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借金がある親が亡くなった場合、その借金は相続人である配偶者や子などに引き継がれますが、債務整理中に死亡したときはどうなるのでしょう。
亡くなるまでは親が借金を返済していたのに、他界したことで借金を引き継ぐことになり、遺産で全額賄うことができなければ相続人自身の財産から支払うことになってしまいます。
そこで、債務整理中にたとえば親などが死亡した場合、その返済義務や相続との関係について次の4つを章ごと解説していきます。
- 借金も相続の対象
- 借金を引き継がないケース
- 家族が債務整理中に死亡したときの2つの対処法
- 後で借金が発覚した場合の対処法
債務整理中で借金を抱えた状態の方が亡くなった場合の対応について、借金を含めた財産を相続するのか放棄するのか決める参考にしてください。
目次 ▼
1章 借金も相続の対象
債務者が死亡したとき、債務者が所有していた権利や義務はすべて相続人に受け継がれます。
したがって、「借金」を返済中の方が亡くなった場合、その方の借金も「マイナスの財産」として相続の対象となるため、債務整理中など完済前の借金がある方が亡くなればその相続人が「支払義務」を負います。
たとえば父が借金や買掛金、未払い金などマイナスの財産が残った状態で亡くなったとき、相続人である妻や子が何もしなければ、原則として借金も相続することになります。
借金を相続した妻や子は、父の債権者に対する借金返済の義務を負うことになり、法定相続分の債務をそれぞれの相続人が返済しなければなりません。
「遺言」や「遺産分割協議書」がある場合には、そこで定められた割合に応じて返済義務を負います。
法定相続分とは、被相続人(故人)の財産を相続する相続人の取り分として法律上定められている割合です。
子・直系尊属(祖父母など)・兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いる場合には、原則として均等に分けます。
- 配偶者と子が相続人 配偶者2分の1・子(全員で)2分の1
- 配偶者と直系尊属が相続人 配偶者3分の2・直系尊属(全員で)3分の1
- 配偶者と兄弟姉妹が相続人 配偶者4分の3・兄弟姉妹(全員で)4分の
遺産分割協議とは、被相続人(故人)の財産を相続人でどのように分けるか話し合うことです。
2章 借金を引き継がないケース
借金も相続財産に含まれるため、家を購入するときに組んだ「住宅ローン」の名義が被相続人であれば、その借金も相続の対象です。
ただし、住宅ローンで「団体信用生命保険」に加入している場合には、ローン名義の方が亡くなっても借金は相続人に引き継がれません。
団体信用生命保険とは、
- 保険契約者および保険金受取人…債権者(銀行)
- 被保険者…住宅ローン利用者
とする保険契約であり、住宅ローン利用者が死亡または所定の高度障害状態になった場合には、生命保険会社が債務残高相当分の保険金が返済に充当される保険です。
そのため住宅ローンを残したまま亡くなっても、その借金は相続人に引き継がれることはなく、家は相続人に引き継がれます。
多くの金融機関では、住宅ローンを契約する際に団体信用生命保険やその代わりとして活用できる保険に加入することを要件としているため、住宅ローン返済中の方が亡くなった場合には保険加入の有無を確認してみるとよいでしょう。
3章 家族が債務整理中に死亡したときの2つの対処法
債務整理中の家族が亡くなったとき、残された相続人はマイナスの財産を引き継いで借金を返済するか、それとも返済義務を免れるか選ぶことになります。
どのくらいの借金が残っているかにもよりますが、債務整理中の家族が亡くなったときの次の2つの対処法について説明していきます。
- 借金を返済する
- 相続放棄する
2つのうちいずれかを選んだあとは撤回できないため、慎重に判断する材料にしてください。
3-1 借金を返済する
債務整理中の家族が亡くなった後、マイナスの財産も引き継いで借金を返済することを選ぶなら、次の2つの方法のうちいずれか選択することになります。
- 単純承認で全額返済する
- 限定承認でプラスの財産から返済する
それぞれどのような方法か説明していきます。
単純承認で全額返済する
「単純承認」とは、被相続人の相続財産を「無条件」で相続することです。
そのため単純承認を選べば、被相続人の借金は「全額」引き継ぐこととなり、返済することになります。
