法人破産の手続きにかかる費用は?破産するお金がない場合の対処法

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

借金返済の知識
法人破産の手続きにかかる費用は?破産するお金がない場合の対処法

この記事は約 9 分で読めます。

資金繰りが厳しくなったり、債務超過によって事業を断念しなくてはいけない事態に陥った場合、破産手続きを取る必要があります。

法人破産の手続きは事務所や負債規模によっても異なりますが、数十万円〜数百万円もの費用がかかります。そのため、完全に会社の資金が底を尽きる前に手続きを取るようにしましょう。

この記事では、法人破産の手続きにかかる費用について解説いたします。また、法人破産する費用がない場合の対処法についても解説するので、法人破産の費用の捻出に困っている方はぜひご参考にしてください。

1章 法人破産とは?

法人破産とは

破産は、自己破産は、個人だけでなく会社も行うことができます。会社が行う破産を特に法人破産と呼んでいます。

法人破産をすると、会社の資産をすべてお金に換えて債権者に配当していきます。この手続きの終了とともに法人は消滅します。法人が消滅することで、債務も同時に消滅するということになります。

会社が消えるということは当然事業は続けられないため、従業員は全員解雇とされるため別の仕事をしなくてはいけません。

2章 法人破産の手続きにかかる費用

資金繰りや債務超過の影響によって経営が続けられないと判断した場合に、法人破産が有効的です。

法人破産の手続きにかかる費用は「予納金」「申立手数料」「専門家への費用」の3種類に分けられます。
それぞれの相場は、下記の通りです。

この3種類の費用は、法人破産の手続きを行うのに必ずかかる費用なため、準備しておきましょう。

2-1 予納金

予納金とは、破産管財人に対しての費用です。

破産管財人とは、裁判所が選任した会社の資産の調査や管理を行う人のことで、会社の資産を換価して金銭を債権者に配当する役割をします。

例えば、東京地方裁判所で破産手続きを行う場合の予納金は以下のようになっています。

負債額予納金額
〜5,000万円700,000円
5,000万円〜1億円800,000円
1億円〜5億円1,500,000円
5億円〜10億円2,500,000円
10億円〜50億円4,000,000円
50億円〜100億円5,000,000円
100億円〜7,000,000円

予納金は、負債額によっても異なりますが、最低でも70万円、高額になると数百万もの金額がかかることが分かります。

この手続きをしなければ破産ができないため、予納金をあらかじめ確保しておく必要があります。

ただし、弁護士が代理人であることや債権者数が限定的であること、法人破産手続きを3ヶ月で終えられる見込みがあることなどの条件によっては少額管財事件が適用される場合もあります。

少額管財事件になると予納金は20万円で済むため、まずは専門家に相談してみましょう。

2-2 申立手数料

申立手数料とは、破産の申し立てをするのに必要な手数料です。

申立印紙代と官報公告予納金が裁判所に支払うもので、以下の手数料がかかります。

  • 申立印紙代:1,000円
  • 官報公告予納金:13,000円~15,000円

他にも、予納郵券と債権者宛封筒がかかります。予納郵券とは裁判所にあらかじめ納める郵便切手のことです。

債権者1人に対して5,000円〜6,000円程度かかり、債権者が1人増えるごとに追加で2,000円前後かかります。そのため、債権者が多い場合は高額になってくるので注意しましょう。

2-3 専門家への費用

法人破産の手続きを専門家に依頼する場合、専門家の事務所や債権者の数によっても異なりますが、30万円〜150万円程度かかります。

この費用は、あらかじめ支払う必要のある着手金や、事務処理に必要な交通費、遠方宿泊費などの実費などが含まれています。

また、債権者の数が多ければ多いほど金額が高額になるため、債権者の数によっては相場よりも高額になる可能性も高くなります。

そのため、債権者の数が多い場合は注意しましょう。

3章 法人破産の費用の合計は数十万円〜数百万円と幅広い

2章の法人破産の手続きにかかる費用を踏まえると、法人破産の手続きをするためには数十万円〜数百万円もの費用がかかることが分かったかと思います。

なぜ破産手続きにここまでの差があるかというと、金額は会社の大きさや負債規模によって大きく変動するからです。

少額管財事件に該当した場合は予納金は20万円で済みますが、30億円の負債をつくった場合は400万円もの予納金を支払う必要があります。

負債額が大きければ大きいほどその分債権者の数も増えてくるでしょう。債権者の数が増えると、その分手続きも増えていくため更に費用が嵩むのです。

そのため、負債額が多い場合や債権者数が多い場合は、より法人破産にかかる手続きの費用を多めに確保しておく必要があります。

4章 法人破産する費用がない場合の対処法

ケースによっては、法人破産にかかる手続きの費用を数百万用意しなくてはいけないため、会社によっては「もうそんな金額を払う余力も残っていない」という場合もあるかと思います。

