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- 中小企業の借金問題の原因
- 中小企業における借金が経営に与える影響
- 中小企業が借金する前に考えておくべきこと
- 借金問題が起こった時に取るべき対処法
近年、資金調達を融資に頼らない無借金企業は増加傾向にあるものの、多くの中小企業が金融機関からの融資を受けています。中小企業は収益が不安定になりやすく、赤字補填のために借金を重ねる企業も珍しくないのが現状です。
借金は中小企業が資金を調達する方法として一般的ですが、過剰な借入はかえって経営に大きな負担や問題をもたらします。今回は、中小企業における借金問題について詳しく説明するとともに、借金を検討するにあたって経営者が押さえておきたいポイントについて解説します。
目次 ▼
1章 中小企業の借金問題とは
2024年版「中小企業白書」によると、中小企業の設備投資における資金調達は金融機関からの借入が中心となっています。金融機関からの借入を実施した企業は、自己資金で投資した場合よりも売上高が伸びているという調査結果もあり、多くの中小企業が事業拡大のために借入を利用していることがわかります。
参考:2024年版「中小企業白書」第一節 中小企業と間接金融/中小企業庁
運転資金や赤字補填として融資を受けるケースも多く、無借金企業も近年では増加傾向にあるものの、適切な借金は事業に欠かせないとも言えます。
とはいえ、過剰な借金は逆に経営を圧迫し、問題を引き起こす可能性があります。
ここでは、中小企業における借金問題の原因や、経営や経営者に与えるリスクなどを見ていきましょう。
1-1 借金問題が発生する2大原因
中小企業において借金問題が発生するのは、主に次の2つが原因です。
- 売上減少や経営悪化による資金不足
- 過剰な借入や返済計画のミス
それぞれ、以下で詳しい内容を解説します。
1-1-1 売上減少や経営悪化による返済資金の不足
中小企業は、売上が経済環境の変化や市場の競争激化によって不安定になりがちです。近年でいえば、2020年以降、新型コロナウイルスの影響で多くの中小企業が経営危機に陥り、借入金に依存せざるを得ない状況が続きました。
コロナ禍における実質無利子・無担保融資の「ゼロゼロ融資」も、元金据置期間が終了して返済が本格的に始まっているところが増えています。しかし一部では業績が十分にまだ回復していない企業が多く、返済が負担になって借金問題を抱えてしまう企業もあるのが現状です。
また、中小企業は業種にもよるものの利益率が低いことが多いため、経費の増加や売上の減少が直ちに資金不足に繋がり、借金の返済に影響します。
1-1-2 過剰な借入や返済計画のミス
事業拡大でハイリターンを狙って設備や人材に投資した結果、過剰な負債を抱えることが、借金問題の原因となることがあります。借入時には返済できる金額であったとしても、思ったような利益がでなければすぐ資金不足に陥り、返済が難しくなるのです。
先の見通しを持ちにくい社会情勢も相まって、返済計画が立てづらいために計画通りに返済できないケースもあります。
1-2 借金が経営に与えるリスク
中小企業が抱える借金は、経営にさまざまなリスクをもたらします。借金問題が大きくなると経営の継続が困難に陥るケースも多いため、借入は慎重に行うのが大切です。
ここでは、借金が経営にどのようなリスクを与えるのか詳しく見ていきましょう。
1-2-1 キャッシュフロー悪化による経営圧迫
借入金が増えると返済負担が増加するため、資金繰りは厳しくなります。
特に売上が減少した場合や予期しない支出が発生した場合、借金返済の負担も加わり、企業のキャッシュフローは圧迫されるでしょう。
さらに赤字を借金で埋めるようになっていくと、借金が増えていくことになり、ますます悪循環になっていきます。
1-2-2 信用力低下による金融機関や取引先への影響
借金が多い企業は、金融機関や取引先からの信用が低下する可能性があります。
特に返済遅延が起こると、企業の信用は大きく損なわれるため、今後の融資や取引先との関係の維持が難しくなるでしょう。
1-3 借金が経営者の家族へ与えるリスク
中小企業が金融機関から融資を受けるとき、信用を高めるために経営者を連帯保証人につける「経営者保証」を求められるケースがあります。経営者保証がついていると、経営者は会社が倒産や法人破産する際に残った借金の返済を引き継がなければなりません。
経営者保証をつけて融資を受けると、経営を家族へ事業承継したとき、借金も同時に引き継がせることになります。
家族が事業を受け継がなかったとしても、経営者保証がついている融資の返済中に経営者が死亡すると、会社の借金は家族が相続することになるのです。
中小企業の借金問題は、経営者の家族へも影響を与える可能性があることを知っておきましょう。
借金問題によって倒産した場合の影響については、こちらの記事も参考にしてください。
2章 中小企業が借金を検討する前に考えておくべきポイント
借金は、多くの企業が資金調達のために選んでいる手段です。しかし、借金することで逆に問題を抱えてしまうリスクも高いため、借金を申し込む前によく検討してから進めるべきでしょう。
