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差し押さえとは、借金の返済を滞納している債務者の財産を債権者が回収し、残債の支払いに充てることです。
ただし、差し押さえは債権者が勝手に行えるわけではなく、裁判所への申立て手続きが必要です。
また、差し押さえが認められている財産と禁止されている財産の種類も法律によって決められています。
借金を滞納してしまい取り立てが行われている状態に加え、財産や給与を差し押さえられてしまうといよいよ生活が立ち行かなくなってしまうと不安を感じてしまうはずです。
借金を滞納していて自力返済が難しい場合や差押えについて不安を抱えているのであれば、早い段階で借金問題について司法書士や弁護士に相談するのが良いでしょう。
本記事では、差し押さえとは何か、対象となる財産についてわかりやすく解説します。
返済が滞っている借金がある人は、下記の記事もご参考にしてください。
目次 ▼
1章 差し押さえとは
差し押さえとは、借金などの債務の返済を怠っている債務者に対し、債権者が債権の回収をすることです。ただ、差し押さえは、債権者が債務者に対して勝手に行えるわけではありません。
債務者の財産を差し押さえるには、債権者が裁判所に対して申立てを行う必要があります。
申立て後に裁判所が債務者が所有している財産や権利を処分する権利を制限すると、債権者が債務者の財産を回収できるようになります。
また、差し押さえが認められたとしても、債務者が所有する財産すべてを債権者が回収できるわけではありません。
次の章では、差し押さえの対象になる財産を詳しく紹介していきます。
2章 差し押さえの対象になる財産
債権者は債務者の財産をすべて回収できるわけではなく、差し押さえ対象財産は主に下記の5つと決められています。
- 給料
- 預貯金
- 生命保険金
- 資産価値のある財産
- 不動産
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 給料
給料は、最も差し押さえされやすい財産です。
ただし、債務者の給料全額が差し押さえの対象になるわけではなく、下記の金額のいずれか高い金額が対象になります。
- 給与の手取り額の4分の1
- 給与の手取り額のうち33万円を超える分
例えば、給料の手取り額が60万円だった場合、差し押さえできる金額は下記のように計算可能です。
- 60万×4分の1=15万円
- 60万-33万=27万円
27万円>15万円となるので、上記のケースでは差し押さえ対象となるのは27万円です。
給料の差し押さえが決定すると、裁判所から勤務先に債権差押命令が送付され完済まで差し押さえが続きます。
また、給料だけでなく賞与や退職金なども同様に差し押さえの対象となります。
2-2 預貯金
給与だけでなく、債務者の預貯金も差し押さえの対象となります。
給料とは異なり、預貯金は差し押さえ対象の限度額は設定されていません。
そのため、原則として借金の残債分すべての預貯金を差し押さえできます。
債務者の預貯金が差し押さえられる流れは、下記の通りです。
- 裁判所から債務者が所有している口座の銀行や郵便局宛に、債権差押命令が送付される
- 債権差押命令が届いた銀行や郵便局の口座から預貯金を一時的に引き出せなくなる
ただし、差し押さえ対象となる預貯金は債権差押命令が届いた時点の残高です。
給料と預貯金は差し押さえ対象の財産の中でも、最初に差し押さえられやすいです。
- 差し押さえの手続きが手軽かつ費用が安くすむ
- 裁判所からの債権差押命令が出やすい
- 他の動産や不動産と違って換金の必要がない
給与や預貯金が差し押さえられやすいのは、上記が理由です。
また、債権者は債務者の口座、勤務先情報を把握可能です。
債権者に対し、口座や勤務先情報を教えてないからと言って差し押さえされないわけではないのでご注意ください。
2-3 生命保険金
債務者が生命保険に加入している場合、下記も差押えの対象になります。
- 解約返戻金
- 配当金
- 満期金
- 保険金請求権
なお、債権者は債務者に代わり生命保険の解約手続きを行えます。
生命保険に加入していて、返済が滞っている借金がある人はご注意ください。
2-4 資産価値のある財産
下記のような動産も資産価値がある場合、差押え対象となります。
- 自動車やバイク
- 貴金属
- 骨とう品
ただし、差し押さえると債務者の生活に大きな支障が出る動産に関しては、差押えの対象から外されます。
一方で、生活必需品に当たる場合でも2台あるうちのテレビの1台などは差し押さえられる可能性もあります。
