住民税の時効はあるが支払う義務あり!滞納したときのリスクを解説

   司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

時効の援用
住民税の時効はあるが支払う義務あり!滞納したときのリスクを解説

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住まいの行政サービスを維持するために必要な住民税。

支払わなければいけないのは分かっていながらも、金銭的に余裕がないと払いたくないと思ってしまう方も少なくないでしょう。

実は、住民税には時効があるのです。もし時効が適用されたら払わなくても良くなるかもしれないですよね。

この記事では、住民税の時効についてと滞納したときのリスクを解説いたします。

▼自己破産した場合の税金の支払いについては、以下の記事で詳しく解説しています。

1章 住民税の時効は納期限から5年!

住民税は納期限から5年で時効が成立します。

簡単に言えば、5年逃げ切れば住民税を払わなくても済むのです。

しかし、住民税の時効が成立するのは現実的にほとんど不可能と言っても過言ではありません。簡単に時効が成立してしまったら税金を払わない人が増えてしまい、行政サービスが成り立たなくなってしまいます。

税務署が税金の未納を知っていて、5年間放っておくこと自体も考えられません。時効があるものの、成立することはほとんどないことを覚えておきましょう。

1-1 督促状や催促状が届いた場合時効が中断する

では、なぜ簡単に時効が成立しないのでしょうか?

住民税に限らず、一般の債権債務に全て言えることですが、単に5年間経過しただけでは消滅時効は成立しません。また、その5年の間に債権者(税務署)が指をくわえて放置するはずもなく、督促などをしてきます。

そして、督促状や催促状が届いた場合はその時点で時効が中断して、改めてイチから5年間カウントしなければいけません。

ですので、もし1年逃げ切れたとしても督促状が届いたらまたそこから5年間のカウントが始まります。

そして、国民の公正な税負担を目指す税務署が「逃げ得」を許すはずがありません。時効を完成させないようにあらゆる手段で請求をかけてきます。

1-2 引っ越しをしても滞納分は支払うため時効はほぼ不可能

中には、引っ越しをしたらその土地にいなくなるので、住民税を支払う必要がなくなると考える方もいます。

しかし、引っ越しをしても、「その土地にいた時に支払うべきお金」である延滞分は支払義務が残るため、時効を迎えることは難しいでしょう。

例えば、東京都の豊島区に住んでいたとします。住民税を2ヶ月滞納したまま東京都の板橋区に引っ越したとしても、引っ越し先に豊島区から住民税の督促が届くのです。

住民税は1月1日の時点で住んでいる地域に支払うため、今現在板橋区に引っ越しをしても1月1日の時点で豊島区に住んでいた場合は豊島区の住民税を納める必要があります。

ですので、滞納したまま引っ越しをしてもリセットされるわけではないので注意が必要です。

2章 住民税が時効になるケースはない!

住民税に時効は設定されていますが、実際のところ時効になったケースはありません。

「それならなぜ5年なんて時効を設定する必要あるの?」と思うかもしれませんが、どんな原因に問わず債務になった以上は時効の設定がされるため、5年という時効があるのです。税金も同じです。

しかし、税金という性質である以上時効の中断はあるため、絶対に逃げ切ることはできません。

ただ例外として生活保護受給されて免除になるケースはあります。

滞納したまま生活保護受給が開始され、そこから3年が経過すると滞納分の支払い義務が免除されるのです。過去の滞納分の支払い義務が免除されるだけでなく、生活保護を受けている間も住民税が免除されるため、住民税の支払いの心配も必要ありません。

もっとも、あくまで「免除」なので時効による消滅ではない点には注意が必要で、生活保護の受給期間が3年に満たないときは、生活保護を受けなくなった時点で請求されることもあります。

もし早い段階で生活保護から抜け出した場合は、納税するためのお金を作っておくと良いでしょう。「そんな余裕なんかない」という方は、生活保護の後も減免や納付猶予をしてもらうように申請するのをおすすめします。

3章 住民税を滞納し続けると差し押さえに!

