従業員の給料が遅れる場合の対処法は?個人経営の資金調達方法を解説

   司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

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従業員の給料が遅れる場合の対処法は?個人経営の資金調達方法を解説

この記事は約 13 分で読めます。

「今月もしかしたら従業員の給料が払えないかも…」

この記事に辿り着いた個人経営者の方は、経営難や資金繰りの難航などの理由から、従業員の給料を捻出できずにお困りかと思います。

給料を支払えないということは、他の債務の支払いで苦しんでいるケースが多いですが、給料の支払いは債務の中でも優先度が高い項目です。

従業員の給料が払えずに遅れてしまうのは、労働基準法の違反に該当する行為にあたるため、よほどのことがない限りは遅らせてはいけないものであることを覚えておきましょう。

この記事では、個人経営で従業員の給料が遅れる場合の対処法について解説していきます。どうしても支払えないときの対応もご紹介するので、お困りの方はご参考にしてください。

1章 従業員の給料が遅れるのは労働基準法の違反に!

テレビやネットのニュースなどでも「従業員の給料の未払い」は経営において話題になりがちですが、当然ながら払えないからといって遅れてもいいわけではありません。

従業員の給料が遅れるのは、労働基準法の違反になるので注意が必要です。

個人経営となると、従業員も気心の知れた相手であるケースも少なくないでしょう。

そのため「長年一緒にやってきたし、ちゃんと理由を話せば納得してくれるだろう」と、つい相手に甘えてしまう気持ちになるかもしれません。

しかし、給料が遅れるということは、労働基準法の違反になるだけではなく、労働基準監督署などの介入や従業員の訴訟リスクも出てきます。

今できることは全てやって、できる限り給料を遅らせることがないように努めましょう。

1-1 給料が遅れると罰金や遅延損害金の対象になる

給料が遅れてしまった場合、罰金や遅延損害金の対象になります。

労働基準法120条には「賃金の支払いに関する規定に違反した場合は30万円以下の罰金」と定められており、経営難に陥っているなかで罰金を支払う必要があるのです。

労働基準法の違反は罰金が発生することから、刑事罰に該当します。給料の未払いが悪質と見なされた場合は逮捕される可能性もあるので注意しましょう。

例え、地震など避けようがない天災が原因で給料が遅れたとしても、働いた分の給料の支払い義務があるので注意しましょう。給料が遅れるペナルティはそれほど効力が強いということです。

加えて、給料の未払いや不足分に対して3%の遅延損害金を追加で支払う必要があります。給料が遅れた分だけ支払う額が増えていくためより経営がきつくなるでしょう。

2章 個人経営で給料が遅れる場合の対処法

給料が遅れる前から、経営難に陥っていて慢性的に滞納しているというケースも多いでしょう。

給料が遅れると、従業員の信用を失うだけではなく多くのデメリットがあります。

払えないからといって「今月待ってもらえないか」とお願いするわけにはいきません。

給料が遅れるかもしれないと分かった時点で、まずは給料を払うための資金の確保に動きましょう。

この章では、個人経営で給料が遅れる場合の対処法について解説していきます。

2-1 銀行や役所に支払いを待ってもらうよう交渉する

銀行からの借入れや各所への支払いがあり、給料が遅れそうなときは、支払計画の見直しをして支払いを待ってもらえないか交渉しましょう。

支払計画の見直しは、給料の支払いの優先度を知ることが大切です。

従業員の給料の支払いは、金融機関での借入れやオフィスの光熱費の支払いよりも優先度が高いのです。

未払いが続いてしまうと労働基準法の違反となり、罰金や悪質な場合逮捕される可能性があるため、まずは優先して給料の支払い分を確保しておきましょう。

このことを踏まえると、給料よりも低い優先度である金融機関での借り入れや光熱費の支払いを待ってもらって、その支払い分を給料に充てられるように交渉が可能です。

当然、金融機関での借り入れも光熱費もそのまま放置しておくと企業の存続にも関わってしまうので、支払い目処が立っていることを伝えるようにしましょう。

2-2 給料分のお金を借り入れする

金融機関や光熱費の支払いの延長を交渉しても断られるという状況の場合、給料分のお金を借り入れして給料を支払うのも方法の一つです。

お金を借り入れすることによって債務が増えてしまいますが、給料が遅れるわけにはいきません。まずは、給料が未払い状態になるのを防ぎましょう。

2-3 ファクタリングを利用する

企業から売掛金が入る予定だが、今手持ちのお金がないという場合は、ファクタリングを利用する方法もあります。

ファクタリングとは、事業者の売掛債権を買い取って債権回収を行う金融サービスで、事業者の資金調達方法の一つです。法的には債権の売買(債権譲渡)契約と呼ばれています。

