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この記事をご覧になられている方のお困りごとは、主に以下の2つに分かれているかと思います。
- 「自己破産すれば、滞納している年金の支払い義務も免除されるのか?」(年金を支払っている方)
- 「自己破産をしたら、年金を受け取れなくなってしまうのか?」(年金受給者)
前者について結論を先に言うと年金の支払いは「免除されない」ということになります。年金は非免責債権にあたるからです。
一方、年金受給者の方が自己破産をした場合、原則として年金の受給に影響はでません。
この記事では、自己破産における年金の取り扱いについて、年金を支払っている方・年金受給者の両者の視点から解説いたします。
ご自身の状況に該当する項目を御覧ください。
目次 ▼
1章 自己破産をしても年金の支払いは免除されない
自己破産の手続きが認められると、借金の返済義務がすべて免除されます。しかし、年金のような公租公課は免責の対象外となります。
1−1 年金は非免責債権
年金は、自己破産でも免責が認められない「非免責債権」に該当します。そのため、自己破産をしても滞納している年金の支払いはしなければいけませんし、滞納し続けると財産を差し押さえられる可能性があります。
また、年金以外にも以下のようなものは非免責債権に該当します。
非免責債権 | 具体例 |
---|---|
各種税金等 | 所得税、住民税、自動車税、固定資産税などの税金国民年金国民健康保険料下水道料金 など |
慰謝料 | 悪意のあるもの(DVやモラハラに対する慰謝料 など) ※原則として、不倫慰謝料はこれに含まれない |
損害賠償金 | 重過失にあたるもの |
従業員の給料 | |
養育費 | |
罰金 | 刑罰によるもの |
自己破産において特定の債権者にだけ偏って返済することは「偏頗弁済」として認められていませんが、非免責債権にあたる債権の支払いは偏頗弁済に該当しません。
他の借金を差し置いて、年金や税金だけを支払うことは問題ないのです。そのため、資産を売却して現金を作れるのであれば、自己破産をする前に年金や税金を支払っておくようにしましょう。
1−2 年金の未納のみだと自己破産が認められない
滞納しているものが年金や税金などの非免責債権のみの場合、自己破産は認められません。自己破産をしても意味がないからです。
年金や税金が支払えない状況なのであれば、まずは納税すべき国や市町村に対して連絡してみてください。
- どうしても支払いができない事情
- 現在の収入状況
- いつ支払えるかの見込み
などを説明し、納税をする誠実な気持ちが認められれば差押えを待ってもらえる可能性があります。
2章 年金を未納のままにするとどうなる?年金が支払えないときの対処法
年金を未納のままにしておくと、年金が受け取れなくなったり、財産が差し押さえられたりするリスクがあります。
年金がどうしても支払えない場合には、救済措置がありますのでそれを利用するのがよいでしょう。
ここでは、未納のままにするリスクと、支払えない時の対処法について解説します。
2−1 年金を未納のままにするリスク
2−1−1 将来受け取れる年金が減る
国民年金の受取額はは、基本的に20〜60歳までの40年間・月換算で480ヶ月で計算されます。
未納の期間がある場合には、その期間に応じて受給額が減額されてしまいます。
2−1−2 年金が受け取れなくなる
国民年金・厚生年金の加入期間が合計10年に満たないと、年金受給資格がないとみなされます。その場合には年金を受け取ることはできません。
また、加入期間が短いと、障害基礎年金や遺族年金の受給もできなくなる可能性があります。
2−1−3 財産が差し押さえられる可能性がある
国民年金の納付は義務ですので、未納を続けると税金の滞納と同じように財産が差し押さえられる可能性があります。
年金を支払えない場合には、次項で解説する救済措置を取るようにしましょう。
2−2 年金が支払えないときの対処法
年金が支払えない場合には、国が認めている以下の救済措置を利用しましょう。
ただし、誰でも認められるわけではなく、所得などに制限があるため注意が必要です。
救済制度 | 概要 |
---|---|
保険料免除制度 | 本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下の場合や失業した場合などに国民年金保険料を免除してもらえる制度。 免除額は、所得に応じて全額・4分の3・半額・4分の1の4種類があります。 |
保険料納付猶予制度 | 20歳から50歳未満で、本人・配偶者の前年所得が一定額の場合に、保険料の納付が猶予される制度。 |
どちらも、日本年金機構に申請することで受けることができます。詳しくは、日本年金機構に問い合わせてみてください。
3章 自己破産をすると年金はどうなる?
