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- 債務整理をキャンセルできるタイミング
- 債務整理をキャンセルするリスク
- 債務整理をキャンセルした後の対処法
「弁護士・司法書士に依頼した後でも債務整理はキャンセルできるの?」
「債務整理を途中でキャンセルしたら支払った費用はどうなる?」
こんな疑問を抱えていませんか。自己破産や個人再生、任意整理は手続きの途中でもタイミング次第ではキャンセル可能です。しかし、弁護士・司法書士に依頼して債権者からの連絡が来なくなっている場合、キャンセル後に不利益を被る恐れがあります。
本記事では、債務整理をキャンセルできるタイミングや、キャンセル後の影響、適切な対処法について詳しく解説します。手続きをやめるべきか迷っている方は、判断する際にお役立てください。
目次 ▼
1章 債務整理はキャンセルできる?種類ごとに取り消せるタイミングを解説
債務整理の相談や手続きを進めるなかで、信用情報への影響や費用を考慮してキャンセルを検討している人もいるのではないでしょうか。結論から言うと、タイミング次第では債務整理を途中でやめられます。
しかし、債務整理の種類によってキャンセルできるタイミングが異なるため、進行状況によってはキャンセルできない恐れもあります。ここでは任意整理、個人再生、自己破産のそれぞれの債務整理方法について、取り消せるタイミングを見ていきましょう。
1-1 任意整理
- 和解成立前:いつでもキャンセルできる
- 和解成立後:キャンセルできない
任意整理は、債権者と利息や遅延損害金のカットを交渉し、3年〜5年をかけて完済を目指す債務整理方法です。弁護士・司法書士への相談中でも、交渉成立前であればいつでも取り消せます。そのため、相談段階はもちろん、弁護士・司法書士に依頼して交渉が始まっていても、和解が成立していない場合はキャンセル可能です。相談段階では連絡不要、依頼済なら電話や対面、郵便などでキャンセルを伝えてください。
任意整理はほかの債務整理方法よりも柔軟にキャンセルしやすい一方で、債権者との和解契約を結んだ後は基本的にキャンセルできません。新たな返済条件にしたがって、コツコツお金を返していく必要があります。
もし返済が難しくなったことが原因でキャンセルを考えていたのであれば、個人再生や自己破産といった別の債務整理方法を検討するか、弁護士・司法書士に再交渉を依頼しましょう。
1-2 個人再生
- 手続きの開始決定前:基本的にキャンセルできる
- 手続きの開始決定後:原則としてキャンセルできない
個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に減額し、原則3年(最長5年)で完済を目指す債務整理方法です。弁護士・司法書士に依頼をした段階、または裁判所に申し立てる前の段階なら、電話や対面などで依頼の取り消しを伝えればキャンセルが可能です。さらに裁判所への申立て後でも、手続き開始が決まる前なら、裁判所に取り下げの申立てを行うことでキャンセルできます。
一方で、手続きの開始決定が下された後は、原則としてキャンセルが認められません。また、再生計画案を提出して裁判所が認可決定を出すと、借金の減額が正式に決定するため、個人再生は取り消せなくなります。
なお、裁判所への申立てから手続きの開始決定までの所要期間は1ヶ月程度です。そのため、申立て後にキャンセルを検討しているなら、早めに弁護士・司法書士に相談し、適切な手続きを進めましょう。
1-3 自己破産
- 手続きの開始決定前:基本的にキャンセルできる
- 手続きの開始決定後:原則としてキャンセルできない
自己破産は、裁判所に申立てを行い、免責が認められれば借金の返済義務がなくなる債務整理方法です。弁護士・司法書士に依頼した後でも、申立て前であれば依頼を取り消すだけで手続きを止められます。また、裁判所に申し立てた後でも、手続きの開始決定が下りる前なら取り下げ手続きをすることでキャンセルできます。