特に何も手続しなければ「自動的」に単純承認を選んだことになりますが、借金を支払うつもりがなくても次の行為があれば単純承認したとみなされます。
- 相続人が相続開始を知ってから3か月以内に相続放棄または限定承認の手続をしなかった場合
- 相続人が相続財産のすべてまたは一部を処分した場合
- 相続人が相続財産のすべてまたは一部を消費や悪意を理由に相続財産目録に記載しなかった場合
被相続人名義の預貯金を解約・払戻しして使い込んだ場合や、被相続人名義の不動産・自動車を自分の名義へ変更した場合など含まれます。
残された借金を全額支払いたくないときには、相続財産を使い込んだり処分したりすることは避けてください。
限定承認でプラスの財産から返済する
「限定承認」とは、被相続人のプラスの財産の「範囲」で、マイナスの財産を相続することです。
相続を行うときに、プラスの財産・マイナスの財産がそれぞれどれくらい残されているのかわからない場合があります。
借金もあるけれど、手放したくない家などプラスの財産なども多く遺されている場合、限定承認を選んでおけば安心です。
限定承認を選ぶ場合、相続開始を知ってから「3か月以内」に、相続人全員が共同で家庭裁判所に限定承認する旨を「申述」します。
書類提出や相続財産管理など、相続人全員で協力しなければならないことが多く手続も煩雑ですが、残したい一定の財産があるときには限定承認という方法も選ぶことができます。
3-2 相続放棄する
「相続放棄」とは、相続財産に対する相続権を手放すことです。
被相続人の相続財産が借金だけの場合や、借金があまりにも多くプラスの財産ではとても賄いきれないという場合、相続放棄を選べば借金の返済義務から免れます。
相続放棄した場合、もともと相続人ではなかったとされるため、孫などに引き継ぐ「代襲相続」も発生しません。
代襲相続とは、本来相続人だった子や兄弟姉妹がすでに死亡していた場合、その者の子が代わりに相続することです。
相続放棄を選ぶ場合には相続開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所で申述書など提出しますが、手続すると相続人ではなかったことになるため、プラスとマイナスどちらの相続財産も相続しません。
4章 後で借金が発覚した場合の対処法
親が債務整理で手続していたことを知らず、実際に亡くなってからその事実を知ったというケースなど、亡くなった後で借金が発覚した場合はどうすればよいのか悩んでしまうものでしょう。
特に親が債務整理を「専門家」に依頼して手続していた場合、その方が亡くなった後に専門家からわざわざ相続人に連絡し、債務整理していた事実を伝えることは「守秘義務」の関係上難しいからです。
そのため被相続人から借金があることを知らされていなかった場合、亡くなって数か月後に借金の存在を知ることもあるかもしれません。
ただ、次の2つのケースでは相続放棄の期限である「3か月」を超えていても手続できると考えられます。
- 相続財産がまったくないと信じて相続放棄しなかった場合
- 相続財産があることは認識していたものの、多額の借金まで認識していなかった場合
相続放棄できるか判断するには、過去の判例で示された要件など満たしているかなど、専門的な知識や経験などが求められます。
もしも亡くなった方に借金があったことを知らず、後で借金の存在が確認できた場合などは、専門家に相談したほうが得策といえるでしょう。
まとめ
借金も相続の対象となるため、家族が債務整理中に亡くなったときには、その借金を引き継いで支払うか、相続放棄するか選ぶことになります。
債務整理中で借金を抱えた状態の方が亡くなったときには、借金だけでなくプラスの財産の有無で、選択肢は変わってくることでしょう。
親が債務整理で手続していたことを知らず、亡くなってからその事実を知った場合でも、相続放棄できる場合はあります。
ただしこの場合には、専門的な知識などが必要となるため、グリーン司法書士法人グループへ一度ご相談いただければと思います。
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よくあるご質問
- 借金のある人が亡くなるとどうなる?
- 借金も相続財産の対象に含まれるので、財産を受け継いだ家族や親族が借金の返済義務も負います。
借金の相続について詳しくはコチラ
- 債務整理中の人が死亡したときの家族の対処法とは?
- 債務整理中の人が死亡したとき、家族は下記の対処を検討しましょう。
・借金を返済する
・相続放棄する
債務整理中の人が死亡したときの対処法について詳しくはコチラ