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- 年金滞納の2年の時効を迎えるのが難しい理由
- 年金を滞納するリスクやデメリット
- 年金を払えないときの対処法
年金保険料を滞納すると、2年で消滅時効にかかります。一見短いようですが、実際にその時効を迎えるのは非常に困難です。
今回の記事では、年金滞納の2年の時効を迎えるのが難しい理由を解説します。併せて、年金滞納の時効に関する基本的な知識と、財産が差し押さえられるリスクについても見ていきましょう。
また、年金を滞納することで生じるデメリットおよび対処法についても触れておきます。年金を滞納しないために必要な知識を身につけ、安心して将来を迎えるための参考にしてください。
目次 ▼
1章 年金滞納の時効は2年
年金保険料の滞納には、2年の時効があります。これは、納付期限から2年が経過すると、未納分の保険料を支払う義務が消滅することを意味します。
ちなみに、借金やクレジットカードの利用代金などの「請求権」の消滅時効(5年)とは異なり、税金などと同様に「徴収権」の消滅時効は、時効援用が不要です。公式の督促や提訴がないまま、2年が経過すれば、自動的に時効が成立する性質を持っています。
しかし、実際にはこの時効を迎えるのは非常に困難です。単純に2年間放置すれば、支払い義務がなくなるという期待はまず持てません。その理由については、次章で詳しく解説しましょう。
2章 年金滞納の時効を迎えるのが難しい理由
年金滞納の時効を迎えるのが難しい主な理由としては、次の2つが挙げられます。
- 督促状が届くたびに時効はリセットされてしまう
- 時効を迎えるまでに財産が差し押さえられるリスクがある
それぞれの理由を、詳しく見ていきましょう。
2-1 督促状が届くたびに時効はリセットされてしまう
年金保険料の時効は、督促状が届くたびにリセットされるため、実際に時効を迎えるのは非常に困難です。加えて、国民年金保険料の徴収は、年を追うごとに厳格になっています。
日本年金機構は滞納者に対して定期的に督促状を送付し、それによって時効期間が更新されます。督促状は通常、納付期限が過ぎた後に送られ、その後も定期的に送付され続けます。
結果的に、滞納者は常に新たな時効期間の開始を迎えることになり、時効による支払い義務の消滅はほぼ不可能です。また、特別催告状や最終催告状が届くと、次項で述べるように、さらに厳しい措置が取られることになります。
なお、国民年金保険料とは別に、国民健康保険料の督促状を無視するとどうなるのかや、支払えない時の対処法について、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、参考にご覧ください。
※(未公開)国民健康保険料の督促状を無視するとどうなる?支払えない時の対処法
2-2 時効を迎えるまでに財産が差し押さえられるリスクがある
年金保険料の滞納が続くと、時効を迎える前に財産が差し押さえられるリスクが高まります。日本年金機構は滞納者に対して、終的には差し押さえを含む強制徴収を行うことがあります。
差押えの対象となる財産は、預貯金や給与、不動産、自動車などが挙げられます。特に、未納期間が7か月以上続き、年間所得が300万円以上の人は強制徴収の対象となる可能性が高いです。
督促状を無視し続けると、差押予告通知が届き、その後、何の事前通知もなく財産が差し押さえられることがあります。このため、時効を待つ間に財産を失うリスクが大きく、時効を迎えることは非常に難しいといえるでしょう。
3章 年金を滞納するリスク・デメリット
年金を滞納する主なリスクやデメリットとしては、次の3つが挙げられます。
- 年金保険料の滞納が続くと財産を差し押さえられるおそれがある
- 将来受け取れる年金額が減ってしまう
- 遺族年金・障害年金を受け取れなくなるおそれがある
それぞれの内容を、詳しく見ていきましょう。
3-1 年金保険料の滞納が続くと財産を差し押さえられるおそれがある
年金保険料の滞納が続くと、財産が差し押さえられるリスクが高まります。日本年金機構は滞納者に対して最初に納付督励を行い、それでも支払いがない場合は督促状を送付します。
さらに納付がなければ差押予告通知が送られ、最終的には財産の差押えが実行されるかもしれません。差し押さえの対象には、預貯金、給与、不動産、動産などが含まれ、滞納額が未納期間に応じて大きくなると、回収対象となる財産の範囲も広がるでしょう。
一度差し押えが実行されると、自由に財産を処分できなくなり、生活に大きな影響を及ぼします。特に、預貯金が差し押さえられると、口座全体が凍結され、生活費の確保が困難になりかねません。
なお、差押えを解除する手続や期限について、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、参考にご覧ください。
3-2 将来受け取れる年金額が減ってしまう
年金保険料を滞納すると、将来受け取れる年金額が減少するリスクがあります。年金制度は、保険料を一定期間以上支払うことで老齢年金を受け取る権利を得る仕組みです。
滞納が続くと、その期間分の年金額が減少し、受給開始後の生活費に影響を及ぼします。国民年金では保険料の納付期間が10年以上ないと年金を受給できません。