動産の差し押さえに関しては、所有している財産の資産価値や生活への影響度によっても裁判所の判断が変わってくると理解しておきましょう。
動産を差し押さえる場合、債権者は回収後に動産を換金して借金の返済に充てます。
例えば、車やバイクを差し押さえた場合には、オークションにかけてできるだけ高い金額で現金化しようとします。
2-5 不動産
土地や建物などの不動産も差し押さえの対象です。
特に、住宅ローンは建物や土地に抵当権が設定されているケースが多いので、滞納後は自宅が差し押さえられる可能性が高いです。
もちろん、住宅ローン以外の借金の滞納でも、給料や預貯金のみでは残債分を回収できない場合には、不動産の差し押さえが行われる場合もあります。
不動産に関しても動産同様に債権者が回収した後は、現金化するために競売にかけられることが多いです。
3章 差し押さえの対象にならない財産
債権者が差し押さえの申立てをした場合でも、債務者の財産すべてが差し押さえられるわけではありません。
下記の4つの財産は、差し押さえの手続き後も債権者に回収されることがありません。
- 給料の3/4または33万円以上の部分
- 66万円までの現金などの差し押さえ禁止動産
- 生活保護給付金などの差し押さえ禁止債権
- 債務者名義以外の財産
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 給料の3/4または33万円以上の部分
本記事の2章で解説したように、給料は差し押さえ対象になりますが、生活するのに必要なお金は差し押さえの対象から外されます。
- 手取りの4分の3
- 手取りのうち33万円以上
上記のうち、いずれか低い金額は差し押さえの対象から外れます。
3-2 66万円までの現金などの差し押さえ禁止動産
下記に当てはまる財産は、法律により差し押さえが禁止されています。
- 66万円までの現金
- 生活に必要不可欠な品物(衣類や寝具、家具など)
- 仕事や学業において必要不可欠な道具
- 実印
- 勲章
- 仏像や位牌
- その他、生活に必要不可欠な食糧など
上記のように、債務者が差押え後も生活していくにあたり必要不可欠な品物や、換金しても売値がつかない動産に関しては差し押さえることができません。
そのため、換金性の低い犬や猫などのペットが差し押さえられる可能性は低いです。
一方で、錦鯉など資産価値の高いペットを債務者が所有している場合には、差し押さえの対象になる可能性もあります。
3-3 生活保護給付金などの差し押さえ禁止債権
債務者が所有している債権のうち、下記に当たるものは法律で差し押さえを禁止しています。
- 国民年金
- 厚生年金
- 生活保護給付金
- 児童手当
上記は給料と異なり、入金前に差し押さえられることはありません。
ただし、上記債権が債務者の口座に入金された時点で、預貯金として差し押さえの対象になる恐れがあります。
入金された年金や生活保護の給付金を差し押さえの対象から外してもらうには、裁判所に差押範囲変更の申立てをしなければなりません。
差押範囲変更の申立て方法の概要および必要書類は、下記の通りです。
申立てできる人 | 債権差押命令を出された人 |
---|---|
申立て先 | 債権差押命令を発令した裁判所 |
申立て費用 | 無料 (ただし、連絡用の郵便切手代が数千円程度かかります) |
必要書類 |
|
3-4 債務者名義以外の財産
借金の返済滞納によって差し押さえられる財産は、債務者名義の財産のみです。
そのため、下記の財産は差し押さえられることはありません。
- 家族や同居人の私物
- 債務者が住んでいる賃貸住宅
ただ、裁判所から派遣された執行官が債務者の財産と間違えて家族や同居人の財産を回収してしまう場合があります。
その際には、第三者異議の訴えを起こせば、取り戻せる可能性があります。
第三者異議の訴えは、原則として裁判所による強制執行が終了するまでのみ手続き可能であり、非常に日程がタイトなケースも多いです。
自分で手続きをするのは難しい場合も多いので、債務整理に詳しい弁護士に相談するのが良いでしょう。
4章 借金滞納から財産を差し押さえられるまでの流れ
本記事の1章で解説したように、借金滞納の事実があったからといって、債権者が勝手に債務者の財産を差し押さえし回収することは認められていません。
債権者が差し押さえをして債務者の財産を借金返済に充てるには、下記の段階を踏む必要があります。
- 債権者からの督促が届く
- 債権者が訴訟手続きを行う
- 強制執行が開始され財産が差し押さえられる
それぞれ詳しく解説していきます。