住民税を滞納し続けると、やがて差押えまで発展してしまいます。

ここで注意しておきたいのが、税金の差押えは通常の差押えと異なる点です。

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差押えまでの流れ住民税の滞納借金の滞納
督促状・催告書税務署から届く貸金業者から届く
ブラックリストの登録信用情報機関が登録
一括請求貸金業者から届く
差し押さえ予告書税務署から届く裁判所から届く
財産調査税務署が行う裁判所が行う
差押え税務署が行う裁判所が行う

通常は、裁判所に訴えを起こし、判決を取得したうえ、改めて差押えの許可を裁判所からもらってからでないと実際の差押えはできません。

しかし住民税の場合、税務署が直接に差押え権限を持っています。

ですので、裁判所からの通知を待たずに早期に差押えすることが可能です。

「差押えって裁判所から通知が来るみたいだし、まだ滞納できるかも」と思っていると、ある日突然税務署が家に乗り込んできて、あっという間に差押えられるというケースもあります。

そうならないためにも、早い段階で住民税を払いましょう。

3-1 督促状・催告書が届く

まずは、借金の滞納と同様に督促状・催告書が届きます。

納期限を1日でも過ぎた場合は滞納となります。支払い期日を過ぎると、早く支払うように記載された封筒が自宅に届くのですぐに支払うようにしましょう。

滞納した場合は、住民税に加えて「延滞税」というペナルティも課せられてしまいます。延滞税は納税期限の翌日から発生し、2ヶ月滞納した場合は更に延滞税率が高くなります。

3-2 差し押さえ予告書が届く

督促状・催告書を無視してそのまま税金を払わなかった場合、再度督促状が送られます。

税金の滞納については法律上でも、

  • 納期限後20日以内に督促状を発送しなければならない
  • 督促状を発送した日から10日を過ぎると財産を差し押えなければならない

とされているため、​放置しておいたらどんどん事態が深刻になっていきます。​1ヶ月以内には間違いなく差押え予告書が届くので、どうしても払えない場合は役所に連絡しましょう。無視は一番の悪手です。

この時点で時効がリセットされるので、ここからまた5年間支払い義務が発生してしまいます。

3-3 財産調査が行われる

それでも住民税が払えない場合は、財産調査が行われます。

財産調査とは、滞納者がどのような人なのか、勤務先はどういうところなのか、差し押さえられる銀行口座・不動産はあるのかなどの調査を指します。

財産調査は個人情報保護法に抵触しないため、徹底的に財産がないのかを調べられてしまいます。

3-4 差し押さえ処分が行われる

財産調査をして差し押さえるべき財産が見つかった場合は、差し押さえ処分が行われます。

住民税の場合、そこまで高額ではないため大抵は給料や預金口座となることが多いです。もっと高額な税金を滞納した場合は、持ち家や車が差し押さえられる可能性があるので注意しましょう。

税金の場合は裁判手続きが不要なことから、税務署だけで差押えまで行うことができます。そのため、ある日突然差押えになる可能性もあります。

裁判所なしで差押えまで完結してしまうので、想像よりも差押えまでのスピードが早いことを覚えておきましょう。

4章 住民税・延滞税の支払いができない場合の対処法

住民税を放置しておくリスクを理解していても「どうしても期日までに払えない」ということもあるかもしれません。
それに加えて、延滞税も加算されるのでは到底支払いが現実的ではないでしょう。

もし、支払えない場合でも黙ってやり過ごそうと思うのは絶対におすすめしません。
差押えの流れを見ても、時効までに逃げ切ることは到底不可能だということが分かったと思います。

では、支払いできない場合どうしたら良いのでしょうか。対処法を解説いたします。

4-1 督促状が届いたら役所へ連絡する

住民税・延滞税の支払いができずに困った場合は、まずは役所へ連絡しましょう。
このまま放っておいても、督促状を発送した日から10日後には差押えが可能になってしまうからです。

督促状が届いた時点で払えなさそうだと思ったら、とにかく意思表示が大切です。
役所や担当者に下記の2点を丁寧に伝えられば、すぐに差押えが行われる可能性を下げられます。

  1. すぐに納付するのが難しい事情があることを説明
  2. 必ず遅れてでも納税する意志があることを伝える

事情次第では次のステップである「減免や納付猶予の申請」も可能になるので、督促状は放置せずに役所に相談しましょう。

4-2 減免や納付猶予の申請をする

住民税の支払い機関は1年以内ですが、納税の猶予や換価の猶予を併用すれば、最大4年間の猶予を受けられる場合があります。
各自治体の条例によっても異なりますが、以下の事情であれば減免や納付猶予の救済措置を受けられる可能性もあります。

