経営破綻とは倒産のこと!経営破綻の原因とその後の手続きを解説

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

借金返済の知識
経営破綻とは倒産のこと!経営破綻の原因とその後の手続きを解説

この記事は約 14 分で読めます。

 この記事を読んでわかること
  • 経営破綻とは何か
  • 経営破綻となる原因
  • 経営破綻となるとどうなるのか
  • 経営破綻後に行うべき手続き

経営破綻とは、債務の弁済が滞ってしまい会社の経営が継続できない状態であり、一般的には倒産と呼ばれることが多く、経営破綻した会社は、通常倒産手続きに入ります。

一般的には、借入金を返済できない、支払期限が買掛金を支払えない、手形が2回不渡りとなった場合に経営破綻とされることが多いです。
経営状況に不安がある方は、できるだけ早めの対策を取るようにしましょう。

この記事では、経営破綻の原因と経営破綻してしまったときの手続きについて解説いたします。

自分の会社が健全に経営できているか、不安要素があるなら何が原因なのか、ぜひチェックしておきましょう。

1章 経営破綻とは倒産と同じ意味!

経営破綻は、金銭面など何らかしらのトラブルによって会社の経営が継続できず停止してしまう状況のことです。
具体的には、下記の状態が経営破綻に該当します。

  • 買掛金の支払いが遅れてしまう状態
  • 借入金の返済ができない状態
  • 不渡手形を出してしまう状態

経営破綻は倒産と同じ意味で使われますが、倒産という言葉を聞くと「会社が潰れる」というイメージを持っている方も多いかと思います。

しかし、倒産と言っても会社を潰すだけではなく、会社を再建することも可能です。経営破綻をしても必ずしも会社が潰れるわけではありません。

経営破綻は、会社が消滅するかどうかの絶体絶命の危機に陥っている状況ではありますが、会社をなんとか存続させることができるケースもあります。

実際に、消費者金融の武富士やレジャースポットを経営している東京商事などは経営破綻して会社が消滅しましたが、玩具量販店のトイザらスは経営破綻後に再生をして現在も店舗を構えています。

ただし、経営破綻まで状況が悪化したらほとんどの場合は会社を消滅させるしかないため、存続させたいと考えている場合は早めに立て直すことが大切です。

1-1 経営破綻と破産の違い

「経営破綻」と「破産」、言葉は似ていますが、経営破綻は「経営が立ちゆかなくなった状態」で、破産は「裁判所が、破綻した会社の資産を債権者への返済に充てる」手続きであるという点で異なります。
経営破綻の結果の一つが「破産」という関係になると考えるとわかりやすいでしょう。

破産になった場合、債務が消滅することによって法人も消滅します。そのため、破産を選択するのであれば会社を消滅させる(潰す)必要があるので注意しましょう。

1-2 経営破綻と廃業の違い

一方で「廃業」は理由や原因に限らず事業をやめることです。債務が膨らんで返済できずに廃業してしまうケースもありますが、経営が成り立っているけれど自主的に廃業するケースもあります。

例えば、個人で経営している飲食店の店長が高齢化により店を畳む場合は、後者の廃業になるでしょう。

経営破綻は、経営を続けたくても資金繰りや債務過多などで辞めざるを得ない状況です。対して廃業は、経営者が自主的に辞めるケースが存在している点に大きな違いがあります。

2章 経営破綻の原因は大きく分けて2つ

経営破綻に陥る原因はさまざまですが、大きく分けて「外部環境要因」と「内部環境要因」の2つがポイントになります。

外部環境要因とは、景気や社会情勢など外部の影響が原因で経営破綻するケースです。

一方で、内部環境要因とは、社内体制や事業など会社の内部が原因で経営破綻するケースです。

どちらも経営を続けるには大きく影響する項目です。

この章では、外部環境要因と内部環境要因に分けて解説いたします。

2-1 外部環境要因による破綻

外部環境要因は主に、景気や社会情勢などの外部の影響による破綻です。

2008年9月に発生したリーマンショックでは、金融機関に大きな影響を及ぼしたことから、株価の急落により多くの企業が不況となり経営破綻に陥った会社が急増しました。

また、ここ数年で特に影響力がある外部環境要因として、新型コロナウイルスの影響とロシアによるウクライナ侵攻の影響が挙げられるでしょう。

コロナウイルスの流行で、旅行や音楽鑑賞などの娯楽が自粛となり観光業やにエンターテイメント業が大きな打撃を受けたことは記憶に新しいのではないでしょうか。

自粛続きで収入がなくなった飲食店やライブハウスなどが、次々と経営破綻となり倒産してしまったケースも数多くあります。

コロナウイルスによる自粛の規制緩和後も、物価の高騰により原材料や仕入れ価格に苦しんでいる企業も非常に増えています。

このように、自社ではコントロールできない破綻原因が外部環境要因となります。

2-2 内部環境要因による破綻

内部環境要因は主に、社内体制や事業などの内部の影響による破綻です。

主に、経営戦略の失敗や内部管理の欠陥などが挙げられます。

例えば、新規事業の立ち上げで多額の投資をしたものの、マーケティングの問題や競合との差別化に苦しみ、投資の回収ができないまま債務だけ残ったケースなどが挙げられます。

