非免責債権とは自己破産でも免除にならない債権|該当する6つの債権

   司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

借金返済の知識
非免責債権とは自己破産でも免除にならない債権|該当する6つの債権

この記事は約 12 分で読めます。

悩む男性
悩む男性
借金の返済ができなくなり、自己破産を検討しています。借金の他にも、税金や養育費などの支払いがあるのですが、ネットで調べていたら、そういったものは非免責債権として自己破産をしても無駄だと書いてありました。非免責債権とはなんでしょうか・・・?
司法書士
司法書士
非免責債権とは、自己破産をしても支払いの義務を免除してもらうことができない債権です。おっしゃるとおり、税金や養育費は非免責債権にあたります。その他にも、賠償金や罰金などが該当します。
悩む男性
悩む男性
非免責債権はどうしようもできないのでしょうか?
司法書士
司法書士
法的に解決するのは難しいでしょう。その他の借金を債務整理するなどして、非免責債権の支払いに充てるか、当事者と相談して支払いを待ってもらうなどするしかありません。

非免責債権とは、自己破産の手続きをしても支払い義務を免除にならない債権を言います。

代表的なものが、税金や養育費、交通違反に対する罰金などです。

非免責債権は自己破産や個人再生では解決できないため、支払いや返済ができない場合、強制執行として差し押さえられてしまう可能性があります。

非免責債権があっても、他に借金等があればそれらを債務整理で解決することは可能です。

非免責債権以外の借金を解決することで、非免責債権の支払いに充てることで解決できるかもしれません。

この記事では、非免責債権はどのようなものか、支払えないときにはどうすればよいかなどについて解説します。

1章 非免責債権とは?

非免責債権とは、自己破産をしても借金の返済義務が免除されない債権です。
具体的には、税金や年金、養育費、悪意で加えた損害賠償金賠償金などがあげられます。

自己破産の手続きが認められると、申立人の借金の返済義務は免除されますが、非免責債権に該当するものは免責されないのでご注意ください。

また、これは自己破産においてだけではなく個人再生でも同様で、非免責債権は減額の対象にはなりません。

とはいえ、非免責債権があるからといって、自己破産や個人再生ができないというわけではありません。
非免責債権だけが免責・減額の対象外になるだけで、それ以外の借金であれば手続きできます。

次章では、非免責債権に該当するものを具体的に解説します。

2章 非免責債権に該当するもの

非免責債権に該当するのは、以下のものです。

  • 税金や保険料などの公租公課
  • 悪意で加えた不法行為による損害賠償請求権
  • 故意または重過失により加えた、人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償権
  • 雇用関係に基づいた使用人への給料と預り金
  • 養育費や婚姻中の生活費

それぞれ、詳しく解説します。

2−1 税金や保険料などの公租公課

税金や、年金、健康保険料、下水道料金などの公租公課は非免責債権に該当します。

自治体や国は、裁判所を通さずに強制執行を行うことが可能です。そのため、支払いを怠ると、短期間で財産を差し押さえられてしまう可能性があります。

もし、支払いが難しいと感じたら、管轄している自治体や税務署などに早い段階で相談してみましょう。

事情がある場合には、分割払いに応じてもらったり、支払いの猶予を受けられたりすることもあります。

2−2 悪意で加えた不法行為による損害賠償請求権

悪意を持って加えた不法行為に対する損害賠償請求権も非免責債権です。

ここでいう「悪意」とは、相手に対して「損害を与える」という意思をもって行う行為です。

例えば、以下のような行為が挙げられます。

  • 物を盗む、騙し取る、会社の金品を横領するといった物理的に物を奪う・壊す行為
  • 暴力によって怪我や死亡させるなど、肉体的に損害を与える行為
  • モラハラなどによって精神的に損害を与える行為

2−3 故意または重過失により加えた、人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償権

故意または重大な過失によって、人の生命に関わることや身体を傷つけるような不法行為に対する損害賠償請求も非免責債権です。

ここでいう「故意」とは、相手に対して損害があることを分かりながらも、あえて行為に及ぶことで、「重大な過失」とは、少しでも注意をすれば損害を与えずに済んだにもかかわらずそれを怠ったことを言います。

例えば、飲酒運転や暴走運転などによって交通事故を起こし、怪我・死亡させたなどの行為が該当します。

2−4 雇用関係に基づいた使用人への給料と預り金

雇用関係に基づいた使用人への給料と預り金も非免責債権に該当します。

使用人とは労働者のことですので、これは雇用主が破産したケースで発生しますが、雇用主が法人の場合、破産すると法人自体が消滅するため、そもそも給料や預り金は免責・非免責の問題にもなりません。

そのため、ここでいう雇用主は個人の場合を想定しています。

2−5 養育費や婚姻中の生活費

養育費や婚姻中の生活費も非免責債権に該当します。

例えば、妻・夫への婚姻費用、子供に対する養育費などが挙げられます。

2−6 債権者名簿に記載していない債権

自己破産をする上で、破産者は債権者名簿を作成します。その際、破産者が意図的に特定の債権者を名簿(債権者一覧表)に記載しなかった場合、その債権は非免責債権となります。