ここでは、借金を検討する前に考えておきたい内容について解説します。
2-1 借入のメリットとリスクを比較しておく
借入を申し込む前に、借入することでどのようなメリットが得られるのか、一方でどんな問題が起こり得るのかを洗い出してきちんと理解しておきましょう。
例えば、中小企業が借入を行うことには次のようなメリットがあります。
- 運転資金を確保できる
- 長期的な投資を実現できる
- 金融機関との信用構築に役立つ
- 資金調達のコストを抑えられる
借入によって資金を確保できれば、事業拡大に向けて長期的な投資が可能になります。
それだけでなく、金融機関から融資を受けて順調に返済していけば、新たな融資を受ける際に良い判断材料になるでしょう。
さらに、低金利での借入ができれば、株式発行といった他の資金調達手段よりもかかるコストが少なくすむ可能性はあります。
一方で、借入のリスクには次の点があげられます。
- 毎月の返済で負担がかかる
- 借入金が多すぎると信用リスクが高まる
- 金利変動するリスクがある
- 資金繰りが悪化する可能性がある
返済には必ず負担が伴うため、そのリスクとメリットを頭に入れて借入するのが大切です。
2-2 借金以外の資金調達先を考える
借金を考える前に、返済しなくてもよい資金調達も利用できないか調べておきましょう。
国や地方の補助金や助成金は、提出書類や審査が必要ですが、ほとんどの場合で返済は必要ありません。また、株式発行やクラウドファンディングで資金を募るのも一つです。
また、早めにキャッシュが必要な場合は売掛金をファクタリング会社へ譲渡することで資金を得られるファクタリングを検討するのも良いでしょう。
2-3 無理なく返済できるように計画を立てる
借金には必ず返済の負担があります。「少し無理すれば返済できる」「あと少しで売上が伸びるはずだから返済可能だ」など余裕のない返済計画は立てるべきではありません。
自社にとって適切な借入金額を検討し、返済額や事業サイクルに応じた返済期間を考えて計画を立てる必要があります。
2-3-1 適正な借入額の目安
中小企業の適正な借入額は、業種や自己資金、設立からどのくらい期間が経っているかなどによって異なります。また、借入金の用途によっても目安は異なるため、一概には言えない面もあります。
例として、商品の仕入れや人件費などの運転資金を借入する場合の目安は、月商の3ヶ月分が目安と言われています。
また、設備資金などの場合は設備導入で見込まれる売上の3分の1程度といわれています。
資金計画や返済計画が甘ければ審査が通らなかったり、返済が苦しくなったりするため、あらかじめきちんと計算しておきましょう。
2-3-2 返済期間の決め方
運転資金の返済期間は通常5〜7年が一般的です。一方で設備資金については、10〜20年の範囲で設定されることが多いです。
返済期間が長ければ月々の返済額は少なくなるものの、その分利息がかかるため、総返済額は増加します。
返済期間を選ぶには、金融機関と相談のうえ、企業の収益性や資金繰りを考慮しながら考えなければなりません。
3章 中小企業が借金問題を抱えないためにできること
借金は、それに依存しすぎることさえなければ、資金調達として有効な方法です。
経営に負担をかけすぎず、有効に活用するには、どんな点に気をつけるべきか解説します。
3-1 資金繰りに余裕を持たせる
いざという時すぐ一括返済できるよう、資金繰りに余裕を持たせ、安全資金を確保しておきましょう。
資金繰りに余裕を持たせるには、運転資金や予想収益などを含め、資金の流れを明確にするのが大切です。資金の流れを正確に把握していれば、過剰な借入も防げます。
3-2 収益性を高めるよう経営改善をすすめる
借金して資金を調達したからには、顧客の多様化や新規市場の開拓を行い、収益向上を目指して改善していくことが大切です。収益が上がっていけば、返済も負担に感じにくくなっていくでしょう。
余分な支出を防ぐために、経費や固定費を見直すのも借金問題の防止につながります。
3-3 債務管理を徹底する
借入先の返済期日をはじめとした、借入金の管理を徹底しましょう。返済遅延を避けることで、金融機関や取引先との信用を積み重ねられます。
また、期日までの返済が難しいときにはすぐに対処できるよう、相談先を見つけておくことも大切です。
4章 借金問題が発生したときの対処方法
計画的に返済していたとしても、事業には予期せぬトラブルがつきものです。
借金問題が発生しないように気をつけるのはもちろんですが、もし起こった場合はいち早く対処する必要があります。
ここでは、借金問題の対処方法について詳しく解説します。事前に対処方法を知っていれば、借金問題が起こってもあせったり動揺しすぎることなく対応できるはずです。
4-1 金融機関に相談してリスケする
返済が難しいと判断したら、返済期日を迎える前であっても、融資を受けた金融機関へ早く相談することが大切です。
借金返済におけるリスケとは、返済が困難になった場合に金融機関と交渉し、返済条件を見直す手続きを指します。
返済額の減額や返済期間の延長を相談することで、資金繰りを改善して経済的な負担を軽減させる目的があります。ただし条件によっては、利息が増加して支払総額が増額する可能性がある点には注意しましょう。