しかし、裁判所が手続開始決定を下した後は、キャンセルが困難です。破産手続きには同時廃止事件と管財事件の2種類がありますが、特に管財事件となった場合は、裁判所の許可がなければキャンセルできません。 管財事件では破産管財人が財産の調査・管理を行うため、自分の意思では申立てを取り下げられなくなるのです。なお、同時廃止事件の場合には、開始と同時に終了するので、取り下げる余地がありません。
また、管財事件となる場合は裁判所への申立てから手続き開始決定までの期間は1か月です。申立て後でも期間内なら取り下げられる可能性が高いため、キャンセルを考えている場合は迅速に対応しましょう。
2章 債務整理をキャンセルしたい理由とその対処法
債務整理を進めるなかで、「やっぱりキャンセルしたい」と考える方も少なくありません。その理由はさまざまですが、以下のような点を気にするケースが大半です。
- 家族や職場にバレたくない
- 費用が高い
- ブラックリスト入りを避けたい
ここでは、それぞれの理由と、代替案として取れる対処法を解説します。
2-1 家族や職場にバレたくない
債務整理を検討する際、「家族や職場に知られたくない」という理由でキャンセルを考える方も少なくありません。個人再生や自己破産は、ほぼ確実に家族に知られると考えておくべきでしょう。
個人再生では、ローンが残っている車は基本的に引き上げられます。また、裁判所への申立てにあたり、収入や家計状況の詳細を提出する必要があるため、同居家族には特にバレやすいでしょう。自己破産では財産の処分も実施されるため、家族に内緒で手続きを進めるのはほぼ不可能です。加えて、どちらの手続きも官報に掲載されるため、万が一調べられた場合に知られるリスクもあります。
一方で、裁判所への申立てではなく、債権者と交渉する任意整理は比較的バレにくいといえます。ただし、弁護士・司法書士からの郵送物などでバレる可能性もあるため、隠したまま手続きを進めたいなら、事務所に訪問して書類を受け取りましょう。
2-2 費用が高い
債務整理の手続きには、弁護士・司法書士への依頼費用と裁判所に支払う費用が発生します。20万円〜60万円程度かかる個人再生や自己破産は、費用負担の重さからキャンセルを考える方もいます。任意整理は比較的費用が安く抑えられますが、それでも数万円~十数万円程度は必要です。
もし費用が理由で債務整理のキャンセルを検討しているなら、法テラスを利用して無料相談を受けてみましょう。収入や資産などの一定条件を満たしていれば、専門家への依頼費用を法テラスに立て替えてもらえます。その後、毎月5,000円〜1万円を分割で支払っていくことにはなりますが、費用負担を抑えながら手続きを進めることが可能です。
2-3 ブラックリスト入りを避けたい
債務整理をすると、信用情報機関に事故情報(いわゆるブラックリスト)が記録されます。これにより、完済から一定期間(5年程度)は、クレジットカードの新規発行やローンの契約が難しくなります。そのため、将来的に住宅ローンを組みたい、クレジットカードを使いたいと考えている方は、債務整理の影響を気にしてキャンセルを検討しているかもしれません。
もしブラックリスト入りを避けたい場合は、債権者と直接交渉し、分割払いや返済期限の延長を依頼するのが一つの選択肢です。また、家族に一時的に借金を肩代わりしてもらえるなら、ブラックリストに載らずに借金を整理できる可能性があります。
ただし、分割払いや返済期限の延長が認められたり、家族に肩代わりしてもらったりしても、借金の負担自体は変わらず、根本的な解決にはなりません。ブラックリスト入りの回避を優先すると、結果的に状況が悪化する恐れもあるため、問題を先送りせずに将来の生活を見据えた適切な判断が求められます。
3章 債務整理をキャンセルするリスク
任意整理は和解成立前、個人再生・自己破産は手続きの開始決定前なら途中でキャンセル可能です。しかし、債務整理のキャンセルには以下のようなリスクがあるため、取り消すことで状況が悪化する恐れがあります。
- 受任通知の送付後は信用情報に事故情報が記録される