内部管理の欠陥は中小企業が経営破綻に陥る要因として多いものです。

コストカットをしすぎてサービスの品質が低下して顧客が離れたり、評価制度の基準が甘く従業員の反感を買って人材の流出につながったりと、内部の管理の甘さによる破綻が例として挙げられます。

また、誰一人絶対に休んだり退職をしないことを前提にした無茶なプロジェクトを繰り返すなど、リスク管理の甘さも要因になります。

目先のことしか考えずに経営を続けて、万が一のことを想定していない場合、もし何かしらのトラブルがあったときに大きな影響を受ける可能性が高いでしょう。

3章 経営破綻したらどうなる?

経営破綻した場合、会社を消滅させるか何とか会社を再生するかのどちらかになります。

経営破綻したら「会社が終わった」と思う方も多いかと思いますが、民事再生により経営を立て直すことも不可能ではありません。
民事再生の手続きを行えば、再生計画を立て債権者などの利害関係者と調整をしながら事業の立て直しを図れます。
しかし、民事再生では再生計画の遂行と事業の立て直しを同時に進める必要があるため、ある程度の余力が必要です。

東京商工リサーチのデータによると、2000年4月1日~22年12月31日に民事再生法で会社を再生した会社の中で、事業を継続していたのは26.7%という結果でした。

わずか4分の1という結果を踏まえると、経営破綻まで進んでしまったら特別清算や破産による消滅を視野に入れるのが現実的と言えるのではないでしょうか。

では、経営破綻をして消滅した場合、どのようなことが起こってしまうのが見ていきましょう。

3-1 会社の資産をすべて失ってしまう

会社を消滅させることを選択した場合、当然ですが残りの債務を全て放置して潰すわけにはいきません。

残っている会社の財産や事業を処分して、債権者に配当してから会社が消滅します。

会社の財産や事業は、自分たちで配当するのではなく、裁判所が債権者に平等に配当していきます。

手続きでは、債務の返済ができない代わりに、少しでも残った財産や事業を配当しなくてはいけません。社員に少しでもお金として持たせてあげたいという気持ちはあるかもしれませんが、必ず債権者に行き渡るようにしなくてはいけません。

会社を消滅させる場合は、会社の資産をすべて失ってしまうことを覚えておきましょう。

3-2 社員は全員解雇になってしまう

会社が消滅するので、働いていた社員は全員解雇になってしまいます。

当然「今日で倒産したから皆さん明日から来ないでください」というわけにはいかないので、破産の申立てをした時点で書面を交付して解雇通知をします。

会社の状況によって社員の反応もさまざまで、寝耳に水の場合もあれば薄々察していた場合もあるかと思います。いずれにせよ代表者が挨拶や説明をするのが一般的です。

もし、会社として余力があるのであれば、このタイミングで解雇予告手当や最終月の給料の支払いを済ませておくと良いでしょう。

4章 経営破綻した後の手続き

会社が経営破綻した後は、法的な手続きもしくは直接債権者と交渉をしながら進めていきます。

経営破綻の手続きは複雑になるため、必ず専門家を通して手続きを進めましょう。

経営破綻した後の選択肢は1つ2つではありません。なるべく多くの選択肢を残すためにも、なるべく早めの相談をおすすめします。

ここからは、経営破綻した後の手続きの種類について解説していきます。

4-1 民事再生

民事再生とは、民事再生法に基づく法的手続きのことです。

再生と名がつくように、会社を再生していく手続きです。

民事再生を利用して経営を立て直した会社は多く、航空会社のスカイマークやインターネットカフェのアプレシオなども過去に民事再生を利用しています。

民事再生は、債権者や裁判所の同意のもとで、再生計画に基づいて債務を返済していきます。債務の返済は、今までと同じく会社の売上から返済を続けます。

会社の事業を潰すことなく再生することができますが、債務を完済できることが前提の手続きです。売上の目処が立たずに返済できなくても途中で融資を受けることができません。

