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自分の財産を残しながら借金を大幅に減額できる個人再生。任意整理より借金を減額できて自己破産よりもリスクを負わずに済むのが特徴の債務整理方法です。
個人再生を検討している方の中には、離婚後に生活が窮困した方や、借金が原因で離婚になってしまったという方は少なくありません。
その中で、お子さんがいて離婚している方は「養育費」の存在が気になるのではないでしょうか。
個人再生を選択した方はできるだけ返済以外の支出を抑えたいところだと思いますが、個人再生を行なっても養育費は支払う義務があります。
今回は、個人再生中の養育費の支払いと滞納していた分の養育費の扱いについて解説いたします。
目次 ▼
1章 個人再生をしても養育費は全額支払う義務がある
養育費は「非免責債権」と言って、個人再生などの債務整理を行なっても支払義務が免除されることはありません。
個人再生をする前の窮地に立たされている時期の養育費も、個人再生中の養育費も個人再生後の養育費も、発生時期にかかわらず一切免除されず、すべて支払う必要があるので注意しましょう。
ちなみに、一切の借金の返済が免除される「自己破産」をしても養育費は支払う義務があります。ですので、養育費が「非免責債権」である以上は債務整理を行なったかどうかは考慮されることはありません。
自己破産をする際の養育費の扱いについては以下の記事で詳しく解説しています。
1-1 非減免債権とは?
では、非免責債権とは何なのでしょうか?
非免責債権とは自己破産における用語で、自己破産をしても支払い義務から逃れられない性質の借金のことです。
養育費は、破産法 第253条 第1項の請求権の一部として記載されています。
破産法 第253条 第1項
免責許可の決定が確定した時は、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を逃れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りではない。〜割愛〜
四 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの引用:破産法
ですので、返済に追われていたとしても養育費は払う必要があります。
他にも、裁判所費用や個人再生委員の報酬・水道光熱費、税金や国民健康保険料なども非免責債権の対象になっているので、そちらも支出に入れた上で再生計画を行いましょう。
1-2 個人再生手続における非免責債権
個人再生は、大まかに言えば「借金を5分の1に減額して3年で払う」手続きです。
よって、減額分である5分の4については支払い義務がなくなるという意味で、一部ですが「免責」の効果が出てくるのは自己破産と同じと言えます。
そして、この(一部)免責の効果が生じない性質の債権のことを非免責債権と呼んでいます。
自己破産において非免責債権に当たるものは、個人再生においても同様に非免責債権に当たります。よって養育費も非免責債権となります。
そのため、最終的には養育費はすべて支払う必要がありますが、具体的な支払い方法は、個人再生の時点で滞納していた分と、それ以外の分とで異なります。これを2章で説明していきます。
2章 養育費を滞納していても個人再生は可能
個人再生の承認が通ったら、再生計画通りに支払いを行っていけば良いですが、金銭的にも精神的にも一番キツいのは個人再生をするかしないかで追い込まれている時ではないでしょうか。
いくら義務とはいえ、借金の支払いとその日の生活のことで精一杯な状況で、養育費のことまで到底回らないという方が大半だと思います。
ですので、つい養育費を滞納してしまったという方も少なくありません。繰り返しますが、滞納した分は個人再生で免除されないため必ず支払う必要があります。
この章では、個人再生前に滞納した養育費の支払い方法と、個人再生中に発生する養育費の支払い方法を解説いたします。
2-1 個人再生前に滞納した養育費の支払い方法
養育費は、毎月の支払いが次々に発生するという特殊な性質があります。滞納分の養育費の支払いについても、この特殊性をしっかり頭に入れておく必要があります。
基本は、個人再生前に滞納した養育費は他の借金と同じく減額されて支払いを続けます。
ただし、非免責債権である以上、圧縮された分についても支払い義務は免除されません。この分は、再生計画に基づく返済が終わった後で、原則一括払いで支払う必要があります。
このため、再生計画に基づく返済中に、将来の養育費一括返済を見越して貯金をしておく必要があります。
ちなみに、個人再生の手続き中に滞納分の養育費を支払うのは「偏頗弁済」と言って、特定の債務者を優遇していることになるため裁判所の承認が降りない可能性があります。
養育費を受け取る相手も債権者の一人であることを念頭におきましょう。
2-2 個人再生中に発生する養育費の支払い方法
一般に養育費の金額は毎月5~6万円程度であることが多く、子の数が多ければそれだけ負担額も増えるため、他に債務がない状況だとしても支払いは大変です。これが個人再生を考えるほどに借金がある状況ならば猶更でしょう。
しかし、養育費は非免責債権なので支払いを滞らせるわけにはいきません。手続中にも毎月発生する養育費の支払いはしっかり実行しなければならないのです。
さらに、認可決定が出て個人再生(再生計画)に基づく各社への返済が始まった後は、滞納していた養育費の返済と同時並行して毎月の養育費を支払う必要があります。
再生計画による返済中は、
- 滞納分の一部の返済
- 現在の養育費の支払い
を同時に行なっていき、再生計画に基づく返済の後に、それまで滞納していた分の養育費の残りの一括返済をして返済完了となります。
もちろん、再生計画に基づく返済が終わっても今後の養育費の支払いを続ける必要があるので注意しましょう。
3章 離婚協議中に個人再生はできる?