手数料は引かれますが、すぐに現金が欲しいときに有効な手段です。

しかし、基本的に個人経営では利用が難しく、対企業で売上が多ければ可能性として考えられる程度の期待値です。

また、金融庁ではファクタリングを装って、高金利の貸付けを行う闇金業者の注意喚起もされています。なんとか資金調達をしようと、焦ってしまい詐欺に引っかからないよう注意しましょう。

3章 個人経営でどうしても給料が遅れるときの従業員への対応

さまざまな資金調達を試みたものの、どうしても給料が遅れてしまうという場合は、早い段階で正直に従業員に遅れることを伝える必要があります。

従業員に指摘されるまでしらばっくれたり開き直ったりするのでは、余計に信用を失いかねません。

個人経営で、例え従業員が家族や気心の知れた相手だったとしても適切な対応が必要です。

この章では、個人経営でどうしても給料が遅れるときの従業員への対応についてご紹介いたします。

3-1 代表者が正直に経営状況を説明する

まずは、代表者の口から、従業員に正直に経営状況を説明しましょう。

個人経営ということは、そこまで規模的に大きくないケースが多く、薄々察している従業員も多いと思います。ですが、代表者である以上は、従業員になぜ給料が遅れるのかを納得してもらわなければいけません。

当然、従業員も生活があるので厳しい言葉や質問を投げかけられる可能性も考えられます。

代表者にとって辛い時間になりますが、遅れた時点で労働基準法に違反している状況だということを念頭に置いて真摯に対応しましょう。

3-2 いつまでに支払いできるのかを説明する

従業員に渋々でも納得してもらったとはいえ、無い袖は振れないからと、いつまでも給料を未払いにしておくわけにはいきません。

従業員としては、1日でも早く給料が手元に振り込まれないと不安で仕方がないことでしょう。

現時点で払えない場合は、経営状況と合わせていつまでに支払いできるのかを説明する必要があります。

「この状況が落ち着いたら払う」では、従業員も今後の給料も踏み倒されるのではないかと働くに働けません。いつ頃に支払いの目処が立つのかを明確にして、少しでも安心させることが大切です。

この時点で、今後も支払いの目処が立たずどうしようもない状況に陥っていることもあるかと思います。

未払いの給料が膨らむ前に、早い段階で破産や廃業の手続きを進めることも視野に入れましょう。

3-3 給料の一部を支払う

「満額は捻出できなかったけれど、少額であればお金をなんとかかき集められた」という場合は、給料の一部を支払うのも手です。

例え、普段の給料の半分以下だったとしても、なんとか支払う気があることを見せることができるので、心境としては納得してもらいやすくなるでしょう。

従業員側からしても、一銭も入ってこないよりはマシだと考える方も多いかと思いますが、もちろんその優しさに甘えてはいけません。

今のうちに融資元を探し回るか、会社を畳むことも視野に入れて動きましょう。

4章 未払いが続くと従業員から訴訟を起こされる可能性もある

給料の未払いが続いている状態だと、従業員は給料が手元に入らないため、その間は貯金を切り崩すか副業をして生活費を捻出しなければいけません。

そもそも、給料が入ってこないということは「今までの時間はタダ働き」ということになるので、このまま黙って泣き寝入りする方はほとんどいないでしょう。

そうなると、やがて従業員から訴訟を起こされる可能性が出てきます。訴訟になると、相手の弁護士や裁判所を通して争わなければいけません。

訴訟は、正社員だけでなく契約社員やアルバイトなど雇用形態に関係なく起こせるので、給料未払いになっている全従業員が訴訟する可能性があるということを念頭に置きましょう。

4-1 敗訴した場合は個人資産が差し押さえられる

個人経営においては、給与未払いで敗訴すると、個人資産が差し押さえられる可能性があります。

というのも、個人経営では、事業主の個人資産と経営が切り離されていないので、経営上発生した未払い給与でも直接事業主個人に請求することができるからです。

給与明細書やタイムカードなど証拠があれば、まず敗訴する可能性が高いでしょう。

さらに、給料未払いの期間がある場合は、遅延損害金として利息を付けて請求することが可能です。

遅延損害金は、下記の割合で請求できるため、未払いの期間が長ければ長いほど支払い額が増えていくので注意しましょう。

  • 会社に在席しているとき:支払日翌日から年6%
  • 会社を退職してから:支払日翌日から年14.6%

敗訴すると、給料の支払いはもちろん、遅延損害金や裁判にかかった費用も支払う必要があります。

払えない場合は個人資産の差押えに発展するため、訴訟を起こされる前に給料を払い切ることをおすすめします。

5章 給料が払えない場合に検討すべきこと

給料が払えない状態が続くのは、経営者にとっても従業員にとってもデメリットしかありません。

今後も状況が好転することなく、給料が払える見込みがないのであれば、事業の廃業を視野に入れなくてはいけません。

例えば、従業員10人の小規模のお店を経営していて、従業員の給料がサラリーマンの平均月収である36万円だったとします。1ヶ月間未払いにしたら、単純計算で360万円もの支払いをしなくてはいけません。

