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倒産とは、企業の経営が立ち行かず債務の支払いが不能になり、経営を続けることができなくなる状態を指します。
実は、「倒産」という言葉は正式な法律用語ではありません。とはいえ、「倒産」と呼ぶのは通例になっていますので、それほど気にする必要はないでしょう。
また、「倒産」というと、会社が潰れることをイメージする方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には再建するための手続きをすることで事業を再開するケースもあります。
この記事では、「倒産」とは法律上どのようなものかについて詳しく解説します。
目次 ▼
1章 倒産とは
倒産とは、企業の経営が立ち行かず債務の支払いが不能になり、経営を続けることができなくなる状態を指します。
なお、「倒産」という言葉は法律上定義されているものではなく、あくまで「会社の経営が難しくなった」といった状態を便宜上「倒産」と呼んでいるだけです。
それでも、「倒産」という言葉は通例となっていますので、以下のように具体的なケースも決められています。
- 銀行から取引停止処分を受ける
- 内整理をする
- 裁判所に会社更生手続開始を申し立てる
- 裁判所に民事再生整理開始を申し立てる
- 裁判所に破産手続開始を申し立てる
- 裁判所に特別清算開始を申し立てる
また、「倒産=会社が潰れる」といったイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、実際には会社を立て直すために手続きをする「再生」や「更生」も倒産に含まれます。
そのため、必ずしも倒産をしたら会社が潰れるというわけではありません。
なお、実際には法的手続きを取る“法律上の倒産”と、法的手続きを取らない“事実上の倒産”があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1−1 法律上の「倒産」
法律上の倒産とは、主に破産法や、民事再生法などの法律に則って倒産手続きをすることを言います。これを「法的整理」と呼びます。
一方、裁判外の倒産処理手続きを取ることを「私的整理」と言います。
簡単に言えば、きちんと手順を踏んだ上で会社をたたむことが法律上の倒産ということです。
「法的整理」「私的整理」のそれぞれの具体的な手続きについては、後述する2章・3章にて解説します。
1−2 事実上の「倒産」
「倒産」いうと法的手続きを取るとイメージを持たれますが、実際には手続きをしないまま放置するケースも少なからずあります。
企業が経営的に破綻しながらも法的な手続きや債権者との清算をすることなく、債務を放置する状態を「事実上の破産」と呼びます。
簡単に言えば、「借金を放置して夜逃げをした」といったように、会社が負った債務に対する対処をほとんど取らずに放置している状態のことです。
これが法律に反することに直結することはありませんが、「けじめをつける」というのであれば、しっかりと法的手段にのっとって倒産すべきと言えます。
2章 法的整理での倒産
法的整理とは、裁判所の監督下で倒産処理を行うことで、債務を圧縮するなどして会社の存続を図る「再建型」と会社を債務ごと消滅させる「清算型」の2つに分けられます。
- 再建型
- 企業の存続を前提に、再建を目指す
- 民事再生手続き
- 会社更生手続き
- 清算型
- 会社の債務や財産などを清算し、会社を消滅させる
- 破産手続き
- 特別清算手続き
それぞれ詳しく解説します。
2−1 【再建型】民事再生手続き
民事再生手続きは、裁判所の監督の下、民事再生法に則り、経営に行き詰まった企業の債権者などから同意を得た上で再生計画を立て、遂行することにより、利害関係者との利害のバランスを取りつつ事業の再建を図る手続きです。
事業で得られる将来収益から債権を弁済したり、スポンサーから再建資金を得たり、事業の一部を譲渡するなどして資金を獲得したりと方法は様々です。
中小企業に向いており、事業の再生を得意とする弁護士などにアドバイスを得ながら再建を目指すことが多いと言えます。
2−2 【再建型】会社更生手続