債権者名簿に記載がないと、その債権者は免責について意見を述べる機会が与えられず、このような債権者の保護するためです。

また、意図的に債権者名簿に記載しない行為は、免責不許可事由に該当する可能性があるため、決して行ってはいけません。

なお、うっかり忘れてしまったなど、過失によって名簿に記載しなかった場合も非免責債権に該当するとされていますので、注意しましょう。

2−7 罰金等

罰金等とは、罰金や過料、刑事訴訟費用、追徴金、過料などが該当します。

代表的なものは、交通違反に対する罰金でしょう。

罰金等は、制裁的な側面を重視しているため、自己破産などで免責するのは適切でないと考えられているからです。

3章 非免責債権が支払えない時の対処法

非免責債権は、自己破産や個人再生などの債務整理では解決できません。

しかし、経済的にどうしても支払えないようなこともあるでしょう。

ここでは、非免責債権が支払えないときの対処法について解説します。

3−1 養育費等は相手方に相談する

養育費や婚姻費用などの場合は、相手方と相談してみましょう。

事情を話して分かってもらえれば、支払いを待ってくれるかもしれません。

一番やってはいけないのが、何も話さず、支払いを怠ることです。

養育費や婚姻費用などは支払い義務があるものですので、支払いを怠った場合には強制執行として差し押さえをうける可能性があります。

また、経済的に支払いが難しいときは、減額するよう交渉することも不可能ではありません。ただし、相手が応じてくれない場合には、調停や裁判をしなければいけない可能性があることは理解しておきましょう。

3−2    税金等はすぐに自治体や税務署に相談する

税金などの公租公課が支払えないときは、管轄する自治体や税務署にすぐに相談してください。

支払えない事情や、支払いの目処などをきちんと話せば、どのように対処すべきか判断してもらえるでしょう。また、一度でも相談した事実があるだけで、税務署や自治体からの心象が大きく異なります。

状況によっては、分割払いや支払いの猶予を受けることが可能です。

なるべく早く相談するようにしましょう。

3−3 他の借金を債務整理して支払いに充てる

繰り返しになりますが、非免責債権は債務整理では解決できません。支払えなければ財産の差し押さえなどを受ける可能性があります。

そのため、非免責債権は優先的に支払わなければいけません。

非免責債権以外に借金がある場合には、その借金を債務整理で解決し、非免責債権への支払いに充てるのがよいでしょう。

自己破産や個人再生の手続き中は、特定の債権者に返済する行為は偏頗弁済として禁止されています。しかし、非免責債権はこれに該当しません。

そのため、手続き中取り立てが止まっている間に、税金などを支払うことも可能です。

ただし、複数種類の非免責債権がある場合には、専門家に相談することをおすすめします。

3−4 非免責債権かどうか専門家に確認する

税金や養育費、婚姻費用などは明確に非免責債権であることは分かりますが、賠償金の場合、対象となる不法行為が「悪意なのか」「故意なのか」「重過失なのか」など分からないケースもあるでしょう。

その場合には該当する賠償金が非免責債権に該当するかどうか専門家に確認してもらう必要があります。

非免責債権がわからない場合には、弁護士などに相談してみましょう。

4章 非免責債権があっても債務整理は可能

非免責債権があると、自己破産ができない」と勘違いされがちですが、そんなことはありません。

非免責債権以外にも借金があれば、それを債務整理で解決することが可能です。

他の借金が免責されるまたは、減額されれば、その分を非免責債権の支払いに充てられるでしょう。

債務整理には主に「自己破産」「個人再生」「任意整理」の3つがあります。それぞれ詳しく解説します。

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4−1 自己破産

自己破産とは、裁判所に申し立てることで借金の返済義務を免除してもらう手続きです。

ただし、ここまでお話してきた通り、非免責債権は免除されません。

ほとんどの借金がなくなる分、一定以上の財産は処分されてしまうため、家などを残すのは難しいでしょう。

収入がない方や少ない方、借金が高額な方には自己破産が適しています。

4−2 個人再生

個人再生とは、裁判所に申し立てることで借金を5分の1〜10分の1程度に圧縮し、それを原則3年で完済する再生計画を立てる手続きです。

借金は一部残りますが、家や車などの財産を手元に残せる可能性があります。

ただし、手続き後も返済は続きますので、安定した収入が必要です。

収入があり、家など残したい財産がある方には個人再生がある方には個人再生が適しています。

なお、個人再生でも、非免責債権は減額の対象外です。

4−3 任意整理

任意整理とは、債権者と交渉することで将来発生する利息や遅延損害金をカットしてもらう手続きです。

あくまで利息をカットするだけですので元金は減りません。とはいえ、利息がなくなることで月々の負担を軽減できる可能性はあるでしょう。

また、任意整理は手続きをする債権を選ぶことができますので、住宅ローンやカーローンを避けることで、財産を手元に残すことが可能です。

5章 まとめ

非免責債権は、自己破産や個人再生をしても、支払い義務の免除や債権の減額はしてもらえません。

一方、非免責債権があったとしても、他に借金があれば債務整理をすることができます。

税金などが支払えない場合には、まず管轄の自治体や税務署の相談窓口に相談しましょう。分割払いや支払いの猶予が認められる可能性があります。

それでも支払いが難しい場合には他の借金を整理するなどして対処するしかありません。

債務整理に関することは、ぜひグリーン司法書士法人にご相談ください。

当事務所では、これまで多くの債務整理に対応した実績がありますので、ご相談者様の事情に合わせて最適な解決策を提案させていただきます。

初回相談は無料です。オンライン相談にも対応していますので、まずはお気軽にご相談ください。

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