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経営の悪化や後継者の不足によって事業の継続が難しくなった場合、選択肢の一つとして廃業という方法があります。
廃業とは、何らかの理由で事業を続けられなくなった場合に事業をやめることです。
しかし、廃業の手続きをすると事業を畳むことになるため、廃業の手続きのタイミングに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
廃業までの期間は2ヶ月以上かかることから、廃業を検討しているのであればなるべく早めの決断をおすすめします。
この記事では、廃業に必要な費用と廃業の手続きの流れを解説いたします。廃業の準備をしたいと考えている方はぜひご参考にしてください。
目次 ▼
1章 法人の廃業とは?
法人の廃業とは、簡単に言うと事業をやめることです。
資金繰りや経営の悪化、後継者不足などの原因によって廃業するケースが多いですが、中には経営が成り立っているけれど高齢化などが理由で自主的に廃業するケースもあります。
事業をやめると言っても決してネガティブな理由だけではないのが廃業の特徴です。
また、廃業は事業をやめる手続きなことから、よく倒産や解散、破産と混同されやすいです。
しかし、廃業と倒産や解散、破産は全て少しずつ意味が異なってくるので注意しましょう。
この章では、廃業と間違えやすい言葉をご紹介します。
1-1 廃業と倒産の違い
倒産という言葉は、よく耳にする言葉で馴染みがある方が多いかと思います。
倒産は、債務超過や赤字経営が原因でこれ以上経営を続けることができない場合に取る手続きです。
廃業は事業者自身の意思で事業を終わらせますが、倒産は事業者の意思に関わらず事業をやめなくてはいけないのが大きな違いでしょう。
また、一般的に会社が立ち行かなくなることを倒産と呼ぶことが多いですが、倒産しても会社が潰れないケースもあります。
倒産したとしても、法律の手続きで民事再生や会社更生を選んだ場合は、債務の残りを債権者に返済しながら会社を存続させることができます。
もちろん、債務の残り額や会社の資産の余力によっては、会社を潰す場合もあります。
廃業の場合は、事業者自身の意思でやめるので会社は消滅しますが、倒産は全てが全て消滅するわけではないことを覚えておきましょう。
1-2 廃業と解散の違い
解散は、廃業の手続きの一部で、会社を消滅させるまでのスタート地点です。会社を廃業するには、解散の手続きが必要になります。
まずは、廃業手続きをする前に株主総会の決議などによって解散を決めます。株主総会で解散の承認を送らなければ手続きが取れないので注意しましょう。
1-3 廃業と破産の違い
破産は、経営破綻したときの法的手続きの一つです。
自己破産という言葉を聞いたことがある方も多いかと思いますが、同じく債務を全て消滅させる手続きです。
債務超過などによって、今後経営ができないと判断された場合に破産の手続きを取ることで、全ての財産を消滅させる代わりに債務も消滅されます。
廃業も破産も会社が消滅することには変わりありません。しかし、破産も倒産と同じく、事業者の意思に関わらず事業をやめなくてはいけないのが大きな違いです。
2章 法人の廃業を決断するタイミング
法人の廃業は自分の意思で決断することができるため、廃業するタイミングに迷ってしまう方もいるのではないでしょうか。
もし廃業するタイミングを間違えると、急激に経営が悪化した場合に倒産をしなくてはいけなくなる可能性があります。
会社が倒産した場合は、廃業ではなく破産手続きを取らなくてはいけないため、廃業のタイミングは慎重に考えましょう。
また、廃業するときにお金がかかる点や、債務が多い場合は会社に借金を残す可能性があります。従業員に給料を払ったり、取引先や顧客に迷惑をかけるリスクも考えられます。
そのため、なるべく早くから廃業の準備しておく必要があります。
ここでは、法人の廃業を決断するタイミングをご紹介するので、ぜひご参考にしてください。
2-1 債務超過になった