厚生年金の場合も同様に、納付期間が短くなると受給額が減少します。将来の生活を安定させるためには、現在の滞納を早急に解消し、継続的に保険料を支払うことが重要です。
3-3 遺族年金・障害年金を受け取れなくなるおそれがある
年金保険料の滞納が続くと、遺族年金や障害年金を受け取れなくなるリスクもあります。遺族年金や障害年金の受給には、一定の保険料納付要件が必要です。
たとえば、遺族年金の受給資格は、被保険者が亡くなる前の1年間に未納がないことが条件のひとつです。障害年金の場合も同様で、納付要件を満たしていないと受給できません。
これらの年金は、予期しない事故や病気による生活の支援として重要な役割を果たします。したがって、滞納を解消し、安定した年金受給を確保するために、保険料の適切な管理が求められます。
なお、国民年金保険料を払えないとどうなるのかや免除・猶予などの対処法について、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、参考にご覧ください。
※(未公開)国民年金保険料を払えないとどうなる?免除・猶予などの対処法とは
4章 年金を払えないときの対処法
年金を払えない場合の、主な対処法としては次の3つが挙げられます。
- 年金の免除・猶予制度を利用する
- 年金保険料を後から納める
- ほかに借金があるなら債務整理を検討する
ひとつずつ、詳しく見ていきましょう。
4-1 年金の免除・猶予制度を利用する
年金保険料を支払うのが困難な場合、国民年金の免除や猶予制度を利用できます。これらの制度は、所得が少ない場合や失業などの理由で支払いが難しい場合に適用されるものです。
免除制度には全額免除、4分3免除、半額免除、4分の1免除の4種類があり、それぞれ所得に応じて申請できます。納付猶予制度は、50歳未満の方が対象で、一定期間中の保険料を猶予できます。
それによって、保険料の未納を避け、将来の年金受給資格を確保できます。申請には、前年の所得を証明する書類や失業証明書などが必要となります。手続は住んでいる市区町村の年金窓口やオンラインで行うことができます。
猶予期間中の保険料は、10年以内であれば後から納められるため、将来的な年金額への影響を最小限に抑えることが可能です。
以下の表に、年金保険料の免除・猶予制度の手続方法や条件などをまとめているので、参考にしてください。
項目 | 保険料免除制度 | 保険料納付猶予制度 |
対象者 | 所得が一定以下の人、失業者など | 20歳から50歳未満の人で所得が一定以下の人 |
種類 | 全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除 | 納付猶予 |
条件 | 前年所得が一定基準以下の場合(所得基準は扶養人数などで異なる) | 本人と配偶者の前年所得が一定基準以下の場合 |
必要書類 | 所得証明書、失業証明書(必要に応じて) | 所得証明書、失業証明書(必要に応じて) |
手続方法 | 市区町村の年金窓口、オンライン申請 | 市区町村の年金窓口、オンライン申請 |
効果 | 受給資格期間に算入、年金額への反映は一部のみ | 受給資格期間に算入、年金額には反映されない |
4-1-1 保険料免除制度
保険料免除制度は、所得が一定額以下の場合に申請することで、国民年金保険料の納付が免除される制度です。全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4つのタイプがあり、所得状況に応じて適用されます。
全額免除の場合は保険料全額が免除されますが、年金受給資格期間には算入されます。免除された期間は、年金額に反映される割合が低くなるため、将来の年金額は納付した場合に比べて減少するでしょう。
たとえば、全額免除の期間は将来受け取る年金額に2分の1しか反映されません。申請には、所得証明書や失業証明書などの書類が必要で、毎年度ごとに再申請が必要です。
4-1-2 保険料納付猶予制度
保険料納付猶予制度は、20歳から50歳未満の方を対象に、所得が一定額以下の場合に国民年金保険料の納付を猶予する制度です。申請には本人と配偶者の前年の所得を証明する書類が必要で、承認されると一定期間保険料の納付が猶予されます。
猶予された期間は年金の受給資格期間には算入されますが、将来受け取る年金額には反映されません。この制度を利用することで、経済的に厳しい時期でも年金の受給資格を維持できます。
なお、国民年金保険料とは別に、国民健康保険料を滞納すると財産を差し押さえられるのかや、払えない場合の対処法について、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、参考にご覧ください。
※(未公開)国民健康保険料を滞納すると財産を差し押さえられる?対処法とは
4-2 年金保険料を後から納める
年金保険料を後から納める方法は、さらに次の2つに分かれます。
- 保険料の追納制度を利用する
- 国民年金の任意加入を利用する
されぞれを見ていきましょう。
4-2-1 保険料の追納制度を利用する
保険料の追納制度は、保険料免除や納付猶予の承認を受けた期間の保険料を後から納付することにより、年金額を増やす制度です。追納できる期間は承認された月の前10年以内にかぎられます。
追納することで、その期間の年金額が全額納付した場合と同等に計算されるため、将来の年金額が増加します。追納の申請は年金事務所で行い、承認を受けると納付書が発行されます。
