクがあります。
・会社の連帯保証人の場合は借金の返済義務を負う
・会社から借りているお金は返済しなければならない
・不正をしていた場合は責任が問われる場合がある
・税金や社会保険料の支払責任を負う場合がある