原則として、離婚協議中でも個人再生をすることができます。
ただし、相手への慰謝料や子どもが複数いて養育費の支払いが厳しいなど再生計画にネックになる場合は、個人再生の承認を受けられない場合があります。
もっとも、個人再生の申立ての中で、各種生活費、家賃、養育費、税金などの支払いを全て考慮したうえで、それでも再生計画に基づく返済が十分に可能であるという説明が必要になります。当然、申立てに際してはこの点を十分に考慮し、支払いが可能であると判断した上で申し立てることになるでしょう。
しかし、そうは言っても途中で計画が狂う可能性もあるでしょう。
もし、再生計画に基づく返済中に養育費などの支払いができない場合は、個人再生を取り消されて借金が復活してしまう可能性があるので注意しましょう。そうなると現実的には自己破産に切り替えるしかなくなります。
3-1 持ち家がある場合は注意が必要
個人再生は財産を残したまま借金を減額することができるので、もし自分名義でマイホームを持っている場合は「住宅資金特別条項」という特例を利用すれば手放さなくて済みます。
再生申立て前に財産分与をして、相手の名義になった場合は住宅資金特別条項から外れるので、特例なしの個人再生に切り替えて手続きを行うことになります。
また、名義が自分だったとしても再生計画中の自分が住まずに相手が住んでいるケースも注意が必要です。その家は「住宅」ではないとみなされるため、住宅資金特別条項を利用できなくなります。
3-2 再生申立て後に財産分与を行うのは避けよう
離婚する際の財産分与は、再生申立て後に行うのは絶対に避けましょう。
なぜなら、持っている財産の総額が個人再生における返済額を決める基準のひとつになるからです。財産分与は預貯金や不動産など、多額の財産が動く可能性があります。
そうすると、当初予定していた返済額が大きく変わり、個人再生をしても返済ができなくなるかもしれません。そうなると個人再生は認められなくなります。
特に、住宅ローン特例を利用している場合で住宅の所有名義を変えると、特例が使えなくなります。
個人再生の手続きを行う際は、再生申立て後に財産分与などで財産を動かすのは絶対に避けましょう。
なお、個人再生手続における返済額の決定方法についてはこちらで詳しく説明しています。
4章 個人再生で離婚慰謝料が減額される可能性はある
離婚する場合は慰謝料が発生するケースもありますが、個人再生をすることによって慰謝料が減額されることはあるのでしょうか?
答えは、相手に積極的な害意を与えた上での離婚かどうかによります。ざっくりとした判断基準にはなりますが、離婚の原因が悪質かどうかによって慰謝料が減額されるかどうかが変わっていきます。
ここからは、離婚のケースごとに見ていきましょう。
4-1 性格や価値観の不一致が原因の離婚
【性格や価値観の不一致が原因の離婚】相手との性格や生活スタイルが合わずお互い不満を抱えた上で離婚した。
このように、一方的に身体や精神的に危害を加えたものではないケースは、慰謝料が非減免債権になることは少ないと言えます。
慰謝料も借金と同じ扱いになるため、圧縮された額を再生計画に基づいて支払い、残金は免責されます。よほど話し合いを持ちかけても無視したり、嫌がらせのような行為がない限りは慰謝料も減額の対象となります。
4-2 暴力などDVが原因の離婚
【暴力などDVが原因の離婚】相手のDVに耐えきれなくなり離婚した。
暴力など家庭内DVが原因の離婚は、相手に積極的な害意を与えた上での離婚になるため非減免債権になるケースが多いです。
暴力ということは、相手の身体を傷付けたり精神的苦痛を味わせているため、損害賠償請求権が含まれます。もちろん怪我をさせてしまったらその分の治療費なども上乗せする必要があります。
非減免債権の対象になれば、個人再生後に残金を一括返済しなければいけません。
4-3 モラハラや経済DVが原因の離婚
【モラハラや経済DVが原因の離婚】相手が生活費を渡さないのに過度な家事を要求してきて耐えきれず離婚した。
身体的な危害を加えられてはいないが、精神的苦痛を味わせた場合は相手の心を傷付けたことによる慰謝料が課せられます。慰謝料の中には損害賠償金が含まれるため非減免債権になるケースが多いです。
また、離婚の原因で多い不倫も、総合的に見て悪意があると判断された場合は非減免債権になる可能性もあります。
慰謝料の減額に関してはケースによっても大きく異なるため、専門家に相談して進めましょう。
5章 個人再生を検討中ならグリーン司法書士法人へご相談を
個人再生をしても養育費が免除されることはありません。例え離婚したとしても、自分の血の繋がっている子どもがいる以上は養育費から逃れられることはできません。
ですので、個人再生を行うなら養育費の支払いも入れた上で他の借金の返済をする必要があります。債務者の中には、慰謝料や養育費の支払いも同時に行なっていくことに難色を示す場合もあるかもしれません。
再生計画に同意してもらい、個人再生の手続きを進めるためにも専門家と一緒に進めていくことをおすすめします。グリーン司法書士法人では債務整理のプロが無料相談を行なっております。
債務整理を検討している方はまずはお気軽にご相談ください。
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