自己破産をしても将来受け取る年金が差し押さえの対象になることはありません。
公的年金は差押禁止財産に該当するため、自己破産時の処分対象にならないからです。
一方ですでに受け取った年金に関しては現金や預貯金として扱われ、金額によっては処分対象となります。
自己破産後の年金の取扱いについて詳しく見ていきましょう。
3−1 すでに受給した年金は現金や預貯金として処理される
すでに受給した年金(口座に振り込まれたもの)については、「年金」として特別に対応されることはなく、他の財産と同様に「現金」や「預貯金」として処理されます。
自己破産では99万円を超える現金や20万円を超える預貯金は処分の対象となるため、年金であってもそれを超える現金・預貯金を所有しているのであれば処分されてしまいます。
3−2 将来受け取る予定の年金は差し押さえられない
年金を受給されている方が自己破産をしたからといって、将来年金が受け取れなくなったり、受給額が減額したりすることはありません。
また、自己破産では破産開始決定時点で受け取り予定の給与などは差し押さえの対象になりますが、年金は差押禁止財産にあたりますので、差し押さえられることもありません。
3−3 20万円を超える個人年金の解約返戻金は差し押さえの対象となる
国民年金や厚生年金については差押禁止財産にあたりますが、自身で契約している個人年金の解約返戻金は差し押さえの対象となります。
4章 自己破産をすると年金受給用の口座が凍結される可能性があるので注意が必要
自己破産手続きをすると、借り入れをしている銀行や、キャッシングをしている会社の系列銀行の口座は凍結されてしまいます。
銀行口座が凍結されると、お金の引き出し、引き落とし、振り込みができなくなります。
なお、銀行口座が凍結されるのは、司法書士や弁護士などの専門家から債権者に対して受任通知がなされてから、代位弁済が終了するまでの1〜3ヶ月程度です。
そのため、年金受給用の口座が凍結の対象となっている場合注意が必要です。
自己破産の手続きをする前に、振り込み口座を凍結対象ではない口座に変更するようにしましょう。
消費者金融の多くは、銀行の系列会社です。
例えば、アコムは三菱UFJフィナンシャル・グループの系列会社かつ、保証会社。つまり三菱UFJ銀行と系列の会社であるということです。
そのため、三菱UFJ銀行で借り入れをしていなくとも、アコムで借り入れをしていれば、三菱UFJ銀行の銀行口座が凍結されてしまう可能性が高いですので注意しましょう。
【銀行系の消費者金融の例】
- アコム:三菱UFJフィナンシャル・グループ
- プロミス/SMBCモビット:SMBCグループ(三井住友銀行系)
- ダイレクトワン:スルガ銀行グループ
- ノーローン:新生銀行グループ
5章 自己破産についてはグリーン司法書士法人にお任せください
自己破産をしても、年金の受給に影響がでることはありません。一方、自己破産をしても年金の納付義務を免れることもできません。
借金以外にも年金や税金の滞納がある場合、資金繰りが苦しくなってしまうでしょう。
グリーン司法書士法人では、公租公課の支払いも考慮しながら自己破産の手続きが進められるようアドバイスすることが可能です。
初回相談は無料。オンライン相談も承っておりますので、お気軽にご相談ください。
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よくあるご質問
- 自己破産をすると年金は受け取れない?
- 年金を受給されている方が自己破産をしたからといって、将来年金が受け取れなくなったり、受給額が減額したりすることはありません。
自己破産時の年金に関する取扱いについて詳しくはコチラ
- 自己破産をすると貯金はどうなる?
- 自己破産では99万円を超える現金や20万円を超える預貯金は処分の対象となります。
自己破産時の貯金について詳しくはコチラ