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ここ数年の情勢や物価の高騰により、経営状態が悪化してしまい破産手続きを取らなくてはいけない状況に陥っている会社は少なくありません。
法人破産の手続きを行うと、会社の債務が消滅して債務がなくなる状態になります。そのため、債務が返済不能になった会社にとって有効的な手続きと言えるでしょう。
ただし、法人破産は債務が消滅する一方で会社を潰す手段になります。効力が強い分、破産後の会社や手続きの費用などの心配事も多いかと思います。
この記事では、法人破産の流れや費用について解説いたします。法人破産を考えている方は、ご参考にしてください。
目次 ▼
1章 法人破産は会社を清算する手続き
法人破産とは、会社の債務を清算する手続きのことです。
債務超過となって支払い不能な事態に陥った会社に対して、裁判所によって選任された破産管財人が会社の財産や資産を債権者に配当して会社を清算していきます。
清算後は債務が消滅し、法人も消滅することになります。
1-1 破産と倒産の違い
破産と似た言葉で「倒産」という言葉がありますが、倒産は金銭面など何らかしらのトラブルによって会社の経営が継続できず停止してしまう状況のことです。
倒産=会社が潰れるという認識を持っている方も多いですが、倒産は厳密に言うと「会社が潰れる寸前の状況」のことです。倒産をしたとしても会社を再建できるケースもあるので覚えておきましょう。
民事再生や会社更生など、会社を存続させながら負債を返済していく手続きもあるため、債務額や会社の状況によっては再建が可能なのが倒産です。
一方で、破産は会社と債務を消滅させる手続きです。破産を選んだ場合は再建が不可能なので覚えておきましょう。
1-2 法人破産と個人の自己破産の違い
法人破産は会社の債務を清算する手続きです。一方で、個人で行う自己破産は自分の全ての借金を免除する手続きです。
どちらも、手持ちの財産を換価して債権者に分配することで借金がなくなることには変わりありませんが、法人の破産の場合は、免責ではなく法人が消滅することによって債務も消滅します。
一方で、個人の破産の場合は、免責によって債務が免除されます。支払い能力がなく借金が支払えないと裁判所に判断された場合は借金が免除されます。
個人の場合は、当然ですが自己破産をしたからと言って人生が終わるわけではありません。しかし、法人破産は支払い不可と判断されて債務が消滅になった場合は会社を続けることはできません。
法人破産を選んだ以上は、会社が消滅することは免れないので注意しましょう。
2章 法人破産後の会社はどうなる?
では、法人破産後の会社はどうなるのでしょうか。
法人破産後は、以下のようなことが起こります。
- 法人が消滅する
- 債務が全て消滅する
- 官報に載る
- 社員が全員解雇になる
最大のメリットとしては、債務超過で苦しんでいたとしても、手続きを取ることで全ての債務が消滅して苦しみから逃れられることです。
また、債務が消滅したことで、また新たにいちから再スタートが切れるのも大きいでしょう。
一方で、デメリットも多く、法人破産の手続きをした会社は消滅してしまい、同じ会社で働くことができない点やそれに伴い社員が全員解雇になることは見逃せません。
自分だけではなく社員に迷惑をかけてしまうのは大きなデメリットでしょう。
ここからは、この4つの法人破産後について詳しく解説していきます。
2-1 法人が消滅する
債権者に財産を配当が完了したら法人破産の手続きは完了となり、法人が消滅します。
消滅ということは、会社が潰れたということなので、また別の職に就くか新たに起業を行うしかありません。
とはいえ、会社経営者が法人の連帯保証人になっていた場合や、破産手続きを行なった債務者が直後に融資を受けるのは難しいと言えるでしょう。
また、法人名義の財産は、全て換価をして債権者への配当に充てるため、法人名義の財産も失ってしまいます。そのため、残されたお金を使って社員に配ったり、次の起業の足しにしたりすることはできないので注意しましょう。
2-2 債務が全て消滅する
破産手続きを終えた後は、債務が全て消滅します。例え数十億円もの債務をつくったとしても、法人破産をすることによって全て消滅します。