破産手続きをしたくても、費用がなくて破産できない場合は、

  1. 費用を積立てる
  2. 費用を抑える
  3. 分割払いで支払う

の3つの選択肢を検討しましょう。

この章では、この3つの選択肢について詳しく解説していきます。

4-1 廃業させて費用を積立てる

「会社を続ければ続けるほど、負債額が膨れ上がって費用を捻出することができない」というケースであれば、会社を廃業させて人件費やランニングコストを抑えるようにしましょう。

廃業は債務を消滅させることはできないため、会社に借金を残すことになりますが、経費を抑えることができるため、その間に残っている売掛金の回収を行うことで、破産の費用を積み立てやすくなります。

ただし、廃業の手続きにも費用がかかるため、破産費用に加えて廃業も余分にかかってしまうことになります。

廃業手続きは、破産手続きよりも少額で行えるため、破産費用が高額な場合の積立てとして利用するのが良いでしょう。

4-2 法テラスの法律扶助を使う

法テラスとは、トラブルを相談できる無料法律相談所です。

条件を満たすことで無料で弁護士へ依頼ができるため、弁護士費用を抑えることができますが、法人で法テラスの利用をすることはできません。

では、法人破産で何に利用するのかというと、経営者が連帯保証人になっている場合です。会社の融資を受ける際に担保として経営者が連帯保証人になるケースがあります。

会社が受ける融資は非常に高額なことから、会社が破産した場合、連帯保証をしていた経営者も連鎖的に破産となる可能性が非常に高いです。

そのため、もし経営者が会社の残っている債務を払えない場合は、自己破産する必要が出てきます。その場合は個人で破産するため法テラスが有効的といえます。

個人破産も検討しているのであれば、法テラスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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4-3 分割払いの相談をする

法人破産の手続き費用の中でも、予納金と専門家への費用が特に高額になる費用です。

予納金は分割払いをすることができないため、もし費用が高額で一括で払えない場合は、専門家に分割払いの相談をしてみましょう。

専門家への費用は頭金が必要なことが一般的です。そのため、頭金が用意できずに依頼できないケースもあるかと思います。

できるだけ一度にかかる破産費用を抑えるには、専門家に正直にお金がなくて一括で払えないことを伝えておきましょう。

ただし、払えないからと言って値下げ交渉をすると依頼を断られてしまうケースもあるため、分割で払えないかを相談するのが良いです。

交渉次第で頭金なしで対応してくれる場合もあるので、まずは会社の状況を伝えて対応が可能かどうかを確認しましょう。

ただし、分割払いを認められて返済している間に、会社の財務状況に大きな変化が生じる可能性があることも忘れてはいけません。

場合によっては、支払いが厳しくなるケースも考えられるため、申し立てをサポートしてくれる専門家に定期的に確認をする必要があるので注意しましょう。

5章 自力で申し立てをするのはおすすめしない

会社の破産手続きは自分で行うのは禁止ではありません。しかし、法人破産の費用を抑えたいからと言って、自力で破産手続きを進めるのは絶対におすすめしません。

破産手続きを自分で行うとなると、書類や資料を準備しないといけなかったり多数の債権者への連絡を自ら行わなければいけなくなります。

また、専門的な知識についても自力で調べないといけないなど、専門家に依頼すればスムーズなことを時間をかけて行う必要があります。

中には、債務が返ってこないと知って感情的になる債権者とのやり取りが生まれる可能性もあるでしょう。

このような、別の労力やストレスを受けることを踏まえると、費用を抑えたいからと言って自力で進めるのはおすすめできません。

6章 法人破産は費用がかかる!早めの相談が大切

法人破産は、個人の自己破産と異なり多額の費用がかかります。

一切お金が払えなくなった状態で破産手続きを考えたとしても、費用が払えずに困ってしまうケースは少なくありません。

もし費用が払えない場合は、会社の所有物件を任意売却するのもおすすめです。物件を売ることによって破産手続きの費用をつくることができるので、こちらも検討してみてはいかがでしょうか。

会社の規模や債権者数によっては、想定していた金額よりも上回った金額になる可能性も考えられます。

駆け込みで破産手続きするのではなく、できるだけ早い段階で何社かの専門家に相談して、費用の比較を行ってから依頼する余裕を持つようにしましょう。

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よくあるご質問

法人破産にかかる費用は?
法人破産にかかる費用は①予納金、②申立手数料、③専門家への費用です。予納金は負債額によって異なり、申立手数料は1万5,000円程度かかります。専門家への費用は30~150万円程度かかることが多いです。
法人破産にかかる費用について詳しくはコチラ
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