会社更生手続は、裁判所の監督の下、会社更生法に則り、会社の経済的更生を目指して更生計画案を作成し、裁判所が選任する更生管財人が主導して会社の維持更生を図る手続きです。
民事再生手続きと大きく異なるのが、株式会社しか利用できないとういう点です。また、会社更生手続の場合、経営陣の交替や資本構成の変更がなされるというのも異なる点です。
民事再生手続が中小企業向けなのに対し、会社更生手続は大企業が行う手続きであると理解しておけば問題ありません。
2−3 【清算型】破産手続き
破産手続きは、債務の弁済や事業の立て直しが難しい会社が、すべての財産を裁判所が選任する破産管財人によって処分・換価してもらい、債権者に分配する手続きです。
個人の方が行う「自己破産」の手続きの会社バージョンと考えていただけるとわかりやすいかと思います。
破産手続きをした時点では、会社・経営者の債務の返済義務はなくなりますが、当然会社も消滅することになります。
また、経営者が会社の破産手続きをする場合、経営者自身も自己破産をすることになります。
なお、企業の破産手続きは、弁護士が主導することがほとんどです。
2−4 【清算型】特別清算手続き
会社を解散させた後は、清算手続きとして、債務の弁済や株主への財産の分配などの後始末をします。
清算手続きをしている中で、清算が難しいほどの債務超過があるような場合に行うのが「特別清算手続」です。
特別清算手続きは、裁判所の監督の下で行われる清算手続きであり、通常の精算手続きと破産手続きの中間の手続きと理解するとわかりやすいでしょう。
なお、特別清算の場合、それを主導するのは株主総会で選ばれた清算人(多くは代表取締役)です。
3章 私的整理の手段
私的整理とは、2章で解説したような裁判所の監督下での手続きを取らず、倒産処理をすることを指します。
具体的には、経営者自身が債権者と話し合った上で資金繰りを調整したり、事業の一部を売り渡して資金を調達したりといった方法があります。これを「内整理」といいます。
私的整理であれば、法的整理よりも費用も手間もかかりませんので、早期に事業の立て直しや清算手続きが可能になります。また、公にせずに整理ができるというのもメリットと言えます。
4章 倒産と廃業の違い
「倒産」と間違えられやすい言葉として「廃業」というものがあります。
廃業と倒産の大きな違いは、「支払えない債務があるか否か」という点です。
「倒産」は、債務が支払えずに事業をやめざるを得なくなる状態であり、「廃業」はただ単に事業をやめることです。
「廃業」は、例えば「年齢的にそろそろ隠居したいから会社を畳もう」といった状態です。例え債務があったとしても、それを完済できるだけの資金があればそれは「廃業」になります。
一方、廃業をしようとして蓋を開けてみたら債務が完済できないというケースでは「倒産」として2章・3章で解説したような倒産手続きをしなければいけません。
5章 まとめ
倒産とは、企業の債務の返済ができなくなり、経営が立ち行かなくなる状況を指します。
「倒産=会社が潰れる」といイメージを持たれるかもしれませんが、そんなことはありません。
経営を立て直すための再生手続きや更生手続も倒産手続きの一部です。
事業の規模や、債務、資金繰りの状況を鑑みた上で、適切な倒産手続きを取ることが大切です。
個人の破産と異なり、従業員や取引先など関係者も多く、債権の種類や取扱いも千差万別です。
いずれにせよ高度な法知識を必要としますので、困った時の相談先は弁護士へ相談することを強くお勧めします。
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よくあるご質問
- 倒産と破産の違いは?
- 倒産とは、企業の経営が立ち行かず債務の支払いが不能になり、経営を続けることができなくなる状態を指します。一方で、法人破産の手続きを行うと、会社の債務が消滅して債務がなくなる状態になります。
倒産について詳しくはコチラ
- 会社が倒産すると経営者はどうなる?
- 会社が倒産したとき、下記のケースでは経営者に影響が出て責任や借金の返済義務を負わなければならない可能性があります。
・会社の借金の連帯保証人になっている
・会社からお金を借りている
・職務で悪意または重大な過失があった
・税金未納のまま倒産した
会社が倒産したときの経営者について詳しくはコチラ