どんなに債務を抱えたとしても手続き後は0になるのは、法人破産の最大のポイントです。
法人の債務整理は基本的に債務を減額して返済を続ける手続きが多く、破産は債務を消滅させるための唯一の手続きになります。
法人破産後は、債務超過の苦しみや債権者の取り立てから解放されるため、気持ち的にも楽になるでしょう。
2-3 官報に載る
法人破産の手続きを開始したら、官報に掲載されます。
官報とは、会社法による法定公告等の記事が掲載されている日本の機関紙です。インターネットでも確認することができて誰でも見ることが可能です。
官報の中に「裁判所事項」という項目があり、ここに法人破産した旨が掲載されます。会社名や住所、代表者名が記載され、破産管財人の選任や債権者集会の期日などを公告します。
官報を載せる理由は、破産手続きを取ることを債権者に知らせるためです。この官報を受けて債権者集会に参加したり換価されたお金を受け取ったりします。
2-4 社員が全員解雇になる
会社が消滅するということは、当然働くことができなくなるため社員が全員解雇になります。
当然ですが、破産手続きが終わった段階で「今日から全員クビです」ということにはなりません。
法人破産の手続きを開始した時点で事業活動を停止しなければいけないため、少なくとも専門家との相談の上で破産手続きをすることが決まった段階で伝えておきましょう。
長年一緒に仕事をした社員を全員解雇するというのは、精神的にもかなり辛いものがあるかと思います。自分だけではなく社員も辛い思いをさせてしまうのは大きなデメリットではないでしょうか。
3章 法人破産の流れ
法人破産の手続きを専門家に依頼してから手続きが完了するまで、およそ8ヶ月から1年半かかります。
手続きがスムーズな場合は、3ヶ月から4ヶ月で終わることもありますが、資産や負債額にもよるので、手続きが長びく傾向があります。
もし、次の起業や就職を計画しているのであれば、できるだけ余裕を持って破産手続きを始めることをお勧めします。
では、ここからは手続きの流れについてみていきましょう。
3-1 専門家に依頼する
まずは、債務超過や債務の返済が難しくなった時点で専門家に相談しましょう。債務の相談は早ければ早いほど選択肢が多いため、状況によっては会社を存続させることができる可能性もあります。
会社の現在の資産や負債状況などを聞いて、専門家が破産するしかないと判断した場合は破産手続きの準備の取り掛かっていきます。
専門家によっても個人破産の費用が異なるため、なるべく複数の事務所で相談をして見積もりをしてもらうのがおすすめです。
また、法人破産の手続きをすると決まった段階で、会社の社員に状況を説明して、解雇通知を送るようにしましょう。
3-2 法人破産の申立てをする
法人破産の決意が固まったら、法人破産の申立ての準備に取りかかります。
法人破産をするにあたって、いきなり裁判所とやり取りをするわけではなく、法人破産の申立てをするには会社の資料や書類が必要です。
そのため、まずは裁判所に提出する資料や書類を揃える必要があります。
準備にはおよそ3ヶ月から6ヶ月かかるため、こちらも多めに期間を見ておきましょう。
裁判所に提出する資料や書類が揃ったら、裁判所に書類を提出して法人破産の申立てを行います。
また、破産手続きを始めるには、裁判所への予納金が必要になります。4章では予納金の金額の目安を紹介しているためこちらを参考にお金を準備しておきましょう。
もし賃貸物件にオフィスが入っている場合は、この段階で立ち退きをすることになります。
3-3 債務者審尋が行われる
破産手続きが開始されると、裁判所で債務者審尋が行われます。審尋とは簡単に言うと面談のようなものです。
債務者は会社のため、会社の代表である代表者に対して債権者の数や負債額、会社の資産や事業内容についての審尋が行われます。
破産申立てに至った経緯も聞かれるので、ここで正当な理由がないと破産が認めれない場合もあります。
また、破産を認められたいからといって、虚偽の説明や説明の拒絶をした場合は刑罰の対象になるので注意が必要です。受け答えについてはあらかじめ専門家と一緒に決めておくとよいでしょう。
3-4 破産手続きが開始される
破産の申立てをしてから2週間程度で、破産手続開始決定をします。
いよいよ裁判所での破産の手続きが開始します。