  • 災害で大きな損害を受けた
  • 生活保護を受給している
  • 解雇や倒産で失業してしまった
  • 学生である
  • 障がい者の認定を受けた

このように、支払いが困難な場合は申請が通るかもしれません。ぜひ早めの連絡をおすすめします。

また、減免や納付猶予だけでなく住民税が免除になるケースもあります。

住民税が減免や納付猶予になる可能性あり住民税が免除になる可能性あり
・本人や家族が病気になり納税が困難になるほどの医療費が掛かった
・本人が解雇や倒産で失業してしまい納税が困難になった
・納税することで生活の維持が困難になる可能性がある
・猶予を受けようとする国税以外の滞納がない
・未納分の税金の額よりも本人の資金が下回っている
・本人が多額の借金をしており到底支払える経済状況ではない
・財産を売ったり経費の節約など努力をしたにもかかわらず支払うことができない

減免や納付猶予を認めてもらうのに言えることは「納税の意思がある」かどうかです。
支払いに時間がかかるとしても、最終的には必ず支払うことを伝えましょう。

4-3 生活保護を受給する

長期的に税金の支払いが難しく、今後も働ける目処が立たない場合は生活保護の受給を相談しましょう。
生活保護を受給すると、所得税などの税金や健康保険料等の保険料が免除されるからです。

生活保護受給後は受給前に滞納していた税金や保険料の滞納分も猶予されるので、ご安心ください。
ただし、生活保護は簡単に受給できる制度ではなく、本当に生活に困っておりすぐに働けない人のみが受給できる制度です。

とはいえ、受給にあたる相当の理由がある場合は躊躇せずに相談してみることをおすすめします。

5章 債務整理をしても住民税は支払う義務あり!

住民税を支払うのが難しい理由として、借金の返済に追われていて困っているという方も少なくないと思います。

債務整理を行うと、借金を減額してもらったり免除してもらったりできますが住民税は支払う義務があるため注意が必要です。

税金は「非免責債権」に含まれており、たとえ自己破産しても免除されない債権になります。住民税だけでなく、市民税や所得税、自動車税など税金は全て非免責債権扱いとなります。

具体的には、以下が非免責債権に含まれます。

各種税金・公共料金など市民税、所得税、住民税、自動車税、固定資産税などの税金
国民年金・国民健康保険料・下水道料金
慰謝料悪意のあるもの(DVやモラハラに対する慰謝料 など)
※原則不倫慰謝料は含まれない
損害賠償金重過失にあたるもの
従業員の給料重過失にあたるもの
養育費重過失にあたるもの
罰金刑罰によるもの

債務整理と言っても、全ての支払いの滞納から逃れられるわけではないのです。

また、自己破産の手続きを行う場合、特定の債権者を優先して返済する行為は禁止されています。一部の債権者は返済してもらったのに、他の債権者は借金が免除になると不平等になるからです。

もし自己破産を考えている中、少しでもお金を作ることができたら税金だけでも支払っておくのをおすすめします。

非免責債権については、以下の記事で詳しく解説しています。

6章 住民税の時効は実質不可能!支払いを忘れずに

住民税は、形式上では時効があります。しかし、その前に督促状や差押え予告書が届くため実質不可能と言って良いでしょう。

督促状を送ってから10日後に差押えが可能になるため、半年や1年どころか5年も逃げ切れることはまず考えられません。

たとえ、他の支払いが困難だとしても住民税は必ず優先して支払うことをおすすめします。

もし万が一払えない場合、納期を過ぎても黙っているのは得策ではありません。とにかく1日でも早めに役所に連絡し手続きが取れるか相談してみましょう。

逃げ切れないことが分かった時点で、このまま放っておくとどんどん事態が悪化するだけです。

給料などお金が入った時点で、優先して住民税の支払いを意識しましょう。

時効の援用に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。

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よくあるご質問

住民税の時効はいつ?
住民税は納期限から5年で時効が成立します。
住民税の時効について詳しくはコチラ
住民税の時効は中断する?
住民税の督促状や催促状が届いた場合はその時点で時効が中断します。
住民税の時効の中断について詳しくはコチラ
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