- 弁護士・司法書士に支払った着手金は基本的に返ってこない
- 債権者からの取り立てが再開される
- 一括請求になる
ここでは、それぞれのリスクを見ていきましょう。
3-1 受任通知の送付後は信用情報に事故情報が記録される
弁護士・司法書士に債務整理を依頼すると、債権者に債務整理の開始を知らせる受任通知が送られます。受任通知が届いた時点で債権者からの連絡はなくなりますが、信用情報機関に事故情報が登録されます。
そのため、弁護士・司法書士に依頼した債務整理を途中でキャンセルしても、一度登録された事故情報は5~7年は消えません。 つまり、「ブラックリストに載るのが嫌でキャンセルする」という選択をしても、すでに信用情報には影響が出ているため、クレジットカードの利用や新規ローンの契約が難しくなる状況は変わらないのです。
また事故情報が記録されると、携帯電話の分割払い審査にも影響を与え、一括払いでないと機種変更の際に審査に通らない可能性もあります。債務整理のキャンセルを検討する際は、すでに信用情報に影響が及んでいることを理解し、単に手続きをやめるだけでは状況が改善しないことを認識しておきましょう。
3-2 弁護士・司法書士に支払った着手金は基本的に返ってこない
債務整理を弁護士・司法書士に依頼すると、手続きを開始するための着手金の支払いが必要になる場合が大半です。着手金は弁護士・司法書士が債権者との交渉や裁判所への申立て準備を進めるための費用で、途中でキャンセルしても基本的に返金されません。
そのため、手続きを途中でキャンセルすると借金問題が解決しないだけでなく、すでに支払った費用が無駄になってしまうのです。また、事務所や契約内容によっては、手続きの進行状況に応じて違約金やキャンセル手数料が発生する場合もあります。したがって、債務整理のキャンセルは事務所と相談しながら、慎重に判断しましょう。
3-3 債権者からの取り立てが再開される
債務整理を依頼すると、弁護士・司法書士が受任通知を送付し、債権者からの取り立てが一時的に停止します。なぜなら、受任通知を受け取った債権者は債務者に直接連絡ができないと定められているためです。
しかし、依頼の途中でキャンセルを受けると弁護士・司法書士は、債権者に辞任通知を送り、債務整理の手続きを終了します。辞任通知の受理後は連絡が可能になるため、再び債権者からの連絡が届くようになるのです。
また、取り立てが止まっていた間も、借金の元金には利息や遅延損害金が加算され続けています。そのため、債務整理をキャンセルすると借金総額が増え、返済負担がさらに重くなってしまう可能性が高いでしょう。
3-4 一括請求になる
受任通知が送付された後に任意整理をキャンセルすると、借金の一括返済を求められます。期限の利益とは、約束通りに支払っている限り、分割払いを続けられる権利です。ローンやクレジットカードの支払いは毎月の分割払いが認められていますが、滞納が続くと期限の利益を失い、残りの借金を一括で請求されます。
任意整理を依頼して弁護士・司法書士が受任通知を発送すると、滞納し続けた場合と同様に期限の利益を喪失するのです。任意整理は一括請求の状態から利息や遅延損害金をカットし、分割払いに組み直す手続きです。しかし、任意整理をキャンセルすると交渉がなかったことになり、期限の利益を失った状態だけが残ります。
その結果、借金を分割で返済する選択肢がなくなり、債権者から一括請求を受けます。一括で支払えなければ、訴訟に発展するリスクもあるため、債務整理をキャンセルする際は慎重に判断してください。
4章 債務整理をキャンセルした後の対処法
債務整理をキャンセルすると、取り立ての再開や一括請求などのリスクが生じます。そのため、単に手続きをやめるのではなく、以下のような対処法を取る必要があります。
- 自分で交渉する
- 法テラスを利用する
- 家族の支援を受ける
- 他事務所に相談する
ここでは、それぞれの対処法について詳しく見ていきましょう。
4-1 自分で債務整理手続きを進める