3ヶ月滞納を続けると、給料だけで1,000万円以上の支払いになります。これに他の債務の支払いが加わることを考えると、到底支払いができない経営者も多いのではないでしょうか。

給料が払えない状態というのは、ほとんど経営破綻に近い状態です。ぜひ、早い段階で今後のことを考えておきましょう。

この章では、給料が払えない場合に検討すべき会社の手続きをご紹介いたします。

5-1 廃業

廃業は、事業をやめる手続きのことです。

経営が成り立っているけれど、後継者不足や経営者の定年退職などで、自主的に事業をやめるケースがあるのが廃業の特徴ですが、もちろん、資金繰りや経営の悪化で廃業を選ぶ方も多くいます。

廃業時には、未払賃金も含めて債務がある場合には清算します。

もし、債務超過で経営用の資産でも賄えないときは、個人資産から支弁しないといけません。

個人経営の場合は、経営者個人の資産が責任財産となるためです。個人資産でも支払いができない場合は、経営者個人の破産手続きが必要となります。

5-2 休業

休業は、会社の経営を休むことです。

例えば、会社の業績不振や設備の不具合、災害などの理由で働くことができないケースや、従業員が足りずに仕事ができない場合は、休業に該当します。 

仕入れによる原材料の高騰など、営業を続けることによって債務が膨らんでしまう場合は、休業を選択して戦略を練り直すのも有効的です。

ただし、災害以外での会社都合による休業の場合は、労働基準法により平均賃金の60%以上の休業手当を従業員に支払う必要があるので支払えない場合は他の選択肢を選びましょう。

5-3 任意整理

任意整理は、直接債権者と交渉して債務を減額させる手続きのことです。

個人経営での任意整理は、借り入れをしている金融機関との交渉だけではなく、従業員との交渉がメインになるケースが多いです。

任意整理によって、給料の分割払いなどの交渉を行なっていきます。

もちろん、他で借り入れしている場合は、金融機関とのリスケジュールによって減額した分を給料として支払うことも可能です。

経営を立て直せる見込みがあれば、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

5-4 民事再生

民事再生は、民事再生法に基づく法的手続きのことです。

民事再生では、債権者や裁判所の同意のもとで、債務を減額して債権者に返済していきます。

経営を続けながら債務を返済することができるので、再建しやすいのがメリットです。

民事再生をすると「従業員の給料もカットになるのでは」と思うかもしれませんが、従業員の給料は「労働債権」にあたるので、再生手続きに関係なく優先して支払わなければいけません。

ただし、税金や社会保険料などは従業員の給料よりも優先されるので注意しましょう。

5-5 破産

破産は、全ての債務が消滅する法的手続きのことです。

債務超過や支払不能に陥って破産になると、従業員には解雇予告手当を支払います。その後は給料、退職金の順に支払いを行いましょう。

給料は、民事再生でも解説した通り、優先して支払う必要があります。

しかし、そうは言っても破産を選択した以上、従業員に給料を払う余力が残っていないケースも多いでしょう。

その場合は、政府が会社に代わり、未払いの給料を立て替えて支払ってくれる「未払賃金立替払制度」を従業員に利用してもらうことになります。

未払賃金立替払制度は、未払いになっている給料と退職金のみ対象となります。

6章 給料が遅れるのは絶対にNG!支払いの優先順位を見直そう

従業員への給料の支払いは、なんとなく優先度が低いように思う方も少なくありませんが、他の債務や家賃、光熱費と比較して優先度が高い項目になります。

給料の未払いが続くと労働基準法の違反となり、刑事罰の対象となり30万円以下の罰金が課せられる可能性があります。

また、従業員に訴訟を起こされると、給料だけではなく裁判費用や遅延損害金も支払う必要があるため、これ以上債務を増やさないためにも給料は絶対に遅らせないようにしましょう。

経営難に陥っている場合は、まずは支払いの優先順位を見直して、早めの対策を取ることが大切です。

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よくあるご質問

給料の支払いが遅れるとどうなるの?
給料が遅れてしまった場合、罰金や遅延損害金の対象になります。
労働基準法120条には「賃金の支払いに関する規定に違反した場合は30万円以下の罰金」と定められており、経営難に陥っているなかで罰金を支払う必要があるのです。
給料の支払いが遅れたときの対処法について詳しくはコチラ
給料の支払いが遅れそうなときの対処法は?
給料の支払いが遅れそうなときの対処法は、下記の通りです。
・代表者が正直に経営状況を説明する
・いつまでに支払いできるのかを説明する
・給料の一部を支払う
給料の支払いが遅れそうなときについて詳しくはコチラ
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