3-5 破産管財人の選任
破産手続開始決定をすると同時に、弁護士の中から破産管財人と呼ばれる人が裁判所によって選任されます。
申し立てを依頼した弁護士とはまた違う弁護士が破産管財人となり、この破産管財人は、債務の経緯などの調査をしたり、破産者の財産を管理して債権者に配当する役割があります。
今後、債権者(代表者)は担当の専門家だけではなく、破産管財人とのやり取りが重要です。
また、破産手続開始が決定した後は債権者に破産手続きが開始した旨を記載した書面が送付され、官報にも掲載されます。
3-6 破産管財人による調査が行われる
破産管財人が選出されたら、財産を債権者に配当するために、法人の在庫や備品類、所有不動産などの会社の財産を調査して換価していきます。
また、このタイミングで従業員との雇用契約や事業所の賃貸借契約、水道光熱費などの契約、取引先との契約などの全ての契約や取引関係が解消されます。
3-7 債権者集会が開かれる
債権者集会とは、裁判所で行われる手続きで、債権者に対して債務者が破産に至った事情や会社の資産状況について説明をしていく集会のことです。
債権者集会は、出席した債務者に対して債務者は質問できます。そのため、状況によっては厳しい質問や意見が出ることもあることでしょう。
スムーズに受け答えするためにも、債権者集会の前に担当の専門家と打ち合わせをしておきましょう。
債権者集会は1回で終わる場合もありますが、法人の規模や換価状況にもよっては複数回開催されることもあります。
3-8 債権者への配当が行われる
破産管財人の調査の結果、法人に資産があると判断した場合は全て換価をして各債権者の債権額に応じて配当していきます。
もし債権者へ配当できるような財産がないと判断された場合は、債権者集会で異時廃止が決定されて手続きが完了となります。
この時点で、解雇した従業員への破産手続開始前3ヶ月内で未払い給料がある場合、破産管財人は破産者の財産の中から支払わなければいけません。
3-9 破産終結が決定する
換価した財産を全て配当し終えたら破産終結の決定により、法人は消滅して債務もなくなります。
もし法人の代表者が会社の債務の連帯保証人になっていて、同時に自己破産の申立てをした場合は、その後免責審尋が行われて代表者個人の免責許可・免責不許可の決定をします。
4章 法人破産にかかる費用は十数万〜数百万
法人破産にかかる費用は「予納金」「申立手数料」「専門家への費用」の3種類があります。
そのうちの予納金と申立手数料は裁判所に払う費用で、専門家への費用は債権者とやり取りを行ったり書類などを作成する専門家に払う費用になります。
それぞれにかかる費用の目安は以下の通りです。
法人破産の種類 | 費用 |
---|---|
予納金 | 70万円〜700万円 |
申立手数料 | 申立印紙代:1,000円 官報公告予納金:13,000円~15,000円 予納郵券:5,000円〜 債権者宛ての封筒代 |
専門家への費用 | 30万円〜150万円 |
つまり、合計でかかる費用は十数万〜数百万が相場と言えます。
なぜここまで費用に差が出るかと言うと、会社の大きさや負債規模によって大きく変動するからです。負債額が多ければ多いほどその分手続きも増えるため費用が増えます。
また、債権者の数によっても専門家が対応しなければいけない時間が増えることから、依頼する費用も嵩むでしょう。
もし、自分の会社の負債や債権者が多い場合は、費用を多めに確保しておく必要があります。
4-1 費用がない場合は分割払いを相談しよう
思ったよりも法人破産の費用が高くて一括で支払いが難しいという場合は、分割払いを相談しましょう。
分割払いを相談できる費用は、専門家への費用です。予納金と申立手数料は分割払いが不可能なので覚えておきましょう。
専門家に費用を相談するのであれば、手元に支払いするお金がないことを正直に伝えて分割払いの交渉をするのがベストです。
あくまで分割であれば全額払うことが前提になります。お金がないからと言って無理な値下げ交渉をすると、依頼自体を断られてしまったり専門家のモチベーションの低下にもつながってしまいます。
分割払いをすれば法人破産の手続きができるというのであれば、ぜひ相談してみることをおすすめします。
5章 法人の破産手続きは自分でできる?