債務超過とは、会社の債務の総額が資産の総額を上回った状態のことです。
会社が債務超過になったらすぐに倒産するというわけではありませんが、資産よりも債務のほうが多い状態から立て直すのはなかなか難しいといえます。
このまま、債務超過がどんどん増えてしまい、やがて全ての資産を売っても返済不能なところまできてしまったらいよいよ破産するしか選択肢がなくなってしまいます。
そのため、債務超過になったタイミングで廃業の手続きを取るのは選択肢の一つではないでしょうか。
廃業して、新たに事業をスタートすることもできるので、これ以上続けても債務超過が加速すると判断したらぜひ検討してみてください。
2-2 経営者が高齢化している
事業の後継者がいない場合は、廃業を考えるタイミングの一つです。
今や人生100年時代と言われていることもあり、高齢でも体力の続く限りは事業を続けていきたいと考える経営者も増えています。
しかし、経営者が元気なうちに廃業を選択するのもタイミングの一つです。後継者がいない場合や事業を継承することができないと判断したのであれば廃業を考えてみましょう。
2-3 経営資金が足りない
会社が債務超過や赤字化していない状況でも、経営資金が足りない段階での廃業もタイミングと言えます。
なぜなら、会社を廃業するには、手続きの費用や専門家に依頼する費用がかかるからです。
また、廃業後も経営者とその家族が生活するための資金が必要です。もし会社の経営状況が悪化して資金が少ない状態になった場合、生活資金を会社運営に資金を費やしてしまうとその後の生活が困ってしまうでしょう。
資金が底を尽きた段階では廃業したくても費用が払えないというケースも考えられるため、余力があるうちに廃業手続きを行うことをおすすめします。
3章 廃業に必要な費用
会社を廃業させるには「登記費用」「官報の掲載料」「専門家への費用」の3つの費用がかかります。
廃業手続き中や破産、休業は基本的に給料が出ないので、手続き中は収入がない状態で生活しなくてはいけません。そのため、廃業手続き中も問題なく生活していける分のお金を取っておく必要があります。
では、廃業を手続きをするのにおよそどれくらい費用がかかるのかを見ていきましょう。この費用が確保できるうちに廃業手続きを進めるのばベストです。
3-1 登記費用
登記費用は「解散登記」「清算人の選任登記」「清算結了登記」がかかります。
会社を廃業するには、会社を解散させたり会社解散後の業務執行をする精算人を選任しなくてはいけません。そのための費用が登記費用となります。
解散や清算人選任、株式会社の清算には登録免許税がかかり、専門家によって異なるわけではなく一律となります。
それぞれの登記費用は、下記の通りです。
手続き | 登記費用 |
---|---|
解散登記 | 30,000円 |
清算人の選任登記 | 9,000円 |
清算結了 | 2,000円 |
法人ということを踏まえるとさほど高額ではありませんが、費用がかかることを覚えておきましょう。
3-2 官報の掲載料
債権者に会社を廃業することを伝えるために、2ヶ月間官報に掲載する必要があります。
法人が官報による公告を行う場合、1行につき3,589円(税込)の費用がかかります。
解散の公告は9~11行ほどが目安になるため、およそ40,000円程度準備しておきましょう。
3-3 専門家への費用
廃業の手続きを専門家に依頼する場合は、依頼費用がかかります。
専門家によって費用はまちまちですが、専門家報酬は十数万程度が目安となります。
グリーン司法書士法人でも、解散・清算人選任・清算結了の手続きを行なっており、8万4,700円(税込)で行なっているのでぜひ依頼の参考にしてください。
ただし、登記費用の登録免許税や官報への掲載料は別途かかるので注意が必要です。
また、ここで専門家への費用をカットしようと自分で進めるのはおすすめしません。廃業までに最低でも2〜3ヶ月はかかる上に提出書類が多く流れが複雑だからです。
自分でやろうとして、かえってお金と時間がかかってしまったというケースも多いので、ぜひ専門家に依頼することをおすすめします。
