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仮想通貨の運用に失敗し、大きな損失を出してしまう方は多くいらっしゃいます。FXなどの仮想通貨取引は高額の損失を出しやすいため、一気に高額の負債を抱えて自己破産を検討する方もいるでしょう。
一方、仮想通貨による借金を自己破産できるのでしょうか。
破産法では、投資や仮想通貨、ギャンブルによる借金は免責不許可事由(免責を認めない要件)に該当するとされています。
しかし、実際には免責不許可事由に該当しても裁判所の裁量で自己破産が認められることがほとんどです。
この記事では、仮想通貨による借金は自己破産できるのか、自己破産の手続き上仮想通貨はどのように取り扱うのかなどについて解説します。
ぜひ参考にしてください。
なお、株で借金をしたときの対処法は、下記の記事で詳しく紹介しています。
目次 ▼
1章 仮想通貨で作った借金でも自己破産は可能か
「仮想通貨で作った借金は自己破産ができない」と聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、仮想通貨のような投資行為による借金は、免責不許可事由(免責を認めない要件)に該当するとされています。
しかし、免責不許可事由に該当していたとしても裁判所の裁量で免責が認められることがほとんどです。
ここでは、仮想通貨による借金の自己破産の可否について詳しく解説します。
1−1 仮想通貨は免責不許可事由に該当する可能性が高い
前述したように、仮想通貨による借金は免責不許可事由に該当します。
免責不許可事由とは、借金の免責を認めないとする要件です。破産法では、以下のように定められています。
- 借金を返さないためにわざと財産を隠したり、財産価値を下げる行為
- 特定の債権者だけに偏って返済する行為
- クレジットカード決済で商品を購入し、それを売るなどして換金する行為
- ギャンブルや、投資、不要なショッピングなどによる浪費行為
- 自己破産をする前提で新たに借金をする行為
- 裁判所に嘘の債権者一覧や借金額など虚偽の報告をする行為
- 過去7年以内に自己破産をしている
仮想通貨による借金は上記4の浪費行為に該当することとなります。
1−2 裁判所の裁量で免責が認められることもある
免責不許可事由に該当していたとしても、裁判所の裁量で免責が認められることがあります。これを「裁量免責」と言います。
自己破産は借金の返済ができない人を救済する制度であり、免責不許可事由に該当しているからと言ってすべて認めずにいると、制度そのものが機能しなくなってしまうでしょう。
そのため、仮想通貨が原因の借金のように、免責不許可事由に該当しているような場合でも、裁判所の裁量で免責を認めることがほとんどです。
もちろん、何もせずに裁量免責が認められるわけではありません。仮想通貨をやめ、真摯な反省を見せるなどの努力は必要です。次の章で詳しく解説します。
1-3 仮想通貨で発生した税金は自己破産できない
税金は、自己破産をしても返済義務が残る非免責債権に含まれます。
そのため、借金が仮想通貨の利益によって発生した税金のみの場合には自己破産を行えません。
2章 仮想通貨による借金でも自己破産を認めてもらうために気をつけるべきこと
仮想通貨による借金であっても、裁判所の裁量で免責が下りることがほとんどです。しかし、だからといって油断をしてはいけません。
「免責不許可事由に該当している」という自覚をもち、以下のことに気をつけて手続きを進めましょう。
- 手続き中は仮想通貨を含む投資は一切行わない
- 裁判所や破産管財人には正直に話す
- 手続きには誠実に対応する
2−1 手続き中は仮想通貨を含む投資は一切行わない
自己破産の手続き中に得た給与などの金銭は自由に使うことが可能です。
しかし、仮想通貨のような投資にお金を使うと、「反省していないのでは?」と裁判所からの心証が悪くなります。場合によっては免責が認められなくなることもあるでしょう。
投資以外にも、ギャンブルや無駄遣いはせず、慎ましく生活するようにしてください。
1回くらいは、と考えるかもしれませんが、その1回がかなり大きく心証を動かします。破産者であるという自覚を持ち、ダメなものはダメ、一切しないという姿勢を見せることが非常に重要なのです。
2−2 裁判所や破産管財人には正直に話す
免責不許可事由がある自己破産の場合、管財事件となって破産管財人がつくことがあります。