債務整理をキャンセルした後、自己破産や個人再生の申立て、債権者との交渉などを自身で行う選択肢もあります。しかし、弁護士や司法書士を通さずに債務整理を進めるのは、実際は難しいといえるでしょう。
特に自己破産や個人再生は、裁判所への申立てが必要な手続きのため、個人で進めるのは現実的ではありません。申立書や財産・収支の詳細な資料など必要書類が多いうえに、専門的な知識が求められるため、弁護士・司法書士なしでは免責や認可が得られないケースが大半です。
また、任意整理も自分で交渉はできますが、あまり減額されなかったり、そもそも交渉に応じてもらえなかったりします。このように、債務整理のキャンセル後に自分で手続きを進める選択肢はリスクが高いため、これから紹介する別の方法での対処がおすすめです。
4-2 法テラスを利用する
法テラスは、経済的に余裕がない方でも法律相談や弁護士・司法書士の支援を受けられる公的機関です。以下の表に記載している収入や資産の条件(東京都特別区・大阪市などの地域以外に居住の場合)を満たせば、弁護士・司法書士費用の立替え制度を利用できます。そして、手続き完了後は月5,000円〜1万円程度の分割払い(無利息)で立て替えてもらった費用を返済する仕組みです。
家族人数 | 収入基準 | 資産基準 |
---|---|---|
1人 | 182,000円 | 180万円以下 |
2人 | 251,000円 | 250万円以下 |
3人 | 272,000円 | 270万円以下 |
4人 | 299,000円 | 300万円以下 |
費用が原因で債務整理をキャンセルした方は、法テラスの活用によってお金の負担を抑えながら手続きを進められる可能性があります。条件を満たせば無料相談を受けることもできるため、一度相談してみるのも良いでしょう。
4-3 家族の支援を受ける
債務整理をキャンセルした後、家族に支援を受けて借金を完済するという方法もあります。親や兄弟に協力をお願いして一括返済してもらえれば、ブラックリスト入りを避けられるうえに、債権者からの取り立てもなくなります。
ただし、家族に負担をかけることになるため、返済計画を立てたうえで相談しましょう。支援を受ける場合は、口約束ではなく、借用書を作成するなどしてトラブルを防ぐ工夫も必要です。
4-4 他事務所に相談する
対応への不満や高額な費用などを理由に債務整理をキャンセルしたものの、やはり借金返済が厳しいと感じた場合は、別の弁護士・司法書士に相談しましょう。債務整理の進め方や受任後の対応、費用などは、事務所ごとに異なります。
そのため、最初の事務所では納得できなかった方でも、他事務所ではより適切なサポートを受けられる可能性があります。事務所によっては無料相談を実施しているため、まずは複数の事務所に相談し、自分に合った専門家を探してください。
グリーン司法書士法人では債務整理の無料相談を実施し、依頼者の状況に応じた最適な解決策をご提案しています。 債務整理のキャンセル後、借金の返済に不安を感じている方は、ぜひグリーン司法書士法人へお問い合わせください。
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まとめ
任意整理は和解成立前、個人再生・自己破産は手続きの開始決定前ならキャンセルできますが、受任通知の送付後は信用情報への影響が残るうえに、債権者からの取り立て再開や一括請求などのリスクが生じます。
また、弁護士・司法書士に支払った着手金が返金されないケースも多く、借金の負担がさらに重くなる可能性があります。もし債務整理の取り消しを検討しているなら、以下のようなキャンセル後の対処法も考慮しておきましょう。
- 自分で交渉する
- 法テラスを利用する
- 家族の支援を受ける
- 他事務所に相談する
グリーン司法書士法人では、債務整理のキャンセルを検討している方のご相談にも対応しています。無料相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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