4章 法人の廃業まで流れ
法人を廃業させるには、費用だけではなく時間も必要です。一つの会社を終わらせるということは、当然従業員や株主にも影響が出てきます。
周りの人たちを混乱させないためにも、流れに沿った的確な手続きが必要です。そのため、法人の廃業手続きは必ず専門家と一緒に進めることをおすすめします。
法人の廃業までの流れについて解説していきます。
4-1 従業員や取引先に会社廃業の通知を送る
まずは、従業員や取引先など会社に関わる人たちに会社廃業の通知を送りましょう。
従業員の生活や取引先の売上にも関わってくるため、唐突に告知すると混乱を招いてしまいます。そのため、少なくとも廃業する2〜3ヶ月前には通知しなくてはいけません。
会社廃業の通知はメールや口頭ではなく「廃業挨拶状」と呼ばれる書面を送付します。
廃業挨拶状の例はネットや本でも多く出ているので、参考にして作成しましょう。
4-2 株主総会で解散決議と清算人の選任をする
会社廃業の通知を送ったら、株主総会で解散決議を行います。
1章で解説した「解散」の手続きが、この株主総会での解散決議に該当します。
株主総会では過半数の株主が出席し、3分の2以上の同意を得る必要があります。株主総会で解散の同意を得なければ次のステップに進めないので注意しましょう。
この段階で、清算人の選任をします。清算人とは、会社解散後の清算業務をする人のことで、基本的に取締役がなることが一般的です。
主に、現務の完了や債権の取立てや弁済、残余財産の分配などを行っていきます。
4-3 解散登記と清算人選任登記をする
解散決議のあとは2週間以内に、解散登記と清算人選任登記をしなくてはいけません。
申請書は法務局のホームページからダウンロードできるので、確認しておきましょう。ダウンロードした申請書に、商号や本店住所、登記の事由などを記載して提出します。
商業・法人登記の申請は、書面申請とオンライン申請があるので環境に応じて選びましょう。
4-4 官報で解散公告をする
会社を廃業する際は、官報でも解散公告をする必要があります。
官報とは、国が発行する機関紙のことで、会社法による法定公告等の記事が掲載されます。
会社を廃業する際に借金がある場合、債権者はお金を回収しなくてはいけません。
債権が出ることを申し出ることができるように、会社が廃業するという旨を「解散公告」として、官報に2ヶ月以上掲載することが会社法で定められています。
4-5 決算書類の作成をする
株主総会で解散を決議した後に解散時の決算書類を作成します。廃業する会社の財産目録や貸借対照表などを準備しましょう。
会社の財産などがどれだけある状態なのかを把握してから精算を行なっていきます。
この段階で、会社の債務が多く債務超過になっている場合は破産手続きもしくは特別清算に進みます。
4-6 清算をする
残った財産や債務の弁済を行なっていきます。
清算手続きでは、会社の財産の売却や売上債権の回収をして資産を現金化していきます。借金がある場合は現金で返済しましょう。
資産がマイナスになってしまい廃業できない場合は、破産手続きに進みます。財産が残った場合は、株主に分配を行います。
4-7 株主総会で承認を受ける
清算が終了したら清算が終了した時点での決算書を作成して、再び株主総会を開きます。
この作成した決算報告書を報告して承認を貰いましょう。承認を受けたら清算結了になって株式会社の法人格が消滅します。
会社は廃業となり消滅しましたが、手続きはこの後も続くので注意しましょう。
4-8 清算結了登記と確定申告をする
株主総会で決算報告書が承認されたら、2週間以内に法務局にて清算結了登記と確定申告をします。
会社の債務の返済が完了したら該当事業年度の清算確定申告を行います。
最後に税務署に清算結了届を提出したらようやく正式に会社が廃業となります。
5章 法人廃業までの期間は2ヶ月以上かかる
廃業の手続きをする際は、株主を集めたり債権者へ債務を返済したりと手続き以外の工程が多くあります。
自分のスケジュールで進められないこともあるため、法人廃業までの期間はなるべく余裕を持っておきましょう。