そして、仮想通貨による借金だと免責が下りないと考え、「仮想通貨なんてしていない」と裁判所や管財人に対して嘘をついてしまう方がいらっしゃいます。
しかし、裁判所や破産管財人は破産者の財産やお金の流れについて徹底的に調査します。嘘をついてもバレてしまう可能性が高いでしょう。
嘘がバレると、免責が認められなくなる可能性があります。
自身に不利になることであっても、正直に話すようにしましょう。
2−3 手続きには誠実に対応する
自己破産の手続き中は、裁判所や破産管財人に対して誠実に対応するようにしましょう。
手続き中は面談や書類の提出などが何度か必要になります。
当たり前のことですが、「面談には誠実な態度で受け答えをする」「必要な書類は期限内に提出する」などを心がけるようにしてください。
どの弁護士が破産管財人につくかは分かりません。裁判所が事件ごとに選びます。ただ、どの弁護士になったとしても基本的には免責を認める方向で考えていただけます。弁護士の指示にしっかりと従い、やるべきことを迅速にやるという姿勢が大事です。
3章 仮想通貨による借金の場合、自己破産の費用が高額になる可能性が高い
自己破産には「同時廃止」「管財事件」の2種類があります。
自己破産の手続きの基本は、破産管財人が選任される「管財事件」ですが、破産者に特段の問題がないような場合には手続きが簡略された「同時廃止」で処理されることがあります。
仮想通貨による借金の場合、免責不許可事由に該当するため、管財事件として処理されます。
管財事件は、同時廃止に比べ費用も手間もかかります。同時廃止の手続きは費用が1〜5万円、期間は準備期間含めて半年程度なのに対し、管財事件の場合には費用が50万円、期間が1年程度です。
「同時廃止」と「管財事件」を以下の表で比較し、まとめましたので、参考にしてください。
同時廃止 | 条件 | 財産額が20万円未満 |
同時廃止 | 費用相場 | 裁判所での手続き費用:1〜5万円 専門家への依頼費用:25〜35万円程度 |
同時廃止 | 手続き期間 | 準備期間:2〜6ヶ月 手続き期間3〜4ヶ月 |
管財事件 | 条件 | 以下のいずれかにあてはまること ・財産額が20万円以上 ・法人の代表や個人事業主 ・債務額が5000万円以上 ・免責不許可事由に関する調査が必要 ※最終判断は裁判所による |
管財事件 | 費用相場 | 裁判所での手続き費用:50万円〜 専門家への依頼費用:35万円〜 |
管財事件 | 手続き期間 | 準備期間:3〜6ヶ月 手続き期間:6ヶ月以上 ※債務・財産状況などにより変わる |
同時廃止、管財事件それぞれの詳細については以下の記事を御覧ください。
4章 自己破産における仮想通貨の取り扱い
自己破産の手続きをすると、所有する一定以上の財産はお金に替えられ、債権者へ分配されます。仮想通貨も例外ではありません。
とはいえ、すべての財産を処分してしまうと生活がままならなくなってしまうため、一定の財産は手元に残すことができます。これを「自由財産」といいます。
自由財産の基準は各裁判所によって異なりますが、東京地裁では以下のように定められています。
- 破産手続開始後に取得した財産(新得財産)
- 法律で差押えが禁止されている財産
- 99万円以下の現金
- 裁判所が自由財産拡張を認めた財産
- 破産管財人が破産財団から放棄した財産
また、裁判所に自由財産の拡張が認められれば、以下の財産も残すことが可能になります。
- 残高が20万円以下の預貯金
- 見込額が20万円以下の生命保険解約返戻金
- 処分見込額が20万円以下の自動車
- 居住用家屋の敷金債権
- 電話加入権
- 支給見込額の8分の1相当の額が20万円以下の退職金債権
- 支給見込額の8分の1相当の額が20万円を超える退職金債権の8分の7に相当する額
- 家財道具
実際上は、仮想通貨の価額を残すというのは、特に管財事件の場合にはあまり考えられません。財産全体を総合的に見て残すもの、残さないものを切り分けていきます。管財人と綿密な相談が必要になる部分だと思います。
5章 自己破産で仮想通貨を隠すリスク
仮想通貨はあくまで電子データ上の資産ですので、隠すことができると考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、裁判所は破産者のお金や資産について徹底的に調査します。そのため仮想通貨であっても、隠し通すことはできません。