STEP① 債権者からの督促が届く
借金の返済が滞るとハガキや封筒で債権者から督促状が届きます。
督促状が届いたときに無視をしてしまうと、次の段階である訴訟手続きに移ります。
STEP② 債権者が訴訟手続きを行う
債権者が督促状を無視していると、債権者は訴訟手続きや支払督促の手続きに移ります。
なお、借金の滞納が続き債権者から訴訟を起こされた場合、債務者が訴訟に勝つ可能性はほとんどありません。
債権者は訴訟を行うと、債務名義を取得できます。
債務名義とは、債権者の権利を公的に証明できる書類です。
債務名義を取得した債権者は、本記事2章で紹介した財産を回収できるようになります。
STEP③ 強制執行が開始され財産が差し押さえられる
訴訟手続きによって債務名義を取得した債権者は、債務者に対して強制執行手続きを行えます。
強制執行手続きとは、債権者の申立てによって裁判所が債務者の財産を差し押さえ債権者が回収できるようにする手続きです。
債務名義取得から強制執行手続きまでは、下記の流れで進みます。
- 債務名義を取得する
- 債務名義などの必要書類を提出し、債権者が強制執行の申立てを行う
- 裁判所が債務者の財産を差し押さえる
このように、債権者が借金に関する訴訟を行ってしまうと、差し押さえから逃れることは非常に困難になります。
可能であれば、そもそも債権者が訴訟を起こさないように対策すべきです。
次の章では、債務者が財産の差し押さえを回避する方法を紹介していきます。
5章 財産の差し押さえを回避する方法
債権者が訴訟を起こし、裁判所に強制執行手続きを行うと給与や預貯金、不動産などの財産は差し押さえられてしまいます。
財産の差し押さえを回避するには、債権者に対し手に真摯に対応することが大切です。
詳しく解説していきます。
5-1 債権者からの督促や訴状に対応する
債権者から届いた督促状や訴状は無視せず、誠実に対応しましょう。
返済の意思はあることを債権者に理解してもらえば、強制執行の手続きを行わないでもらえる可能性もあるからです。
ただし、すでに借金の返済を滞納している人が「必ず返済します」と伝えても信頼してもらえない場合もあるでしょう。
債権者からの信頼を得るには、納得させられるだけの返済計画を用意することが重要です。
収入や資産に合う現実的な返済計画を用意し、債権者に直接相談してみましょう。
5-2 債務整理を行う
現在の収入が少なく返済計画を立てられそうにない場合や借金が増えすぎてしまい自力での完済が難しい場合には、債務整理も検討しましょう。
債務整理には、下記の4種類があります。
種類 | おすすめな人の特徴 |
---|---|
任意整理 |
|
個人再生 |
|
自己破産 |
|
特定調停 |
|
上記のように、債務整理には複数の方法があり、それぞれメリットとデメリットがあります。
借金の金額や現在の収入、資産によって最適な手続き方法が変わってくるので、債務整理に詳しい司法書士や弁護士に相談し、自分に合う債務整理を提案してもらうのが良いでしょう。
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まとめ
借金の返済を滞納し、債権者から届く督促状や訴状を無視し続けると、財産が差し押さえられる可能性があります。
差し押さえとなる財産は様々な種類がありますが、最初に給料および預貯金が回収されるケースが多いです。
財産の差し押さえを阻止するには、督促状や訴状を無視しないなど債権者にとって誠実な対応をすることが重要です。
期日までの返済が難しい場合でも、債権者が納得できる返済計画書を用意すれば、差し押さえを回避できる場合があります。
ただ、現在の収入が少なく返済計画書を作成できない場合や自力で借金を返せないくらい金額が膨らんだ場合には、債務整理も検討しましょう。
債務整理には複数の方法があるので、司法書士や弁護士に相談し、自分に合う債務整理を提案してもらうのがおすすめです。
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よくあるご質問
- 借金滞納から財産を差し押さえられる流れとは?
- 借金を滞納すると、下記の流れで財産を差し押さえられます。
STEP① 債権者からの督促が届く
STEP② 債権者が訴訟手続きを行う
STEP③ 強制執行が開始され財産が差し押さえられる
差押えについて詳しくはコチラ
- 差押えの対象となる財産は何?
- 下記の財産は差し押さえられる可能性があります。
・給料
・預貯金
・生命保険金
・資産価値のある財産
・不動産
差押えについて詳しくはコチラ