法人廃業の手続きを開始してから廃業するまで、大体最低でも2ヶ月〜3ヶ月はかかるので、この日までに廃業をしたいと考えている方は逆算して手続きを開始しましょう。
5-1 自分で廃業手続きを進めるのはおすすめしない
廃業手続きは必ずしも専門家と進めなくてはいけない法律やルールがあるわけではありません。しかし、自分で廃業手続きを進めるのはおすすめしません。
なぜなら、債権者に債務を完済したり、余った財産を株主に分配したりなどお金に関わることが出てくるからです。株主とのトラブルになったり、返済したかどうかでも揉めないためにも専門家のもとで行うと安心でしょう。
また、不慣れな書類の記載も多くあります。記載を間違えたらより手続きに時間がかかってしまうので、その点でも専門家を進めるとよりスムーズにできます。
6章 法人の廃業以外の選択肢について
法人を廃業するかどうか迷ったら、廃業以外の選択肢を取る方法もあります。
確かに、破産のように思ったよりも債務が膨らんでいて、廃業ではなく破産扱いにしなければいけないケースもあるでしょう。
しかし、特に資金に困っていない状態での廃業を考えている場合は、会社を休業したり事業を売却するという方法もあります。
最後に、法人の廃業以外の選択肢についてみていきましょう。
6-1 休業にする
休業とは、その名の通り事業活動をお休みさせることです。あくまで停止させるだけなので、条件が整ったら事業活動の再開の手続きをすることで再度事業を続けることができます。
一時的に資金を貯めてから事業に取り組みたい場合や、後継者を探してから事業を再開したい場合に有効的です。
また、休業は書類提出にかかる手続きのみとなるため、廃業時に必要な費用がかからないのもメリットです。
一切の未練がなく会社を畳みたいと考えているのであれば、廃業で問題ないでしょう。
しかし、今後タイミングを見て再開したいと考えている場合は、休業がおすすめです。
6-2 M&Aを検討する
事業自体は順調だという場合は、M&Aを検討するのも良いでしょう。
M&Aとは、企業の合併・買収のことです。廃業にしようと思っている事業を買収してもらうことで会社を存続させることができます。
また、従業員の雇用も継続確保されるため、廃業をして働き先に困ることがないのも大きなメリットです。
潰すにはもったいないと考えているのであれば、M&Aを検討してみてはいかがでしょうか。
7章 法人の廃業を考えているなら早めの相談がおすすめ
法人の廃業は倒産や破産とは違い、資金や債務の問題でやめざるを得ない場合だけでなく、余力がありながら自主的にやめることができるのが大きな違いです。
そのため、手遅れになる前に資金を確保しやすく、期間に余裕を持って手続きできるのはメリットでしょう。
もし資金がない場合は、破産を選択する前に会社の所有物件を任意売却するのもおすすめです。物件を売ることによって会社の資金が増えるため廃業を選ぶことができる可能性があります。
また、従業員に転職活動などで次の職の準備をする期間を与えるためにも、日頃よりコミュニケーションを取ってトラブルのないように進めましょう。
2ヶ月〜3ヶ月以上廃業までの手続き期間がかかることを踏まえた上で、廃業を検討しているのであればなるべく早めに顧問税理士や専門家に相談するのがおすすめです。
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よくあるご質問
- 法人の廃業にかかる費用はいくら?
- 会社を廃業させるには「登記費用」「官報の掲載料」「専門家への費用」の3つの費用がかかります。
それぞれの費用は、下記の通りです。
・登記費用:4万1,000円
・官報の掲載料:約4万円程度
・専門家への費用:十数万円程度
- 法人を廃業する流れは?
- 法人を廃業する流れは、下記の通りです。
①従業員や取引先に会社廃業の通知を送る
②株主総会で解散決議と清算人の選任をする
③解散登記と清算人選任登記をする
④官報で解散公告をする
⑤決算書類の作成をする
⑥清算をする
⑦株主総会で承認を受ける
⑧清算結了登記と確定申告をする