そのため、まだ余力があるときに手続きをしなくてはいけないので注意しましょう。

4-2 会社更生

会社更生とは、会社更生法に基づく法的手続きのことです。

会社再生は法的効力が強く費用の負担が大きいことから、株式会社に限定される手続きです。

会社更生は、担保権者を手続きの中に組み込んで再建ができる大きなメリットがあります。しかし、その反面で経営者が全員退任しなくてはいけないので注意しましょう。

経営者が退任した後は、経営権や会社財産の管理処分権限が、裁判所が選任する「管財人」と呼ばれる弁護士に移行します。

会社更生での返済が開始されると、管財人が更生計画に基づいて再建を行なっていきます。

4-3 破産

破産とは、全ての債務が消滅する法的手続きのことです。

会社を消滅させる選択肢を取った場合の手続きが破産になります。

破産手続きでは、残っている全ての会社の財産や事業を処分しなくてはいけません。債務が消滅する代わりに財産や事業を債権者に配当します。

債務者に配当が完了して手続きを終えたら、会社と残りの債務が消滅します。

4-4 特別清算

特別清算とは、会社法に基づく法的手続きのことです。

特別清算も破産と同じく、債務超過によって会社を消滅させる選択肢を取った場合の手続きになります。

破産よりも簡易な手続きで進行できるため、比較的費用を安く抑えることができます。会社に残された財産がなく、手続きの費用すらままならない場合に有効的です。

また、特別清算の手続きを取る場合は、債権者の3分の2以上の同意を得る必要があるので注意しましょう。

4-5 任意整理

任意整理とは、直接債権者と交渉して債務を減額させる手続きのことです。

債務を減額して返済を行なっていくので、会社を存続させることができます。

任意整理の大きなポイントとしては、他の手続きと異なり裁判所を通す必要がない点と債務を選んで減額することができる点があります。

同じく債務を減額して返済していく民事再生や会社更生では、全ての債権者の債務が手続きの対象になります。しかし、全ての債務を減額するということは、取引先を失う可能性が高く再建のデメリットになる場合があります。

一方で、任意整理は減額しても取引に影響が少ない金融機関などを選んで債務を減額することができます。

取引先を失うリスクが減ることから、会社に余力がある場合はおすすめの方法といえます。

5章 経営破綻しないための4つの対策

経営破綻をしても、方法によっては会社を存続させて再建することもできますが、できることであれば経営破綻を防いで立て直せるに越したことはありません。

経営破綻したあとは、資金がなく債務ばかり膨らんでいくので、手続きでできることも少なくなっていきます。

会社を長期的に存続させるためにも、経営破綻しないための対策が必要です。

この章では、経営破綻しないための4つの対策をご紹介します。

5-1 資金の管理を徹底する

経営破綻の一番の原因は、資金の破綻です。

赤字を続けていくうちに資金がどんどん減っていき、キャッシュが底を尽きてしまい経営破綻してしまうケースがほとんどです。

手元にキャッシュがあれば、例え赤字の年があったり新規事業などの投資で支出が嵩んだとしても、経営を続けることができます。

また、不要な会社の所有物件があったら任意売却をするのもおすすめです。物件を売ることによって会社の資金が増えるため経営状況がよくないときに有効的になります。

できるだけ、コストの削減をしつつ、資金の管理を徹底した経営を行いましょう。

5-2 取引先の状況を把握しておく

自社の経営は上手くいっていても、取引先が倒産してしまうとその影響で自社も経営破綻に陥る可能性があります。

懇意にしている取引先は重要ではありますが、連鎖破産しないためにも日頃から冷静になって状況を見極めることが大切です。

取引先の経営者とのコミュニケーションを小まめに行なったり、決算書をチェックするなどで倒産のリスクがないか把握しておきましょう。

5-3 借入は慎重に行う

会社を成長させるためにも、新規事業や事業の拡大は大切です。しかし、事業を大きくするにはそれなりの投資が必要なためほとんどの場合は融資をしてもらうことになります。

今後返済できる目処が立っているか、経営の計画に問題がないか判断して借入を行うことが大切です。

「結局いろいろ使うことになるだろうし多めに借入しておこう」と思って必要以上に資金を借入する経営者も多いですが、もし事業が頓挫した場合は借入金を返済することが難しくなります。

計画していた返済方法ができなくなったとしても、経営破綻に陥らないように借入は慎重に行いましょう。

5-4 経営計画を小まめに見直す

毎日のタスクに追われていて、目標や計画を立てたものの、それきりで見直していないというケースは意外と多いものです。

実際に計画通り事業が成長しているのか、売上が下がって赤字の危険性はないかなどを小まめに確認するのも大切です。

経営計画は、目標やビジョン、経営戦略や行動計画などを具体的に示したものです。もし、今計画と離れている事業を行なっていたり投資を考えている場合は、経営破綻に陥る前に見つめ直すと良いでしょう。

全ての社員が共通意識を持つことで、内部環境要因による経営破綻を防ぐことができます。

6章 経営破綻の手続きは専門家にご相談を

この記事では、経営破綻の原因と経営破綻してしまったときの手続きについて解説しました。

経営破綻に陥ると、会社が消滅する可能性がある最大の危機となってしまいます。

会社を存続させて再建したいと考えている方は、できるだけ早めの判断が大切です。

返済の見込みがなく、どうにもならない状態まできてしまった場合は、会社を消滅させるしか選択肢がなくなってしまう可能性もあります。

経営破綻するかどうか迷ったら、まずは弁護士などの専門家に相談しましょう。

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よくあるご質問

経営破綻後の手続きには何がある?
経営破綻後の手続きは、主に下記の5種類です。
・民事再生
・会社更生
・破産
・特別清算
・任意整理
経営破綻後の手続きについて詳しくはコチラ
経営破綻の原因は?
経営破綻の原因は、主に景気や社会情勢などの外部の影響による外部要因による破綻と社内体制や事業などの内部の影響による内部要因による破綻に分けられます。
経営破綻の原因について詳しくはコチラ
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