結論から言うと、破産手続きを自分でやること自体は禁止されていないため、不可能ではありません。
しかし、法人破産の手続きを自分でやろうと思ったら以下のようなデメリットが大きいと言えます。
- 書類や資料を準備する必要がある
- 裁判所とのやり取りを自分でする必要がある
- 全ての債権者に連絡してやり取りする必要がある
- 従業員のサポートを自分で考えなけばいけない
本来であれば法律に詳しい専門家がやる手続きを自分で行うため、当然法律の知識がなければ難航してしまうでしょう。書類作成などに不具合があれば余分に時間とお金がかかってしまいます。
更には、返済できない債務を消滅させるために、自ら債権者に連絡してやり取りをしなければいけなくなります。感情的になる債権者やなんとか回収しようと思って、会社に取り立てに来ようとするケースもあるでしょう。
専門家の費用をカットすることができますが、それ以上に余計な負担やストレスがかかる可能性が高いため、破産手続きは専門家に依頼することを強くおすすめします。
6章 法人破産しても代表者への影響はない
法人破産の手続きを行うにあたって、代表者に何か影響するのではないかと心配な方もいるかと思います。
しかし、法人破産をしたからといって、代表者に何かペナルティがあるわけではないのでご安心ください。
例えば、一度破産した経営者は起業できなくなるといったことや、就職ができなくなるということはありません。
ただし、債務を消滅させた以上は、新たに起業をするときに代表者が同じ場合は融資を断られる場合があるので注意が必要です。債務を返済できずに破産手続きを行なった後なので、不利になることは間違い無いでしょう。
法人破産は、あくまで会社の債務を整理する手続きです。そのため、破産手続きをしたとしても全ての社員が不利益になることなく、新たな再スタートを切ることができます。
6-1 ただし連帯保証人になっている場合は注意が必要
ただし、代表者が会社の融資の連帯保証人になっている場合は注意が必要です。
中小企業の場合、法人で融資を受けるにあたって、担保として代表者が連帯保証人になっているケースがあります。
法人でつくった債務は法人で返済していきますが、法人で返済できない債務は連帯保証人に支払い義務があります。そのため、代表者が法人でつくった債務を返済しなくてはいけなくなります。
法人の融資となると、個人でする借金とは桁が違うことも多いでしょう。中には数千万規模の場合も珍しくありません。
破産後で収入がない状態で、個人が残った債務を返済するとなると当然現実的ではないため、代表者自身も自己破産を検討する必要が出てくるので注意しましょう。
7章 法人破産は専門家と慎重に進めよう
法人破産は、会社経営ができなくなったときの最終手段です。全ての債務が消滅する代わりに、法人も消滅することになるため非常に効力の強い手続きとなります。
「もう少し頑張れば存続できていたかもしれない…」ということにならないためにも、法人破産は専門家と慎重に進める必要があります。
また、会社の所有物件があったら任意売却をして返済の資金にするの有効的です。
最善の判断ができるように、できるだけ早めの相談をおすすめします。
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よくあるご質問
- 法人破産するとどうなる?
- 法人破産による影響は、下記の通りです。
・法人が消滅する
・債務が全て消滅する
・官報に載る
・社員が全員解雇になる
- 法人破産と自己破産の違いとは?
- 法人破産は会社の債務を清算する手続きです。一方で、個人で行う自己破産は自分の全ての借金を免除する手続きです。
法人の破産の場合は、免責ではなく法人が消滅することによって債務も消滅します。