特に、仮想通貨取引による損失が原因で借金ができている場合は高額になりやすいのでバレてしまいます。
仮想通貨を故意に隠した場合、自己破産が認められなくなる可能性が高いでしょう。最悪の場合「詐欺破産罪」として罪に問われることもあります。詐欺破産罪に科される刑罰は1ヶ月以上10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金です。
仮想通貨を含め、財産を故意に隠す行為は大きなリスクを伴いますのでやめましょう。
6章 自己破産をしても仮想通貨の税金の支払い義務は免除されない
仮想通貨で利益を得た場合、税金が課され、利益が大きければ大きいほど、当然課される税金も高額になります。
仮想通貨を運用している人の中には、借金はなくても、税金が払えずに途方に暮れる方も多いでしょう。
しかし、税金の支払い義務は、自己破産をしても免除されません。自己破産では滞納した税金については解決しないのです。
税金の未払いが続けば、最悪の場合給与や財産などを強制執行として差し押さえられてしまう可能性があります。
もし、税金が支払えずに困っている場合には、税務署に分納や猶予を受けられるよう相談しましょう。
なお、税金のように自己破産では免責されない財産のことを「非免責債権」といい、税金以外の公租公課(年金や国民健康保険など)もそれに含まれます。その他にも、慰謝料や損害賠償請求権、養育費の支払いなども該当します。
具体的には、以下のとおりです。
非免責債権 | 具体例 |
各種税金等 | 所得税、住民税、自動車税 固定資産税などの税金、国民年金、国民健康、保険料、下水道料金 など |
慰謝料 | 悪意のあるもの(DVやモラハラに対する慰謝料 など) ※原則として、不倫慰謝料はこれに含まれない |
損害賠償請求権 | ・悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権 ・故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権 |
従業員の給料 | 給料、賞与 |
養育費 | 養育費 |
罰金 | 刑罰によるもの |
7章 自己破産が難しい場合には他の債務整理も検討しよう
自己破産で免責が下りないような場合には、「個人再生」や「任意整理」など、自己破産以外の債務整理を検討しましょう。
7−1 個人再生
個人再生とは、裁判所に申し立てることで借金を5分の1〜10分の1程度に圧縮し、原則3年で返済する再生計画を立てる手続きです。
自己破産よりも認可が下りるハードルが低く、借入れの原因を問わないため、個人再生の条件を満たしていれば仮想通貨による借金であっても手続きが可能です。
一方、個人再生の場合、手続き後に返済が続きますので、一定の収入がなければいけません。
7−2 任意整理
任意整理とは、債権者と交渉することで将来発生する利息をカットしてもらう手続きです。
任意整理が成功すれば、和解時点以降にかかるべき利息がなくなりますので返済総額を抑えることができます。
しかし、自己破産を考えるほどの状況なのであれば任意整理後に返済を続けることは難しいでしょう。そのため、実際にはあまり現実的ではないことが多いでしょう。
8章 借金問題はグリーン司法書士法人にお任せください!
仮想通貨による借金の場合でも自己破産が認められる可能性は高いですが、その分手続きが複雑になります。時間もかかるでしょう。お一人で手続きを進めるのは困難です。
グリーン司法書士法人には、借金問題に精通した司法書士が在籍しております。
免責不許可事由に該当する自己破産にも多く対応してまいりました。万が一自己破産が難しいケースでも、別の解決策を提案いたします。
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よくあるご質問
- 仮想通貨が原因で自己破産はできる?
- 仮想通貨が原因の借金は自己破産の免責不許可事由に該当する可能性が高いです。
しかし、裁判所が裁量免責を認める可能性があります。
仮想通貨による自己破産について詳しくはコチラ
- 自己破産によって仮想通貨の税金は免除される?
- 自己破産をしても税金の支払い義務は免除されません。
したがって、仮想通貨の収益に対してかかった税金は自己破産をしても払う必要があります。
仮想通貨による自己破産について詳しくはコチラ