自己破産をすると車は没収される?手元に残せるケースとは

   司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

自己破産
自己破産をすると車は没収される?手元に残せるケースとは

この記事は約 9 分で読めます。

自己破産をする際、ローンが残っている車はローン会社によって引き上げられてしまうことがほとんどです。

また、ローンが残っていなくても、高級車や新車のように査定額が20万円以上を超える車の場合には破産管財人によって処分されてしまいます。

人によっては、車がなければ生活ができないなど、自己破産によって車が使えなくなることが死活問題になる方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、自己破産をしたときに車はどうなるのか、手元に残したい場合にはどうすればよいのかなどについて解説します。

1章 自己破産をすると車は処分される?

「自己破産=財産が処分される」という印象があり、車も処分の対象になると思われている方が多いのではないでしょうか。

しかし実際には、一般車が破産手続の中で処分の対象になることは少なく、それよりもローンを組んでいる会社に引き上げられてしまうことがほとんどです。

車が処分されるかどうかは、ローンが残っている場合と残っていない場合で異なります。

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状態結論対処法
ローンが残っているローン会社による引揚げ第三者による一括返済
ローンが残っていない【価値あり】裁判所による処分自由財産の拡張
【価値なし】手元に残せる

それぞれ詳しく解説します。

1−1 ローンが残っている場合にはローン会社によって引き上げられる

車のローンが残っている場合、裁判所によって処分されるより先に、ローン会社やディーラー(以下、債権者)によって引き上げられる可能性が高いでしょう。

車は、ローンを完済するまでは債権者が所有権を留保しているのが一般的です。つまり、完済するまではあなたに所有権はないということです。

そのため、ローンを組んだ人が今後ローンを支払わないことが分かると、債権者は車を引き上げてしまいます。

債権者が車を引き上げるのは、受任通知(※)を受け取ってから3ヶ月以内が目安です。ただし、ローン会社としては、価値が少しでも高いうちに引き上げて売却したいと考えますので、受任通知を受けてすぐに動くことがほとんどです。

受任通知についての詳しい解説はこちらの記事をご覧ください。

1−2 ローンが残っていない:車の価値によって変わる

ローンが残っていない場合、車の価値が20万円を超えるか超えないかで取り扱いが変わります。

1−2−1 車の価値が20万円以下の場合には手元に残すことができる

ローンが残っておらず、車の価値が20万円以下の場合には、自己破産をしても手元に残すことができます。

初年度登録から7年以上経過していれば価値がないとみなされますし、一般車であればある程度経過していれば査定額が20万円を超えることはほとんどありません。

新車や高級車でない限り、ローンが残っていなければ手元に残せる可能性は高いでしょう。

1−2−2 車の価値が20万円を超える場合は処分される可能性がある

新車や高級車など、車の価値が20万円を超える場合には、破産管財人によって処分される可能性があります。

破産管財人とは、破産者の財産を処分し、債権者に分配する人です。

この場合、処分されるのは自己破産を裁判所に申立て、破産開始決定が下りた時です。

1−2−3 車の価値が20万円を超えていても、事情があれば処分されない可能性もある

自己破産をしても、「自由財産」という、生活に必要な最低限の財産は手元に残すことができ、20万円以下の車は自由財産にあたります。

自由財産に該当するもの

  • 破産手続開始後に取得した財産(新得財産)
  • 法律で差し押さえが禁止されてる財産
  • 99万円以下の現金
  • 裁判所が自由財産拡張を認めた財産
  • 裁判所が自由財産拡張を認めた財産破産管財人が破産財団から放棄した財産

一方、車の価値が20万円を超える場合でも、裁判所が「自由財産の拡張」を認めれば処分されずに済みます。

ただし、自由財産の拡張が認められるのは、生活を送る上でその車が必要不可欠であると判断された時だけです。

例えば、足が不自由で、車がなければ移動手段がなくなってしまうようなケースです。

自由財産の拡張についてはこちらの記事を参考にしてください。

2章 車を手元に残す方法

後述しますが、例え車が引き上げられたり処分されたりしても、自己破産の手続きが終われば車を持つ手段はあります。

しかし、自己破産手続き中の短期間でも車がないと困る方もいらっしゃるかと思います。

そのような場合の対処法について解説します。

2−1 自己破産申立て前に第三者にローンを返済してもらう

ローンが残っている場合、債権者に受任通知が送られた時点で車を引き上げられてしまいます。

一方、ローンを完済しさえすれば、所有権が自身に完全に移ります。

そのため、自己破産を申し立てる前に、第三者にローンを完済してもらえば、車の価値が20万円を超えない限り手元に残すことができます。

注意しなければいけないのは、「自分でローンを完済してはいけない」ということです。

自己破産では、特定の債権者だけに偏って返済することを禁止しています。車のローンを完済するためだけに、他の借金を差し置いて返済することは許されないのです。

そのため、自己破産申立て前に完済するのであれば、親や配偶者などの第三者に支払ってもらうようにしましょう。

2−2 任意整理を検討する

どうしても車を手放したくないのであれば、自己破産を諦めて任意整理を検討するのも一つの手段です。

任意整理は、債権者と交渉することで将来発生する利息などをカットしてもらう手続きです。自己破産と異なり、裁判所を通さずに手続きをするため、自身で手続きをする債権者を選択することができます。