追納した保険料は、所得税や住民税の控除対象となるため、税金の軽減効果も期待できるでしょう。保険料の追納制度制度の条件や対象などの概要は、以下の表を参考にしてください。
項目 | 内容 |
対象者 | 保険料免除や納付猶予の承認を受けた期間がある人 |
条件 | 承認された月の前10年以内の期間が対象 |
効果 | 追納した期間分の年金額が増額される |
手続方法 | 市区町村の年金窓口で申請、納付書発行 |
注意点 | 追納する保険料は所得税や住民税の控除対象 |
4-2-2 国民年金の任意加入を利用する
国民年金の任意加入制度は、60歳以降でも年金受給資格を満たしていない場合や、年金額を増やしたい場合に利用できます。任意加入の対象は、日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の方や、受給資格を満たしていない65歳以上70歳未満の方です。
申請は市区町村の年金窓口で行い、口座振替による納付が原則です。任意加入することで、老齢基礎年金の受給額を増やすことができ、さらに付加年金制度を利用することで、少額の保険料で年金額を上乗せできます。
国民年金の任意加入制度の条件や対象などの概要は、以下の表を参考にしてください。
項目 | 内容 |
対象者 | 国民年金の被保険者資格を喪失した人、海外在住者 |
条件 | 60歳から65歳未満の日本国籍を有する者、または20歳以上の海外在住者 |
効果 | 加入期間が延長され年金受給額が増加 |
手続方法 | 市区町村の年金窓口または日本年金機構に申請 |
注意点 | 保険料の納付期限が過ぎると追納不可 |
4-3 ほかに借金があるなら債務整理を検討する
年金の滞納自体は債務整理で免除できない(非免責債権)うえ、将来受け取る年金が減ってしまうため、ほかに借金がある場合はそちらを債務整理するのが賢明です。
債務整理を活用することで、ほかの借金の負担を減らし、年金保険料の支払いに充てることができます。
債務整理には主に、「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つの方法があります。任意整理は、債権者との話し合いで返済計画を見直し、返済額を減らす方法です。
個人再生は裁判所を通じて借金を大幅に減額し、原則3年で返済する計画を立てる方法です。自己破産は、裁判所の決定で借金の全額を免除する方法ですが、一定の資産は処分される可能性があります。
債務整理の主な種類ごとの特徴やメリット、デメリットについては、以下の表にわかりやすくまとめてあります。
債務整理の種類 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
特徴 | 裁判所を通さずに、債権者と直接交渉して借金の減額や返済計画の見直しを行う方法 | 裁判所に申立てを行い、借金の減額と返済計画の認可を得る方法 | 裁判所に申立てを行い、全ての借金を免除してもらう方法 |
メリット | ・手続が比較的簡単で費用が安い ・裁判所への申立て記録が残らない ・家族や勤務先に知られない | ・借金を大幅に減額できる ・住宅ローンや車ローンなどの財産を守れる ・将来、再び借金問題に陥る可能性が低い | ・借金が全て免除される ・新しい生活をスタートできる |
デメリット | ・減額できる金額は債権者との交渉次第 ・将来、再び借金問題に陥る可能性がある | ・裁判所への申立て記録が残る | ・裁判所への申立て記録が残る ・官報に永久に掲載される ・一定期間、クレジットカードやローンを利用できない ・一定期間、就業制限を受ける |
適したケース | ・債務額が大きくなく、将来的に返済できる見込みがある場合 ・任意整理の詳細・解決事例はコチラ ↓ 借金をなくせる任意整理とは?メリット・デメリットや向いている人 任意整理の経験談・解決事例 | ・一定収入はあるが債務額が大きく、任意整理では難しい場合 ・個人再生の詳細・解決事例はコチラ ↓ 小規模個人再生とは|給与所得者再生との違いやメリット・デメリット 個人再生の経験談・解決事例 | ・債務額が非常に大きく、他の方法では返済が難しい場合 ・自己破産の詳細・解決事例はコチラ ↓ 自己破産とは?メリット・デメリットや手続きの流れを徹底解説 自己破産の経験談・解決事例 |
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まとめ
年金保険料の滞納には2年の時効がありますが、実際にその時効を迎えるのは非常に難しいです。督促状が届くたびに時効がリセットされ、最終的には財産が差し押さえられるリスクがあるため、時効による支払い免除は現実的ではありません。
さらに、年金を滞納することで将来の年金受給額が減少し、遺族年金や障害年金を受け取れなくなる可能性もあります。これらのリスクを避けるためには、年金の免除・猶予制度を活用し、滞納を防ぐ方法が有効です。
どうしても年金保険料の支払いが困難な場合は、追納制度や国民年金の任意加制度を利用することで、将来の年金額を確保できます。また、ほかに借金がある場合は、債務整理を検討し、年金保険料の支払いを優先する余裕を作ることもひとつの方法です。
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