4-2 事業再生ADRを検討する
事業再生ADR(Alternative Dipute Resolution)とは、過剰債務に悩む企業が、債権者との話し合いを通して事業再生を図る制度です。
債権者と債務者の交渉を通して返済条件を調整する私的整理である任意整理とは異なり、事業再生ADRでは経済産業大臣の認定を受けた専門家のもとで債権者と会社が話し合いをします。
メリットになるのは交渉が長引きにくいことや、取引先や他の融資先への信用情報に影響しない点です。
一方で、事業再生ADRの利用には債権者全員の同意が必要です。同意を得られない場合は利用できない点や、事業再生ADRを利用するのに次の条件を満たす必要があるのはデメリットになる点でしょう。
(1)過剰債務を主因として経営困難な状況に陥っており,自力による再生が困難であること。
(2)技術,ブランド,商圏,人材等の事業基盤を有し,その事業に収益性や将来性があるなど事業価値があり,重要な事業部門で営業利益を計上しているなど,債権者からの支援によって事業再生の可能性があること。
(3)会社更生,民事再生などの法的整理手続の申立てにより信用力が低下し,事業価値が著しく毀損されるなど,事業再生に支障が生じるおそれのあること。
(4)本手続による事業再生によって,債権者が破産手続によるよりも多い回収を見込める可能性があること。
(5)手続実施者選任予定者の意見及び助言に基づき,法令適合性,公正・妥当性及び経済的合理性があると認められる事業再生計画案の概要を策定する可能性があること。
引用:事業再生ADRについて 対象となる企業/一般社団法人事業再生実務家協会
利用するには、まず事業再生実務家協会に申請する必要があります。詳しくは事業再生実務家協会のホームページ内にあるコンテンツ「事業再生ADRについて」内メニュー「申請者向け書類」を参照してください。
4-3 専門家に相談して債務整理を検討する
資金繰りが厳しく、条件を見直しても返済が難しいならば、司法書士や弁護士に相談して債務整理を検討しましょう。
債務整理には専門家への相談料や着手金がかかる上、裁判所を介する場合は申立費用も必要です。費用が払えなければ手続きもできないので、資金が残っている間に相談できるよう、早めに相談を始めることが大切です。
4-2-1 任意整理
任意整理は債権者との話し合いを通して将来利息をカットする、分割期間を延長するなどの交渉を行う方法です。事業再生計画を策定し、内容に債権者の可決をもらえれば借金の減額が見込めるでしょう。
任意整理では取引先を含めずに進められるため、取引先との信用を保ちながら借金問題を解決できるのが大きなメリットといえます。
会社の任意整理について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
4-2-2 民事再生
民事再生とは、債務者が裁判所への申立てを通して再生計画案を提出し、債権者全員の同意を得た上で債務を減額して事業再建を目指す手続きです。
任意整理とは異なり、融資を受けた金融機関以外に仕入先などの買掛債権がある取引先もすべて債権者として対象になります。
民事再生では手続き自体が複雑な上、減免された債務が課税対象になる可能性があるなど税務上でも手続きが必要です。そのため、必ず専門家と相談した上で進める必要があります。
民事再生について詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてください。
4-2-3 会社更生
会社更生は、経営破綻に陥った事業が倒産せずそのまま事業継続しながら再建を図る方法です。
裁判所へ会社更生手続きの開始を申立てた後、裁判所が選任した更正管財人が中心になって更生計画を立てます。
事業を継続しながら更生計画を実行していくため、従業員の雇用は維持できますが、経営陣は全員退任しなければならない可能性があります。
手続きが複雑なうえ時間がかかり、費用が高額であることから、会社更正は一般的に大企業が利用します。中小企業の場合は、民事再生を利用するケースがほとんどです。
4-2-4 法人破産
借金が返済できず経営が破綻した場合は、法人破産することになります。
法人破産は裁判所の関与のもとで資産を処分し、債権者に対して可能な範囲で配当を行う手続きです。
法人破産手続きが完了すると、残った借金は免責になりますが、法人格も消滅します。ただし経営者が借金の連帯保証人になっている場合には、債務は経営者に移行するため、個人の債務整理も同時に行わなければならない可能性が高いでしょう。
まとめ
中小企業が事業成長のために借金するのは日本では一般的だと言えます。しかし、申し込む前に資金計画や返済計画をよく練っておかなければ、急な経営悪化によって借金問題に陥る可能性はゼロではありません。
借金問題が起こらないように日頃から余裕をもった資金繰りを心がけ、債務管理を徹底するとともに、問題が起こったらすぐに相談できる体制を作っておくことが大切です。
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