車のローンを避けて任意整理をすれば、車に影響を出さずに借金を減額することが可能です。

3章 車に関して自己破産前にやってはいけないこと

自己破産をしても車を手元に残したいお気持ちはわかります。だからといって車を処分されるためにズルをすることはいけません。

自己破産において「ズル」にあたるのは以下のような行為です。

  • 車の名義を他の人に変更する
  • 車のローンを自身で一括返済する
  • 車のローンを申告しない
  • 不当に車を処分する

上記のような行為をすると、自己破産が認められなくなる可能性があります。

3−1 車の名義を他の人に変更する

自己破産によって車が処分されることを防ぐために、自己破産の直前に車の名義を配偶者や親など他の人に変更することはやってはいけません。

名義を変更する行為は「財産隠し」として、免責不許可事由(免責を認めないとする要件)に該当し、自己破産が認められなくなる可能性があります。

3−2 車のローンを申告しない

車の存在を隠すために、車のローンを申告しない行為も「財産隠し」に該当します。

裁判所は申立人の財産について徹底的に調査しますので、隠し切るのはほぼ不可能です。

財産隠しをしていることが発覚すると、自己破産が認められなくなる可能性があります。

3−3 不当に車を処分する

「自己破産をして、どうせ処分されてしまうのなら」と、車を現金化して手元に残すこともしてはいけません。

車を不当に安い価格で処分することは、破産法で禁止されています。

これに背き、勝手に処分した場合には、自己破産が認められなくなる可能性があります。

一方、自己破産前であっても、適正価格で売却し、売却代金を借金返済に充てるのなら問題はありません。

3−4 車のローンを自身で一括返済する

自己破産の直前に、車のローンを自身で一括返済する行為は「偏頗弁済」に該当する可能性があります。

偏頗弁済とは、特定の債権者に偏って返済することです。

偏頗弁済も免責不許可事由に該当するため、自己破産が認められなくなる可能性があります。

4章 自己破産後に車を持つことは可能?

自己破産の手続き後、もう一度車を持ちたいと思われる方も多いでしょう。

自己破産をしても車を持つことは可能ですが、自己破産前と同じようにはいきません。

ここでは、自己破産後に車を持つ方法などについて解説します。

4−1 一定期間自動車ローンが組めない

自己破産後は、一定期間(5年程度)自動車ローンを組むことができません。

自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が掲載され、掲載されている期間はローンを含む新たな借り入れができないからです。

配偶者など協力してくれる身近な人がいる場合は、その人にローンを組んでもらって自動車を買うことが可能です。

4−2 一括払いであれば購入可能

自動車ローンを組むことはできませんが、一括払いであれば自分で購入することができます。

一括払いであれば信用取引ではないため、自己破産終了後、貯金やボーナスで車を購入する分にはなんの制限もありません。

4−3 すぐに車がほしい時

ローンが組めない、一括払いでしか購入できないとなると、自己破産手続き後にすぐに車を手に入れることは難しいですよね。

その場合には、以下の方法で対処しましょう。

4−3−1 レンタカーやカーシェアリングを利用する

最近では、レンタカーやカーシェアリングが普及していますので、それを利用するのも良いでしょう。

日常使いをしないのであれば、維持費などもかかりませんし、無駄な出費を抑えることにも繋がります。

4−3−2 家族に購入してもらう

通勤や仕事で車がどうしても必要なのであれば、家族に購入してもらうのもよいでしょう。

自分の名義でローンは組めませんが、家族の名義でローンを組んでもらい、家族に対してローン分を返済するのは問題ありません。

5章 まとめ

自己破産をすると、車を手放さなければいけなくなる可能性が高いでしょう。

仕事や生活に不可欠なのであれば、ご家族にローンを返してもらったり、自由財産の拡張を申請したりと対策が必要です。

しかし、下手に対策をしてしまうと、免責不許可事由に該当してしまい、自己破産が認められなくなってしまう可能性も否めません。

車を手元に残したいのであれば、専門家に相談してみることをおすすめします。

自己破産に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。

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よくあるご質問

自己破産後に車を購入できる?
自己破産後に車を購入することは自由ですが、下記の点にご注意ください。
・一定期間自動車ローンが組めない
・一括払いであれば購入可能
自己破産後の自動車購入について詳しくはコチラ
自己破産をすると車は没収される?
自己破産時に新車登録から「7年以上」経過している車であれば、価値がないとされ名義変更しなくても処分の対象にはなりません。
自己破産をしても車を手元に残せるかについて詳しくはコチラ
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